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2023.08.02(水)

【GPシリーズ ANG福井】レポ―ト&コメント:男子110mハードル村竹、野本がパリオリンピック参加標準記録を突破!男子100mでは多田修平が10秒10でV



福井陸上競技協会が、「選手も観客も楽しめる欧米の競技会のようなナイター陸上」の実現を目指して、2019年から行っている日本グランプリシリーズAthlete Night Games in FUKUI(アスリートナイトゲームズイン福井、以下、ANG)が、7月29日に行われました。
日本の陸上競技会として初めてクラウドファンディングによる運営資金調達を導入したほか、観客席の競技場内設置や場内MCの起用、ファンサービスなど、さまざまな面で従来にない新たなスタイルを打ち出したことで、観客・選手から高い支持を得ているこの大会は、日本新記録続出で「伝説の一夜」と称された第1回大会以降、「記録の出る大会」としても知られています。
5回目の開催となった今年度からは、日本グランプリシリーズ(グレード2)にも参画。また、参加資格記録有効期間が7月30日までのブダペスト世界選手権、そして、7月1日から資格記録の有効期間が始まったパリオリンピックを目指すうえでも、競技者にとっては重要な1戦となりました。朝から快晴に恵まれた当日は、日中の最高気温が36℃に達し、19時になっても32℃という厳しい暑さに。前のアジア選手権など海外競技会との兼ね合いにより欠場する選手も出ましたが、どの種目でも熱戦が繰り広げられて好記録も誕生。会場に集まったファンを魅了しました。


男子110mハードルで好記録続出!

村竹、ケガ明け初戦で13秒18! 好調・野本も13秒20!



追い風0.9mのなか行われた男子110mハードル決勝では、会場を大きくどよめかせるパフォーマンスが飛び出しました。1・2着でフィニッシュした村竹ラシッド選手(順天堂大)が13秒18、野本周成選手(愛媛陸協)が13秒20と、ともにクリア済みのブダペスト世界選手権参加標準記録(13秒28)を再び突破しただけでなく、13秒27のパリオリンピック参加標準記録をも大きく上回ったのです。村竹選手は、3月の段階でマークしていた日本歴代4位および学生歴代2位の自己記録(13秒25)を更新、野本選手も6月末の布勢スプリントで出したばかりの日本歴代5位の自己記録(13秒28)を、さらに縮める形となりました。
昨年のオレゴン大会で世界選手権初出場を果たした村竹選手は、今季も、前述の通り3月にシドニーで13秒25をマークして参加標準記録を突破する好スタート。しかし、国内初戦となった4月末の織田記念のレース中に左ハムストリングスを肉離れするアクシデントに見舞われてしまいました。今後のことも考慮して、ブダペスト世界選手権出場を諦める覚悟で日本選手権出場を見送り、治療に専念。このANGが3カ月ぶりとなる復帰レースでした。
追い風1.7mのなかで行われた予選を全体トップとなる13秒38で通過した際には、「(110mが)長っ! 疲れました!」と苦笑いしつつ、少しホッとしたような表情も見せていましたが、決勝では、「先行されることはわかっていた」と序盤でリードを奪った野本選手に動じることなく、逆に、「持ち味」と自負する中盤からの走りで野本選手に迫るとラストで逆転、0.02秒差で先着しました。走練習を再開して1カ月は経っていたものの、ハードル練習は2週間前に始めたばかりで、それも「3回くらい」というなかでの好記録に、ミックスゾーンでは、喜びよりも先に、驚きの言葉を口にしていました(村竹選手のコメントは、別記ご参照ください)。
野本選手は、早稲田大時代からユニバーシアード(現ワールドユニバーシティゲームズ)に出場して5位に入賞(2017年)するなどの実績を残し、社会人になってからも着実に力を高めてきた選手です。2022年に初めて出場した世界室内(60mハードル)では決勝進出に肉薄する結果も残し、一気に注目を集める存在となりました。しかし、ケガ明けで臨む形となった今年の日本選手権は、決勝で第1ハードルのクリアに失敗して転倒し、無念の途中棄権。13秒28をマークして世界選手権参加標準記録をクリアした布勢スプリントでは、代表決定済みで、その後のアジア選手権も制することになる高山峻野選手(ゼンリン)を、同タイムながら着差ありで下す好走も見せましたが、村竹選手同様、日本選手権の結果からブダペストへの出場は厳しい状況です。
今大会では、村竹選手に次ぐ13秒39(+1.8)をマークして予選を通過。村竹選手との一騎打ちとなった決勝では、布勢スプリントで課題となった「前半の浮き」を改善できたとしながらも、中盤で動きが崩れて逆転を許したしまった点で、オリンピック参加標準記録を突破する自己記録の更新に対する喜びよりも、負けた悔しさのほうが大きいと振り返っていました(野本選手のコメントは別記ご参照ください)。
なお、このレースでは、日本選手権で3位となり、高山選手とともにアジア選手権に出場して5位の成績を残した横地大雅選手(Team SSP)も13秒33(3位)をマーク。2021年に出した自己記録(13秒45)を大きく更新し、日本歴代6位へと浮上する好走を見せています。


男子100mは多田が10秒10でV

再起の狼煙を上げる



男子100mでは、予選で追い風参考(+2.2)ながら10秒12の全体トップタイプをマークしていた多田修平選手(住友電工)が、決勝でも快走。追い風0.8mのなか10秒10のシーズンベストをマークして優勝を果たしました。
多田選手が10秒1台をマークしたのは、初優勝を飾って東京オリンピック代表の座を勝ちとった2021年日本選手権以来。東京オリンピックを終えてからは心身が噛み合わず、結果の伴わないレースが続いていました。その状態は今季に入っても変わらず、春先には10秒5~6台までタイムが落ち込んだことから、日本選手権を回避して、じっくりとトレーニングに取り組むことを選択。久しぶりのレースとなった6月末の布勢スプリントで10秒21(+1.7、2位)のシーズンベストをマークし、ようやく明るい兆しが見えてきたなかで、このレースを迎えていました。
スタート直後の加速局面で一気にリードを奪うことを得意としていた多田選手ですが、今回は予選、決勝ともに、スタートからのスムーズな加速で中盤に抜けだすと、そのままトップでフィニッシュラインを駆け抜けるレース展開を披露しました。タイマーを見やりながらフィニッシュした決勝では、勝利と好記録を確認すると右腕で力強くガッツポーズするとともに、「よっしゃ!」という雄叫びも。苦しい日々を乗り越えて、上昇機運に転じたことを示す見事なレースでした。
レース後、「けっこう軽く走った予選で追い参とはいえ(10秒)12が出たことで、調子が戻ってきている実感があったので、決勝では、パリオリンピックの参加標準記録(10秒00)を目指した」と振り返った多田選手。それを達成することはできませんでしたが、「ちゃんと走り始めて2戦目で、10秒10まで戻ってくることができたので、今日は素直にそれを褒めて、次の大会に向けて頑張りたい」と充実感をにじませました。
今後、タイムをさらに上げていくうえでの課題として多田選手が上げたのは、スタートから5~6歩目あたりの局面。トレーニングによる筋力アップの成果で体重が2~3kg増えたことで、中盤以降の走りに安定感が出てきたものの、一気にスピードを高めるその局面の動きにまだキレがなく、「接地時間が長い状態になっている」と言います。「ただ、僕は試合を重ねて調子を上げていくタイプで、その点には自信がある。キレが出てくれば、9秒台も安定して出せるようになる」ときっぱり。「今年中に参加標準記録を切って、来年は日本選手権とパリオリンピック本番に(ピークを)合わせればいいという状態にしたい」と力強い言葉を聞かせてくれました。
このほか、男子100mでは、2位に食い込んだ大上直起選手(仙台大)の走りも目を引きました。大上選手は、7月9日の南部記念男子100mを10秒23(+2.1)で制し、GP初優勝を果たしたばかりですが、今季は南部記念の1週前に行われた岩手県選手権で、追い風参考(+2.6)ながら10秒06をマークしたことで注目を集めていました。ANGでは、予選を10秒19(+2.3)で通過すると、決勝では終盤に追い上げる走りを見せて、5月に出した10秒27の自己記録を大きく更新。10秒15で多田選手に続き、力のあるところを示しました。また、10秒16で3位となった東田旺洋選手(関彰商事)も、2021年に2回マークした10秒18の自己記録を更新しました。


男女やり投は小椋と上田、男子走幅跳は山川

オレゴン代表組が快勝



男子やり投は、昨年のオレゴン世界選手権に出場した小椋健司選手(エイジェック)が3回目に、サードベストタイとなる80m13のシーズンベストをマークして首位に立つと、後半は77m00、77m67、78m19と安定したアーチを連投。記録を伸ばすことは叶わなかったものの優勝を果たしました。女子やり投も、オレゴン世界選手権に出場した上田百寧選手(ゼンリン)が1回目に57m88をマークして制しています。

男子走幅跳は、8m台に乗る跳躍を見ることはできませんでしたが、前半から試技のたびにトップが入れ替わる展開となりました。勝負は、オレゴン世界選手権代表の山川夏輝選手(Team SSP)が5回目に7m89(+1.7)を跳んで首位を奪い返すと、最終跳躍で7m93(+1.4)まで記録を伸ばして優勝。これに続いたのは、6回目に7m87(+1.3)をマークした小田大樹選手(ヤマダホールディングス)で、3回目に7m87(+2.0)を跳んでいた津波響樹選手(大塚製薬)をセカンド記録で逆転し、2位に収まりました。



女子走幅跳は、1cm差あるいは同記録で上位争いが繰り広げられるスリリングな戦いとなりました。大接戦を制したのは、最終跳躍で6m22(+1.4)を跳んで逆転した竹内真弥選手(ミズノ)。2位には3回目と6回目で6m21(+0.9、+1.5)をマークした木村美海選手(四国大)が続き、出場選手の多くがファウルが連発するなか6回すべてに記録を残して最終跳躍で6m21(+1.1)まで記録を伸ばした熱田心選手(岡山陸協)が3位に、4位には6回目に6m20(+1.2)をマークした山本渚選手(長谷川体育施設)が続きました。

女子100mハードルは欠場者が多かったものの、トラック種目最初のレースとなった予選において、1組で大松由季選手(サンドリヨン)が13秒09(+1.4)、2組で大久保有梨選手(ユティック)が13秒09(+3.0)、3組では清山ちさと選手(いちご)が12秒99(+2.8)、中島ひとみ選手(長谷川体育施設)が13秒02(+2.8)と好記録が続出。ファンの期待を高める形となりました。ちょうど風が止まった時間帯とスタートが重なってしまった決勝は、追い風0.2mと「風のアシスト」はならず。しかし、そのなかで12秒台ハードラー(12秒96)の清山選手が地力の強さを示し、13秒11で快勝。2・3位には大松選手と中島選手が予選での好調を維持して13秒18、13秒19でフィニッシュしています。


【好記録樹立者コメント(要旨)】

◎村竹ラシッド(順天堂大)

男子110mハードル

優勝 13秒18(+0.9) 

=ブダペスト世界選手権参加標準記録、パリオリンピック参加標準記録突破



とても驚いていて、「本当に、(13秒)18なのかな」という感じ。でも、今年掲げていた「13秒1台を出す」という最低限の目標をクリアできたので良かった。(復帰初戦での)この結果は、もともとの冬期練習の成果にプラスして、ケガをしてからの3カ月間に身体つくりから見直して補強やウエイトトレーニングを頑張ってきた成果が表れているのかなと思う。

4月の織田記念で左ハムストリングスを肉離れした。肉離れをしたこと自体が初めての経験だったので、最初のころは「ここで(肉離れ)するか」と落胆して、悔しく思う気持ちもあった。しかし、気持ちを切り替えて、「これで来年のオリンピックに向けて、ほかの選手よりも長い期間をかけて専念できる」と受け止めることができてからは、しっかりとトレーニングに取り組むことができた。走る練習を再開したのは1カ月前で、ハードルの練習は2週間前に始めたが、3回くらいしかやっていない。もうちょっと練習を突き詰めたら、もう少しいい記録は出るんじゃないかなと感じている。

今日のレースでは、野本さんとかスタートの速い人に先行されることはわかっていたなか、1台目から落ち着いて入ることができた。また、自分の持ち味である中盤からの伸びを生かして最後に差しきることができたので、流れもよかったと思う。ただ、まだ後半(のインターバルで走りを)刻めなかったり、そもそも(110mを走りきる)体力がなかったりと課題もいっぱい(笑)。残り少なくなってきた今季のレースのなかで、しっかり修正していけたらいいなと思う。

パリオリンピックの参加標準記録を突破できたことによって、これでもう(来季は)日本選手権で3番以内に入ることに専念できる。もちろん優勝するつもりでいるし、すでに偉大な先輩方が海外(ダイヤモンドリーグやアジア選手権)で活躍していて、自分が今年そこに乗っかれていないことを悔しく思う気持ちもあるが、来年はその先輩方の活躍を追い越すくらいの勢いで頑張っていけたらと思っている。


◎野本周成(愛媛陸協)

男子110mハードル

2位 13秒20(+0.9) 

=ブダペスト世界選手権参加標準記録、パリオリンピック参加標準記録突破



予選(13秒39、+1.8)の感じでベストが出そうだなと思ったので、決勝はスタートから(記録を)狙いに行った。前半はうまくいったが、中盤でちょっと崩れてしまい、後半で(村竹選手に)前に出られてしまう形となったので、ベストは出たけれど悔しさが残る。ただ、パリオリンピックの参加標準記録の突破は今年中に狙っていたので、そこをクリアできたことはよかった。

タイムは(フィニッシュ直後に13秒)1台が出たかなと思ったが、(13秒)20だったので、惜しかったなという気持ち。自分はいつも、どこかしら失敗して、そこを修正して…の繰り返しで、「会心のレース」というのがあまりない。今回については、前のレースで課題となった前半の浮きを改善することはできたように思う。また、(転倒で途中棄権した日本選手権のように)大事なところで失敗してしまうと、世界陸上など(のチャンス)がなくなってしまう世界だけに、だんだんと冷静に走れるようになってきたことも評価できる点である。

次の課題となるのは、最高速度が出てきたところで、それをキープできるようにすること。今日のレースでは、たぶん一番スピードが上がっていたと思う3台目、4台目のところで(動きが)崩れてしまった。そこをキープできるようにしたい。また、最後、ラシッド選手に追いつかれてしまったが、そこで焦らないようにすることも大切になってくる。

このあとは、全日本実業団と国体への出場を予定しているが、来季に向けて、どうしていくかはまだ全然考えていない。ただ、ここでパリの参加標準記録が切れたことで、気持ちの面では楽になるはず。(オフシーズンは)もう一つ最高速度を上げるためにどうすればいいかを考えてから練習に入っていく感じになると思う。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:アフロスポーツ


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