委員会情報

医事委員会

メディカル質問箱に寄せられた質問に対し、医事委員会ドクターがお答えします。
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※メディカルに関する質問はメディカル質問箱(下記URLまたはQRコード)へお寄せください。
https://goo.gl/forms/3fpAw2zGJ9XE8fiu1
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サプリメント・ドーピング 栄養 貧血 循環器 整形外科 婦人科 内科

メンタル コンディショニング

サプリメント・ドーピング 栄養 貧血 循環器 整形外科 婦人科 内科 メンタル コンディショニング

サプリメント・ドーピング

歯科補綴物(詰め物や被せ物)および歯科矯正装置を競技時に使用することはアンチ・ドーピング規則違反に該当しますか? NEW
ドーピングとは、「スポーツにおいて禁止されている物質や方法によって競技能力を高め、意図的に自分だけが優位に立ち、勝利を得ようとする行為」のことです。禁止される物質や方法は、禁止表国際基準に記載されており、2019年の禁止表国際基準では、以下の行為が禁止方法とされています。
したがって、歯科補綴物(詰め物や被せ物)および歯科矯正装置の使用は、アンチ・ドーピング規則違反には該当しませんので、それらの使用の可否に関しては、各競技のルールに従ってください。
これまではJADAの認証マークがついている商品を購入していましたが、JADAマークがなくなると聞きました。詳しく教えてください。
これまで、日本アンチ・ドーピング機構(以下JADA)は、サプリメント製品の定期的な分析と、生産施設の審査によって、サプリメント製品を認証し、商品の包装に認証マークを貼付するシステムを導入してきました。しかし、JADAは2019年3月31日をもって、サプリメント認証プログラムを終了し、今後はサプリメントの安全性を保証する認証制度ではなく、「スポーツにおけるサプリメントの製品情報公開の枠組みに関するガイドライン」に基づいて、サプリメント摂取によるアンチ・ドーピング規則違反のリスクを減らすための情報を提供する制度へと変更されることとなりました。これまでのような認証マークは設けられないそうです。なお、2019年3月末までにJADAの認証を取得した製品については、最長でも2020年3月31日までサプリメント分析認証プログラムの存続を認めることとなっていますが、それ以降はJADAの認証マークがついた製品はなくなることになります。具体的な情報公開の方法は今後公表されると思われます。
https://www.playtruejapan.org/topics/2019/000378.html
 最近では、その他の民間企業によるサプリメント認証を受けるメーカーも増えてきています。サプリメントを選ぶ際には、それらの認証マークの付いているものを選択することで、ドーピングのリスクを低減することは可能ですが、いずれにせよ100%の安全を保障するものではないことを忘れないようにしましょう。
クレアチンは有害だと聞いたのですが、摂取しても大丈夫でしょうか?
これまでに多くの研究によって、クレアチンを摂取することで、筋力が高まり、瞬発系パフォーマンスが向上することが示されています。したがって、陸上競技ではスプリントや投擲などのパワー系の種目の選手においては、クレアチン摂取によるパフォーマンス向上が期待できる可能性があります。摂取方法として、国際スポーツ栄養学会や国際オリンピック委員会は、まず初期投与として5gを1日に4回(約0。3kg/kg/日)を5〜7日間投与し、その後、維持投与として3〜5g/日を投与することを推奨しています。しかし、クレアチンには水分貯留、体重増加の副作用が起こりうる他、多量摂取による腎臓への影響や、筋損傷との関連を懸念する声も一部では挙がっています。
 また、現行のルールでは、クレアチン自体はドーピングの禁止物質ではありませんが、それぞれのサプリメントの品質については十分注意する必要があります。過去にはクレアチンサプリメントでも、成分表に表記されていない禁止物質が混入していたためにアンチ・ドーピング規則違反となった事例も報告されています。
 クレアチンを摂取する前に、自分の競技に本当に必要なのか、どのくらいの量をどのように摂取すれば良いのか、安全性も含めてしっかり確認するようにしましょう。
友人からビタミン剤のサプリメントを勧められているのですが、飲んだ方が良いでしょうか? 飲む場合には何を飲めばいいでしょうか?
一般的に、サプリメントは食事で不足した栄養素を補うために摂取するものであり、通常の食事がしっかり摂取できている場合には、サプリメントを摂取する必要はありません。ビタミン剤が適応となるのは、極端に偏った食生活の継続、消化管の病気によるビタミンの吸収障害などでビタミン欠乏症に至っている場合や、妊婦や授乳婦、代謝疾患などでビタミン需要が増大し、かつ食事での摂取が不十分な場合などに限られます.ビタミン欠乏がないアスリートが、サプリメントでビタミンを補充したところで、パフォーマンスが向上するという科学的根拠はありません。
 また、サプリメントにはラベルに表示されていない成分が混入されている恐れがあり、近年ではサプリメント摂取による健康被害や、アンチ・ドーピング規則違反も報告されています。サプリメント摂取によるアンチ・ドーピング規則違反は自己責任です。親や友人、指導者などから勧められたからという安易な理由でサプリメントを摂取するのは大変危険です。サプリメントを摂取する前に、その必要性,有効性,安全性をしっかり確認しましょう。分からないことがあれば、アンチ・ドーピングに詳しいスポーツドクター、スポーツファーマシストやスポーツ栄養士に相談しましょう。
試合前にエナジードリンク、缶コーヒー等のカフェインを摂取するのはいかがでしょうか?
カフェインは、以前は禁止物質に指定されていましたが、2004 年以降は禁止物質から除外され、現在では監視プログラムの対象として扱われています。よって、現行のルールでは試合前のカフェインの摂取でアンチ・ドーピング規則違反となることはありません。しかし、カフェインには嘔気・不眠・不穏・手指の震え・動悸・不整脈などの副作用や利尿作用があり、注意が必要です。一般的に体重 1kg あたり 9mg を超えるカフェインの過剰投与は危険とされますが、少量の摂取でも副作用が起こることがあります。通常、1 カップ(150ml)のレギュラーコーヒーには 100〜150mg、緑茶や紅茶では30〜50mg、一般的なエナジードリンクには 1 本あたり 100〜140mg 程度のカフェインが含まれています。カフェインを摂取する際には、過剰摂取にならないよう気をつけましょう。
各種栄養ドリンクの使用はアンチ・ドーピング規則違反になりますか?
栄養ドリンクの中には、興奮薬や生薬の成分などを含んでいる商品もあり注意が必要です。栄養ドリンクや滋養強壮剤、サプリメントには、ラベルに表示されていない禁止物質が含まれている可能性もゼロではないため、絶対にアンチ・ドーピング規則違反にならないことを完全に保障することはできません。使用する場合には、その必要性や安全性を十分に吟味した上で、最終的には自己責任で摂取しなくてはなりません。
アトピー性皮膚炎で、飲み薬やステロイド入りの塗り薬が処方されていますが、TUE 申請は必要ですか?
「ステロイド」には様々な種類がありますが、アトピー性皮膚炎の治療薬として使用されるステロイド外用薬は、「糖質コルチコイド」という炎症を抑える作用のあるステロイドです。2019 年版の禁止表国際基準では、「糖質コルチコイド」の全身投与(経口・静脈内・筋肉内・経直腸使用)は、競技会時にのみ禁止されていますが、外用薬などの局所投与は禁止されていませんので、ステロイド(糖質コルチコイド)外用薬は TUE 申請なく使用することができます。重症例などで、「糖質コルチコイド」の内服薬を、競技会前や競技会時にやむを得ず使用する場合には、全身投与とみなされますので、その場合には TUE 申請が必要となります。
 アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患において、痒み止めとして処方される内服薬も、禁止物質を含んでいる場合があるので注意が必要です。また、アトピー性皮膚炎に対して、漢方薬が処方されるケースもあるようですが、漢方の成分である生薬は、禁止物質を含んでいる場合があります。生薬の成分は大変複雑で、100%の安全は保証できず、漢方薬は TUE 申請もできません。ドーピング検査を受ける可能性のあるアスリートは、漢方薬は使用しないようにしましょう。
 なお、TUE 申請には厳しい審査があり、以下の4つの条件を全て満たしていないと承認されません。
  1. 使用しないと健康に重要な影響が出る
  2. 他に代えられる治療方法がない
  3. 健康を取り戻す以上に競技力を向上させない
  4. ドーピングの副作用に対する治療ではない
 事前に自分自身がドーピング検査を受ける可能性のあるアスリートであることを伝えた上で、治療目的で禁止物質・禁止方法の使用が検討される際には。主治医とよく相談しましょう。
認証マークがついたサプリメントは海外製のものでも安心して使用できるのでしょうか?
近年では、サプリメントへのドーピング 禁止物質の混入による、アンチ・ドーピング規則違反が多く報告されており、日本人アスリートでも、特に海外製のサプリメントによるドーピング陽性事例が発生しています。これまでは日本アンチ・ドーピング 機構(JADA)が、サプリメント認証業務を行ってきましたが、JADA マークは近い将来廃止される予定であり、現在では多くのサプリメントメーカーが、Informed Choice に代表されるような民間の企業からのサプリメント認証を受けるようになっています。認証マ ークがついている製品は、認証マークがついていない製品よりは安全性が高いですが、100%の安全を保障するものではありません。アンチ・ドーピング規則違反をおかすリスクが低くなるだけです。最終的には自己責任での摂取となることを忘れないようにしましょう。

栄養

ケガをした時の食事についてアドバイスをお願いします。 NEW
ケガは急性の場合を除き、トレーニング量やケアの問題だけでなく、食事からのエネルギー量や栄養素が不足している場合にも起こりえます。そこで、ケガをしてしまったときは、自分の食事内容を見直す機会ととらえ、身体作りのための食事内容へ変えていきましょう。
 はじめに食事で確認することは、毎食きちんと食べているかということです。アスリートは一般人に比べ、消費するエネルギーが多く、それぞれの栄養素の必要量も高まります。もし3食のうちの1食をおろそかにすれば、エネルギーだけでなく栄養素も必要量を確保することが困難となります。具体的に考えてみると、筋肉の回復のためには、たんぱく質の必要量が1日に体重1㎏あたり1.3〜1.7g/kg/日と示されています(国際陸上競技連盟 栄養コンセンサス2019年)。これを食事で考えると肉や魚・卵・大豆製品を使用した主菜を毎食しっかり摂取することが必要です。また腱や骨の材料となるコラーゲンを合成するためにはビタミンCの摂取が必須となります。ビタミンCは緑黄色野菜、かんきつ類やキウイなどに多く含まれるため、副菜は毎食、果物は1日2食以上摂取するとよいでしょう。そして骨を強く保つためには、主材料となるカルシウムを補給することが重要です。カルシウムは一般人でも不足しやすい栄養素です。アスリートではカルシウムの必要量は高まり1日1000mg程度の摂取が望まれます。これを補うためには、牛乳やヨーグルト・チーズなどの乳製品を1日3回程度(間食も含む)摂取し、加えて小魚や大豆製品、海藻類を1~2回程度、摂取することが必要です。このように主な栄養素だけで考えても、毎食の食事を考えて、きちんと食べることが大切であることがわかると思います。まずは基本に立ち返り「アスリートの食事の基本形」である、主食・主菜・副菜・果物・乳製品を揃えた食事をできるだけ毎食、そして日々継続することから始めてみましょう。
 またケガをして練習ができない場合には、体重が増えてしまうことも気になる点です。体重や体脂肪が増えてしまう可能性がある場合は、余分に摂取していると考えられる食品を上手にカットします。はじめにお菓子や清涼飲料水、次にマヨネーズやドレッシングやバターの量を減らし、肉は脂身の少ない部位を選びます。豚・牛肉の場合はバラよりもモモ肉を、鶏肉の場合はモモ肉では皮をとる、またはムネ肉やササミに変更するとよいでしょう。また調理法を揚げ物よりも炒め物や蒸し物にするなど、エネルギーが上手に抑えられるように工夫をしましょう。ただしケガの回復のためにはエネルギー不足にならないようにごはんなどの主食の極端に減らしすぎないことも重要です。アスリートにとって炭水化物はエネルギーとしては必要ですので、ごはんやパンは、少なくとも一般人と同程度はとり、全く食べないことがないようにしましょう。そのうえで体重コントロールは体重や体脂肪率を測定しながら、食材選びや調理法を調整するとよいでしょう。
プロテインは必要ですか?
プロテインは、筋量の増加を目的に選手が使用するサプリメントの1つです。たんぱく質の摂取が手軽にできるメリットがありますが、そもそも選手が摂取する必要のあるたんぱく質を食事で確保することは、そう難しくはありません。そのため、まずは選手として必要なたんぱく質の必要量を知り、現在の自分の摂取量を把握したうえで、プロテインが必要かどうかを検討しましょう。
 最新の国際陸上競技連盟の栄養コンセンサス(2019年)では、選手のたんぱく質必要量は1日に体重1㎏あたり1.3〜1.7g/kg/日、減量中の場合1.6~2.4g/kg/日としています(また2.5g/kg/日以上の摂取は有益ではないことも報告しています)。例えば、体重が60㎏の男性の場合、1日に必要なたんぱく質量は約80~105gとなります。そこで自分の摂取量が必要量を満たしているのかどうかを把握するためには、公認スポーツ栄養士に相談することをお勧めしますが、以下にたんぱく質摂取不足の簡易的なチェックを3つ示します。①主菜(肉、魚、卵、大豆製品のおかず)が摂れないことが多い、②一人暮らしを始めて食事がおろそかになりがち、③合宿や遠征、夏場で食べる量が減ってしまう、このようなことが1つでも継続して起こっている場合、たんぱく質摂取不足の可能性が考えられます。たんぱく質は食事を改善することで十分摂取できますが、自分の置かれた環境により上記のような状態が続く場合は、プロテインをあくまで“補う”といった観点で活用することもできます。
 しかし高校生までのジュニアの時期は、3食きちんと食事をする習慣をつけることが重要です。身体作りは多くの栄養素が関わっているため、食事からさまざまな食品を摂取することが大切です。そして家族や友人とともに食事を摂ることが、身体と心の健康を保つことにもつながります。
プロテインの選び方について教えてください。
プロテインの種類の違いによる検討では効果の違いについて一定の見解が得られていない現状です。
 まずはプロテインを含むサプリメントを使用前に、自分は本当に必要かを検討することが重要となります。そしてアンチ・ドーピングの観点で選択することを忘れてはいけません。特に海外製品のものにはラベルに表示のない物質が混入していたという事例もあり、安全といえる科学的根拠がない物質を摂取してしまう可能性があります。「自分はドーピング検査がないから、何を使ってもよい」というわけではなく、アスリートが口から入れるものには責任が伴います。そのため、サプリメントの安易な使用や他の人に勧められたという理由での摂取はやめましょう。そして使用前には、必ずその必要性や安全性(健康面、アンチ・ドーピングなど)についてスポーツドクター、スポーツ栄養士、スポーツファーマシスト(薬剤師)などの専門家に確認するようにしましょう。
元のご質問(保護者)
Q. 中学生から陸上を始め、現在 大学生です。種目は400mで 痩せ型です。
最近 子供から そろそろ プロテインを飲み始めようかなと相談を受けました。
プロテインの種類が多く どれを選んだら良いか分かりません。
推奨されているのがありましたら 教えて下さい。
跳躍選手はプロテインなどを飲んでも筋肉が増えたりして、跳べなくなると思いますが、プロテインは飲んだほうがいいですか?
筋力トレーニングとプロテイン摂取の組み合わせで、筋肥大や筋力の向上効果が期待されますが、全てのアスリートがプロテインを摂取する必要があるわけではありません。長距離や跳躍の選手では、プロテイン摂取による体重増加が逆にパフォーマンスを低下させる可能性があります。スポーツ栄養の基本は食事ですので、まずは通常の食事でタンパク質をしっかり摂取するように心がけましょう。
減量のための食事計画を教えてください。
痩せたからといって必ずしも競技力が高まるとは限りません。まずは本当に減量を行う必要があるのか、現状の体組成を確認し見極めることが必要です。そのうえで減量が必要な場合は、体重ではなく体脂肪量を減らすことを目的とし、減量計画を立てます。
 望ましい減量のペースは、除脂肪体重を落とさず体脂肪量を落とせるペース、1 か月に 1〜2 kg減程度です。急激な減量は体調を壊す危険があり、また厳しい食事制限がきっかけで摂食障害に陥る場合もあるため、時間をかけ段階的に体脂肪量を減らすことが大切です。仮に 1 か月に 1 kgずつ落とす場合、体脂肪1kgは約 7200kcal ですので、1 日約 240kcal 減となります。そのため食生活では、余分な間食(菓子やジュース類)と脂質の多い食品の摂取をはじめに見直します。揚げ物や炒め物とマヨネーズやドレッシングなどの回数を減らし、肉は脂肪の少ない部位を活用しましょう。また欠食せずに 3 食バランスよく食べること、エネルギー不足ならないように主食(ごはんやパンなど)や主菜(メインのおかず)を減らしすぎないことも、減量がうまくいくポイントとなります。
 減量中であっても、身体や心が健康な状態で練習に取り組めることが重要です。仮に体調不良や減量がうまくいかない場合は、ドクターや栄養士にご相談ください。
高校での部活の時間が不規則の場合、昼食を上手にとる工夫を教えてください。
高校では中学よりも練習量が増えるため、摂取エネルギーが消費エネルギーに追い付かずに、エネルギー不足が起こりやすくなります。そのうえ、高校生はまだ成長期で体格も変化し、骨量も増える時期のため、食事への配慮がとても重要です。またアスリートの昼食は、朝練習からの回復や夕練習に向けてのエネルギー補給となることからも、昼食のお弁当については次のことに気をつけるとよいでしょう。①弁当箱のサイズは小さすぎず、しっかり食べられるものを選ぶ、②ごはんは男性 300g、女性 200g 以上食べる(減量時は除く)③肉や魚や卵のおかずは 2 種類以上入れる、 ④色の濃い野菜のおかずを入れる、⑤果物や 100%果汁ジュースを摂取する、の 5つです。これらを基本とし、練習などで昼休みに食事の時間がとれない場合には、昼食を分けて食べる「分食」を考えます。例えば、3 時間目後の休み時間に 1 回目、そのあと昼休みの練習後に 2 回目を食べるなどの工夫をすることです。内容は短時間でも食べられるように“具がたっぷり入ったおにぎり(鮭や焼き肉など)”や“サンドイッチ”などを用意するとよいでしょう。また夕練習前後に補食として果物や 100%果汁ジ ュース、チーズ、購買がある場合は牛乳などを摂取することもおすすめです。このように練習等に合わせ、「分食」や「補食」を活用して食事を 1 日トータルで充実させることが、身体を回復させるために大切です。

貧血

鉄剤注射はアンチ・ドーピング規則違反になりますか?
鉄剤注射は鉄溶液が入った薬剤を、10〜20%のブドウ糖注射液で 5〜10倍に希釈し、ゆっくり静脈内に投与します。鉄剤自体は禁止物質ではなく、また 12 時間で 100mlを超えない注射や点滴は禁止されていませんので、アンチ・ドーピング規則違反にはなりません。ただし、鉄剤投与の基本は経口であり、鉄剤注射の適応は、消化器症状などの副作用が強く経口薬が使用できない場合、出血など鉄の喪失が多く、経口鉄剤で間に合わない場合、重症かつ緊急の場合になどに限定されます。安易な鉄剤注射の継続は、鉄過剰をもたらし、逆に体調悪化やパフォーマンス低下をもたらす危険すらありますので、医学的に正当な理由なく鉄剤注射を受けるのは絶対にやめましょう。
一般人とスポーツをしている人とで、貧血検査の基準は変わりますか?変わるのであればその基準を教えて下さい。ヘモグロビンや貯蔵鉄などの数値をお願いします。
赤血球の主成分であるヘモグロビンは、運動時に酸素を全身に運ぶ役割を果たしています。ヘモグロビンが低下した状態を「貧血」と呼び、貧血ではヘモグロビンによる酸素運搬能が低下するため、スポーツパフォーマンスが低下します。ヘモグロビン値は血液検査でチェックすることができますが、一般人とアスリートで、ヘモグロビンの基準値は若干異なるため、注意が必要です。
 国立スポーツ科学センターの様々な種目のアスリートの血液検査データから、日本陸連ではヘモグロビン基準値を男性アスリートでは 14.0~17.0g/dl、女性アスリートでは 12.0~15.0g/dl と定めています。よって、男性アスリートではヘモグロビン 14.0g/dl未満、女性アスリートではヘモグロビン12.0g/dl未満の場合に、貧血と診断されます。
 貧血には様々な原因がありますが、アスリートの貧血原因として最も多いのは、鉄欠乏性貧血です。体内の鉄動態を評価する上で最も有用なのは、血清フェリチン値です。フェリチンは貯蔵鉄のマーカーであり、鉄欠乏で低下し、鉄過剰で増加します。血清フェリチン値は、基準値の幅が広く、個人差も大きいため、アスリートにおける基準値の設定は難しいですが、日本鉄バイオサイエンス学会「鉄剤の適正使用による貧血治療指針」改訂第 3 版においては、フェリチン 12ng/dl 未満が一般人における鉄剤補充の目安とされています。

循環器

私は脈拍が安静時に 30 台で、多くても 40 台です。あまり気にしない方がいいですか?
アスリート、特に長距離などの持久系のスポーツをする選手では、心臓が大きくなり、安静時の 1 回拍出量が増え、脈が遅くなる(徐脈)という現象が起こります。これを一般的にスポーツ心臓と呼びます。一般成人の心拍数は 1 分間あたり 60〜100 程度ですが、スポーツ心臓になると、基準値を下回る徐脈となり、30 台や 40 台というケースもみられます。運動に応じて、心拍数が適切に増えるようであれば基本的には心配ありませんが、徐脈のすべてがスポーツ心臓で説明がつくわけではありません。中には潜在的な異常がトレーニングによって明らかになる場合もあります。心拍数だけではそれらを診断することはできませんので、スポーツ選手も定期的に心電図検査を含む健康診断を受けることをお勧めします。

整形外科

陸上競技では、どのようなケガが一番多いですか? NEW
陸上競技は走る、跳ぶ、投げる、歩くというさまざまな種目を含むので、種目毎に特徴があります。日本陸上競技連盟で実施したスポーツ外傷・障害調査によりますと、地区大会・県大会レベルの選手では肉離れと捻挫がケガの4−5割を占めております。肉離れの場合は太ももの裏、中でもその外側の大腿二頭筋という筋肉が最も多く、太ももの前がその次に多いという結果でした。また、程度も1週間程度で治る軽症なものから2~3か月を要する重症なものまであります。捻挫に関しましては4−5割は足首の捻挫でしたが、足首の捻挫は靭帯損傷であり、きちんと治療しないと靭帯が修復されず不安定性が残って、ますます捻挫しやすくなります。
筋肉の柔軟性は高い方が競技レベルは上がりますか? NEW
必ずしも柔らかければ柔らかいほどパフォーマンスが上がるわけではなく、硬さもパフォーマンスにプラスに働くこともあるという報告もあります。しかし、肉離れや筋肉の先の腱のケガをしてしまう選手は、その筋の柔軟性を良くしないとケガが再発しやすく、競技レベルも戻りません。柔軟性の指標には様々なものがありますが、関節の動きの範囲などは指標の一つです。また、個人個人の柔軟性はコンディションによっても変わりますから、自分の筋肉のコンディションの指標として柔軟性を確認することも大事でしょう。コーチやトレーナーと相談して、自分の体の特性や競技に合わせたストレッチが何か、いまいちど確認してみてください。
足の外脛骨と言われた場合、どのように対処すればよろしいでしょうか?
早期復帰のためにどのようにリハビリすればいいでしょうか
まず外脛骨とは足の骨の一つである舟状骨という骨に余分な骨がある状態で、発育期に痛みを出すことが多く、発育が完了すると多くは痛みがなくなっていきます。発育完了後も捻挫や打撲などがきっかけに痛みが出ることもあります。また足裏が平べったい扁平足のため足のアーチ(土踏まず)が低いと、外脛骨が引っ張られ痛みを出しやすいと考えられます。インソールやテーピングなどでアーチを支えることもあります。症状によって、治療はアイシングから手術まで幅広くありますので、専門医の診断を必ず受けてください。
外脛骨は、足の舟状骨の内側にあります。
外脛骨がある人は、内側縦アーチが低いことが多く、それによる足底の痛みを合併していることがあります。
腰椎分離すべり症の診断を受けたのですが、どのようなことに注意して練習すればよろしいでしょうか?
分離すべり症の多くは中学生頃に、繰り返しの捻りの動作やジャンプ動作で発生した腰椎(腰の骨)の疲労骨折が完全なヒビが入った状態になり、さらに腰椎間にある椎間板というクッションの損傷も加わって上下の腰椎がずれてしまうものです。腰椎の疲労骨折がおこるのは10代が大半ですが、小学生期の分離症は分離が治らないまますべり症に移行する場合があります。まずは専門医の診断を受けたのち、痛みが強い場合は安静にすることも大事ですが、現在痛みがないようであれば、今後の痛みの予防のためにも腹筋の強化、背筋の柔軟性向上を心がけ、腰椎が反らないようにしてもらい、太ももの前と後ろのストレッチをすることも大事になります。今一度動きのチェックもしてみましょう。
シンスプリントが治りません。いい治療法やストレッチはありますか?
シンスプリントはトレーニング負荷に伴い、脛の内側が痛くなるスポーツ障害です。足首を底屈する筋肉の収縮により骨の表面が引っ張られ、その牽引によって骨やその表面に炎症が起こります。原因としてはへん平足、足首の硬さ、脛の筋肉の筋力不足、グランドが硬い、靴のクッションが弱いことなどが挙げられます。そのため、足首周りのストレッチ、筋力強化、練習環境の見直し、靴の見直しなどから始めてみることをお勧めします。しかし、疲労骨折との鑑別なども必要なため、一度スポーツを専門とする整形外科医にみていただくことをお勧めします。
アキレス腱の怪我を治す方法はありますか?
アキレス腱の痛みには、腱自体に傷ができて痛む場合、腱とその周りの擦れあいで痛む場合(腱周囲炎)、アキレス腱とかかとの骨との摩擦や衝突で痛む場合(腱付着部炎)とがあります。腱自体の傷の場合は一定期間強い負荷をかけすぎないようにして修復を待つ必要があり、傷が大きいのに無理をすると完全に切れることもあるので要注意です。腱周囲炎は手首などの腱鞘炎と同じで練習による摩擦を減らし炎症を抑える治療をします。腱付着部炎は腱と骨との間にある滑液包というクッションの炎症を抑える治療をします。こうしたアキレス腱のけがの背景には足首の動きの問題、靴が合っていないこと、練習環境などが考えられ、これらを見直してみる必要があります。痛みが長期化していたり、痛みが強い場合は一度スポーツを専門とする整形外科医にみていただくことをお勧めします。
オスグッドと言われましたが、どのように対応したら良いですか?
オスグッド病とは成長期のスポーツ障害の一つで、骨が急激に成長する時期に筋肉や腱が同じペースで成長が出来ず、前ももの筋肉(大腿四頭筋)にすねの骨の成長軟骨部(脛骨粗面部)が引っ張られて痛みが出ることが原因です。お皿の下の方の痛みが主な症状ですが、出っ張りを伴うことも多々有ります。安静・アイシングも大事ですが、大腿四頭筋のストレッチが非常に重要です。引っ張られた骨が遊離してしまうと分離した骨片となり成長期が終わっても痛みが続いてしまうことがあります。一度スポーツを専門とする整形外科医にみていただくことをお勧めします。
生理は来ているのに疲労骨折が多い、また坐骨神経痛や腰痛も常に症状としてある。これは骨格の問題と一つくくりにしていいのか
疲労骨折やさまざまなスポーツ障害の原因には、骨格自体の問題や筋力、筋肉の柔軟性、関節の動き、フォームなどいろいろな原因が考えられます。種目の特有の動きに理解のある専門家やスポーツ専門医と相談し、けがを引き起こす可能性のある原因を探索するのがよいでしょう。
肉離れを早く治したり、予防するにはどのようにしたら良いですか?
肉離れはストレッチをした時の痛みなどで重症度がある程度判定でき、治り具合の判断にもそれが利用できます。ストレッチ痛がある場合はまだ復帰が難しい状況です。安静・飲み薬・塗り薬・筋力強化・ストレッチ・マッサージなどは治療・予防方法として挙げられます。まずはスポーツを専門とする整形外科医に診断をつけてもらいましょう。
剥離骨折を早く治したいです、早く治りやすい方法を教えてください。
剥離骨折は正式には“裂離骨折”といいます。骨折なので、治るまで、ある程度の時間は必要です。定期的に X 線写真などで画像検査を受け、整形外科医からの指示は守ってください。また、それに至った原因もしっかりと相談し、再発予防に努めてください。
椎間板ヘルニアの治療や対策について教えてください
今回は陸上競技者に最も多くみられる腰椎椎間板ヘルニアに関して回答します。椎間板ヘルニアは背骨(椎骨)の間にある椎間板というクッションが後方に飛び出して神経を押すことで発生する腰痛や臀部から脚にかけての痛み、しびれが主な症状です。アスリートの腰部には強い負荷が加わるために椎間板ヘルニアが発生することが稀ではありません。そのため、そもそも症状が椎間板ヘルニアによるものかどうかを慎重に見極める必要もあります。MRI でヘルニアがある=症状の原因がヘルニア、ということにはなりません。
 もし、ヘルニアが原因の場合も、多くは悪化させる動作やトレーニングを避けることで症状が落ち着きます。重い重量での筋力トレーニングや着地衝撃を加えるような補強トレーニングも暫く抑え、症状の軽減に合わせて徐々に腰への負荷を戻していきます。
練習で走ってる途中に肉離れしてしまいました
早期復帰のためにどのようにリハビリすればいいでしょうか
肉離れは重症度により、1 型から 3 型まで分類されており、安静、湿布やぬり薬、内服薬などの治療法が必要になりますので、医師の診断と治療を受けた後、指導者やトレーナーともしっかり相談してから復帰までの計画を立てましょう。競技に復帰するときは、ストレッチした時の痛みがとれて、反対側とほとんど変わらない状態になるまでジャンプやダッシュは避けるべきでしょう。リハビリの方法は部位や重症度にもよりますが、早期復帰・再受傷の予防のため、受傷部位やその他の部位の筋力強化・柔軟性が求められることがありますので、必ずスポーツドクターの診察を受けましょう。以下、もっとも多い 2 型に関して説明させていただきますが、個人差がありますのでご注意ください。一般的には受傷後2週でジョギングを許可され、3−4週から流しが出来たら、平均6週で競技復帰することが多いです。焦って復帰した場合は再受傷のリスクが上がるので十分に気をつけて復帰しましょう。

婦人科

生理痛がひどく、試合で動けないこともあります。どのように対応したら良いでしょうか。
大事な試合やポイント練習で生理(月経)が重なるのは非常に辛いことと思います。痛みに関しては痛み止めを使用するのも一つの手段ですが、月経痛を軽くしたり、月経時期を調節したりするためにピルを内服することも選択肢に入れてはどうでしょうか。アスリートにもピル服用者が増えてきました。一度、産婦人科で相談することをお勧めします。
試合で 400m やマイル、練習で走り終わった後、下着に血が付いており始めは生理かとおもったけど、それが試合後何回も続くのですが、なんでしょうか?
激しい運動後の性器出血は時々相談として寄せられる症状ですが、まずはポリープなどの子宮の疾患がないかどうか、婦人科で診察を受けることをおすすめします。特に問題がないと言われた場合は、運動刺激が子宮内膜の剥脱、子宮筋の収縮、ホルモン変動などを引き起こした可能性を考慮することになります。また内科も受診してください。
今現在高校生以上の競技者のどのくらいの人がピルを飲んでいますか?
2016 年のリオ五輪代表女子選手(全競技)のピル内服率は約 25%であったと報告されています。そのほとんどは、月経困難症(生理痛など)の症状を緩和したり、月経(生理)の時期をずらすことを目的とした使用です。ただし、陸上競技者に限定し、トップアスリート以外の選手も含めれば、もっとピル内服者の割合は少ないと予想されます。

内科

近医で鉄欠乏性貧血と診断され,鉄剤を内服し,フェリチンと血清鉄は正常レベルまで回復しましたが,ヘモグロビン(Hb)だけ低い状態が続いており,なかなか上がりません.原因としてどのようなことが考えられますか? NEW
鉄欠乏性貧血では、通常、一定期間の鉄剤内服によって、最初にHbが上昇し、その後、血清鉄、フェリチンの順に回復します。血清鉄とフェリチンが正常化しているにも関わらず、Hbが上がらない原因として、まずは“鉄欠乏性貧血以外の貧血”の可能性が考えられます。アスリートの貧血としては鉄欠乏性貧血が最も多いですが、貧血にはその他にも、溶血性貧血、巨赤芽球性貧血、腎性貧血など、様々な種類があります。稀に、骨髄の病気によっても貧血が起こることもあります。それらは血液検査によって、大体の鑑別ができますので,まずは鉄欠乏以外に、貧血となる原因がないか、医師にチェックしてもらいましょう。なお、特に持久系種目のアスリートでは、運動による循環血液量が増加し、“希釈性貧血”によって、見かけ上Hbが低下する場合があります。その場合には病的意義はありません.Hbが低値であっても、運動時の息切れや易疲労感などの自覚症状がなく、パフォーマンスの低下がない場合には、血液希釈の可能性も考えられます。
 また、「ヘモグロビン=ヘム(鉄)+グロビン(タンパク)」であり,Hbの産生のためには鉄だけでなく、タンパク質もしっかり摂取する必要があります。加えて、アスリートにおいては、「エネルギー不足」が原因で、貧血が起こりうる可能性も示唆されています。「エネルギー不足」は、貧血の他にも、骨、月経、代謝、免疫機能、心血管系などの生理機能への悪影響を引き起こすと考えられています。国際オリンピック委員会は、こうしたアスリートのエネルギー不足に関して、「スポーツにおける相対的なエネルギー不足(Relative Energy Deficiency in Sports;RED-S)」という概念を提唱しています(Br J Sports Med. 2014 Apr;48(7):491-7)。運動によるエネルギー消費に見合っただけの食事がしっかり摂れていますか?スポーツ栄養士などとも相談しながら、自分に必要なエネルギーおよび栄養素をしっかりと食事で摂るように心がけましょう。
私が通っているクリニックでは、血液検査で貧血があった場合、症状があれば鉄剤注射をされます。もちろん経過を見るための血液検査も実施し、貧血症状が回復すれば内服の鉄剤に切り替えています。このようなケースもやはり鉄剤注射は控えた方が良いのでしょうか?
鉄欠乏性貧血の治療としては、鉄剤の投与を行いますが、静脈内投与(鉄剤注射)は鉄過剰のリスクを伴うため、たとえ貧血が高度であっても、日常生活に支障がない限り第一選択は経口鉄剤です。経口鉄剤でも、投与開始後には比較的速やかに自覚症状は改善します。症状の有無で投与方法を決めるのではなく、副作用が強く経口鉄剤が使用できない場合、吸収が極めて悪い場合、鉄損失が多く経口では間に合わない場合など、重症かつ緊急の場合に限って鉄剤注射が治療の選択肢になります。医師とよく相談することをお勧めします。
(参考資料:鉄剤の適正使用による貧血治療指針 改訂第 3 版)
中学生の息子が長距離をやっているのですが、5 キロ以上の距離を走ると、息苦しさがひどく、苦しくなるなってくるようです。トレーニングが足りないからだと言われていますが、走れば走るほど辛いようです。対応法を教えてください。
練習不足で基礎体力が低い場合や、怪我からの復帰直後で持久力が落ちている場合などでは、ジョギング程度の軽めの運動でも、息切れや息苦しさを感じることがあります。しかし、運動時にそうした呼吸器症状が出る選手の中には、「運動誘発性喘息」や「運動誘発性気管支攣縮(れんしゅく;痙攣して細くなること)」が隠れているケースがあります。それらの疾患では、空気が冷たく乾燥した冬場などに、激しい運動をした際に、息苦しさや咳などの症状が出やすいことも特徴です。「運動誘発性喘息」や「運動誘発性気管支攣縮」であれば、気管支を拡張させる吸入薬などを使用することで、症状を緩和できる可能性があります。ただし、喘息薬はドーピングの禁止物質を含んでいることがあるので、喘息薬を使用する場合には、使用可能な薬剤を選択し、許可量を超えない範囲で使用するよう気をつけましょう。
 喘息以外に、運動時の息苦しさをきたす疾患として、貧血も鑑別に挙がります。スポーツ貧血として、最も多いのは鉄欠乏性貧血です。アスリートは鉄需要と鉄消費が大きいため、食事で十分な鉄が摂取できていないと、鉄欠乏をきたします。鉄は、酸素の運搬役であるヘモグロビンの成分であるため、鉄不足はヘモグロビンの低下(貧血)をもたらします。貧血状態では、ヘモグロビンによる酸素運搬能が低下するため、軽めの運動でも息切れを自覚しやすくなります。
 息切れの他に、動悸や胸部不快感、脈が飛ぶなどの症状がある場合には、不整脈の可能性も考えられます。不整脈の中には、運動で発作が誘発されるタイプ(運動誘発性不整脈)もあるので、その場合には運動負荷心電図などの検査が必要となります。
 症状だけでそれらの疾患を鑑別することは難しいですので、一度医療機関を受診し、医師に相談し、検査を受けることをお勧めします。
糖尿病で通院していますが、HbA1c が8%前後です。主治医からは HbA1c が8%を超えると運動するなと言われていますが、趣味のジョギングも控えた方が良いでしょうか?糖尿病患者が運動する際の注意事項などあれば教えてください。
運動時にはブドウ糖がエネルギー源となるため、運動を行うと血液中のブドウ糖が利用され、一時的に血糖値が低下します。これを「急性効果」と呼びます。運動を長期的に継続できるようになると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きが良くなり、血糖がさらに下がりやすい体質になります。これを「慢性効果」もしくは「積み重ね効果」と呼びます。糖尿病のコントロールを良くするためには、食事療法のみならず、定期的な運動療法を実施することがとても重要なのです。
 しかし、糖尿病の合併症の有無や程度によっては、運動療法を控えた方が良い場合や、軽めの運動にとどめておいた方が良い場合があります。例えば、増殖網膜症と呼ばれる眼の重度な合併症がある患者では、強い運動によって眼底出血が悪化し、失明に至ってしまう危険性があります。また、糖尿病性腎症と呼ばれる腎臓の合併症が進行し、腎不全に至っている患者では、運動療法の効果や安全性は確立されておらず、強度が低めな運動が望ましいとされています。糖尿病患者、特に腎症に至っている患者では、運動時に狭心症や心筋梗塞などを発症するリスクが高いですので、運動開始前に心臓の評価を受けた方が良いでしょう。同様に、神経障害を有する糖尿病患者では、運動時の血圧変化や不整脈が起こりやすいですので、注意が必要です。
 その他の注意事項として、インスリン注射やスルホニル尿素薬というタイプの内服薬を使用している場合には、運動により低血糖が誘発される恐れがあります。運動はなるべく血糖値が高い食後に実施し、運動時には低血糖対策としてブドウ糖を持ち歩くようにしましょう。運動前はインスリンの量を減らすなどの工夫が必要となることがあります。
 HbA1c の数値で運動の可否が決まるわけではありませんが、糖尿病合併症予防ためには HbA1c 7%未満を目指す必要があります。HbA1c 8%台は、前述したような合併症のリスクも高い状態と言えるでしょう。ジョギングは比較的強度が高めの運動ですので、自覚症状の有無に関わらず、運動開始前にその内容や強度について、必ず主治医に相談しましょう。
私は運動誘発性喘息を患っており、負荷の高い練習をすると呼吸が苦しくなってしまいます。運動誘発性喘息の予防法と対処法を教えてください。
運動による過換気や冷たく乾燥した空気を吸うことで、喘鳴(ヒューヒューすること)や咳などの喘息症状が出る病態を「運動誘発性喘息 exercise induced asthma;EIA」と呼びます。
 EIA の予防策としては、まずは冷たく乾燥した環境下での運動を避けることが挙げられます。運動時には、十分なウォーミングアップを行うことも発作予防に有効とされています。また、風邪にかかると、気道の過敏性が長引いてしまうため、風邪の予防をしっかり行うことも重要です。
 これらの予防でも呼吸が苦しくなるようであれば、医師に相談してみましょう。薬物療法としては、運動開始 10〜15 分前にサルブタモールのような短時間作用型の β2 作用薬(気管支拡張薬)を吸入しておくことで、発作の予防や、症状を緩和できる可能性がありますが、頻回に使用している場合は,耐性(薬が効かなくなること)が生じる恐れがあるため、ステロイド吸入+長時間作用型の β2 作用薬吸入の併用への移行を検討する必要があります。ただし、喘息薬はドーピングの禁止物質を含んでいることがあるので、喘息薬を使用する場合には、使用可能な薬剤を選択し、許可量を超えない範囲で使用するよう気をつけましょう。
病院でもらう鉄剤の処方薬と、薬局で買える鉄のサプリメントはどう違うのか教えてください。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準 2015」では、推奨される 1 日の鉄摂取量は 12~14 歳男子で 11.0mg、成人男性で 7.0mg~7.5mg、12~14 歳女子で 14.0mg、成人女性で 10.5mg~11.0mg とされ、また耐用上限量は成長期から成人期で 40~50mg/日に設定されています。
 市販の鉄サプリメントの錠剤やカプセルには、1 個あたり数 mg~10mg 程度の鉄が含まれており、1 日あたりの推奨量はサプリメントの鉄量として 10mg 前後に設定されている場合が多いようです。サプリメントは不足するものを補うのが基本的な使い方です。
 一方、病院から処方される鉄剤は,あくまで鉄欠乏性貧血の治療目的で使用される薬剤であり、1 錠あたり 50mg~100mg と,サプリメントに比べて高用量の鉄を含んでいます。日本鉄バイオサイエンス学会の「鉄剤の適正使用による貧血治療指針」においては、鉄欠乏性貧血の治療では,成人の場合は 1日 50mg~210mg の鉄剤を経口投与することが推奨されています。
 鉄分を多く含んだ食品を意識的に摂ることで、食事だけで 20mg 前後の鉄を摂取することは十分可能であり、むやみに鉄剤やサプリメントを摂るのではなく、まずは食事の改善を行うようにしましょう。それでも血液検査で鉄欠乏や貧血になってしまう場合に、サプリメントの使用や、医師の管理下で経口鉄剤の投与を検討すべきです。もちろん、貧血に陥った原因をきちんと調べてもらいましょう。
 人体には鉄を積極的に排泄するメカニズムがないため、鉄欠乏や貧血がない人が、高用量の鉄を長期的に摂取したり、安易な鉄剤の静脈注射を継続したりすると、肝臓や心臓などに鉄が貯まり、鉄過剰による臓器障害や組織障害をきたすリスクが高くなるため大変危険です。サプリメントを使用する際にも、過剰摂取にならないよう,1 日10mg 程度の補充に留めておきましょう。

メンタル

練習後、スーパーに行くと必ず余計なもの、例えばお菓子などを買い込み、帰ってすぐに食べてしまいます。嘔吐はしませんが、体重が増える一方です。これは摂食障害なのでしょうか。練習は1日10-20kmほど走行しています。 NEW
ご質問内容だけでの診断はできませんが、食べることがコントロールできず、困っておられる状況が伝わってきます。アスリートにとって食事は非常に重要ですが、様々な理由からコントロールがうまくいかなくなることがあります。
 ① 練習後、自然な空腹感によってつい余分な食べ物を買ってしまう。
 ② 心理的ストレスを発散するために無茶食いの習慣がついてしまう。
 ご自身は、どちらに近いと感じるでしょうか?
 ①の場合、空腹感が強まるタイミングを見越して、計画的に補食を摂る方法も良いかもしれません。アスリートの場合、食事を食欲まかせにしてしまうと栄養の過不足が生じやすくなります。一日に必要な栄養を計画的に摂る習慣を身につけましょう。
 ②のように心理的ストレスによって衝動的に食べてしまう場合は、ストレスを緩和するほかの方法を見つけることに挑戦してみてはいかがでしょうか。小さな事でも良いので、自分が心地よくリフレッシュできる手段をできるだけたくさんメモに書き出してみましょう。その中から、「今日はこれとこれ」と選んで意識的に回復を図るのも良い方法です。音楽を聴いたり、好きな匂いの入浴剤を入れてお風呂に入ったり、読書や雑誌を見たり、趣味の時間を持つなど、自分で自分の機嫌を良くするようにして良いコンディションを作っていくことも大切です。また、誰かに話を聞いてもらうことも効果的なストレス発散手段になります。家族や先輩など身近な相手に少しでも話を聞いてもらうことが大きな助けになるかもしれません。
走るのが嫌になって、辞めたいけど辞められず、気持ちが切れてしまっています。どうすれば気持ちが元に戻るでしょうか?
辞めたいけど辞められない状況とのこと、とてもつらい状況にあることと思います。そのような状況で無理に競技を続けることは健康的とは言えませんし、心身の不調にもつながるかもしれません。
 陸上競技は誰かに強制されて取り組むものではありません。無理に気持ちを戻そうとしなくても良いのではないでしょうか。
 多くのアスリートにおいて、自分がなぜ競技に取り組むのかを考えるタイミングが何度か訪れます。自分はなぜ走るのか、自分の心と向き合って考えてみてはいかがでしょうか。
 そしてまた走りたいと思えたら、その時に走り始めてはいかがでしょうか。
 あなたから、親、友人、先生などにじっくりと話を聞いてもらいましょう。なぜ辞めたくなったのか、気持ちが切れたのか、の原因を見つけることも成長していくうえで大切なことです。
 ※ 特にジュニア世代の競技現場では、周囲が気づかないうちに本人に競技を強いてしまっている状況が生じることがあります。そのような状況になっていないか、周囲の大人が注意を払っていくことも大切だと思われます。
ストレスがたまると過食してしまうのですが、避ける方法はありますか?
ストレスへの対処法が、いまは過食になっているのですね。過食をしている時だけは嫌なことを忘れられても、あとでつらくなってしまう状況があるのだろうとご質問から想像します。
 簡単ではないかもしれませんが、過食以外のストレス対処法をなるべくたくさん見つけていけると良いかもしれません。誰かに話を聞いてもらったり、自分の好きな CD を聴く、ゆっくりハーブティーをいれる、お風呂の中で雑誌を読む、など、ささやかな事でもいくつか自分なりの方法を持っておくと、つらい時の助けになります。また、誰かと連絡を取ったり、話を聞いてもらうことで、自分の考えやいろいろなストレスを整理することができる場合もあります。一人で悩まず、まずは身近な人に相談してみましょう。また、精神科医や心療内科医、臨床心理士などの専門家を利用することが助けになるかもしれません。
体重が増えるのが嫌で、炭水化物を食べるのが怖くなり、ほとんど炭水化物を食べなくなりました。そのせいか生理が 1 年程きておらず、不安になっています。食べないといけないのはわかっていますが、太るという恐怖が強い為、吐いてしまうこともあります。普通にご飯を食べたいです。でも太りたくないです。どうしたら良いでしょうか。
月経が 1 年も止まっているということは、エネルギー不足の状態が続いている可能性が高いと思われます。太りたくないこともとてもよくわかりますが、栄養が足りない状態で競技を続けることは危険ですし、良い成績も望めません。順番としては、太らないようにすることよりも、しっかり食べて健康でいることが大切です。炭水化物も三食欠かさず摂るようにしましょう。…とはいえ、わかっていても食べられない、吐いてしまうつらい状況なのだと思います。一人で乗り越えるのは難しい場合もあります。勇気がいると思いますが、家族やチームスタッフ、身近な人に相談してみましょう。また、精神科医や心療内科医、臨床心理士などの専門家をぜひ利用してみてください。きっと力になってくれることと思います。
故障による長期離脱をして、その間に体重が大幅に増えてしまいました。指導者から痩せれば走れるようになると言われますが、それがストレスとなり走ることが楽しくなくなりつつあります。 シーズンに入って結果を残したい気持ちはありますが今の状況で何をすべきなのか、どうしたらいいのか分かりません。
故障をして走れなくなると、体重のコントロールが難しくなることがあると思います。いつもと同じように食べると体重が増えてしまう場合もありますが、過度に食事量を制限すると走れないストレスと食べられないストレスが重なり、摂食障害を起こしてしまうことがあります。
 走れない時期はつらいと思いますが、以下の STEP1→3のように、その時期ごとに優先すべきことを意識して回復に取り組んでみてはいかがでしょうか。
〔STEP1〕この時期は故障の治療に専念しつつ、復帰後のレベルアップにつながるような故障箇所以外の補強トレーニングに取り組んでみるのも良いかもしれません。
〔STEP2〕故障が治癒してきたこの時期には、無理のないペースで体重調整や体力回復に取り組みましょう。以前よりも体重がある状態でハードトレ―ニングを行うと新たな故障を招くことがあるため、バイクやプールでのトレーニングなど接地の衝撃を避けられるエクササイズを活用することも良いかもしれません。
〔STEP3〕順調にコンディションが戻ってくれば本格的なトレーニングが再開できます。
故障が再発しないような練習計画を考えて取り組んでいきましょう。

コンディショニング

現在高校一年生の者です。中学生の時は 200m で全中を切るくらいの競技レベルでしたが高校生に入ってから自己ベストが一度もでません。小学生から陸上を続けてきて自己ベストが出なかった年は初めてです。高校 1 年生はこんなものなのでしょうか?
高校1年生で、成長期であることなど、身体の成長に伴う変化(筋肉や骨格)によって、瞬発的な力の発揮が、合わなくなっていることが考えられます。また、成長の段階は人それぞれ、個人差があります。身体が大きくなるとともに、筋肉や骨も大きくなり、走るフォームも変化していきます。そのため、毎年、必ずしも自己ベストが出せるとは限らない場合もあります。焦らずに、大きなケガに注意しながら、身体の状態を知り、じっくり慌てずにトレーニングする時期も必要になります。
 また、高校1年生は、中学3年間から、日常の生活環境も大きく変化すると思います。精神的な変化も大きい年齢だと思いますので、将来のベストパフォーマンスを目標に、ゆっくり身体づくりに専念してみましょう。
 しかし、身体が重い、だるいという症状がある時は、疲労が溜まっている場合や、時には、貧血などの状態が考えられます。気がかりな場合は、指導者の先生やご家族に相談し、医師の診断を受け、適切な処置について相談しながら競技を続けることが、将来の自己ベストを出す近道につながるでしょう。
 慌てず、身体との対話を大切にしながら、競技生活を続けていってください。

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