2016.07.12(火)大会

<レポート>第29回南部忠平記念陸上

第29回南部忠平記念陸上が7月10日、札幌市の厚別公園競技場で開催され、6月末に行われた日本選手権でリオデジャネイロ五輪代表入りを果たした選手が出場したほか、追加選出を期して五輪標準記録突破を目指す選手も多数出場しました。当日は競技が開始される直前から雨模様となるあいにくのコンディション。さらに低温、強風と、記録を狙うには厳しい条件となったこともあり、残念ながら派遣標準記録、五輪参加標準記録の新たたな突破者は現れませんでした。

■男子棒高跳は五輪代表の山本選手・荻田選手が悪天候下で5m60
男子棒高跳には、五輪代表に選出されている山本聖途選手(トヨタ自動車)と荻田大樹選手(ミズノ)が出場。ともに5m50から競技を開始しました。この高さを山本が1回で、荻田選手は2回目にクリア。5m60をパスして5m70に挑みましたが、ともに越えることができず、同記録ながら試技内容の差で山本選手の優勝となりました。なお、日本選手権に優勝し、1週間前の日本大学記録会で派遣標準記録および五輪参加標準記録である(5m70)を上回る5m75を跳んだ澤野大地選手(富士通)は棄権しました。

【選手コメント】
・山本聖途選手:オリンピックを想定してどんな天候でも跳べるようにと臨んだ。この天候で5m50を1回で跳べたことは評価している。身体の状態はすごくいいので、本番に向けて、助走の最後のスピードをもっと上げられるように、しっかりとトレーニングしていきたい。
・荻田大樹選手:強風下で跳んだ織田記念で助走から踏み切りの部分のバランスを崩し、その狂いの修正に苦しんだ。時間はかかったが、1つ1つの動きを見直し、積み重ねるように改善に取り組み、ようやく「これだ」という感覚が戻ってきている。本番まで精度を高めていきたい。
・澤野大地選手:招待していただいたので出場したかったが、2週続けて負荷の高い試合を行っていたため、この天候(雨、低温)下ではケガの恐れもあると判断して棄権させていただいた。現段階では(代表選出を)待つ身だが、万全の状態で臨めるよう準備したい。

男子三段跳は山下選手が優勝
男子三段跳には、五輪代表に選出されている長谷川大悟選手(日立ICT)が出場したほか、日本選手権を制した山本凌雅選手(順天堂大学)が参加標準記録(16m85)の突破を、5月の関東インカレでその16m85を跳んで記録的には条件を満たしながら日本選手権で3回ファウルに終わったために現段階では選出されていない山下航平選手(筑波大学)が再度記録を狙って、競技に挑みました。しかし、悪天候の影響もあり、3人とも1回目の試技でマークした記録を伸ばすことができず、16m18(+2.1)の山下が優勝、16m01(+1.4)の山本が2位、長谷川は15m89(+1.2)という結果にとどまりました。

【選手コメント】
・長谷川大悟選手:今回は、課題の確認や助走の状況を把握したいと思って臨んだ。(ベストの16m88を跳んだ)織田記念以降、助走スピードを高めることにポイントを置いてきた。今日は記録的には今ひとつだが、助走のリズムは日本選手権よりも固まってきたと感じている。やるべきことはわかっているので、あとはしっかり跳躍を積んで8月に備えたい。

■女子100mH、男子走幅跳は追い風に苦しむ
男子200mと110mH、女子100mと100mHは、決勝に加えて、記録に挑戦するチャレンジレースが設けられた今大会。女子100mHで日本選手権を獲得している木村文子選手(エディオン)が五輪参加標準記録で日本記録(金沢イボンヌ、2000年)でもある13秒00の突破に挑みました。1レース目で追い風参考記録(+3.1)ながら13秒06(+3.1m)をマークした木村選手は、2レース目は13秒12(+4.3m)でフィニッシュ。記録の突破はなりませんでした。なお、両レースとも木村選手は2着。韓国の鄭蕙林選手が12秒86、12秒91で先着しています。
男子走幅跳は1回目に7m79(+2.8)を跳んだ猿山力也選手(モンテローザ)が首位で前半を終えましたが、4回目に入って城山正太郎選手(東海大北海道)が7m84(+2.1)で逆転すると、さらに日本選手権優勝の嶺村鴻汰選手が(モンテローザ)が7m85(+3.8)をマークして、これを上回る展開となりました。しかし、20℃を切る気温と強い追い風に各選手とも苦労し、その後は記録を伸ばすことができません。城山選手は追い風1.4mのなか最終跳躍で8mを大きく超えるジャンプを見せたものの無念のファウル。嶺村選手の優勝となりました。

【選手コメント】
・木村文子選手:(参加標準記録が破れず)悔しいけれど、4年間やってきたことは間違いではなかったと実感している。やることをやれば12秒台は出る。それを証明するためにも自分がまず12秒台の世界に行くことをやり遂げたい。チャレンジし続ける。

■村上選手は1m19cm、北口選手は1m16cm届かず
気象状況を考慮し、競技開始時間を2回変更しての実施となった男女やり投。五輪代表に選出されている新井涼平選手(スズキ浜松AC)と海老原有希選手(スズキ浜松AC)のほかに、男子は2009年ベルリン世界選手権銅メダリストの村上幸史選手(スズキ浜松AC)、2012年ロンドン五輪ファイナリストのディーン元気選手(ミズノ)が、女子は日本選手権を制した宮下梨沙選手(大体大TC)、5月のゴールデングランプリで61m38のジュニア日本記録を樹立している北口榛花選手(日本大学)が出場し、参加標準記録(男子83m00、女子62m00)の突破にチャレンジしました。
男子やり投は2回目に82m54をマークした新井選手が優勝。村上選手は3回目に今季ベストで2013年4月に自己記録(85m96)を更新して以降の最高記録となる81m81を投げましたが標準記録の突破には届きませんでした。女子やり投を制したのは北口選手。4回目に60m84をマークしました。しかし、大学で指導を受けている村上選手同様にわずかに届かず、標準記録の突破はなりませんでした。2位は宮下選手(55m88)。海老原選手は54m29にとどまり3位という結果でした。

【選手コメント】
・新井涼平選手:1投目の入りはよかったが、2投目で修正できて82m54。しかし3投目で(動きを)一気に崩してしまった。練習でできていた技術もできず、やりたいことができずに終わってしまった。五輪は失敗できない試合。自分の場合は、ケガぎりぎりで戦わないと決勝に残るのもやっとだと思う。あとは練習を積みまくるしかない。日々、攻めて、しっかりとやっていきたい。
・村上幸史選手:やれるだけのことはやった。80mを超えたのは2014年の仁川アジア大会以来。結果として83m00は超えられなかったわけだが、不思議と悔しいというよりは、出し切ったという気持ちと、清々しさと、もうちょっとできそうかなという気持ちも芽生えてきたりしている。(時間変更に関しては)雨のなかで試合をせずに済むようにとの配慮。運営サイドの方々に感謝したい。
・海老原有希選手:1回目に右膝が内側に入りすぎて、それが痛みとなったため、まとまりのない投げになってしまった。この痛みは長引くものではない。一番大切なのは投げる姿勢をちゃんと整えること。それできれば投げられる。7月中に技術的なポイントを完成させて、あとは痛みが出ないように仕上げていきたい。
・北口榛花選手:(標準記録を突破できず)悔しい。しかし、ここでもう1回60m台を投げられたことで、ゴールデングランプリの記録(61m38)がまぐれじゃなかったことは示せたと思う。(U20世界選手権への)出発までもうすぐ。この大会は、メダルを狙えるし、取りたいと思っているので、しっかりと気持ちを切り替えたい。

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■右代選手、地元で復調ぶりを披露
この大会には、十種競技で代表に選出され、日本選手団の旗手も務めることになった右代啓祐選手(スズキ浜松AC)も、走幅跳とやり投に出場しました。“地元中の地元”ともいえる厚別競技場で、走幅跳は6m83(+2.3)、やり投は58m18をマーク。6月上旬に棒高跳の練習で負った左手親指骨折と左膝裂傷の完治を印象づける元気な姿を披露しました。

【選手コメント】
・右代啓祐選手:ケガをした段階では医者から全治3カ月と言われていたが、そこを1カ月で治すことができた。自分のなかではケガはもうなかったこと(笑)。万全の準備で本番に備えたい。また、光栄なことに旗手にも選んでいただいた。特別な緊張感があるであろう開会式を試合の前に経験しておけば、大会には精神的に余裕をもって臨めるはず。しっかりと役目を果たしたい。

(文:児玉育美/JAAFメディアチーム)

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