2025.05.07(水)選手

【記録と数字で楽しむセイコーGGP2025】女子走高跳:37年ぶりに世界記録を更新したマフチフが国立競技場に登場!!



5月18日(日)に国立競技場で行われる「セイコーゴールデングランプリ陸上 2025 東京」。

世界陸連が、「コンチネンタルツアーゴールド」として開催する国際大会だ。
ワールドランキングにおいて「Aカテゴリー」に位置付けられており、順位に応じて付与されるポイントが非常に高いため、9月に国立競技場で開催される「東京世界選手権」への出場を目指す選手にとって非常に重要な大会である。

ここでは、現地観戦やTV観戦のお供に特に注目される種目について「記録と数字で楽しむGGP2025」をお届けする。
なお、原稿の締め切りの関係で、2025年シーズンの試合結果や情報は4月30日までに判明したものしか盛り込めていないことをお断りしておく。
また、記事の内容にはこれまでの各種競技会のこのコーナー(「記録と数字で楽しむ・・・」)で紹介したものもかなり含まれるが、データはできる限り最新のものに更新した。

・記録や情報は、原則として4月30日判明分。
・年齢は、2025年5月18日現在のもの。
・文中、敬称略。

※最新出場選手リスト(随時更新中)
https://goldengrandprix-japan.com/2025/athlete/



37年ぶりに世界記録を更新したマフチフが国立競技場に登場!!

2024年7月7日、パリでのダイヤモンドリーグで、ヤロスラワ・マフチフ(ウクライナ)が2m10を1回目にクリア。1987年8月30日にローマでの第2回世界選手権で22歳のステフカ・コスタディノワ(ブルガリア)がマークした2m09の世界記録を実に37年と2日ぶりに更新した。

五輪と世界選手権で実施される女子の全種目において「長続きした(する)世界記録」のその時点で歴代4位(現在は同5位)の長寿記録だった。走高跳に限ると歴代2位の長寿記録は、イオランダ・バラシュ(ルーマニア/1m91)の10年1カ月19日(1961年7月16日~1971年9月4日)だったので、それを27年近くも上回る「更新されない(更新できない)世界記録」であった訳である。
ちなみに、現在、最も長く更新されていない女子の世界記録の歴代トップは、800mの1分53秒28。ヤルミラ・クラトフヴィロヴァ(チェコ)が1983年7月26日にミュンヘンのオリンピックスタジアムでマークしたもので、あと2カ月ちょっとで「42歳」になる。

以下は、「心の狭い筆者」のお話だ。
「マフチフが2m10の世界新!」のニュースを知った時、筆者は「ありゃー、残念!!」と思った。何を残念に思ったのかというと……。

37年前の9月1日、現地時間の18時52分35秒。ローマのオリンピックスタジアム「スタディオ・オリンピコ」の第1カーブ内側のピットでコスタディノワが2m09を2回目にクリアした。その瞬間をスタンド記者席から筆者は目撃していた。
コスタディノワが2m09をクリアした11分前の男子100mでは、ベン・ジョンソン(カナダ)が9秒83(+0.95)の世界新(速報タイマーは9秒84で止まった)をたたき出していた。従来の世界記録を一気に0秒10も更新する異次元のタイムに6万5千人で埋め尽くされたスタジアムは度肝を抜かれた。
10分以上経っても、その驚きと興奮が冷めやらずまだまだスタンドはざわついていた。そんなところへ2m09の世界新のクリアで、スタジアムの盛り上がりは後半のるつぼで再び最高潮に達したのだった。
(なお、上述のジョンソンは、1年後のソウル五輪でも自身の9秒83を破る9秒79の世界新。が、レース後にドーピング違反が発覚し、ソウルでのメダル剥奪と9秒79の抹消。それにとどまらず、ローマでの9秒83も抹消されることになった。)

コスタディノワの記録は、それから37年と2日もの間、誰も超えることができなかったのだがついに破られた。
心の狭い筆者は、「自分が目撃した記録が破られて残念」と思ったのだった。
しかし、それからしばらくしてからは、「長かったなあ、まさかあれから37年も破られずに残るとはその時には思ってもみなかったなあ。まだまだ若いコスタディノワが2m10も跳ぶのだろうと思っていたなあ」と当時の「その瞬間」を思い出しながら感慨にふけったりしていた。
そして、陸上報道に関わる人間として、「37年間止まっていた時計の針が、ようやく動き出したのだなあ」とも。さらには、母国のウクライナが大変な状況の中で、23年ブダペスト世界選手権と24年パリ五輪を連覇し、「37年間不滅」だった「偉大な2m09」を破ってみせたマフチフに心の中で小さな祝福の拍手を送ったのだった。

とマフチフの世界記録を讃え、もっともっと更新していくことを祈りながらも「まだ名実ともにコスタディノワを超えてはいないなあ」とも思っている。
「名実ともにコスタディノワを超える」というのは、以下のようなことである。
他の種目でも示したが、「個人別10傑平均記録」での比較だ。

<女子走高跳の個人別10傑平均記録の世界歴代リスト(2025年4月30日判明分)>
・室内の記録を含む。
・10傑平均「2.000以上」。
・氏名の前の「△」は、非現役。
順)10傑平均(1位~10位)氏名(国名)
1)2.068(2.09~2.06)△S・コスタディノワ(ROM)
2)2.059(2.08~2.05)△B・ヴラシッチ(CRO)
3)2.047(2.06~2.04)M・ラシツケネ(RUS)
4)2.044(2.10~2.03)Y・マフチフ(UKR)
5)2.043(2.07~2.03)△A・チチェロワ(RUS)
6)2.042(2.08~2.02)△K・ベリークイスト(SWE)
7)2.040(2.07~2.03)△H・ヘンケル(GER)
7)2.035(2.06~2.02)△H・クルーテ(RSA)
8)2.031(2.06~2.02)△Y・スレサレンコ(RUS)
9)2.030(2.05~2.02)△I・ババコワ(UKR)
10)2.029(2.06~2.02)△A・フリードリッヒ(GER)
11)2.025(2.05~2.00)△T・ビコワ(RUS)
12)2.022(2.04~2.00)△V・ヴェネワ(BUL)
13)2.018(2.05~2.00)△C・ハワード・ロウ(USA)
14)2.016(2.03~2.01)N・オリスラガース(AUS)
15)2.014(2.04~2.00)△A・ディマルティーノ(ITA)
16)2.013(2.03~2.00)△M・ヤガル(ROU)
17)2.012(2.05~1.99)△T・エルボー(BEL)
18)2.010(2.04~1.99)△S・コスタ(CUB)
19)2.006(2.02~1.99)△Y・エレシナ(RUS)
19)2.006(2.03~1.99)△M・クプツォワ(RUS)
19)2.006(2.02~2.00)△R・ベイティア(ESP)
22)2.004(2.03~1.98)△L・リッター(USA)
23)2.000(2.03~1.98)△T・ババシュキナ(RUS)
次)1.999(2.02~1.98)Y・レフチェンコ(UKR)
マフチフは自己ベストではコスタディノワを1cm上回った。しかし、「コンスタントな力」という点ではまだまだコスタディノワが歴代トップで、マフチフは歴代4位である。

上記のように個人別10傑平均の「2m000以上」は歴代で23人だが現役選手は3人しかいない。
現役トップのラシツケネの1~10位の記録は、17年から20年にマークされたもので2m00以上を最後に跳んだのは21年。22年以降は1m93・1m98・1m93にとどまっている。さらにロシアは国ぐるみのドーピング違反で世界大会への出場が許されていない状況だ。
マフチフに続く現役はオーストラリアのオリースラガースだが、ベストの2m03はマフチフの6~10番目の記録(2m03)に過ぎない。現役ではマフチフが断トツだ。

しかし、そんなマフチフをもってしてもコスタディノワとはまだまだ差がある。
両者の10番目までの記録を比較したのが以下だ。
順)コスタディノワマフチフ
1)2.092.10
2)2.082.06
3)2.072.05
4)2.072.04
5)2.072.04
6)2.062.03
7)2.062.03
8)2.062.03
9)2.062.03
10)2.062.03
   
平均2.0682.044
マフチフのセカンドベストの2m06以上をコスタディノワは11回跳んでいる。マフチフの10番目(計10回)にあたる2m03以上をコスタディノワは、43回もクリアしている。
コスタディノワ(1965年3月25日生まれ)のトップ10の記録は、20~23歳の時のもの。32歳まで競技を継続し、引退した1997年まで2m02以上のシーズンベストを試合に出なかった90年を除き毎年マークした。しかし、トップ10の記録は20歳からの4年間に集中し、20歳1回、21歳4回、22歳4回、23歳1回だった。
マフチフは、2001年9月1日生まれで現在23歳。トップ10の記録は、18歳1回、19歳2回、20歳2回、21歳2回、22歳3回。今後もコンスタントに2m10以上やそれに迫る高さを跳んでコスタディノワを10傑平均でも上回って「世界記録保持者」というだけでなく名実ともに「歴代ナンバーワン」になってもらいたい。


野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)



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▼出場選手リスト
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【ワールドアスレティックスコンチネンタルツアー】

ワールドアスレティックス(WA、世界陸連)が主催するダイヤモンドリーグ(2025年は15大会指定)以外の世界最高となるOne-Day 競技会のシリーズです。コンチネンタルツアーは世界各地で開催され、ゴールド、シルバー、ブロンズ、チャレンジャーの4つのレベルに分けられ、これらのレベルは、競技会の質と提供される賞金によって決まります。

本大会が位置付けられているWAコンチネンタルツアーゴールドは、2025年は世界で13大会のみ指定され、WAのワールドランキングのカテゴリー(格付け)で日本選手権(Bカテゴリー)より上位の「Aカテゴリー」に位置付けられており、東京2025世界陸上競技選手権大会への出場資格獲得を目指す海外、国内のトップアスリートにとって、ワールドランキングを向上させるために、重要な競技会です。



【アーカイブ】セイコーGGP2024


▼【セイコーGGP】2024特設サイト
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▼【セイコーGGP2024 大会レポート】
大歓声の中アスリートが躍動:北口最終試技で逆転V/豊田は歴代5位の自己記録で快勝!
https://goldengrandprix-japan.com/2024/news/article/20055/

▼【セイコーGGP】2024ギャラリー
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