2025.04.18(金)大会

【日本選手権10000m】ハイライト:男子は鈴木芽吹が会心のスパートで初優勝、女子は廣中が2年ぶり4回目のV!

写真:アフロスポーツ

第109回日本選手権男女10000mは4月12日、9月に開催される東京2025世界陸上競技選手権大会および、5月に韓国で開かれるクミ2025アジア陸上競技選手権大会の日本代表選考競技会を兼ねて、熊本・えがお健康スタジアムで行われました。
雨が打ちつけるタフなコンディション下でのレースとなった影響もあり、東京2025世界陸上日本代表即時内定の条件(同参加標準記録を突破して3位以内でフィニッシュする)を満たすことは、男女ともに叶いませんでしたが、男子は、鈴木芽吹選手(トヨタ自動車)が27分28秒82で初優勝。女子は、廣中璃梨佳選手(JP日本郵政G)が31分13秒78で制し、2年ぶり4回目のタイトルを獲得しました。


鈴木芽吹、会心のスパートで 初の日本選手権者に



今年の日本選手権10000mは、日本グランプリシリーズ第1戦として行われる金栗記念選抜陸上中長距離大会(金栗記念)の競技終了後、ナイトゲームとして同会場で開催され、男子・女子の順に、決勝を実施するタイムテーブルが組まれました。午後を過ぎるあたりから次第に厚くなっていた雲から、ぱらぱらと雨が落ち始めるようになったのは、金栗記念最終種目の男子5000mが終了した直後。その後、関係者の願いもむなしく降り始め、競技開始まで1時間を切るあたりから、雨脚は強まっていきました。
先に行われた男子10000m決勝は、19時35分にスタートしました。今年も電子ペーサー(ウェーブライト)が導入され、最も速いグリーンライトは、フィニッシュタイムを27分20秒に想定し、8000mまでは各1000mを2分45秒で、最後の2000mは2分42秒5、2分37秒5とビルドアップしていくペース。参加標準記録(27分00秒00)ではなく、WAワールドランキングにおいてターゲットナンバー内を目指すためのポイントを、着実に上げていくことにフォーカスしての設定です。

欠場者が1名出たことで、ペースメーカーとしてオープン参加したアンティパス・キベット選手(小森コーポレーション)を含めた全20名で行われたレースで、スタートしてすぐに前に出たのは前々回覇者で日本記録保持者(27分09秒80)の塩尻和也選手(富士通)。すぐに1周(66秒)のペースで刻んでいくキベット選手の後ろにつけ、先頭集団というよりは縦に長く連なる形でレースが進んでいくことになりました。塩尻選手にぴたりとついたのは吉居大和選手(トヨタ自動車)。次いで、本間颯選手(中央大)、齋藤椋選手(旭化成)、荻久保寛也選手(ひらまつ病院)らが前方で続き、上位候補に挙がる葛西潤選手(旭化成)、鈴木芽吹選手(トヨタ自動車)、太田智樹選手(トヨタ自動車)らは、この段階では列の後方に位置しています。



先頭は1000mを2分45秒(以下、各通過記録は、大会時に発表された速報タイムを採用)で入ると、2000mを5分30秒、3000mを8分15秒で通過。その間に葛西・鈴木・太田選手が8~11番手あたりに浮上してきています。その後、荻久保選手が4番手に、さらには葛西選手が5番手に上がり、葛西選手にぴたりとつく鈴木選手も6番手に。11分01秒での通過となった4000mでは、塩尻・吉居・本間・荻久保・葛西・鈴木・吉田祐也(GMOインターネットGrp、東京世界選手権マラソン代表)・太田選手の順で続く隊列に。しかし、9番手以降もまだ離れてはおらず、13番手くらいまでが列を維持しています。やや先頭が詰まってきた印象となった11周目で葛西・鈴木選手が3~4番手に上がると、本間選手が後退。わずかなペースの低下を感じたのか、12周目に走ると塩尻選手がペースメーカーのキベット選手をかわして先頭に立ちます。すかさずこれに吉居選手がつき、5000mは塩尻・吉居選手の順に13分47秒で通過しました。



レースが動いたのは、その直後でした。13周目に入る直前に吉居選手が先頭に立つと、この周回を64秒にペースアップしたのです。これを塩尻・葛西・鈴木選手に加えて、後方にいた鈴木勝彦選手(SUBARU)が荻久保・吉田・太田選手らをかわして5番手に急浮上し、この4人で追う形になりました。吉居選手は、ここで大きくリードを広げ、残り10周となる6000mは16分30秒で通過。そして、後続では6000m手前で塩尻選手が後退し、葛西・鈴木・鈴木勝の3選手が15~20mほど離れて吉居選手を追う形へと変わりました。6400mまでの周回で鈴木勝選手が後れてからは、葛西選手と鈴木選手の2人が、吉居選手を追うことに。その後は、逃げる吉居選手、わずかに離れて葛西選手・鈴木選手と続く周回が、1周68秒ペースで残り3周を迎えるまで続きました。



そして、勝負は、今年もまたこの「残り3周」で決する形となりました。9000mの通過を迎える直前で、3番手にいた鈴木選手がスパートして先頭に立つと、9200mを25分27秒で通過。さらに次の周回を62秒に引き上げ、2番手に上がった葛西選手、3番手に後退した吉居選手を、一気に突き放したのです。鈴木選手は、最後の1周も59秒でカバーし、サードベストの27分28秒82で初の日本選手権タイトルを獲得しました(鈴木選手の優勝コメントは、こちらをご覧ください)。2位は27分33秒52でフィニッシュした葛西選手、3位には自己記録を6秒55更新した吉居選手が27分36秒33で続きました。


廣中、2年ぶり4回目の優勝!ラスト800mで矢田を突き放す



続いて行われた女子は、2名の欠場者が出たことで、ペースメーカーを務めたオープン参加のマーガレット・アキドル選手(コモディイイダ)を含めて全12名でレースが行われました。電子ペーサー(ウェーブライト)で最も速いグリーンライトのフィニッシュタイムは31分20秒を想定。スタートから5000mまでは各1000mを3分08秒で、次の3000mは各3分10秒で進み、ペースメーカーが外れる最後の2000mは、3分06秒・3分04秒と段階的にビルドアップしていく設定です。



75秒で通過した最初の400mでは、菅田雅香選手(JP日本郵政G)がアキドル選手のすぐ後ろについて先頭を引く場面もありましたが、800mを通過した段階で、廣中璃梨佳選手(JP日本郵政G)がトップに立ち、そのすぐ後ろに矢田みくに(エディオン)、菅田、伊澤菜々花(スターツ)、兼友良夏(三井住友海上)の4選手が続き、計5名の第1グループが形成されてレースは進んでいく展開に。1000mを3分08秒、2000mを6分16秒(この間の1000mは3分08秒)と、きっちり設定ペース通りに進んでいくなかで、井澤選手が後れて、この段階で先頭グループは4人に。2800mまでに、廣中・矢田選手と菅田・兼友選手の2つに分裂し、さらに先頭が3000mを9分23秒で通過したときには、トップグループは完全に廣中・矢田選手に絞られ、少し離れて兼友選手が単独で前を追う状況となりました。


先頭を行く2選手は、その後は、アキドル選手の見事なレースメイクに乗って、安定したペースで歩を進め、5000mを15分40秒と、想定通りのタイムで後半へと向かっていきます。ここからの3000mは少しペースが落ちる予定でしたが、6000mは18分49秒(3分09秒)、7000mは21分50秒(3分10秒)、そして、8000mはややペースが上がって25分06秒(3分07秒)で通過。ここで、アキドル選手がレースを終え、2人は電子ペーサーのグリーンライトよりも前を行く形で、終盤に突入していきました。



廣中選手は残り5周となったこの周回で、最初は少しペースを上げる様子を見せたのですが、ホームストレートでペースを緩め、矢田選手の後ろにつきます。レース後、その理由を、想定していた残り2000mのペースアップに心許なさを感じたため、「自分を落ち着かせ、ラストスパートをどこからかけるかレースプランを練り直す時間にしようと思った」と振り返った廣中選手。勝負のタイミングを計ります。そして、残り2周に入る直前で、矢田選手をかわして先頭に立つと、この周回を69秒にペースアップ。矢田選手も懸命にくらいつきましたが、9400mを過ぎたあたりで両者の差はどんどん開いていきました。廣中選手は最後の1周も69秒でカバーして、31分13秒78でフィニッシュ。2年ぶり4回目の優勝を果たしました(廣中選手の優勝コメントは、こちらをご覧ください)。
2位の矢田選手は、31分20秒09でフィニッシュ。2020年にマークしている自己記録(31分34秒39)を14秒30も上回る好走でした。3位で続いたのは昨年と同じく兼友選手、32分18秒25でレースを終え、2年続けて表彰台を占める結果を残しています。




文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:アフロスポーツ


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男子10000m


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【日本選手権10000m】特設サイト



>>https://www.jaaf.or.jp/jch/109/10000m/

▼男子優勝:鈴木芽吹コメント
https://www.jaaf.or.jp/news/article/21561/
▼女子優勝:廣中璃梨佳コメント
https://www.jaaf.or.jp/news/article/21562/
▼リザルトはこちら
https://www.jaaf.or.jp/jch/109/10000m/result/

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