2023.08.19(土)選手

【記録と数字で楽しむブダペスト世界選手権】男子35km競歩:前回1秒差で「銀」の川野を軸に「金」に挑む(決勝8月24日)



8月19日(土)から27日(日)の9日間、ハンガリーの首都ブダペストを舞台に「第19回世界陸上競技選手権大会」が開催される。日本からは、76名(男子48名・女子28名)の代表選手が世界のライバル達と競い合う。

現地に赴く方は少ないだろうがテレビやネットでのライブ中継で観戦する方の「お供」に日本人選手が出場する33種目に関して、「記録と数字で楽しむブダペスト世界選手権」をお届けする。

なお、これまでにこの日本陸連HPで各種競技会の「記録と数字で楽しむ……」をお届けしてきたが、過去に紹介したことがある拙稿と同じ内容のデータや文章もかなり含むが、可能な限りで最新のものに更新した。また、記事の中では五輪についても「世界大会」ということで、そのデータも紹介している。

大会期間中は、日本陸連のSNS(Facebook or X)で、記録や各種のデータを随時発信予定。そちらも「観戦のお供」にしていただければ幸いである。
日本陸連Facebook:https://www.facebook.com/JapanAthletics
日本陸連X(Twitter):https://twitter.com/jaaf_official

現地と日本の時差は、7時間で日本が進んでいる。競技場内で行われる決勝種目は、日本時間の深夜から早朝にかけて競技が行われる。

睡眠不足にどうぞご注意を!



男子35km競歩

(実施日時は、日本時間。カッコ内は現地時間)
・決勝 8月24日 14:00(24日 07:00)

※記録は原則として7月31日判明分。現役選手の敬称は略させていただいた。トラック競技の予選・準決勝の通過条件(○組○着+○)は、ルールやこれまでの世界大会でのものを参考に記載したため、ブダペストではこれと異なる条件になる可能性もある。


前回1秒差で「銀」の川野を軸に「金」に挑む

22年オレゴン銀メダルの川野将虎(旭化成)が2大会連続、同9位の野田明宏(自衛隊体育学校)が3大会連続、丸尾知司(愛知製鋼)が17年ロンドン以来2回目の出場。
オレゴン大会からそれまでの50kmから35kmとなり、今回が2回目の実施。

「英雄広場」付近の1周2kmのコースを周回する。
8月24日の午前7時00分(日本時間同日14時00分)に女子のレースも同時にスタートする。


50km競歩&35km競歩の世界選手権&五輪での入賞者と最高記録

2022年から距離が50kmから35kmに変更された新種目ではあるが、実質的には50kmから引き継がれたことになるので、これまでの50kmでの成績も掲載した。

「世界選手権」&「五輪」での50km競歩&35km競歩の入賞者は、下記の通り。
19917位4.06.07.今村文男(富士通)
19976位3.50.27.今村文男(富士通)=日本最高
20058位3.51.15.山崎勇喜(順大)
2008五輪7位3.45.47.山崎勇喜(長谷川体育施設)
20115位3.46.21.森岡紘一朗(富士通)
8位3.48.03.谷井孝行(自衛隊体育学校)
2012五輪7位3.43.14.森岡紘一朗(富士通)
20153位3.42.55.谷井孝行(自衛隊体育学校)
4位3.43.44.荒井広宙(自衛隊体育学校)
2016五輪3位3.41.24.荒井広宙(自衛隊体育学校)
20172位3.41.17.荒井広宙(自衛隊体育学校)
3位3.41.19.小林快(ビックカメラ)
5位3.43.03.丸尾知司(愛知製鋼)
20191位4.04.20.鈴木雄介(富士通)
2021五輪6位3.51.56.川野将虎(旭化成)
・2022年から35km   
20222位2.23.15.川野将虎(旭化成)=日本最高

22年から距離が変更されたため、最高記録は上記、川野の2時間23分15秒
50kmでの最高記録は、3時間41分17秒 荒井広宙(自衛隊体育学校)2017年 2位。
五輪でのそれは、同じく荒井の3時間41分24秒 2016年 3位。

50kmでは15年から19年まで五輪を含め4大会連続でメダルを獲得。とりわけ17年ロンドン世界選手権は2・3・4位でトリオ入賞を達成し19年は優勝に輝いた。
五輪を含めて15年から5大会連続入賞を継続し、22年からの35kmに引き継がれた。


初35kmでは、川野が頂点に1秒及ばぬ何とも口惜しい銀メダルを獲得。今回は、そのリベンジを果たしたいところだ。
同じく前回8秒差で入賞を逃した野田も同様であろう。


50km競歩の1991年以降の世界選手権&五輪での1・3・8位の記録

距離が変わったので下記の50kmのデータは参考にはならないが、50kmの「総まとめ」ということで、日本人が初入賞した1991年東京世界選手権以降の「1位・3位・8位の記録」を示しておく。
優勝記録3位記録8位記録
19913.53.09.3.55.14.4.06.30.
1992五輪3.50.13.3.53.45.3.58.26.
19933.41.41.3.42.50.3.50.23.
19953.43.42.3.45.57.3.49.47.
1996五輪3.43.30.3.44.19.3.48.42.
19973.44.46.3.48.30.3.51.33.
19993.47.54.3.50.55.3.55.23.
2000五輪3.42.22.3.44.36.3.48.17.
20013.42.08.3.46.12.3.51.09.
20033.36.03.3.37.46.3.46.14.
2004五輪3.38.46.3.43.34.3.49.48.
20053.38.08.3.41.54.3.51.15.
20073.43.53.3.44.38.3.57.22.
2008五輪3.37.09.3.40.14.3.46.51.
20093.41.16.3.42.34.3.47.36.
20113.41.24.3.43.36.3.47.19.
2012五輪3.36.53.3.37.54.3.44.26.
20133.37.56.3.40.03.3.43.38.
20153.40.32.3.42.55.3.46.00.
2016五輪3.40.58.3.41.24.3.46.43.
20173.33.12.3.41.19.3.44.41.
20194.04.20.4.05.02.4.11.28.
2021五輪3.50.08.3.50.59.3.52.01.
・以後、35kmに変更   
20222.23.14.2.23.44.2.25.21.
最高記録3.33.12.3.37.46.3.43.38.
世選最高3.33.12.3.37.46.3.43.38.
五輪最高3.36.53.3.37.54.3.44.26.
・35kmは、「2022」のみ。

また、2011年以降の各大会のスタート時の「気温・湿度」「先頭の10㎞毎のスプリット」「前半と後半」のデータは下記の通りだ。

なお、スプリットは各地点を先頭で通過した選手のタイムから算出したもので、優勝者のスプリットとは限らない。「前後半差」の「△」は、後半の方が速かったことを示す。

スタート時優勝記録~10km~20㎞~30㎞~40㎞~50㎞(前半+後半/前後半差)
201123℃・73%3.41.24.44.31.43.32.43.30.44.21.45.40.(1.49.35.+1.51.49./▼2.24.)
2012五輪?℃・?%3.36.53.44.15.43.29.43.05.43.04.43.00.(1.49.21.+1.47.32./△1.51.)
201317℃・94%3.37.56.44.26.44.10.43.41.42.47.42.42.(1.50.34.+1.47.22./△3.12.)
201522℃・78%3.40.32.45.18.44.02.43.50.43.47.43.31.(1.51.13.+1.49.19./△1.54.)
2016五輪22℃・?%3.40.58.44.28.43.23.43.48.45.25.44.02.(1.49.41.+1.51.17./▼1.36.)
201714℃・72%3.33.12.44.28.42.50.42.33.41.40.41.41.(1.48.24.+1.44.48./△3.36.)
201931℃・74%4.04.20.49.11.48.24.48.20.47.26.50.59.(2.01.07.+2.03.13./▼2.06.)
2021五輪25℃・86%3.50.08.47.57.47.07.46.17.42.24.46.23.(1.58.16.+1.51.52./△6.24.)
・以後35kmに変更
 スタート時優勝記録~5km~10km~15km~20km~25km~30km~35km
202211℃・92%2.23.14.20.14.20.24.20.32.21.23.20.31.20.20.19.50.
2位集団→--------21.02.20.28.20.32.20.38.20.24.↑20km過ぎで
トップを吸収
 

50kmは、8大会中5回が後半の方が速いネガティブスプリット。
初の35kmでは、スタート直後から松永大介(富士通)がひとり旅。一時は2位集団に1分近い差をつけたが、20km過ぎで吸収された。
2位集団は、最初の5kmはスローに入り、以後は5km20分30秒前後で推移。メダル争いは、残り2kmからの一気のペースアップの「ヨーイ、ドン!」となった。
ラスト2kmの1km毎は、3分53秒と3分50秒。金と銀は、1秒差で決着。終盤に一気にペースアップする展開は、各大会での20kmと似たような展開だった。

20kmと35kmの入賞者のうち、3名が両種目で入賞している(20km3位&35km3位、5位&4位、6位&7位)。
女子の20kmと35kmのメダリストは、まったく同じ顔ぶれでメダルの色も同じだった。

マラソンでは、「30~35kmからが本当のレースの始まり」といわれる。
トラックの10000mやハーフマラソンで素晴らしいタイムや実績を持つ選手が、マラソンでは必ずしもその力を出せないことがしばしばある。
10000mやハーフの力があれば、あるいはハーフを走れる練習を積めていれば、30kmくらいまでは持ちこたえられることが多い。が、残りの12kmあまり、あるいは35kmからの7kmあまりをそのまま押し切れないところが、マラソンの奥深いところだという話だ。

「走る」と「歩く」の違いはあるが、競歩の20km、35km、50kmにも似たような関係があるように思える。
つまり、20kmで強い選手が、50km向けの練習を積まずに50kmまで押し切ることは困難だが、35kmの距離ならば20kmの力があればギリギリで持ちこたえられるということなのかもしれない。

オレゴンでは、男子競歩の20kmが初日で35kmは最終日の実施で20kmの9日後、女子も20kmの7日後が35kmだった。そんな時間的なこと、そして上述の20km、35km、50kmの特性などもあってか2種目に出場して、両種目でメダル獲得や入賞という選手が、男女とも8名中3名もいたのだ。

今回は、男子が19日と24日、女子が20日と24日の開催なので、両種目に出場するのはオレゴンよりも厳しい日程だが、さて? である。


35km競歩の世界最高記録と日本記録

世界最高 2時間21分31秒 ウラジミール・カナイキン(ロシア)2006.02.19 ソチ
日本記録 2時間23分13秒 野田 明宏(自衛隊体育学校)2023.04.16 輪島

世界記録は23年1月1日に公認される予定だったが、20km競歩と50km競歩の世界記録の水準を考慮した上で「2時間21分00秒以内を世界記録として公認する」という条件が設定されているため、「世界最高記録」という扱いのままだ。

50kmに変わって採用されたばかりの35kmの記録をみてもなかなかピンとこないだろうから、全種目を網羅した世界陸連の採点表(2022年版)で20km競歩と50km競歩の記録と比較した。

【世界陸連採点表による35km競歩と20km競歩・50km競歩の得点比較】
35kmW得点20kmW50kmW
2.20.23.1269pt1.16.28.3.32.33.世
2.20.40.1266pt1.16.36.世日3.33.05.
2.21.31.世最1257pt1.17.00.3.34.32.
2.22.51.1243pt1.17.38.3.36.45.日
2.23.13.日1239pt1.17.49.3.37.27.

以上の通りで、僅かな点数の差ではあるが、35km競歩の世界最高記録と日本記録は、20kmや50kmのそれぞれのレベルよりもまだ少し低いということになる。
35kmの世界最高記録はあと1分程度縮まって20kmや50kmのレベル。35kmの日本記録は、あと20秒ほど縮まって50kmのレベルということになる。

35kmの世界最高記録2時間21分31秒をイーブンでならすと、1km4分02秒6、5km20分13秒0、10km40分26秒0,20km1時間20分52秒。
日本記録の2時間23分13秒は、1km4分05秒5、5km20分27秒6、10km40分55秒1、20km1時間21分50秒だ。


過去3年間の8月24日のブダペストの気象状況

レースがスタートするのは8月24日の朝7時00分(日本時間24日14時00分)。過去3年間の同日のブダペストの気象状況は以下の通りだ。

【過去3年間の8月24日のブダペストの気象状況】
時刻2022年2021年2020年
7時00分晴・19℃・94%晴・15℃・94%晴・16℃・83%
8時00分晴・21℃・83%晴・17℃・83%晴・19℃・73%
9時00分晴・?℃・?%晴・19℃・78%晴・22℃・61%
9時30分晴・24℃・65%晴・20℃・73%晴・24℃・54%

19年ドーハは、23時30分のスタート時に31℃・74%の高温多湿の悪条件だった。11℃・92%だった22年オレゴンほど涼しくはないが、今回もまずまずの条件のもとでレースができそうな感じだ。

日本人選手には最終盤まで生き残り、20kmとの「競歩2冠」に「複数メダル」「全員入賞」を達成してもらいたい。


日本記録(2.23.13.)の5km毎の通過時間

・野田 明宏 2023.04.16 輪島
5km20.42.20.42. 
10km41.19.20.37.41.19.
15km1.01.51.20.32. 
20km1.22.12.20.21.40.53.
25km1.42.32.20.20. 
30km2.02.43.20.11.40.31.
35km2.23.13.20.30.(40.41.)


野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)


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