2023.08.18(金)選手

【記録と数字で楽しむブダペスト世界選手権】男子3000m障害物:三浦、メダルも視野に入れてのレース(予選8月19日、22日)



8月19日(土)から27日(日)の9日間、ハンガリーの首都ブダペストを舞台に「第19回世界陸上競技選手権大会」が開催される。日本からは、76名(男子48名・女子28名)の代表選手が世界のライバル達と競い合う。

現地に赴く方は少ないだろうがテレビやネットでのライブ中継で観戦する方の「お供」に日本人選手が出場する33種目に関して、「記録と数字で楽しむブダペスト世界選手権」をお届けする。

なお、これまでにこの日本陸連HPで各種競技会の「記録と数字で楽しむ……」をお届けしてきたが、過去に紹介したことがある拙稿と同じ内容のデータや文章もかなり含むが、可能な限りで最新のものに更新した。また、記事の中では五輪についても「世界大会」ということで、そのデータも紹介している。

大会期間中は、日本陸連のSNS(Facebook or X)で、記録や各種のデータを随時発信予定。そちらも「観戦のお供」にしていただければ幸いである。
日本陸連Facebook:https://www.facebook.com/JapanAthletics
日本陸連X(Twitter):https://twitter.com/jaaf_official

現地と日本の時差は、7時間で日本が進んでいる。競技場内で行われる決勝種目は、日本時間の深夜から早朝にかけて競技が行われる。

睡眠不足にどうぞご注意を!



男子3000m障害物

(実施日時は、日本時間。カッコ内は現地時間)
・予選 8月19日 18:35(19日 11:35) 3組5着
・決勝 8月23日 04:42(22日 21:42)

※記録は原則として7月31日判明分。現役選手の敬称は略させていただいた。トラック競技の予選・準決勝の通過条件(○組○着+○)は、ルールやこれまでの世界大会でのものを参考に記載したため、ブダペストではこれと異なる条件になる可能性もある。



三浦、メダルも視野に入れてのレース

21年東京五輪、22年オレゴンに続き3大会連続でのフルエントリーとなった。

8分15秒00の参加標準記録をクリアした三浦龍司(順天堂大学4年/自己ベスト8.09.91=23年)、アジア選手権優勝者の資格でワールドランキングでも26位の青木涼真(Honda/エントリー記録8.21.96=23年・自己ベスト8.20.09=22年)がオレゴンに続く連続出場。ともに21年東京五輪を含め3大会連続の世界大会だ。
代表3人目は、日本選手権2位の砂田晟弥(プレス工業/自己ベスト8.26.36=23年)。
7月25日までは36名のターゲットナンバー内に入れそうな位置にいたが、7月30日のワールドランキングではあと2つ及ばない38位。しかし、8月7日のエントリーで他国の上位者に辞退が出て繰り上げで出場できることになった。世界大会初出場だ。

この種目でのフルエントリーは、オレゴンに続いて2大会連続。東京五輪を含めると3大会連続となる。

東京五輪でこの種目では日本人初となる入賞(7位)を果たした三浦が好調だ。
19年ぶりに世界新記録(7分52秒11)が生まれた6月9日のパリでのダイヤモンドリーグ(2位)でマークした日本記録8分09秒91はエントリー記録で7番目。
ブダペストでは、東京で5秒45先にあった「メダル」も視野に入れてのレースとなる。


全日中400mチャンプから3000mSCで世界の舞台へ羽ばたいた砂田

日本選手権の時にも紹介したが、砂田は異色のランナーだ。
16年全日本中学の400m優勝者。
中学・高校時代の短距離から次第に距離を伸ばし、5年くらい前までは想像もしていなかったであろう3000mSCで日の丸を胸につける選手に成長した。
各種目の自己ベストは下記の通り。
100m11.4716年=中3
200m22.2518年=高2
400m48.8218年=高2
400mH53.1819年=高3
800m1.54.7518年=高2
1500m3.47.8223年=社4
3000m7.54.1023年=社4
3000mSC8.26.3623年=社4
5000m13.50.3222年=社3
10000m28.22.8322年=社3

ランニング種目のみの十種競技があれば、世界でもかなり上位にランクされることだろう。
400mHの経験が3000mSCでの障害越えにも大い生きてきている。

父・貴裕さんは、100kmロードの元世界記録保持者(6.13.33./98年)で、マラソンのU20日本最高記録(2.15.30.=92年)を現在も保持している。
妹・芽偉も同じプレス工業で800mをやっており、21年のU20日本選手権を2分09秒31の自己ベストで制している。


世界選手権&五輪での日本人最高成績と最高記録

<世界選手権>    
最高成績11位8.19.29岩水嘉孝(トヨタ自動車)2003年
最高記録8.18.93予選1組4着岩水嘉孝(トヨタ自動車)2003年=日本新

<五輪>    
最高成績7位8.16.90三浦龍司(順天堂大学)2021年
最高記録8.09.92予選1組2着三浦龍司(順天堂大学)2021年=日本新

世界選手権での入賞者はまだいない。

03年パリ世界選手権で日本人最高順位11位の岩水さんは、三浦の順大の先輩。三浦が21年に破るまでの日本記録(8分18秒93)をその時の予選でマークした。決勝も8分19秒29と好走したが、8位入賞には2秒13及ばなかった。

21年東京で三浦が入賞する前の五輪での歴代最高順位であった小山隆治さん(クラレ)も順大の卒業生。72年ミュンヘン五輪で8位と0秒6差の9位(当時の入賞は6位までで、6位とは4秒3の差)。74年には8分21秒6で走ってその年の世界7位、歴代でも7位というハイレベルなタイムで、当時の世界記録8分14秒0との差は僅か7秒6だった。


2000年以降の五輪&世界選手権の1・3・8位とラスト1000mの記録

【表/2000年以降の五輪&世界選手権の1・3・8位とラスト1000mの記録】
1位3位8位/先頭のラスト1000m
2000五輪8.21.438.22.158.26.70/2.37.48
20018.15.168.16.598.20.87/2.41.55
20038.04.398.09.098.17.16/2.44.81
2004五輪8.05.818.06.648.15.58/2.41.54
20058.13.318.15.308.19.96/2.32.92
20078.13.828.17.598.22.95/2.36.39
2008五輪8.10.438.11.018.16.59/2.36.50
20098.00.438.01.188.14.47/2.37.64
20118.14.858.16.098.19.69/2.41.43
2012五輪8.18.568.19.738.25.91/2.35.30
20138.06.018.07.868.17.41/2.34.06
20158.11.288.12.548.18.63/2.34.51
2016五輪8.03.288.11.528.25.81/2.37.54
20178.14.128.15.538.23.02/2.38.66
20198.01.358.03.768.09.33/2.38.40
2021五輪8.08.908.11.458.17.44/2.33.24
20228.25.138.27.928.29.77/2.32.69
最高記録8.00.438.01.188.09.33/2.32.69
世選最高8.00.438.01.188.09.33/2.32.69
五輪最高8.03.288.06.648.15.58/2.33.24
・「ラスト1000m」は、2000mを先頭で通過した選手のタイムから計算したので優勝者の実際のタイムではない場合もある。

この種目はケニア勢が圧倒的に強く、五輪は84年ロサンゼルスから16年リオまで9連勝。が、東京ではモロッコのソフィア・エル・バッカリがストップをかけた。
世界選手権も07年からケニア勢が7連勝していたが、22年オレゴンでは、これまたバッカリがストップをかけた。この時のバッカリのラスト200mは、水濠と1台の障害を越えながらも28秒02(14秒34+13秒68)だった。

上記、17大会のデータをみてもわかる通り、「8位」のタイムが三浦の日本記録8分09秒91を上回っているのは、19年のドーハ世界選手権のみ。
「3位の記録」が三浦のベストを上回るのも、03年・04年・09年・13年・19年の5回。
世界大会は、「記録」ではなく「勝負優先」のレースなのでタイムのみで比較するのは問題があろうが、単純な計算では三浦の「メダル獲得可能性」は70.6%となる。

下記は、三浦が更新してきた4回の日本記録の時の1000m毎を比較したものだ。

2021.05.092021.06.262021.07.302023.06.09 
<8.17.46> <8.15.99> <8.09.92> <8.09.91> 
2.46.412.46.412.48.72.48.72.43.22.43.22.44.2.44.
5.36.772.50.365.34.72.46.05.30.92.47.75.27.2.43.
8.17.462.40.698.15.992.41.38.09.922.39.18.09.912.43.

21年は、どのレースもラスト1000mを一気にペースアップしての「日本新」だった。
23年のパリは、1000m毎はほぼイーブンで刻んだが、ラスト1周の390mは61秒5(400m換算63秒1)だった。

東京五輪では、優勝者のラスト1000mは2分33秒台。22年オレゴンもスローペースのため2分32秒台に上がったが、16年以降の3大会は2分37~38秒台。
17・19年のトップと3位の選手の差は1~2秒。つまり3位の選手のラスト1000mは上記に1~2秒をプラスしたあたりということで、トップ選手のラスト1000mが2分37~38秒程度のレースであれば、三浦が2000mまで集団につき、残り1000mを2分40秒前後でカバーできれば「3位争い」に加われるということになる。
ラスト1000mのみならず、三浦の武器は最後の200mやラストの直線での切り替えが素晴らしところだ。

東京五輪・決勝でのラスト200mに限れば、三浦は30秒2でカバーした。これは優勝したバッカリの28秒8、5位のイェマネ・ハイレセラシェ(エリトリア)の30秒1についで3番目。銀・銅の2名は、31秒4と30秒9だった。
ラスト100mを三浦は14秒2で走った。2800m地点も2900m地点も9位にいたが、。最後の直線で2人を抜いて「7位入賞」につなげた。優勝したバッカリのラスト100mは14秒4。5位のハイレセラシェと8位のトッピ・ライタネン(フィンランド)が14秒8。メダルを獲得した2名は、15秒3と15秒2。つまり、残り100mは、三浦が「区間賞」だったのである。8分09秒92をマークした東京五輪・予選の時はラスト200m29秒8、ラスト100m14秒6だった。
また、22年5月8日のゴールデングランプリ(国立)で2位に5秒の大差で圧勝した時のラスト100mも14秒5。23年のゴールデングランプリ(横浜)は14秒2と、常に14秒台前半くらいでカバーできている。

ブダペストの決勝がどのような展開になるかはわからないが、最後の200mか100mで三浦がメダル圏内から5~6m以内くらいの位置につけていれば、最後のキックで「メダル圏内に」という可能性もありそうだ。

優勝争いやメダル争いが7分台や8分そこそこのレベルになると、終盤までそれについていくのはさすがに厳しいかもしれないが、8分05~10秒前後や、22年オレゴンのように前半がスローで最後の直線で決着がつくような展開になれば、三浦のラストの直線でのスピードが威力を発揮することになる。


野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)


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