ⒸTakashi OKUI photography
Day5:7月 16日(日)
タイの首都、バンコクのバンコク・スパチャラサイ国立競技場で行われていた第25回アジア陸上競技選手権大会は7月16日に最終日を迎え、全13種目の決勝が行われました。このうち日本は、エントリーしていなかった男子4×400mリレーを除く12種目に出場して、金5、銀1、銅2を獲得。この結果、今大会におけるメダル獲得数は、合計で金16、銀11、銅10で全37となり、参加国のメダル獲得数をみるメダルテーブルにおいて、日本が金メダルおよびメダル獲得総数ともにトップの成績を収めています。この日の最初の決勝種目となったのは、男女20km競歩。レースはスタジアムから2kmほど離れた王宮沿いのサナームチャイ通りに設けられた1周1kmの周回コースで行われ、男女ともに午前6時にスタートしました。男子は、スタート直後から先頭に立ってレースをリードした村山裕太郎選手(富士通)が、序盤で後続を突き放すと、そのまま“独り旅”で歩き通し、1時間24分41秒で金メダルを獲得。学生2選手がともに初代表として出場した女子は、梅野倖子選手(順天堂大学)が3位争いを制して、1時間36分18秒で銅メダル。序盤から単独歩となった内藤未唯選手(神奈川大学)は1時間37分35秒・4位でフィニッシュしました。なお、オレゴン世界選手権で8位入賞を果たしている住所大翔選手(順天堂大学大学院)は、体調不良により序盤で途中棄権しました。
イブニングセッションは、当初のタイムテーブルよりも1時間繰り下げて行われましたが、日本チームは、ここでもトラックで、フィールドで、レベルの高いパフォーマンスを繰り出し、会場に訪れたファンを魅了しました。女子、男子の順に決勝が行われた5000mでは、まず、女子で、渡邊菜々美選手(パナソニック)のケガによる不出場により、1人でのレースとなった山本有真選手(積水化学)が、先頭集団のなかで徐々に順位を上げていく冷静な走りを見せて15分51秒16でフィニッシュし、この日、2つめの金メダルを獲得。スタート直後から日本勢2人が前を引っ張った男子は、4000mまでの各1000mの通過を塩尻和也選手(富士通)が刻んでいきましたが、ラスト2周を切ったところで遠藤日向選手(住友電工)がロングスパートで塩尻選手を突き放し、13分34秒94で先着。塩尻選手は13分43秒92で続き、ワンツー・フィニッシュを決めました。
同じタイミングで、フィールドで行われていた男子やり投では、今季好調のディーン元気選手(ミズノ)が3回目に81m27を投げてトップに立つと、4回目にはシーズンベストで自己4番目の記録となる83m15をマーク。他選手の逆転を許さず、アジア選手権初優勝。ディーン選手とともに出場していた同期の新井涼平選手(スズキ)は5位。痛めていた右肘の影響もあって6回目に投げた72m43が最高記録となりました。フィールドでは、このほかに男子棒高跳と女子砲丸投の決勝も行われました。男子棒高跳は、今回が初の日本代表で、このあとワールドユニバーシティゲームズ出場を控える柄澤智哉選手(日本体育大学)が3位と同記録の5m51をクリアして4位に入賞。女子砲丸投は、円盤投に続いて2種目めの出場となった郡菜々佳選手(新潟アルビレックスRC)が16m02で7位の成績でした。
スタジアムをどよめかせる快走が飛び出したのは、男子200m決勝。アジア記録保持者のXie ZHENYE選手(中国、19秒88)とアジア歴代2位(19秒97)の自己記録を持つ大会記録保持者のAEUN OGUNODE Femi選手(カタール)が顔を揃えたなか、日本の鵜澤飛羽選手(筑波大学)がホームストレートでトップに立つと、今季各レースで見せている終盤の強さをここでも見せつけフィニッシュ。日本選手権でマークした20秒32の自己記録を再び塗り替え20秒23(-0.4)の今季日本最高、大会新記録を叩き出し、アジアチャンピオンに輝きました。20秒23は、日本歴代8位タイ、学生歴代2位となる好記録です。また、この種目で、昨年オレゴン世界選手権準決勝進出を果たしている上山紘輝選手(住友電工)も好走。20秒53・3位でフィニッシュし、銅メダルを獲得しています。男子に先立ち行われた女子200m決勝には、初日の4×100mリレーで銀メダリストとなった鶴田玲美選手(南九州ファミリーマート)と君嶋愛梨沙選手(土木管理総合)がともに進出しました。鶴田選手は23秒48(+0.1)で5位。リレー、100m(5位)に続いて3種目めの決勝となった君嶋選手は、予選の段階から不安が出ていた右脚大腿後部を痛めてスローダウン、28秒00(8位)でレースを終えました。
このほか、男子800mは、川元奨選手(スズキ)が1分49秒59で8位。日本選手同士が競り合いながらフィニッシュする形となった女子800mは、池崎愛里選手(ダイソー)が2分04秒21、塩見綾乃選手(岩谷産業)が2分04秒25で4・5位を占めました。また、チームジャパンとして今大会最後の決勝となった女子4×400mリレーは、久保山晴菜選手(如水会今村病院)、松本奈菜子選手(東邦銀行)、青野朱李選手(NDソフト)、山本亜美選手(立命館大学)のオーダーで出場。中盤では先頭に立って会場を沸かせる場面もありましたが、ベトナム(3分32秒36)、スリランカ(3分33秒27)、インド(3分33秒73)に次いで、3分35秒26・4位でのフィニッシュとなりました。
大会5日目にメダルを獲得した日本選手のコメントは、以下の通りです。
【日本人メダリストコメント】
◎男子200m 鵜澤飛羽(筑波大学)
優勝 20秒23(-0.4)=大会新記録
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勝ちを狙っていたので、タイムにはこだわらないで、勝ちを狙ってしっかり臨むつもりで挑んだ。中国の謝震業さんとかカタールのオグノデさんとかが出るとは知らなかったので、いると知ったときは、最初はびびったけれど、前に出られたときに自分の走りをいかに突き通せるかが、これから世界で戦っていくうえではたぶん重要になってくると思っていたし、実際に日本選手権とか、日本の国内の試合よりも、前に出られて、正直焦りはしたが、いかに落ち着いて走れるかを重要視はしていたので、そこのところはうまくいったのかなと思う。
調子は、めちゃくちゃよかったかといわれると、そういうわけではなかったのだが、最低限勝負できる身体ではあった。また、昨日の予選・準決勝を刺激にできたことはすごくデカかったと思う。20秒23というタイムについては、「あんなもん」。身体的には、まだまだ上げられる感じがある。
レースでは、謝震業さんが思ったより行ったので、「おおっ」と思った。「やっぱり世界で戦っている人だな」と、ちゃんと合わせてくるし、勝負強いところを感じた。
ここまで順調に来たかと言われたが、全然そうではないが、自分のなかでできることがやってきたつもりで、その結果が今回の結果になっただけ。やってきたことが表れているだけなので、「勝負ができて、勝てた」というのは嬉しいが、それ以上の感情(アジア王者とか、日本代表としてとか)はあまり持ち合わせていない。ただ、決勝は、スイッチは入った。
世界選手権になると、もっともっとレベルの高い感じになると思う。選ばれたらしっかり最大限の準備をしたい。本番まであと1カ月くらいあるし、今まで試合続きで、やっとちゃんとした練習をできる時間が確保できるはず。今までやってきたことをいったん見返して、プランを立て直してから、最大限のパフォーマンスを出せるような練習をしていきたい。そして、ブダペストでパリ(オリンピック)の標準(記録、20秒16)を切ることを目標にして臨みたい。
◎男子200m 上山紘輝(住友電工)
3位 20秒53(-0.4)
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鵜澤に勝ちたいという気持ちがあったし、2番になれなかったのも悔しい。でも、自分のなかでは20秒5台で走れたことは、安心感がデカいなというのがある。(ワールドランキングの)ポイントでどうなるかわからないが、このあと田島(記念)もあるので、そこに向けて準備しながら様子を見て、やっていけばいいかな、と。まあとにかく、このタイムに安心した。
準決勝のときにスタートが浮いてしまった感覚があったし、コーチとも話していて、いろいろと問題点が出てきたので、とりあえずそこだけ意識して、あとは食らいついていこうと、あとは頑張って走った。日本選手権が7番で、すごく悔しい思いをして、アジア選手権に出させてもらったので、表彰台には絶対に乗りたいというのはあったので、そこは嬉しい。鵜澤に負けてしまったことはすごく悔しいが、のちのちもっと追いついていきたい。世界陸上は、去年(オレゴン大会では準決勝に進出して)インパクトを与えるレースができたと思うので、そのくらいのレースはしたいし、また、リレー(4×100mリレー、予選で失格)も出させていただいて悔しい思いもしている。リレーはまだ出場権が獲得できていないが、ロンドンダイヤモンドリーグでのレースで、出場権をゲットしてもらって……代表になっていないので人頼みになってしまうが…(笑)、本番で調子のいい人を使っていくなかで起用してもらい、再び走れたらいいなと思っている。このあとポイントを確認しながらになるが、もし、出ることができたら、去年みたいなインパクトを与えられるレースをしたいなと思う。
◎男子5000m 遠藤日向(住友電工)
優勝 13分34秒94
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最近は日本選手権もペースペーカーもつき、記録会のようなレースになっていて、本当に駆け引きのあるような、出場する選手だけでつくっていくようなレースは、日本ではなかなか味わえなかった。今回のようなレースになったときに塩尻さんと僕の勝負の仕方やスタイル的にみて、僕のほうが分はあるんじゃないかと思っていた。今回、ほとんどの選手が、今年のブダペスト(世界選手権)や来年のパリ(オリンピック)のポイントを取るということで戦略を練って出場していた選手が多かったが、僕は考えは一緒だが、そのなかでも勝負を意識したレースを重点的に考えて臨んでいた。塩尻さんが序盤から先頭に出てくれたので、僕自身が途中できつくなったりしなければ、分があるなと思って走っていた。
勝てたことは嬉しいが、今日みたいなレースだったら自分が勝てる内容。なんか強さが足りないというか、圧倒的な強さを見せつけることができなかった。今シーズンは出遅れていて、5月に入ったくらいからようやくいいトレーニングを積むことができていて、日本選手権が終わってからは、その1カ月間だけで見ると去年よりもいい練習ができている。その成果をなかなかレースで発揮できなくて、(勝った)嬉しさ半分、なんかもう少し行けたんじゃないかなという思いが残っている。
ラスト2周でスパートしたが全然余裕がなく、ラスト1周に関しては苦しい走りになってしまい、フォームも崩れて、全然ペースも上げることができなかった。勝つ戦法としてはいいと思うのだが、自分が理想としているタイムでは上がれていない。余裕があれば、もっと中盤で自ら先頭にあって上げ下げのあるレースをできたらなと思っていたのだが、なかなか余裕がなくて、無理やりそういうレースをするよりも、しっかり勝つことのほうが大事だと思ったので、ラストまで出ることなく、後ろにつかせてもらった。
この大会で一番欲しかったのはポイント。本来は、この大会は表彰台(3位内)を目標にしていて、ポイントでいうと、タイムとプレイシングポイントをつけて1200点を目標にしていた。それは達成することができたが、点数を取れた一方で、レースペース…ラストとかは、まだまだ「もうちょっと行けたんじゃないかな」と思った。
◎男子5000m 塩尻和也(富士通)
2位 13分43秒92
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ある程度、タイムを求めて走ろうと思っていたので、前半から前に出て引っ張ることは最初から決めていた。後半、やっぱりああいう(遠藤選手にスパートされる)展開になるとはわかっていたので、なんとかその前に、日本選手権の5000mのときと似たような感じで前に出られればと思っていたが、今日は、想像以上に引っ張る方に力を使ってしまって、後半の伸びが出ずに、そのまま離されてしまった。
日本選手権が終わってすぐは、そこまでレースが続いていたので、少し軽めのジョグなどでつないで、そこからここに来るまでの1カ月くらいは、しっかりポイント練習を入れるようなトレーニングをして臨むことができていた。結果的に、暑さもあったと思うが、それは全員同じこと。ラストを勝負するということで、今回は遠藤選手のほうが勝っていたかなと思う。
(ピークを)合わせられたのは日本選手権のほうかなと思うが、今回も準備期間はある程度あったので、そのなかでできることはやってきた。練習も順調に消化ができていたので、そういったなかで今回はうまくいかなかったが、(ワールドランキングの)ポイント的な意味合いでは、3位以内で、13分40秒前半くらいで走れば、ランキングの順位は上がってくるとみていたので、最低限の走りはなんとかできた。今回ダメだったことは次のレース…(世界選手権は)まだどうなるかわからないが、最低でもアジア大会はあるので、そういったところで「次こそは」ということで走れたらと思う。
◎男子やり投 ディーン元気(ミズノ)
優勝 83m15
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勝てて良かった。1カ月、フィンランドで過ごしたあとでのこの大会だったので、バンコクは暑すぎた。フィンランドでは“サウナ修行”もしてきたが(笑)、訳が違った。この大会に向けては、勝つために身体はある程度つくってきていたので、前半の入り(1回目77m30、2回目77m69)が自分の技術でないというか、駄目な技術で投げてしまった。暑さで刻一刻と(頭が)ボーっとしていき、バテていく環境のなかで、「6回あると思って投げると自分の投げができずに終わってしまう。3・4(回目の試技)で決めきろう」と考え、3回目でしっかり80(m)を越えて、4(回目)で勝負していくことを意識した。4回目でしっかりと勝負を決めきれたのでよかったかなともう。
後半は(助走)スピードを上げるなどチャレンジをしてみたが、身体自体はよかったが、集中力のところとかで決めきれなかった面はある。ただまあ、シーズンベストなので上出来かなと思っている。
4回目の試技は、まだ、(力が)抜けている感じがある。いいところにガツンと当たるというよりは、気持ち円盤投気味な、やりが自分から離れていってしまっている、やりを捉えきれていない投げになってしまった。しかし、そのなかで83(m台)が飛んでいるので、「日本記録は出せる」という感覚は間違っていないなと思った。(日本記録は)世界陸上で投げようというプランニングで今年はやっている。
このあとはフィンランドに戻って、試合も予定しているが練習試合程度の位置づけで臨む。ここからはスピードを上げたところに取り組みたい。世界陸上の予選は3投あるが、(1本目で感触を確かめたのちに)2本目で通過したいという思いがある。身体をしっかりもう一回つくり直して、不安なく、いい状態で迎えられるように、ここから集中して向かっていきたい。
◎男子20km競歩 村山裕太郎(富士通)
優勝 1時間24分41秒
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今大会は、(厳しい暑さ)気象条件を考えても、歩く速さよりも我慢できる選手が勝つレースだと覚悟してスタートに立った。そんな思いでスタートしたわりには、予想よりも気温が思っていたより上がらず、だいぶ涼しい状況が続いてくれた。(1km)4分10秒あたりの動きの完成度が上がっていたので、そのあたりのペースで勝負できたことが勝因とした挙げられるかなと思う。
レースは、集団で行くか、飛び出してしまうかの2択で考えていた。集団で行った場合は10kmか15kmあたりから前に出ることを考えていたのだが、住所(大翔)が最初に行ってくれたので、一緒に4分20(秒)を切るくらいで行ったら集団を抜けることができたので、あとは(沿道の)お客さんに頼んで、(後続の)中国のラップを教えてもらっていたので、そこに合わせてペースを上下した。ある程度、計画通りに進めることができたのがよかったと思う。
このコンディション下では僕もいつ止まるか読めなかったし(笑)、ちょくちょく中国のラップを聞きつつ、休みつつレースを進めていた状態だったので、勝てるかどうかはぎりぎりまでわからなかった。ラスト2㎞を切ってから「もしかしたら…」と頭をよぎったくらい。
中盤は僕もしんどかったので、15kmまでは4分15秒くらいに落として一回休み、そのあと4分05秒(ペース)くらいに上げれば、中国も諦めてくれるかなと考えた。もしそこで自分が疲れてしまったら、僕の負けだったわけだが、相手が折れてくれたので逃げきれた。僕が強かったというよりは、計画がうまく行ったという感じ。10回やって10回勝てる勝負ではなく、今日は運が良かったと思う。
日本代表となるのは今回が初めて。「JAPAN」のウエアを身につけるのが本当に嬉しくて、部屋でもウエアを身にあてて、同室だった住所に「見て、見て」と言っていたほどだった(笑)。住所とは、高校のときからずっと競り合っていたので、初代表の大会を住所と一緒に行けたことは本当に嬉しかった。住所は、オレゴン(2022年世界選手権)で先に代表になって8位に入賞していて、僕は一応、1年先輩ではあるので、「先に行かれているな」と感じていたし、社会人になってからはケガがあって見ているだけしかできず、苦しい時期が続いていたのだが、それも含めて全部が競技だと思う。今までの苦しかったことを嬉しい思いに変えていけるように、これからも取り組んでいきたい。まだ、アジアで、世界で戦えたわけではない。しっかり練習を積んで世界を目指してやっていく通過点として、いいところで通過できたなと思っている。少しは(世界レベルで活躍する)先輩方に近づけたかな、という気持ちもあるが、でも、まだまだ、まだまだ(笑)遠い。次にはアジア大会の代表にも選んでもらえている。これから2カ月ほど、しっかりつくり直せる期間がとれるので、完成度をさらに高めて臨めるようにしたい。
◎女子5000m 山本有真(積水化学)
優勝 15分51秒16
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目標にはしていたけれど、まさか1位が取れるとは思っていなかった。カザフスタンの14分台の選手は、アジア室内(3000m)で一緒に走った選手。このとき負けていたので意識はしていたし、後ろにずっとついていたインドの方も、私よりもずっとベストタイムが速いので、しっかりその子をマークして、確実に3番以内は取るという目標で走っていた。思ったよりも終盤まで身体が動いたので、途中で「もう、どうせなら1番を取ろう」と思って走ることができた。
インドの方は、ここまでに、ほかの日本の選手が戦ったときに、みんなラストスパートで負けているのを見てきたので、ラストスパートが速いということはわかっていた。だからこそ、後ろにつかれたが、ラスト400mと200mで2回、切り替えて、自分のスパートを仕掛けて、もし、来たら、粘ろうと思っていた。そうしたら、離れてくれたので、自分としては、ラストを気持ちよく上げて終わることができた。
レース中は、ワールドランキングも意識していた。1位をとったところで16分以上かかっていたらポイントが稼げないので、せめて15分50秒で行くことを目安にして走った。今のところ、世界陸上に行ける目安はクリアしていると思うのだが、まだこれから試合に出る方がたくさんいる状態。とりあえず、自分の今できる限りのことはしたかなという感じ。点数をつけるとしたら、90点くらい。するべきことはやって1位は取れたが、もうちょっとタイムが伸びたら…。あと、中盤、自分が前に出なかったのも申し訳ないかなと思うので。
春から社会人となり、環境が変わったが、積水に入ってからのレースは、ここまであまりしっくりくるものがなかったのだが、今回、タイムは置いておいて、勝ちきるレースができたというのは、実業団に入ってから一番自分のなかで収穫になったと思う。
実業団に入ってから、意識が変わった。大きく変わったのは、学生のころは高くても学生新記録とかが目標だったが、今はこうしたアジア選手権に出て、世界陸上を目指すという高い目標を持って練習ができているところ。この大会では、尾西さん(美咲、積水化学:フロントスタッフ兼チームアドバイザー)からアドバイスをたくさんいただき、心の支えにもなってくれた。世界陸上やオリンピックに何回も出ている方に、サポートしていただけて本当にありがたいことだと感謝している。
◎女子20km競歩 梅野倖子(順天堂大学)
3位 1時間36分18秒
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大会前の段階で、中国の2人が速く、あとインドとカザフスタンと自分と内藤(未唯)さんあたりで3~4位争いすることになりそうだということから、「そこには負けるな」と森岡(紘一朗)コーチから言われていた。また、3位以内に入ったら、もしかしたら世界陸上も見えてくるかもしれないと言われていたので、「最低でも4位以内を目指そう」と話していたのだが、自分のなかでは優勝を目指して、絶対にメダルを取るということを目標としてレースに挑んだ。
もし、先頭が1周目から4分半(1km4分30秒ペース)を切った場合は、ついていかずに4分40秒くらいで行く選手と一緒に10kmくらいまでは集団でついていき、残りの10kmで勝負するレースプランを立てていた。実際に中国の選手が先にリードしたが、もともと自分は最後にタレる(失速する)タイプ。ついていったら、もっとタレることがわかっていたので、そこは追わずに、2~3番手をキープして歩くことを考えた。インドの選手が2人いたときは少し焦ったが、沿道からの檄が力になって、「みんなが応援してくれているから、前についていかなきゃ」と元気をもらえて、しっかり3位をキープして、ゴールすることができた。
レース中は、ずっと3位に位置することになったが、もともと自分が弱い性格で、競ったときに後ろにゴールしてしまうところがあったのだが、それはここでやめたいと思った。途中で、インドの後ろについて少し休憩しようかなとも考えたが、そうするとずるずる(後退して)行っちゃうことがわかっていたので、自分が3位を引っ張る形で歩き、もし、最後500mの勝負になったとしても、絶対に3位は死守しようと思っていた。
代表は、これが初めてで、しかも海外ということで慣れないかなと不安もあったのだが、こっちに来てからも体調を崩すこともなく、食べ物もちゃんととることができた。また、こっちでやった2回のポイント練習も、日本にいるときよりも調子が良かったので、自信がついた。当日も、スタートするまでは緊張していたが、始まったら「楽しもう」という気持ちで臨むことができた。
次はアジア大会。藤井菜々子さん(エディオン、ダイヤモンドアスリート修了生)と出場するので、少しでも藤井さんに食らいついていけるように、残り2カ月ないけれど、しっかり練習を積んで、今よりもいいタイムや上の順位で帰ってこられるように頑張っていきたい。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)