2023.05.10(水)選手

【記録と数字で楽しむ第107回日本選手権】男子やり投:83m54の﨑山雄太が急浮上!!ディーン元気&巖優作の市尼崎高校のOB対決にも注目!!



6月1日~4日に大阪(ヤンマースタジアム長居)で行われる「第107回日本選手権」の「見どころ」や「楽しみ方」を「記録と数字」という視点から紹介する。
各種目の「2023年日本一」を決める試合であるとともに、8月にハンガリー・ブダペストで行われる「ブダペスト2023世界選手権」、7月のタイ・バンコクでの「アジア選手権」、9月末からの中国・杭州での「アジア競技大会」の日本代表選手選考競技会でもある。また、「U20日本選手権」も同じ4日間で開催される。
本来であれば全種目についてふれたいところだが、時間的な制約のため10種目をピックアップしての紹介になったことをご容赦いただきたい。また、エントリー締め切りは5月15日であるが、この原稿はそれ以前の10日までに執筆したため、記事中に名前の挙がった選手が最終的にエントリーしていないケースがあるかもしれないことをお断りしておく。

過去に紹介したことがあるデータや文章もかなり含まれるが、可能な限り最新のものに更新した。
スタンドでの現地観戦やテレビ観戦の「お供」にして頂ければ幸いである。

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男子やり投は、大会1日目 6月1日実施


【男子やり投】

・決勝/6月1日(木)



83m54の﨑山雄太が急浮上!!ディーン元気&巖優作の市尼崎高校のOB対決にも注目!!

元野球&サッカー少年が世界を目指す

今回の日本選手権の会場となる長居競技場(ヤンマースタジアム長居)で、木南記念の男子やり投の競技が5月6日16時30分に開始された。その1投目、第10投てき者の﨑山雄太(愛媛陸協)が、いきなり大きなアーチをかけた。「83m54」。東京五輪代表となった小南拓人(染めQ)が2年前の6月1日にマークした82m43の大会記録を更新する日本歴代5位。22年5月8日の国立競技場でのゴールデングランプリで投げた80m51の自己ベストを一気に3m以上も破ってみせた。
この時点での23年日本最高で、3週間と4日後の日本選手権の優勝候補として一躍クローズアップされることになった。2投目以降は、76m88-×-77m36-×-77m78のシリーズ。「一発」ではあったが、自身としては19年の80m14(10月5日)、上述22年の80m51に続く3度目の80m超えだった。

奈良市の出身で小中学校では野球やサッカーをやっていた。姉の影響で12年に関西創価高校では陸上部に。当初は、走幅跳をやっていたが、授業でやり投を経験し、「面白い」と思い、やり投を始めた。
最初の公認記録は、7月の37m59。それ以降40m69、45m16、46m41、50m82と伸ばしこれが高校1年生のベスト。高校2年で60m71、3年で61m06まで伸ばし近畿4位で全国インターハイに出場。晴れの舞台ではセカンドベストの60m92を投げたが、全体の19番目で予選落ちだった。

15年に日大に進学。直後の4月26日に、何と13m以上もベストを伸ばす74m11で大化けした。が、その後は右肘の内側側副靱帯を損傷。大学2~3年の時には腰椎分離症などに悩まされ、4年生の時に75m61まで伸ばすにとどまった。

19年に愛媛県の競技力向上対策本部に就職。09年ベルリン世界選手権で銅メダルを獲得した村上幸史を始め今治明徳高校で数多くの優秀な選手を育ててきた濱元一馬先生に師事することになった。
学生時代に苦しんだ故障も回復し、社会人1年目の秋には80mオーバー(80m14)を果たした。当然のことながら東京五輪を目指すことになったが、20年の夏頃に左足首を痛めて五輪への夢はかなわなかった。五輪へのラストチャレンジとなった21年の日本選手権後に手術。22年に入って自分の思うような投げができるようになって、5月に2度目の80mオーバー(80m51)。23年の3月にはオーストラリアで合宿。そこで良い感覚をつかみ、5月6日の83m54につなげた。

83mのビッグスローにも浮き上がることはなく「安定して80mを投げられるようにしたい」という。
96年4月5日生まれの27歳。
「いい年齢になってきたので、世界も狙っていきたい。ブダペストも、(24年)パリ五輪も、28年のロス五輪くらいまでやっていきたい」とも。

日本選手権での成績は、
15年14位
18年5位
19年4位
20年9位
21年11位
22年4位

表彰台にはまだ登ったことはない。
83m54を投げたばかりの同じ長居競技場で、ブダペストに向けて6月1日にどんなアーチを描くのか、注目だ。


市尼崎高校のOB対決に注目!!

22年に10年ぶりにタイトルを獲得したディーン元気(ミズノ)が連覇に挑む。が、その前に立ちはだかるかもしれないのが、上述の﨑山のほか今年80mスローワーの仲間入りをした巖優作(筑波大3年)である。11歳の年齢差があるが、ともに兵庫県の市立尼崎高校の卒業生。出身中学校も、ともに神戸市でディーンが西区の平野中学校、巖が垂水区の多聞東中学校。両校の場所は直線距離で8kmあまり。この狭い範囲から大学生で歴代3人しかいない80mスローワーが11年の歳月を経て2人誕生しているというのはすごいことだ。

高校時代のベストは、ディーンが70m57で巖が74m96。ディーンが作った兵庫県高校記録を巖が更新した。ともに「高校日本一」のタイトルを獲得しているところも共通点。大学3年生の4月に初めての「80m台スロー」というところも共通している。

大学に入ってからの年次ベストは、下表の通りディーンが上をいく。

<ディーンと巖の高校から大学3年までの年次ベスト>
学年ディーン
高159.47
高265.3768.85
高370.5774.96
大178.5776.41
大279.2072.02
大384.2880.09(5月7日時点)

巖は大学1年の4月3日に76m41のベストを投げ、次の試合も73m33と順調な滑り出しだった。しかし、5月に右肘の内側側副靱帯を損傷してしまった。再び記録を残せたのは1年後、2年生になった4月16日の日本学生個人選手権(71m89)だった。が、ここで無理をして投げたことで再度の故障。直後の関東インカレは1投のみ投げて記録なし。その後、左のすねを疲労骨折。9月の日本インカレには出場したものの3投とも61~62m台の記録しか残せなかった。
が、諦めはしなかった。冬場には2年連続でディーンとともに海外に出かけ、今年の2~3月はスペインの温暖な気候のもとで練習。体幹の強化にも励んだ。その地道な努力が実って、復活の80m台となった。

11年前、ディーンも大学3年生の春に大ブレイクした。
2000年から日本選手権で12連勝していた村上幸史(スズキ浜松AC)の「V13」にストップをかけた。12年に早稲田大学3年生となった20歳のディーンだった。日本選手権は大学1年で3位、2年で2位、そして3年になった12年には春の織田記念で84m28。それまでの自己ベストを一気に5m以上も更新、当時の日本歴代2位で現在も学生記録として残る大アーチだった。それから1カ月あまりあとの日本選手権でも84m03を投げて初優勝。織田での記録がフロックではなかったことを示した。その勢いで出場した同年秋のロンドン五輪は9位。惜しくも入賞には届かなかったが大健闘だった。

しかし、その後は日本タイトルから遠ざかってしまう。15年からの5年間は表彰台に立つこともできなかった。腰の故障や休養期間を設けたりの語り尽くせないほどの苦しい時期を経て、20年8月に8年ぶりの84m台、翌年も82m台で復活。日本選手権も2年連続2位。そして初優勝から10年の歳月を経て、22年に2度目の日本タイトルを獲得したのだった。これは、この種目での「久しぶり優勝」の歴代2位。第二次世界大戦での大会中止期間を含め、1936年(23回)と49年(33回)を制した鈴木源三郎の13年ぶり(10大会ぶり)につぐものだった。

<ディーンの日本選手権(NC)での順位と年次ベスト(SB)>
NCSB
08年--65.37
09年--70.57
10年3位78.57
11年2位79.20
12年1位84.28
13年2位80.15
14年3位77.32
15年5位77.51
16年5位79.59
17年7位75.30
18年12位76.33
19年5位78.00
20年2位84.05
21年2位82.15
22年1位82.18
23年??77.94=5月7日現在

ともに苦しい時期を経て復活してきた「市立尼崎高校OBコンビ」がどんな投げ合いをするか、注目だ。


新井も初戦から大アーチ



ここまでは、大きくブレイクしてきた﨑山雄太と「市尼(いちあま)」出身の2人の話を取り上げてきたが、日本歴代2位の記録(86m83/14年)を持つ新井涼平(スズキ)を忘れている訳ではない。
14年から日本選手権7連覇、この10年あまりの男子やり投界を牽引してきたレジェンドだ。シーズン初戦で82m21を投げていて、新井が3年ぶり8回目のタイトルを獲得する可能性も高い。現段階での優勝回数7回は、歴代2位タイ。トップは、11年前にディーンが連覇を12で止めた村上幸史さんの計13回だ。

上述の通り、23年の新井はシーズン初戦4月1日の国士館大競技会で82m21のアーチをかけた。初戦の記録としては、86m63の自己ベストをマークした14年の85m48に次ぐものだ。大学1年生からの初戦とその年の最高記録を比較したのが下の表だ。

<新井の大学1年生以降のシーズン初戦とその年の最高記録>
年月日初戦-->年最高月日記録のアップ
2010.03.1459m64-->64m8111.135m17
2011.03.3071m72-->78m2106.126m49
2012.04.2171m34-->78m0010.146m66
2013.03.2577m06-->78m1907.281m13
2014.04.2985m48-->86m6310.211m15
2015.04.0478m95-->84m6608.245m71
2016.04.2979m93-->84m5406.254m61
2017.04.2979m68-->82m1306.242m45
2018.04.2979m81-->80m8307.081m02
2019.03.2482m03-->82m0303.240m00
2020.07.2573m68-->81m7310.248m05
2021.03.0779m20-->79m2003.070m00
2022.04.0972m24-->82m9908.2010m75
2023.04.0182m21-->???  

年によって差はあるが、初戦がシーズンベストとなった19年と21年を除くと「1m02~10m75」のアップ。19・21年を含めた平均では初戦の記録から「4m092」伸ばしている。これを今年の「82m21」にあてはめると伸ばした距離の範囲では「82m21~92m96」となる。92m台はさすがにないが、平均では「86m30」となり、9年前の自己ベストに迫る計算だ。ブダペスト世界選手権参加標準記録は「85m20」である。

また、ディーンとともにオレゴン世界選手権に出場した小椋健司(エイジェック)、東京五輪代表の小南拓人(染めQ)、80mライン手前の数人も、虎視眈々であろう。


日本選手権での「順位別最高記録」

1)84.542016年
2)83.952012年
3)78.872011年
4)78.212011年
5)76.762022年
6)76.542022年
7)75.442022年
8)74.882022年

上位には、2010年代の記録が並ぶが5位以下はすべて22年のもので、このところの底上げ具合を示している。


・記録は、5月5日判明分。
・記事中の「WAランキング」は5月2日時点のもの(毎週火曜日に発表されるので、できる限り最新のものを盛り込みたいところだが、原稿の締め切りの都合で5月2日時点のものとした)。
・記事は、5月5日時点での情報による。上述の通り、エントリー締め切り5月15日以前に書いた原稿のため、記事に登場する選手が最終的にエントリーしていないケースがあるかもしれない。また、競技の実施日は確定しているが具体的なタイムテーブルとエントリーリストは5月19日に公表される予定である。
・現役選手については敬称略をご容赦いただきたい。

なお、日本選手権の期間中、ここで取り上げることができなかった種目以外の情報(データ)も日本陸連のSNSで「記録や数字に関する情報」として、その都度発信する予定なので、どうぞご覧くださいませ。



野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)



【第107回日本陸上競技選手権大会】




今年はスペシャルチケットとして、テーブル・コンセント付きの最上位グレード席となる「SS席」、1日50席限定の「B席アスリート交流チケット」、1日15席限定の「カメラ女子席」、そして日本選手権では初めてサブトラックの観戦ができる「サブトラック観戦チケット」を販売!既に一部の席は完売となっておりますので是非お早めにお買い求めください!
>>エントリーリスト(5月9日13時00分時点)
※エントリー締切期日は5月15日(月)17時00分となります。
※エントリー締切後に資格審査を行った後に、出場可否が決定します。

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https://sports.yahoo.co.jp/contents/12894

■「世界選手権」「アジア選手権」「アジア競技大会」日本代表選手選考要項
 https://www.jaaf.or.jp/news/article/15943/
■ブダペスト世界選手権参加資格有資格者一覧
https://www.jaaf.or.jp/news/article/17055/
■「WAランキング」ブダペスト世界陸上への道
https://www.jaaf.or.jp/news/article/17277/

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