日本グランプリシリーズグレード1「第58回織田幹雄記念国際陸上競技大会」は、WA(ワールドアスレティックス)コンチネンタルツアーブロンズ大会として、4月29日(土)、広島広域公園陸上競技場(エディオンスタジアム広島)において開催されます。大会前日となる4月28日(金)午後に、注目選手を招いての記者会見が会場で行われました。会見には、広島出身の日本記録保持者である男子100m(9秒95)の山縣亮太(セイコー)と女子100mハードル(12秒73)の福部真子(日本建設工業)のほか、女子100mで昨年日本歴代2位となる11秒24をマークしている兒玉芽生(ミズノ)の3名が参加。メディアからの質問に応じ、これまでの状況や大会に向けての抱負を話しました。
各選手のコメント(要旨)は、以下の通りです。
【会見参加選手コメント(要旨)】
※会見実施順に掲載■山縣亮太(セイコー) ※男子100mに出場
(昨年休養して、久しぶりのレース復帰を控えた)今の心境は、明日のレースに対するワクワクした気持ちもあるし、走れていたころに感じていたのと同じような「自分が今試していることが出しきれるか」「うまくレースを運べるかどうか」という不安もある。「帰ってきたな」という感じ。
今日の練習では、この1週間で疲労を抜いてきたなか、レースに近い刺激を入れ、明日の本番を迎えるための内容を行った。走りのリズムが昔と変わっているので、特に、重点的に確認したのは、最初の加速と中間の加速のつなぎの部分。そこがうまく切り替えられるように意識した。
(手術した)右膝に関しては、ほとんど問題なく、練習にも影響はないので、すごくいい状態。(初戦の欠場理由となった)内転筋のほうも今は全く問題なく、(初戦予定だった)4月2日の時点では少し張りが出ていたけれど、そこからは順調に練習ができている。(200mからゆっくり始めるという)思い描いていたシーズンインとは違う形になったが、この織田記念のあと、1週間後に木南記念で(出場を予定している)200mのレースもあるので、練習では(計画通り)200mを中心にした内容に取り組んできた。明日の100mでスピードの刺激を入れて、木南記念にもつなげていきたいなというイメージで、ここまでやってきている。
100mは若い選手がたくさん出てきているし、層が厚くなっている。そういった選手に負けないよう、明日のレースも頑張っていきたい。また、(長年、ともに競い合ってきた)桐生(祥秀)くんも休養明け。彼も今季復帰して、すごく楽しそうに競技をし、徐々に調子を上げてきている印象がある。自分も早く第一線に戻って、ライバルたちと切磋琢磨して、また世界を目指す舞台に立ちたい。
自分は、日本選手権の申込資格記録(10秒39)をまだ切っていないので、明日は、タイムはまずそこが目標となる。100mに関しては織田記念が最初で最後のチャンスとなる見込み。正直、楽な水準ではないのだが、まずは突破して、次につなげることを念頭におきたい。
レースを見ていただく方には、走りのリズムが今までの自分と変わってきているので、「なんかちょっと今までの山縣と違うな」というのを感じてもらえたら…。また、久しぶりの復帰レース、本当はシーズンインになるはずだった4月2日の六大学陸上をケガで欠場したことで心配してくださっていた方も多いと思うので、「ああ、大丈夫そうだな」と思ってもらえたら嬉しい。
■福部真子(日本建設工業) ※女子100mハードルに出場
この冬は、「12秒5を切りたい」という目標を持って、コーチと一緒に取り組んできた。しっかりフィジカルをつけていくという面では成功しているのだが、高まったフィジカルをハードルの技術と噛み合わせるという面で苦戦している。ただ、走り自体はすごく力強くなっていて、エンジン自体は積めている。あとは、レースを積んでいくなかで、どこかでパチンと技術とフィジカルが合ったときに、目指していたものが出るのかなと、現段階では考えている。
フィジカル面では、肩まわりや上半身は、二回りは大きくなっている。また、お尻とハムストリングスも大きくなったなと自分でも感じている。ただ、今まで、そこまでパワーをつけたことがないので、その状態で走ったときに、スプリントは上がってはいるものの、「滞空時間を少し持たせて、接地が長い形で大きく走っていく」という今までのスタイルが、いつの間にか滞空時間がなくなり、簡単に言うと余裕がなくなっている状態になって(噛み合わなくなって)しまった。自分は、ハードルを踏み切る位置は目で覚えていて、これまで自分のタイミングで合わせにいくことができていたのだが、急にそれがシビアになってしまった。自分が踏み切りたいと思ったときにはもう着地していたり、走らなきゃというときにはもう踏み切り動作に入っていたりで、自分のなかでも「なんだ、この感覚は」という状態が続いている。
ただ、それを寺田明日香さんや(寺田さんのコーチである)高野(大樹)さんに相談したときに、「そうなっていくのだと思う」「それも、いい変化」と言っていただけた。また、コーチからも、「今までの感覚に戻りたくなる気持ちはわかるが、戻ったら12秒7とか12秒6止まり。もうひとつ突き抜けるためには、新しい感覚にチャレンジしていかなければ」と言われている。私自身もスプリント自体は上がっていることを感じているので、目で追えなくなったものを、そのうち追えるようになってくるのかなと思っている。どのくらい時間がかかるかはわからないが、(その取り組みを)頑張りたい。
昨シーズンは、ありがたいことにオレゴン(世界選手権準決勝)で世界新記録(12秒12)が出たレースを体験させていただいたのだが、そのときに(世界記録を樹立したトビ・アムサン選手の)背中が見えなかった。自分も(9月に)日本記録を12秒73まで更新したが、そのタイムで一緒に走ったとしても歯が立たないという現実は、自分のなかですごく重く受け止めた。
今年、世界選手権の参加標準記録はすでに切っている状態だが、守りに入って12秒6~7台あたりを目指してブダペストに行っても、同じことの繰り返しになってしまう。自分は、パリ(オリンピック)のファイナルを一番の目標にしているので、それを思うと、今年、もし、(技術の完成が)間に合わなかったとしても、それでもチャレンジしていかなければいけないと考えた。そういう意味で、不安と覚悟とワクワクみたいな感情がごちゃごちゃで、終始情緒不安定(笑)の状態にある。それでも、こうやって12秒5を切ることを目指せている今を大切にしたいし、ここまで這い上がってこられたことを自分のプライドとして持ちつつ、チャレンジしていけたらと思う。
地元広島でのレースなので、いいところを見せたいなと思ってはいるが、(技術が)どう噛み合ってくるかわからないし、8月(の世界選手権)に向けての準備段階なので、全くタイムも予想できないというのが正直なところ。100mハードル自体のレベルも上がっていて、甘い世界ではなくなっているので、カッコイイところは見せられないかもしれないけれど(笑)、こうやって楽しんでいる挑戦する姿が、誰かの力になってくれたらと考えているので、明日は、笑顔で走りきれたららいいなと思う。
■兒玉芽生(ミズノ) ※女子100mに出場
先週、出場を予定していた東京スプリングを、アキレス腱に違和感が出て棄権した。そのため、この大会に向けて、当初予定していたような調整やトレーニングが積めているかといわれると十分ではないのだが、まずはしっかりと自分のレースをするために、ここに来た。
アキレス腱の痛みが出たのは左脚。試合の2~3週間くらい前から違和感があった。練習を離脱しなければいけないというほどのものではなかったのだが、アキレス腱痛が長引くことは経験しているため、「今、無理する状況ではない」と判断し、東京スプリングは欠場した。その後は、天候によって痛みが出たり出なかったりしていたので、その日にやれる最大限をやるという形で練習に取り組んできたが、今は、もう心配はない状況である。
今日の練習は、加速距離の確認や接地のタイミングにポイントを絞って行った。明日は、今季初戦で、どういう走りができるか自分自身も未知であるが、ごまかす走りをするのではなく、日本選手権につなげられるような走りをしたい。
この冬期練習は、下半身と上半身の筋力に差があることが課題だったので、身体つくりを徹底的に行った。具外的には、測定してみると明らかに体幹まわりが弱く、左右差もあったことや、走っているときにどうしても脚中心の走りになってしまい、上半身がついてこなかったところがあったので、ウエイトトレーニングの回数や重量も増やして、大きな力を出すトレーニングを行った。同時に、自重での体幹トレーニングなど、細かいところから見直すことにも取り組んだ。こうしたトレーニングを、ここまで徹底してやったことは初めて。左右差のバランスが変わってきたように思うし、長い距離を走ってきつくなったときに、体幹がぶれなくなったりもしている。また、走りにおいては、加速局面のトップスピードをいかに出すかというところで、低い姿勢のなかで加速距離を延ばすトレーニングも行ってきた。
昨シーズンを振り返ると、11秒2台(11秒24)は出せたものの、前半シーズンがうまく行かなかったこと、11秒2台を一度しか出せず安定していなかったことが課題に残った。今年は、しっかりと狙った大会で結果が出せるように、そして、11秒2台を安定して出せるようにしていきたいと考えている。今年は、まずはブダペスト世界陸上に向けては前半シーズンが大事になるし、来年のパリオリンピックに向けては後半シーズンも大切になってくる。前半シーズンだけでなく、後半シーズンにも結果を出していくことが必要。1年間を通して、結果が出せるように調整していきたい。
今季は、世界選手権やアジア選手権に出場して戦うことを目標にしているが、そのためにも日本選手権や日本グランプリシリーズなど、出場する試合で自分の走りをして結果を出すことができなければ、その先はないと思っている。1つ1つの試合をやっていきながら、最終的にどこを目指すのか、どういう調整をするのかを決めていきたい。
8月にハンガリーで行われるブダペスト世界選手権、7月にタイで行われるバンコクアジア選手権、9月に中国で行われる杭州アジア大会の日本代表選考会を兼ねて行われる本大会は、4月29日午前10時45分に競技開始。11時45分にスタートする女子三段跳から始まるグランプリ種目は、男女16種目(男子8、女子8)が行われます。大会の前売り券は、すでに販売されています( https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202304/17_193514.pdf )が、当日券は、会場で午前8時00分から販売。また、日本陸連YouTubeチャンネルでは、競技開始にあわせて午前10時30分ころよりライブ配信を予定しています。ライブ配信のURLほか、タイムテーブルやエントリーリストおよびスタートリストなど、大会に関する詳細は、下記をご参照ください。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト
【LIVE配信】
2023年4月29日(土)10時30分競技開始予定
■【織田記念】エントリーリスト
https://www.jaaf.or.jp/files/competition/document/1734-4.pdf
■【織田記念】競技日程
https://www.jaaf.or.jp/files/competition/document/1734-3.pdf
■【織田記念】大会公式HP
https://hiroshimatf.org/m-oda-2023
■【織田記念】チケット情報
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202304/17_193514.pdf
【日本グランプリシリーズ】
>>特設サイトはこちら
2023年のテーマは『全員と闘え。』~種目を超えた、陸上競技の新たなる闘い~ポイントの集計方法が新しくなり、種目の垣根を越えてランキングを争い「陸上界で最も強いアスリート」が決定します!陸上界最強に輝くのは誰か。是非シリーズを通して選手たちの活躍にご注目ください!
【セイコーGGP】5月21日(日)横浜で開催!
>>チケット絶賛販売中
「セイコーゴールデングランプリ陸上」は、2011年から始まり今年で12回目を迎えます。今大会は、初開催となる「日産スタジアム」を舞台に世界のトップアスリートが集結し、熱い戦いを繰り広げます。
【日本選手権】6月1日(木)~4日(日)大阪で開催!
>>チケット絶賛販売中
日本の王者が決まる日本選手権。本大会は「オレゴン2023世界陸上競技選手権大会」「バンコク2023アジア陸上競技選手権大会」「杭州2022アジア競技大会」の日本代表選手選考競技会を兼ねており、王者誕生と同時に頂点の先にある「世界」への挑戦が始まります。王者誕生の瞬間に是非ご注目ください!
関連ニュース
-
2024.10.21(月)
日本グランプリシリーズ グレード2 第21回田島直人記念陸上競技大会のリザルトを掲載しました
大会 -
2023.05.02(火)
【GPシリーズ 織田記念】レポート&コメント:北口榛花が今季世界最高記録で世界陸上日本代表に内定!男子100mは栁田大輝が接戦を制し初優勝を果たす
大会 -
2023.04.27(木)
【ライブ配信実施】日本GPシリーズ 織田記念:広島県出身の山縣・福部・高山、オレゴン世界陸上日本代表20名がエントリー!
大会 -
2023.04.16(日)
【GPシリーズ 織田記念】エントリーリスト発表:広島出身の山縣亮太、福部真子、高山峻野、ダイヤモンドリーグファイナリスト北口榛花、三浦龍司が参戦!
選手 -
2023.03.08(水)
日本グランプリシリーズ グレード1 第57回織田幹雄記念国際陸上競技大会の大会要項を掲載しました
大会