東京オリンピックの開会式から一夜明け、大会前半に実施される競技が本格的にスタートした7月24日、北海道・千歳市を拠点に事前調整合宿に入っている東京オリンピック男女競歩日本代表選手が、代表での撮影に限定する形でトレーニングを公開しました。
また、同日午後には、男子20km代表の山西利和(愛知製鋼)、池田向希(旭化成)、高橋英輝(富士通)、男子50kmの川野将虎(旭化成)、丸尾知司(愛知製鋼)、勝木隼人(自衛隊体育学校)、女子20kmの岡田久美子(ビックカメラ)、藤井菜々子(エディオン)、河添香織(自衛隊体育学校)の全選手が、オンラインでの合同インタビューを中心とする報道各社からの取材に参加。それぞれが現在の体調や心境、本番での展望や目標を述べました。以下、各選手の主なコメントをご紹介します。
【男子20km代表選手コメント(要旨)】
◎山西利和(愛知製鋼)
オリンピックに向けては、金メダルをターゲットにずっとやってきたので、そこは変わらず、取りにいきたいと思っている。(昨日の)開会式はテレビで見ていたが、だからどうこうという気持ちはなく、「始まったんだなあ」という思いだった。(レースまでの)残り日数は12日。残りの日数と時間を使って、やれることを一つ一つやっていくしかないのかなと感じている。
レースについては、ラスト5kmを切ってからペースが上がっていく大会が多いので、そこでしっかり対応したうえで最後に勝ちきるということと、そのパターンだけにこだわらずにレース全体をうまくコーディネートできたらいいなと考えている。
(他国の)エントリー選手も見ているが、そもそもトップ争いに絡んでいく選手というのは、この2~3年を見ていれば想定できる。ドーハ(世界選手権)や直近のレースで調子のいい選手は何人かわかっているので、その選手をマークしながら、うまくレースを進めたい。最後で勝ちきるためには、どうしても自分が(勝負を)決めに行かなければならないポイントがあると思う。そこまでをさまざまなパターンにきちんと対応しながらも、最後は自分に流れを引き込んでいきたい。
北海道での合宿は、7月前半に10日ほど行って、一度愛知に戻り、昨日(7月23日)、また入ってきた。7月前半の合宿はかなり涼しかったので、いい練習ができている。また、暑さについては、毎年、ここ千歳市を使って合宿させていただいているので、この時期の暑さも想定できていて、例年と同じくらいかなという印象を持っている。愛知での練習も含めて、ある程度、暑さに対する馴化もしてきたので、どんな天候が来ても対応できる下地はできている。涼しければ、自分の持ち味である地力の高さをいうのを出しやすいし、逆に、暑ければ暑いほど…例えば湿気が出れば出るほど…コンディションが悪くなっていくので、僕の得意な展開かなとも思うし(笑)で、どのパターンが来ても自分のいいところに引きずり込むことができれば…という気持ち。暑さは日によって幅があるので、どうなっても対応できる準備をしっかりしておき、その上で当日判断する。残りの12日間でいろいろと試しながら、「じゃあ最後、どのチョイスにしますか」というところを見ていけばいいと考えている。
「金メダル候補」と言っていただくこともあるが、僕自身は(オリンピックに)1回も出たことのない選手。そこはあまり気負わずに、思いきっていければいいかなと思っている。
(世界選手権と五輪、違いはあるのか? との問いに)特に大きな違いはない。どういう舞台であろうと、どんなレースであろうと、場所がどこであろうと、勝つために必要なこと、大切なことは変わらないと思うので。きちんと抑えるべきところを抑えて、一つずつ残りの12日間で手順を踏んでいくということがすべてだと思っている。
◎池田向希(旭化成)
昨年、オリンピックが1年延期になったことで、まず暑熱対策については1年かけて、特に昨年の夏、重点的に(強化を)行うことができた。それによって、より実戦的な取り組みができたように思っている。また、スタミナ面とスピード面の2つを軸として両立させることと、フィジカルの強化についても、ずっと取り組んできた。その面も昨年よりもレベルアップした状態で、今を迎えることができている。例えば、練習の場面では、昨年できなかった練習が、今年はできているし、フォームの面でもよりジャッジをとられないような歩型を(酒井)瑞穂コーチとつくり上げてきていて、歩型の部分では自信を持って臨むことができている。フォームは、毎日動きが変わりやすい面があるが、瑞穂コーチと動画を見て、その日その日のポイントを押さえるようにし、(修正が必要な)ズレを最小限に抑えるようなフィジカル(強化)に取り組んできたので、そこに関しては、この1年間で大きく自信がついた部分といえる。2019年ドーハ世界選手権(6位)は、自分のやりたかったレースが思うようにできない部分があった。今回は、気負わずに、自分のやりたいレースを体現したい。
(代表チームの事前調整合宿に参加しての感想を問われて)やるべきことは、普段の所属チームでやっている練習と変わらない。そこは自分のなかで強い芯は持っているので、どういう環境になっても、そこはぶらさずにできている。一方で、先輩やほかのスタッフの方々からアドバイス等をいただける機会もあるので、そういった面ではプラスになる部分も多く、とても良い機会をいただいているなと感じている。
今回の五輪は、ずっと一緒に練習をしてきた同期の川野(将虎、50km代表)も出場する。ともに五輪を迎えられることを本当に嬉しく思っているし、ずっと2人でやってきた仲であるからこそ、最後まで2人で気を引き締めて、いい緊張感をもって(本番に向けて)やっていこうということができているのかなと思う。
オンピックはラスト5km勝負となるレース展開が予想される。自分もそこに加わって、磨いてきたスピードと、メンタル…心の部分をラスト5kmにぶつけて、勝負したい。
◎高橋英輝(富士通)
いろいろな方たちのサポートのおかげで、東京オリンピック代表に内定することができた。本番では、お世話になった方たちに自分の成長した姿を見せられるように頑張りたい。大会に向けては、多くの方の協力のおかげで、自分のやりたい準備がすべてできている。具体的には、北海道での合宿のほか、例年通り長野県でも合宿をさせていただいた。また、今までの国際大会のときと同じように、愛知製鋼さんなど他の所属の選手とも一緒に練習をすることで力を蓄えてきた。例年以上にいい準備ができているように思う。全部がいい方向で行っていて、今までの準備にも満足しているので、感謝の思いを持ちながら、引き続きレースに向けて準備をしたい。
(2016年リオに続いて2大会目のオリンピックとなるが)リオ五輪のときは、前年の北京選手権の50kmで谷井(孝行)さんが(銅)メダルを取っていたこともあって、「20kmは自分が頑張るぞ」といった思いを持っていた。ただ、それに見合う身体の準備も含めて、その思いを結果にできるだけの実力が備わっていなかった。それから5年の時間が流れて、今は、若い選手たちと切磋琢磨して競技をしているわけだが、国内のレースでも一瞬の油断もできない状態で、そういった意味で立場も変わり、たくさんのレースを乗り越えてきたなかで強くなってきた。今まで一緒にやってきた選手たちや、今一緒に戦っている若い選手たちのおかげだなと思う。
(課題でもある)歩型については、2018年に大腿骨を疲労骨折してから歩型が崩れだして、それから理学療法士の方のお世話になりながらトレーニングを続けてきた。ドーハ(世界選手権)でもお世話になっていて、結果には表れていなかったが、自分自身では手応えのようなものを感じていた。以降も、その取り組みを続けてきて、今、少しずつ歩きをコントロールしたり整えたりする素地ができてきている。
オリンピックで目指す結果に関して、自分の気持ちの一番にあるのは「トレーニングでやってきたことを本番で出したい」ということ。いろいろな人の支えで、今ここに立つことができているので、その気持ちをレースで体現したい。オリンピックの出場に関しても、決して簡単に手に入れられた権利ではない。一緒にそこを目指してきた人たちと、今も目指している人たちと一緒にスタートラインに立って、自分の力がどこまで通用するのか感じたい。その上での結果であるのなら、なんでも受け止めることができるんじゃないかと思っている。
戦略という意味では、レースの前にどれだけいい状態になれるかということがまず一つ。そして、レースのなかでは、日本勢の2人(山西・池田)や、いつも同じ順位にくるスペインの選手など、気になる選手が何人かいるので、その動きを把握しながら、俯瞰的にレースを進めたい。また、暑くなるという情報もあるので、どう暑熱対策をするかについても、これから最後を詰めていきたい。
【男子50km代表選手コメント(要旨)】
◎川野将虎(旭化成)
50km(競歩)という種目は、今回のオリンピックで最後となる。東洋大学OBで現在日本陸連オリンピック強化コーチをしておられる今村(文男)さんであったり、旭化成のOBで前回大会の50km競歩に出場された三輪(寿美雄)さん(※1964年東京大会、27位)であったり、本当に過去に多くの方々が道なき道を切り拓いてくださった。そのおかげで、今の自分たちがある。今回の東京オリンピックが(50kmの)最後の大会になるので、そこに向けて金メダルを目標にしっかり調整していくことが、今の自分にできる責務かなと思っている。(目標を達成するための本番のポイントは? の問いに)暑いなかでのレースということで、本番がどういったレース展開になるかはわからないが、最後の残り10kmや後半暑くなってきてからが勝負。そこでどれだけ力を溜めておけるか。体力面だけでなく、フォーム面や心理面に関しても、(その溜めた力を)最後の勝負所に持っていきたい。また、暑さ対策については、陸連(科学委員会)の杉田(正明)先生を中心に、専任コーチの(酒井)瑞穂コーチとうまく連携をとっていて、給水のやり方や身体を冷やす方法についても、しっかりとシミュレーションできている。(大会当日まで)引き続き取り組んでいきたい。
昨シーズンは、オリンピックが1年延期になったことで、レースに出場することよりも、しっかりと力をつける期間とした。基本的な身体つくりから始めて、試合期というよりは鍛錬期という意識で取り組んできた。今年に入ってからの合宿は、基本的にはずっと福島県の猪苗代町で実施していて、「合宿に行っては休んで」を繰り返すような形で強化してきた。50kmのレース自体は、(日本新記録を樹立して五輪代表に内定した2019年全日本競歩高畠大会以来)2年弱ぶりとなるが、レースを想定した練習は、瑞穂コーチと相談しながら行えてきていて、そのなかでペース変化にも対応する練習もできている。(五輪本番が)実際にどういうレース展開になるかの予測は立たないが、どういう展開になっても勝負できる準備はしてくることができたと思っている。
世界大会はユニバーシアード(現ワールドユニバシティーゲームズ)の代表経験(2019年シチリア大会男子20km銀メダル)はあるが、シニアでの日本代表は初めて。(コロナ禍の)こういう状況のなかで、オリンピックに対して、よく思わない方もいらっしゃるとは思うが、日本代表として選んでいただいたので、今の自分にできることは代表としての責務を果たすことかなと考えている。昨日、開会式が行われて、(世間的には)オリンピックモードに入ってきているわけだが、(自分としては)特に変わることなく、これまで通りにやっていき、当日を迎えたい。
◎丸尾知司(愛知製鋼)
オリンピックに向けては、金メダルをターゲットにしながら、自分の力を最大限に発揮できるような準備を(残りの日々で)進めていきたい。直近のレースでラスト5kmが大きくペースダウンしてしまっているという点があったので、代表に内定してからは、後半のペースアップ能力向上というところに重きを置きながら練習に取り組んできた。
暑熱対策については、今日(の午前の練習が)ちょうど気温が高くて、そのなかで実際のレースに近いペースで練習することができ、何が必要で何が必要ないかということをはっきりさせることができたので、以前のような失敗はないかなと思っている。
今回のレースでは、ラストの13kmから10kmあたりで気温が上がってくると思う。そこでペースを落とさないように、さらにはペースアップできるような歩きをしていきたい。
金メダルを狙う上では、30kmを過ぎたところで自分の余裕度が高ければ問題ないのかなと考えている。レース前半で仕掛けがあるかないかはわからないが、(勝負の行方は)30kmを過ぎた時点でだいたいはわかるかなと感じている。その辺りでの余裕度が、メダルないし、さらにいいものに繋がっていくのかなと思う。
(ライバルとして挙げるとしたら、との問いに)カナダのエヴァン・ダンフィなんかは、本人が練習をすべて公開していて、すごくいい練習をしているという話も聞いている。後半にペースアップする展開、または暑くなる展開でも、最後の最後まで戦うことになるのかなと感じている。前回のリオ五輪で4位だった悔しさもあると思うし、気持ちの部分でも、身体の部分でも強いのかなと思っている。(世界記録保持者の)ヨハン・ディニ選手(フランス)に関しては(状態が)わからない部分がありつつ、ただ、2017年(ロンドン世界選手権)に戦ったときは手も足も出ない状況だった。今回、勝負させてもらって、どうなるかなという感じ。中国勢に関しても(状況が)不透明な部分があるけれど、(オリンピックに向けて)しっかりつくってきていると思うので、注意しながらレースを進めていきたい。
オリンピックは初めて臨むことになるが、やはりオリンピックというと、特別な思いがあるし、もちろん緊張もしてきている。それに対して、しっかりと向き合っていきたい。
◎勝木隼人(自衛隊体育学校)
代表になってからの期間がほかの選手よりも短いこともあり(※5月25日時点で補欠選手として登録・発表されていたが、鈴木雄介選手のコンディション不良による内定辞退を受けて、6月22日に代表に内定した)、準備がいつもよりできていない面も事実としてある。(オリンピックでは)入賞をまずは目標にやっていきたい。(選考会の日本選手権で、万全でないなか自身が想定した展開を貫いたことで補欠の結果を得ていた経緯を踏まえて出た「自分を貫く強さの原点はどこにあると思うか?」という問いに対して)競歩を始めたころ、日本インカレ優勝とか2連覇というような結果がすぐに出たのだが、そのあと一度すごく競技力が落ちてしまったことがある。そのときの経験から、「今のレベルでしっかり土台をつくり、今のレベルでできることを確実にやっていく」のが継続して結果を出していくことに繋がると考えるようになった。「今できることを最大限に、すべてやっていく」を積み重ねてきたら、今のようなやり方になった。
(暑さに強い印象があるが、それを実感したレースはあるか、との問いに)僕のなかでは2回ある。一つめは学生のころで、2012年の日本インカレ。周りは暑いと言っていたのに自分は感じておらず、自己ベストを更新し、そもそもの暑さ耐性があることを自覚した。もう一つは(50kmで金メダルを獲得した)2018年のジャカルタアジア大会。元の耐性に加えて、暑熱関連の書物や論文もあたるなど、暑さに対する準備に取り組んできたうえで臨んでの結果だった。そういう意味で、自分の強さは、元の暑さ耐性に加えて、馴化や対処能力も含めてのものなのかなと思う。
自分が50km競歩に取り組み始めたのは2015年から。その段階で東京オリンピックの開催は決まっていて、間違いなく暑いなかでのレースになると思ったので、敢えて暑い時間帯や場所を選んで練習をして、体重や体温や給水量などをすべて記録して変化を調べることで自分の特徴を把握し、どんなときに自分の動きが悪くなるのか、あるいはベストのパフォーマンスが出せるのかなどを確認してきた。
そういう意味では、オリンピック会場が東京から札幌に変更となったときは、僕個人としては「せっかくこういう準備をしてきたのに」とショックだった。しかし、全選手がゴールする(環境下で実施するという)ことを考えるのなら、しょうがないのかなと受け止めた。実際に、北海道に来てみての感想は、「涼しいな」というもので、暑熱対策の効果が出るレベルではないなと感じている。暑さに対する強さの差が出たとしても最後の30~40分…、ラスト10kmから5kmくらいかなという感覚で、天候が曇りであれば、全く(暑さの)影響なくゴールを迎える可能性があるので、自分の有利になるところはないのかな、と今は感じている。
短い期間になったものの、東京オリンピックに向けては、今までの経験を生かして、最低限…7割くらい…の準備はできたのかなと思っている。また、地力自体もここ数年で上がってきていて、暑熱に頼らなくても(歩ける)準備はできている。暑くなれば、なおいいなと思っている。
【女子20km代表選手コメント(要旨)】
◎岡田久美子(ビックカメラ)
オリンピックでは、入賞を目標に全力を尽くしたい。そして暑さなどがあれば、メダルにもチャレンジできると思うので、挑戦する気持ちで頑張りたい。大会に向けては、今年の3月くらいからもう一度つくり直して練習してきた。ケガや体調不良もなく、順調にここまで練習を積むことができて自信にもなっているし、調子も上がってきているので、とても楽しみに思っている。つくり直したのはフィジカル面。私のフォームは、失格などの心配はないのだが、力強さに欠ける部分があったので、力強い歩きができるよう股関節の可動域を増してストライドを出せるようにしたほか、上半身も腕をしっかり振れるようにトレーニングをしてきた。また、本番は、(気温が)30℃を超えそうという予報も出ている。暑さ対策に関しては(2019年)ドーハ世界選手権で一度経験しているので自信がある。暑くなればなるほど入賞、そしてメダルのチャンスが増えてくると思うので、「暑くなってほしい」という気持ち。
前回のリオ大会は1人での出場で、心細い面もあって寂しいなと思ったが、ドーハ(世界選手権)で藤井(菜々子)さんと2人になり、今回は3人…フルエントリーということで、すごく嬉しい。それぞれに持ち味や性格が違うので、一概に一緒に歩くというのは難しいかもしれないが、チームジャパンとして声を掛け合いながら、本番に向けて気持ちを高め合っていきたい。
(前回のリオ大会のころから変化したところはあるか、との問いに)個人的には、リオのときとでは、「別人になった」という感じ(笑)。実力も、この4~5年で大きくついてきた。リオのときは実力が足りなくて「出場するだけ」になってしまったが、東京オリンピックでは「勝負しにいくぞ」という気持ちになっていて、それなりに準備も順調にできている。リオのときからは、大きく成長できたのかなと思う。
レース当日については、気温と湿度がわからないので、なんとも言いきれないところがあるけれど、おそらく暑くなりそうだなと思っている。なので、確実に「入賞」するためには、前半は抑え気味に行き、後半の10kmからペースアップしていくことになると思うので、そのイメージで取り組んではいる。ただ、本当に何が起きるかわからないのが競歩のレース。当日は、冷静に位置取りしながらレースを進めていきたい。実力的に、まだレースを動かせるような立場ではないので、集団に合わせて自分の位置を確認しながら、確実に入賞を目指して歩きたい。ライバルになりそうな選手は、持ちタイムを考えると10~15人くらいになってしまう(笑)ので、本番は自分の力を出しきることに集中したい。
◎藤井菜々子(エディオン)
東京オリンピックでは感謝の気持ちを持って、上位入賞を目指して頑張りたいと思っている。(優勝して、日本代表に内定した2月の)日本選手権が終わってから、気持ちの面で自分がすごく変わったことを感じている。日本選手権のレースで、最後5kmのペースを上げられたことがすごく自信に繋がっていて、そういう自信が、メンタルの安定や練習にもプラスになり、目標も(入賞から)上位入賞へと変わってきたことに繋がっている。技術的な面でも、今までの歩きを見返したことが日本選手権でうまくハマった部分があった。具体的には、地面の接地の感覚を少し変えたことと、振り出しを少し前のほうで接地することができ、そこで効率の良い脚さばきができるようになったこと。日本選手権後も、そこを再度見直して、ここまで来た。練習も順調に来ているので、今は非常にいい状態にある。
オリンピック本番のレース展開は、気温で変わるかなと考えている。涼しければ高速レースになると思うし、暑ければ、ドーハ(2019年世界選手権)のような牽制するレース…前半ゆったりと入って、後半にどんどん(ペースが)上がっていくレースになるかなと思っている。札幌は今、気温が30℃くらいあって、けっこう暑いという情報も入っているので、暑くなるのではないかと想定して、そうなると私には有利かなと思っている。レース展開としては、ドーハのときのようにしっかりと集団についていって、落ちてきた選手を拾っていって…という展開を考えている。
ペースとしては、(1km)4分30秒というところで想定しているが、それ以上のペースが出たとしても対応できる力はつけている。練習では、4分30~20秒くらいのペースで行く練習はやっているので、そのくらいで進めばいいなと思っている。
これまでに出場した国際大会の数も少なかったこともあり、今までは周りを見るだけのレースだった。今回は、世界陸上に続き、シニアになってから2回目の世界大会。今までの消極的なレースよりも、もっと自信を持ったレースができるようになりたいなと思っている。攻めるところは攻めたいし、ドーハのようなレースではなく、もうちょっと前に積極的に行くレースを進めていきたい。歩型に関しても、失格しない歩きができていると思っていて、(攻めるレースをする際にも)自信を持って先頭に出て、歩いていける状態になっている。スピードを上げたときに失格しないきれいな歩型で歩ききるというのは、私の目標でもある。自信を持って臨みたい。
私の競技のなかでの最終目標は、パリやロスなど、今後のオリンピックでの女子史上初のメダル獲得。今回は、そのステップアップになればいいなと思っている。初めてのオリンピックになるので、しっかり経験して、どういう雰囲気になるのか、どういう感じでレースが進んでいくのかとか、そういうものをいっぱい吸収して、その先のオリンピック2大会に繋げられる歩きがしたい。
◎河添香織(自衛隊体育学校)
初めてのオリンピック。私の場合は世界陸上(選手権)にも出たこともないので、オリンピック出場が決まったときに恩師や親戚、家族や友達などが、私以上に喜んでくれた。そうした人たちに、自分の成長した姿、元気な姿を届けられたらいいなと思っている。今回の代表入りについては、(可否の)ギリギリのところにいたのと、コンディション的にも去年は貧血で、今年もケガが長引いた影響で、選考会に万全の状態で臨むことができずにいて、練習はしているのに、それをうまく試合に出せないという、もどかしい期間が続いた。それもあって、1年延期ということも、(自分には)あまり変わりはなかったという面がある。ただ、その「ギリギリまでわからない」という状況をつくってしまったことも含めての自分の力。決まらないのは自分の責任だと思っていたので、(直前まで)「出場が決まるかどうかわからず不安」という思いはなかった。
参加標準記録は突破できなかったけれど、(ワールドランキングでターゲットナンバー内に入るかどうかの)ギリギリの状態だったこともあり、4月の輪島(全日本競歩輪島大会)が終わった時点で、代表に選ばれるつもりで準備しないと間に合わないと考え、気持ちを切り替えて準備をしてきた。その段階では、少し言い方は悪くなるけれど、「決まっても決まらなくてもどっちでもいい」くらいの気持ちだったが、いざ決まると、周りからの期待が直に伝わってきて自覚が生まれ、さらに気合いが入った。トレーニング面で重点を置いたのは、まずは故障(右側の坐骨の下にある腱を損傷し、その後も周辺の炎症が取れずに長引いた)して崩れてしまっていた動きを戻すこと。そして、さらに効率のよい動きを身につけるというところを重視した。
私は、岡田(久美子)さんや藤井(菜々子)さんのように(世界大会に)常連で出ているわけでないけれど、そんな私が今回、オリンピックに出ることで、社会人になりたての女子の競歩選手とか大学生の子たちとかの最初の指標のようなものになるのではないか、私のレベルで「このくらいは世界で歩けるよ」というのを見せることができるのではないかという思いがある。もちろん抜かされないようには頑張るけれど、「この人くらいのところだったら、自分も目指せる」と思ってもらえるような、ある意味、希望になれたらいいなと思う。また、入賞とかメダルとかいうラインにはいないということで、コーチの谷井(孝行)さんとは、だからこそプレッシャーのかかる部分は2人に任せてしまって、私は私らしいレースができたらいいね、という話をしている。
本番では、具体的な順位とかはないが、自分のなかで、ある程度決めたタイムを守って歩きつつ、そこに順位がついてくればいいなと思っている。レースは、スタートしてすぐはおそらく集団で進み、そこからだんだんとペースが上がって集団が分かれていくはず。無理に(1km)4分半を切るようなペースの集団についていかなくてもいいかなと考えていて、第2~3集団くらいでレースを進められたらと思っている。
※コメントは、代表共同取材における各選手の発言をまとめました。より明確に伝えることを目的として、一部、修正、編集、補足説明を施しています。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:アフロスポーツ
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