2020.03.14(土)大会

【全日本競歩能美】前日会見コメント:鈴木雄介、池田向希、髙橋英輝、藤澤勇、藤井菜々子



東京オリンピック男女20km競歩の日本代表選考競技会となっている第44回全日本競歩能美大会の前日会見が3月14日午後、石川県小松市内のホテルにおいて開催されました。

この大会は例年、男女20km競歩のアジア選手権も兼ねて行われていますが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、3月4日の段階で、アジア選手権のほか、高校・中学年代の部門についても中止を決定。男女ともに全日本20km、学生選手権20kmの部に絞る大幅な規模の縮小を図るとともに、大会関係者の感染予防・拡散防止策を徹底したうえで、実施することになりました。

会見には、すでに派遣設定記録(男子:1時間20分00 秒、女子:1時間30分00秒)を突破していて、この大会で優勝すれば、20kmでのオリンピック代表に即時内定する状況にいる選手が出席しました。登壇したのは、男子は、この種目の世界記録保持者(1時間16分36秒、2015年)で、昨年のドーハ世界選手権男子50km競歩を優勝し、50kmでの東京オリンピック代表に内定している鈴木雄介選手(富士通)、2月の日本選手権20km競歩を2~4位で終えたことにより、代表内定を得ることができなかった池田向希選手(東洋大)、髙橋英輝選手(富士通)、藤澤勇選手(ALSOK)の4名で、女子は、故障の影響で日本選手権を欠場し、今回が7入賞を果たしたドーハ世界選手権以来のレースとなる藤井菜々子選手(エディオン、ダイヤモンドアスリート修了生)が出席。全5選手が、この大会までの準備状況、レースに懸ける思いなどを述べたうえで、メディアからの質問に応じました。

 


【前日会見コメント(要旨)】 ※会見時の発言順に掲載


◎池田向希(東洋大学)

今回の能美大会は、男子20km競歩において、東京オリンピックの最後の選考レースとなる。どんな結果になっても「これが最後」という思いで、悔いの残らないレース、東洋大学らしい攻めのレースができればなと思っている。

神戸の日本選手権では、悔しい結果(2位)となった。そこで出た課題として、(レース)前半で気持ちの面から焦りが出てしまい、それが動きに影響してしまったという点があった。この大会に向けては、まず、しっかりと疲労を抜いて、もう一度、状態を合わせてきている。今回のレースは、もっと「挑戦者」という気持ちで、リラックスしたレースができればなと思っている。

東洋大学としては、(これまで)西塔拓己さん(2012年ロンドン大会)、松永大介さん(2016年リオデジャネイロ大会)と、現役学生として2大会連続でオリンピック代表に選出されている。また、2020年東京オリンピックにも、すでに50kmのほうで同級生の川野(将虎)が内定を決めていて、自分もそれに続きたいという思いがいっそう強くなっている。(ここまで東洋大学として)20kmという種目で2大会連続出場を決めているので、どうしても自分が20kmという種目で3大会連続出場を決めたいと思っている。そういう強い思いを持ってレースに臨みたい。

明日のレースでは、どんな展開になっても対応するということが第一。どんなレースになっても落ち着いて、リラックスしていくことができれば、後半も余裕をもって行けるのかなと思っている。



 

◎髙橋英輝(富士通)

日本選手権では歩型の面で課題が出た(レース終盤で歩型違反により2分のペナルティをとられて1時間19分53秒で3位となる)ので、そこを直すために、歩きのなかでというよりも、歩き以外の練習を通して身体の使い方を修正するという部分に力を入れてきた。日本選手権ではいいレースはできなかったが、日本選手権と同じように強い気持ちを持って明日は頑張りたい。

明日は、「優先順位を間違えないこと」が自分のレースプランといえる。優勝すれば内定なので、そこを狙ってスタートラインに立ち、レースも進めるが、自分の歩きの状況や周りの選手の歩いている位置によっては即時内定という部分を捨てて、(日本選手権で内定者が出なかったために、もう1枠残っている)オリンピック代表権を確実に取るという部分を優先するレースになる展開もあり得るかなと思っている。1つ1つの大事な場面で、自分の歩きの状況や周りの選手の状況を見極めて、レースを進めたい。

能美大会を歩くのは久しぶりで、2連戦のレースも久しぶりなのだが、冬の段階からそういった心構えは持って準備してきた。昨年も、4月、5月、6月と海外で20kmのレースを3連戦していたので、身体の面ではそこまで苦手意識もなく、疲労は感じつつもある程度コントロールしながら(練習)できたかなと思っている。ただ、気持ちの面では、日本選手権(の結果)は自分のなかでなかなか消化するのが難しくて、とにかく自分のフォームに問題があったという部分、そこからは目をそらさないように、そこだけはしっかり向き合おうと決めて、精いっぱい取り組んできた。明日は、そういった準備してきたことを発揮できればなと思う。



 

◎藤井菜々子(エディオン)

1月にケガをしてしまい、日本選手権を欠場した。しかし、この能美大会に向けては、しっかり合わせてきたので、明日は優勝して、東京オリンピックの代表内定を獲得したい。

(ケガは)1月の宮崎合宿中に、右脚の大転子滑液包炎になってしまった。そこから2月8日まで練習することができず、5週間前に歩き始めた。ポイント練習は1カ月前から始めたのでベストな状態ではないのだが、必要最低限のことはやってきた。明日のスタートラインには、いい状態で立てると思う。ただ、ケガをしていた期間があったので、明日は記録を狙うというよりも、確実に優勝する、そういうレースをしていきたいなと思っている。

ドーハ(世界選手権)が終わってからは、1回休養して、そこから高知、奄美、東京で合宿を行ってきた。そのときはすごく調子がよく、ドーハの時の状態よりもさらにレベルアップした練習だったり動きだったりができていた。しかし、そういうときに限って身体の状態と練習量が噛み合っていなかった部分が出てしまい、そこでケガをしてしまった。ただ、そういう自分の調整力や、課題などが明確になったので、(ケガをしてからは)これをプラスに変えて取り組むことができ、今はそのケガをポジティブに考えられるようになっている。ケガをしたことは大きなロスではあったが、このタイミングだったことによって、私にとっては自分の弱さを知る機会にもなった。この悔しさをしっかり、明日の優勝という形で払拭したい。



 

◎藤澤 勇(ALSOK)

日本選手権は噛み合った歩きができず、ここに向けて修正を図ってきた。明日、記録を更新して、代表をつかめるように頑張りたい。

日本選手権のときは、もしかしたら(1時間)16分台が出てもおかしくない流れで来ているなというところで、1月の合宿では設定タイムを上げるなどして臨んだが、結果的にフォームがまとまらなかったという課題があった。ただ、あの(ハイ)ペースに対応するには、少し力が足りなかったなという反省もあった。この試合に挑むことは去年の末から想定していたので、日本選手権で負けたときにもそれほどショックはなく、「やはり、はまらなかったな」と思っていた。能美大会とは、けっこう相性がよくて、記録を大幅に更新できた年もある。苦手意識もあまりないので、ここに向けてはスピードを強化するのではなく、しっかりフォームを丁寧に、精度を上げていくことに重点を置いて修正に取り組んできた。

(選考レースが日本選手権に続いて)2本目ということで、周りの選手がどういった状態で来ているかというのも1本目(の日本選手権)でわかっている状況。4年前(のこの大会で)は松永くん(大介、当時東洋大学、現富士通)が仕掛けたように、そういった大勝負を仕掛けられることもあると思う。明日のレースでは、どこで誰が仕掛けてきてもいいように、スタートした瞬間から、しっかり反応できるようにしたい。



 

◎鈴木雄介(富士通)

今回の大会には、私は、急きょ2週間前に出場することを決めた。そのため、準備不足なところが否めない。だから明日は、自分のペースを守って20kmをしっかり歩ききって、刺激を入れるという気持ちで歩こうと思っている。

2月の日本選手権を欠場した背景としては、1月の合宿の時点での準備不足があった。また、その前の段階でもインフルエンザにかかったり、ドーハ(世界選手権)で暑さのなか戦った疲労が(長く)残ったりと(いう影響もあって)、今シーズンは(全体に)少し準備が遅れているというのが正直なところで、それが現在でも続いている状況ではある。そのなかで、オリンピックまでに想定していた流れとしては、(当初は)一度、2~3月で自分の身体を基礎からつくり直して、4月の輪島(で行われる日本選手権50km競歩と併催される全日本競歩輪島大会)の10kmに出場しようかなと考えていた。ただ、それが新型コロナウイルス感染拡大の影響により、選考に関する種目だけに絞って(大会規模を)縮小することになり、10kmのレースに出場することがかなわなくなったので、準備できていないなかでも20kmに出て東京オリンピックに向けて調整していこうと、今回の出場を決めた。

地元能美での大会ということで、優勝を目指したいところではあるが、こうした経緯もあって準備不足な面があり、この会見に出席しているライバルたちを見ても、現状の自分の力では優勝することは、ほぼほぼ難しいと考えている。ただ、今、自分ができる限りの力を出し尽くすことはしっかりと見せていきたいし、もし、15kmあたりで自分に勝つチャンスがあるように思ったら、(勝利を)意識して、それ以降のペースを上げていけたらなとは思っている。
 

 

大会は、3月15日、石川県能美市において開催。東京オリンピック男女20km競歩が1周1kmの周回コースであることに対応して、今大会から会場を根上総合文化会館前に移し、1周1kmの新コースで実施されます。

レースは、全日本男子・学生選手権男子20kmの部が8時50分に、同女子の部は10時35分に、それぞれスタート。全日本の部は、東京オリンピックの代表選考レースとして行われ、男女ともに、その時点で派遣設定記録(男子:1時間20分00 秒、女子:1時間30分00秒)を突破している競技者が最上位となった場合は、即時に代表選手に内定します。ただし、新型コロナウイルスの問題によって国際競歩審判員が3名に満たないなかでの開催で、日本陸連の公認レースのみの位置づけとなるため、競技結果は日本記録の対象にはなるものの、国際大会の参加標準記録やワールドランキング、世界記録が公認される対象レースからは外れる形となります。

レースの状況を含めた大会の模様は、YouTube (https://youtu.be/1UAEMAO6-9k )ほか、応援TV・日本陸連公式チャンネル( https://ohen.tv/broadcast/301901 )、日本陸連公式Twitter( https://twitter.com/jaaf_official )において、3月15日午前8時30分からライブ配信を行う予定です。日本陸連では、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために、沿道での観戦は自粛し、これらのメディアを利用しての応援をお願いしています。ぜひとも、ご協力くださいますよう、重ねてお願い申し上げます。

大会に関する情報、ライブ配信に関する詳細等は、日本陸連公式サイト内の本大会ページ( https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1388/ )をご参照ください。

 

文・写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)

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