2020.02.07(金)大会

【日本新記録続出!】日本選手権室内レポート&コメント Vol.2






>『【日本新記録続出!】日本選手権室内レポート&コメントVol.1』から



【第2日:2月2日】

日本選手権室内男子三段跳は伊藤が優勝

最終跳躍で16m23のU20室内日本新をマーク


日本選手権室内男子三段跳は、当初のタイムテーブルより30分繰り下がっての競技開始となった影響もあり、6回目の試技が、トラック最終種目の日本選手権室内男子60m決勝が終了したあとにも続く形となりました。3回目の試技を終えた段階では、アウトドアの日本選手権を2連覇中で、2016年リオデジャネイロオリンピック代表の山下航平選手(ANA・東京)が16m10でトップに立ち、昨シーズンに急成長を見せ、2019年日本リスト2位の16m57まで記録を伸ばしてきた山下祐樹選手(茨城陸協)が16m00で2位に、3位には、昨年、ロンドン世界選手権にも出場した2017年にマークした自己記録に2cmまで迫る16m85を跳んで、日本リスト1位を占めた山本凌雅選手(JAL・東京)が15m83で続き、これにU20ながら日本選手権室内にエントリーしていた伊藤陸選手(近畿大工業高専・三重)が3回目に15m72を跳んで4位で折り返す展開。実は、伊藤選手がマークしていた15m72は、2014年のこの大会で、当時、諫早農業高3年だった山本選手がマークした15m71のU20室内日本記録を更新するもの。ステップのあとにバランスを崩して、ジャンプは両足がばらばらの状態で着地したなかでの記録だったこともあり、後半の試技での記録更新の可能性が大きく高まりました。

後半に入って、上位のシニア選手たちも思うように記録を伸ばすことができないなか、伊藤選手も4回目はホップで踏み切ることができず、砂場に走り抜けてファウル。5回目は15m60と記録を伸ばすことができずに4位のままで最終跳躍を迎えました。しかし、その6回目の試技で16mを大きく越える跳躍を披露。16m23まで記録を伸ばして、トップに躍り出ました。続いてピットに立った山本選手も記録を伸ばしたものの16m07で逆転ならず。山下祐選手と山下航選手も記録を伸ばすことができずに競技は終了。伊藤選手が、シニア勢を押さえて日本選手権のタイトルも獲得する結果となりました。

伊藤選手は、2001年1月16日生まれ。2018年の段階で、U18日本選手権の走幅跳・三段跳で2冠を達成するなど関係者のなかではよく知られた存在でしたが、躍進が著しかったのは2019年といえるでしょう。まず、U20男子三段跳に出場したこの大会で屋外の自己記録(15m61)を上回る15m65をマークして優勝。屋外シーズンに入ってすぐの5月の東海インカレで15m98まで記録を伸ばすと、9月の日本インカレで、初めて16m台(16m13)に記録を乗せたかと思うと、その後の試技で16m34(+0.6)まで記録を伸ばし、U20日本記録(16m29、中西正美、1977年)を42年ぶりに更新して優勝を果たしたのです。自身が「2種目で活躍したい」という走幅跳でも着実に力をつけており、日本インカレでは7m82の自己新で4位に入賞。10月のU20日本選手権は走幅跳で優勝を果たしています。

昨シーズンの段階では185cm・67kgと華奢だった体格は、「自分では、あまり変わった感じはない」と言うものの、現在185.7cm・72~73kgに。この冬は、本格的なウエイトトレーニングを導入したほか、「技術的な面も先生と相談して、考えながらやってきた」と充実した練習が消化できているといいます。この大会に向けては、「(屋外の)自己記録(16m34)、できたら16m50くらいの記録を」狙っていたそうですが、「助走が不安定だったので、記録が少しばらついてしまった」ことが反省点。「もう少し早い段階で、あの記録(16m23)を跳んでおいて、もうちょっと狙いたかった」と振り返りました。

2020年シーズンは、まずはU20世界選手権で、メダル獲得や優勝といった結果を出すことを狙っていますが、その一方で、日本記録(17m15、1986年)や東京オリンピック(参加標準記録17m14)を目指していきたい気持ちも強くなってきています。「早く17(m)を跳びたい」と、シニアでの活躍も視野に入れて、屋外シーズンを見据えていました(伊藤選手の新記録樹立コメントは、別記ご参照ください)。 

 

多田、日本選手権室内男子60mに快勝


日本選手権室内男子60mは、昨年のドーハ世界選手権男子4×100mRで銅メダルを獲得した多田修平選手(住友電工・大阪)と白石黄良々選手(セレスポ・東京)がエントリー。スタートから中盤を武器とする多田選手と、加速に乗ってからのスピード維持を強みとする白石選手と、好対照のタイプながら、ともに大東文化大学の佐藤真太郎コーチに師事するメダリストコンビの走りに、注目が集まりました。

多田選手は予選を全体でもトップタイムとなる6秒63で通過、白石選手は6秒77で予選1組を3着でフィニッシュしたものの8番目の記録でA決勝への進出を果たしました。決勝は、序盤からリードを奪った多田選手が周囲を引き離して先着し、終盤で追い上げてきた白石選手を含めた他選手がほぼ一団でフィニッシュラインに飛び込むレースとなりました。多田選手がフィニッシュした時点で、タイマーが「6.35」の表示で止まったため、場内アナウンスも含めて会場全体がざわつきました(※室内世界記録は6秒34、同歴代2位は6秒39)が、その後、6秒58の速報タイムが掲示され、最終的にこれが正式記録に。岩崎浩太郎選手(ユティック・福井)、坂井隆一郎選手(関西大・大阪)、宮本大輔選手(東洋大・埼玉、ダイヤモンドアスリート修了生)が6秒70の同タイムながら、それぞれに着差ありで2~4位となり、6秒72の白石選手は5位という結果になりました。

6秒3台から5台への修正に、レース直後は苦笑いしながら、「びっくりした」とつぶやいていた多田選手ですが、このレースに向けては「6秒6くらいを狙っていた」そう。「スタートから中盤で、ほかの選手を引き離すことを押さえながら走った。予選は全然ダメだったが、決勝は合格ではないけれど、ある程度、想定内のスタートから中盤の走りができたのかなと思っている」と振り返り、「初戦ということで身体にキレはまだない状態。そのなかで6秒58を出せたので、いい結果だったのではないかと思う」と述べました。

社会人になったのを機に、昨年の春から佐藤コーチが所属する大東文化大学に練習拠点を移して迎えた初の冬季鍛錬期。これまでよりも「200mとか300mの走り込みが増えた」と話し、それによって、後半もスピードを維持できるようになってきているといいます。また、「ミニハードルなどを使って、“前さばき”の練習をすごくやったので、そのぶん、足が前でさばけてスタートもしっかり出られるようになっているのではないかと思う」とも話し、その明るい表情からも順調に練習が進んでいることがうかがえました。

一方、「苦手な60m、そして、この時期ということを考えると、その割にはよかったのではないか。自分のなかではけっこういい感覚を得ている」を振り返ったのは白石選手。「この冬期トレーニングでは、スタートから加速に乗る部分を、どれだけ去年より改善できるかというところをテーマにして、ずっとやってきた。予選では悪い部分が出たが、そこを決勝で改善できたのでよかった」と、まずまずといった表情を見せました。前半が強い多田選手との勝負については、「彼(多田選手)が速いのはもともとわかっているし、離されて硬くなるよりは、自分のレースをしっかり最後まで貫くというところを、今回は意識した。(前に)出られてどれだけ冷静に走れるかというところも、今年は課題になってくる。そこはこれから多田選手と練習するなかでも意識していきたい」と話していました。


 

 

日本選手権室内男子走幅跳は、城山が逆転V


この大会を迎えるまでの段階で、中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスの肺炎の感染が、急激に拡大した影響を受けて、2月12~13日に杭州(中国)で開催の予定だったアジア室内選手権の実施が見送られることとなり、1月27日、日本陸連が中止を正式に発表。また、1月29日には、ワールドアスレティックスも、3月に南京(中国)で開催することになっていた世界室内選手権を、1年延期して2021年に行うことを発表するなど、東京オリンピックを目指す競技者にとっては、計画していた戦略を見直す必要に迫られる事態が生じました。

このため、アジア室内の日本代表選手は、この大会にエントリーしていなかった場合も、希望に応じて直前の参加が許されました。1日目の日本選手権室内男子60mHには泉谷駿介選手が出場。2日目の日本選手権男子走幅跳には、昨年、屋外で8m40を跳んで日本記録保持者となった城山正太郎選手(ゼンリン・北海道)が、急きょ出場することになりました。

もともと、もう2週間後に組まれていたアジア室内に照準を合わせていたこと、さらには室内特有のボードトラックに慣れておらず戸惑いがあったということもあり、城山選手の序盤は7m40、7m35、7m59と今ひとつ。5位でベスト8に進出しました。その後、4回目に7m71を跳んで3位に浮上すると、5回目にもう一度7m71をマーク。そして最終跳躍で7m90まで記録を伸ばしてトップに立ち、これが優勝記録となりました。

「エンジンをかけるために、出たほうがいいのかなという気持ちで出場したが、自己採点では70点くらい。最終跳躍で、最低限まとめられたのは唯一よかった点かなと思う」と振り返った城山選手は、「8mくらいは跳びたかったので、(評価は)あまり…」と記録には不満が残った様子。「今日の試合で、全然まだ跳躍がまとまっていないことがわかった。焦る必要はないが、しっかり6月の日本選手権に向けて、まとめていけたらなと思う」とコメントしました。

この冬は「基礎体力をつけることだけに力を入れてきた」と城山選手。特に、ドーハ世界選手権で決勝進出を果たした際、「周りの選手との身体の違いも感じたし、(予選・決勝と)2日連続でパフォーマンスを出すことを考えたら、今のままのトレーニングではダメだ」ということを痛感したといいます。この課題をクリアするために、11月には約1カ月の間、男子棒高跳の山本聖途選手とともに渡米し、山本選手が定期的に身体をつくるために通っているエクソスで、徹底したトレーニングに取り組みました。その後も、今までであれば、「強制されなければやらないタイプだった」というウエイトトレーニングや走り込みにも自発的に取り組み、これらによって、以前とは格段にベースアップが図られました。その成果は、加速走などの練習の際にも実感できているそうです。

今後は、沖縄に移動して合宿を張り、跳躍練習に取り組んだのちに、2月21日にマドリッド(スペイン)で行われる室内大会に出場の予定。叶わなくなってしまったアジア室内や世界室内における海外の強豪との対戦を、この大会で実現できれば…と考えています。室内日本記録は8m07(森長正樹、1999年)。条件が整えば、屋外に続く日本新記録のアナウンスも聞くことができるかもしれません。



 
 

日本選手権室内男子棒高跳は、山本が5m50で快勝

U20男子棒高跳では古澤が、4年連続の優勝を果たす


2日目に行われた日本選手権室内では、男子棒高跳で5m77の室内日本記録を持つ山本聖途選手(トヨタ自動車・愛知)が5m50で優勝を決めると、東京オリンピック参加標準記録の5m80のクリアを視野に入れて5m72にバーを上げました。「ここ最近では、一番(調子が)よかったと思う」という状況で、この日も5m30、5m50ともに難なく1回で成功していましたが、この高さのクリアはならず。今後は再びトレーニングを積んで、4月の織田記念か、その直前に行われるマウントサックリレー(米国)で屋外初戦を迎える予定です。昨年、日本選手権初優勝を果たしたダイヤモンドアスリート修了生の江島雅紀選手(日本大・神奈川)は、「全助走跳躍が完成していないうえに、昨シーズンよりも助走スピードが高くなっている」影響もあり、最初の5m30を2回失敗するなど助走で苦戦。5m40をクリアできず3位にとどまりましたが、競技終了後の表情は明るく、「最後に使っていたポールもやわらかく感じる状況。3位に入ってポイントも獲得できたし、次につながる結果になったと思う」と試技を振り返っていました。5m40を3回目に成功し、江島選手を押さえて2位に食い込んだのは、日本大出身の澤慎吾選手(きらぼし銀行・東京)。社会人1年目の昨年、5m61まで記録を伸ばしてきた選手ですが、この冬は前年以上にパワーアップも図られている様子。屋外シーズンで、さらなる飛躍を目指しています。

このほか、午前中に行われたU20男子棒高跳では、前々回となる2018年大会で5m05の中学新記録を樹立し、U18カテゴリに出場した前回大会では5m23の高1最高記録で制している古澤一生選手(前橋育英高・群馬)が、5m20で優勝。昨年マークしている自己記録、そして江島選手が荏田高時代の2017年に樹立した大会記録5m30を更新する5m31のクリアはなりませんでしたが、中学男子の部で出場した2017年大会から4年連続でのタイトル獲得を達成しました。

また、U20女子60mは、前回U18のカテゴリを7秒49で制した青山華依選手(大阪高・大阪)が、日本選手権室内の優勝記録を上回る7秒44をマークして、この大会を“2連覇”。U20男子走高跳では、昨年、インターハイ、国体(少年共通)、U20日本選手権と“高校3冠”を達成している江頭亮選手(大塚高・大阪)が、ライバルの坂井宏和選手(東海大仰星高・大阪)と同じく2m15を成功。同記録ながら試技内容で制して優勝を果たしています。

 

 

【新記録樹立者コメント】


◎男子三段跳 決勝
優勝 伊藤 陸(近畿大工業高専・三重)
16m23 =U20室内日本新記録

シニアで初めての日本一なので、本当に嬉しい。ここに来てから調子はいいかなと思っていた。(U20室内日本)記録は出ると思っていたが、もう少し早い段階で、あの記録(16m23)を跳んでおいて、もうちょっと…自己ベスト(屋外:16m34=U20日本記録)、できたら16m50くらいは…狙いたかったという気持ちが自分のなかにある。6回目は、しっかり助走ができて、しっかり跳びだせたところはよかったが、今回の課題の1つとしていたジャンプのスウィングのことがすっかり頭から抜けていて(笑)、全くできなかったので、そこはまた冬期練習の残りを使って克服していきたい。また、この大会では、最初の出だしからリラックスして、しっかり前傾しながらスピードを上げていくことを目標にしていたのだが、それがなかなかできなかった。助走が不安定になり、記録がばらついてしまったことが今回の反省点。ただ、6回目まで長引いてはしまったが、記録を伸ばせたことは、この冬、本格的にウエイトトレーニングをしたり、技術的な面を先生と相談して考えながらやったりしている成果が表れたのかなとも思う。一応、これでしっかり合ったので、シーズンに向けてもっと安定させて、いつでも1本目からこれくらいが跳べるようにしていきたい。

記録面での目標は、今回、一緒に試合した先輩方も苦戦しているので難しいことではあるとは思うけれど、できるだけ早く17(m)を跳びたいと思っている。試合としては、東京オリンピックを目指すつもりではいるが、まずは、その前にある世界ジュニア(U20世界選手権)で、しっかり戦いたい。これから(屋外)シーズンに向けて、身体もどんどん動くようになっていくと思うので、そこで自分の跳躍を身につけることができれば大丈夫かなと思う。ただ、三段跳はドーハ(世界選手権)で8位に入ったジョーダン・ディアス選手(キューバ、自己記録17m49)がいて、彼に勝つイメージはちょっとわかないけれど(笑)。将来的には、世界に出ていくだけでなく、世界でちゃんと戦うところまで行きたいという気持ちがある。

また、走幅跳についても、今年もやっていく。走幅跳のほうは、あまり練習はしていないが、とりあえず8(m)は跳びたい。世界ジュニアは、(三段跳と)2種目で出たいなと思う。

今回の結果で、ワールドランキングでも、いい得点が入ることになるので、このあと、シーズン前半の間に、できるだけ高い記録で安定させてランキングを上げて、東京オリンピックに出られたらいいなと思う。今年からは日本グランプリシリーズにも出ていくので、なんとか頑張りたい。

 

文・写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)

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