2020.01.06(月)大会

【伝統の競技会】第68回元旦競歩大会レポート



第68回元旦競歩大会が1月1日、神宮外苑絵画館20km競歩路コースで開催されました。この大会は、競歩愛好者たちの「歩き初め」を起源として、長年、元日の朝に開催され続けている伝統の競技会。昨年末に新装なった国立競技場に接するように位置する聖徳記念絵画館の周辺を巡る1周1350mの周回コースを使って行われています。今年も、男女それぞれ「大学・一般(男子20km、女子10km:第82回東京選手権を兼ねて実施」「50歳以上(男女ともに5km)」「高校(男子10km、女子5km)」「中学(男女ともに3km)」の4区分において、全8種目で熱戦が繰り広げられました。




◎東京オリンピック男子50km競歩代表の鈴木、オリンピックイヤーの初戦を大会新Vで飾る

大学・一般男子20kmには、この種目の世界記録保持者(1時間16分36秒、2015年)で、50kmでは昨年のドーハ世界選手権において競歩種目で日本人初の金メダルを獲得し、東京オリンピックの日本代表に内定している鈴木雄介選手(富士通)が出場しました。

この日の東京は、雲の多いなかでの夜明けとなりましたが、競技が始まるころには青空が広がり、気温は低めながら暖かな日差しが降り注ぐ天候となりました。大学・一般男子20kmは9時20分にスタート。絵画館および、その向かいに位置して現在は東京オリンピック陸上競技のウォーミングアップエリアとして整備されている一帯の周辺(1周1350m)を、14周と1100m歩くコースです。

鈴木選手にとっては、オリンピックイヤー第1戦、さらには金メダルを獲得した10月6日のドーハ世界選手権男子50km競歩以来のレース。休養期間ののちに本格的なトレーニングを開始したのは12月に入ってからというなか、2月に出場する日本選手権20kmの前に、試合モードでの刺激を一度入れることを意図しての出場でした。「とりあえず1時間21分を切れればいいかな」と、特にペース設定も決めていなかったそうですが、スタートしてすぐに飛び出すと、その後は、完全な一人旅でレースを進めていきます。終盤はややスローダウンしたものの従来の大会記録(1時間20分12秒)を11秒更新する1時間20分01秒でフィニッシュ。31歳最後の日(鈴木選手は1月2日生まれ)を勝利で締めくくるとともに、迎えたオリンピックイヤーを幸先のよいスタートで“歩き”始める結果となりました。

レース後、「前半は予想していたよりも身体が動いて、スピードが出るなという感じで歩けたが、まだ練習が全然積めていないので、後半は、その練習不足がちょっと響いた。ペースが落ちたのはそこ(が原因)かな、と思う」と振り返った鈴木選手ですが、全体的な感触としては上々だった様子。「正直、自分がどのくらいで歩けるかというのがわかっていなかったので、とりあえず“出たとこ勝負かな”と思っていた。そのなかで(目安としていた1時間)21分を切ることができて、それどころか1時間20分ちょうどくらいで歩けたので、その点がすごくよかった。いい感覚で歩くことができた」と笑顔を見せました。

次に目指すのは、2月の日本選手権20km競歩と3月の全日本20km競歩能美大会の2レースをしっかり戦うこと。「タイプ的に50kmを連戦するよりは、20kmで力を蓄えて、50kmにポンと出たほうが、いい結果を望める」という分析から、現段階ではオリンピックまでは50kmのレースには出場せず、20kmのレースで地力を高めたのちに、金メダル獲得を目指す東京オリンピックの50kmに向けた準備に入っていく計画です。また、オリンピックの競技会場が、急きょ東京から札幌に移ったことに対しても気にする様子は全くなく、「思い描いている試合の流れや練習を積んでいけば、おのずと結果はついてくる」ときっぱり。「強ければ勝てる」という思いをベースに、“強くなるための練習をする”ことを一番のテーマに掲げていると言います。

今回のレースは、毎周回の終盤でオリンピックスタジアムとなる国立競技場を右手に眺めながら歩くことになりました。その感想を求められると鈴木選手は「もともと競歩は、(札幌開催となる前も)国立競技場でレースをするわけではなかったけれど」と前置きしつつ、「やはり閉会式だけの参加ではなく、その前に、国立競技場に足を運びたいと思っている」と頼もしい言葉を聞かせてくれました。“その前”とは、もちろん男子50km競歩のメダルセレモニーを指しています。


 

◎20kmの2位は諏方。リオ7位の松永は復調の兆し

大学・一般男子20kmには、ある意味、“崖っぷち”に立っていたトップウォーカーが出場していました。前回のリオデジャネイロオリンピック男子20km競歩で7位入賞を果たしている松永大介選手(富士通)です。松永選手は、昨年、2月の日本選手権を臀部の奥にある梨状筋の痛みにより途中棄権して以降、回復して練習を再開しては別の箇所を痛める状態を何度も繰り返す、とても苦しいシーズンを過ごしました。5月の東日本実業団(5000m競歩)以外は途中棄権あるいは欠場が続くこととなったため、20km競歩の東京オリンピック選考競技会となる日本選手権の出場資格を持たないままオリンピックイヤーを迎えることに。この元旦競歩は、久しぶりの復帰レースとなるとともに、日本選手権の参加標準記録(1時間32分00秒)クリアを目指してのレースでした。

実際に支障なく練習ができるようになったのは11月も下旬になった辺りからということもあり、「1時間27分くらい」の記録を想定してスタート。「思っていたよりもスピードが出た」とレース後、当人も振り返ったように、スタート直後は、2位集団につけていましたが、その後、ペースを落として単独でレースを進める形となりました。大きく崩れることなく最後まで歩ききり、1時間23分59秒をマークして7位でフィニッシュ。無事に、日本選手権の出場権も手に入れました。

レース後の松永選手は、「練習を始めて1カ月くらいなので、“今日はこんなものかな”という感じ」と振り返りつつも、「イメージしていたよりも、(記録は)3分くらいよかった」と、想定を上回るタイムにまずまずといった表情。その一方で、「スタミナがどうしても持続できず、どちらかというと途中はインターバル(トレーニング)のようなレースになってしまった。もう少しスピード持久力というか、歩き込みをしっかりしなければと思う」と、次のレースに向けての課題も口にしていました。

2大会連続出場を目指すオリンピックに向けてはライバルも多く、非常にレベルの高い、厳しい戦いが待ち受けていますが、「負けるわけにはいかない。とりあえずは代表権を勝ち取らなければ…。調子さえ良ければ、大丈夫だと思っている」と、一歩も引くつもりはない様子。「軸となるのは20km」と言いますが、「20(km)でも50(km)でも、どちらでも戦える準備はしていきたい」と完全復活に向けて意欲を見せました。

その大学・一般男子20kmで2位となったのは諏方元郁選手(よつば森林組合)。男子50kmで2018年に当時の日本記録となる3時間39分47秒をマークし、20kmでも1時間19分00秒の自己記録を持つ野田明宏選手(自衛隊体育学校)を途中で突き放すレースを展開し、昨年の日本選手権でマークした1時間22分08秒を大幅に更新する1時間20分49秒の自己新記録でフィニッシュしました。4月に行われる日本選手権で50kmでの東京オリンピック出場権獲得を狙っている野田選手は、1時間21分24秒・3位でレースを終えています。このほか10kmで実施された大学・一般女子では河添香織選手(自衛隊体育学校)がセカンドベストの45分05秒で優勝、高校男子10kmは小林亮太選手(東海大諏訪高・長野)が43分29秒で2連覇を果たし、それぞれに新しい年をスタートさせました。

 

文・写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)



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