
第103回日本選手権男女10000mが5月19日、ドーハ世界選手権の代表選考会を兼ねて、大阪市の長居スタジアムにおいて行われました。
男女混成競技(十種競技、七種競技)除くトラック&フィールド種目の日本選手権は、6月27~30日の日程で福岡市博多の森陸上競技場において開催されますが、今年は、男女10000mについても分離開催となり、「セイコーゴールデングランプリ」(GGP)の終了後に行われることとなりました。
レースは、女子の決勝が19時30分からスタートし、その後、20時15分から男子の決勝が行われるタイムテーブル。女子の決勝が始まった時点での気温は22℃、湿度54%とまずまずながら、やや風が気になるコンディションのなかでのレースとなりました。

女子は、スタート直後から鈴木亜由子選手(日本郵政グループ)が前に出て、先頭を引っ張る展開となりましたが、3000mを過ぎたあたりで新谷仁美選手(NIKETTC)が集団の中盤あたりから上がってくると3300mでトップに立ち、これに鈴木選手、鍋島莉奈選手(日本郵政グループ)、そして萩原歩美選手(豊田自動織機)が縦1列で続く展開となりました。6000mあたりで萩原選手が遅れて、優勝争いは新谷・鈴木・鍋島選手の3人に絞られます。新谷選手は途中で何度かリードを広げようとしますが、鈴木選手と鍋島選手を振り切ることができず、9200mを通過します。
ラスト1周の鐘が鳴る手前で、鈴木選手が仕掛けて新谷選手の前に出ると、それをさらに後方からかぶせるように鍋島選手がスパート。最後の1周は同チームの先輩後輩対決となりました。鈴木選手は懸命に鍋島選手を追いましたが、残り300mを切ったところで鍋島選手がさらに鈴木選手を突き放して31分44秒02でフィニッシュ。10000mでの日本選手権初優勝を飾るとともに、3連覇中の5000mより先にこの種目のドーハ世界選手権参加標準記録(31分50秒00)を突破して代表切符を獲得しました。2位の鈴木選手も標準記録を上回る31分46秒25をマーク。3位には新谷選手が31分50秒43でフィニッシュしました。

男子は、オープンで参加していた実業団所属のムウェイ・ロバート(旭化成)、ジョエル・ムァゥラ(黒崎播磨)、ロジャース シュモ・ケモイ(愛三工業)ら外国人選手が交互に先頭を引っ張りながら、1000mを2分46~47秒前後でレースをつくる展開となりました。
2400mを過ぎたあたりで先頭は8人の集団となり、日本人は坂東悠汰(富士通)、田村和希(住友電工)、鎧坂哲哉(旭化成)、河合代二(トーエネック)の4選手が5~8位で続く展開に。その後、村山紘太選手(旭化成)が追いついて9人が縦長の集団で3000mを通過すると、続く1000mはその隊列が続いたものの4200m手前で田村選手が坂東選手の前に出て日本人のトップに立つと、そのあたりからスローダウンしていたロバート選手が4400mで途中棄権して、先頭は8人に絞られます。しかし、4400mを過ぎたところで村山紘、鎧坂、河合選手がついていけなくなり、先頭集団は5人と3人に分裂。さらに、5000mを通過したあたりで坂東選手も遅れて、先頭集団につくのは田村選手だけになってしましました。
田村選手は、その後、上位に食らいつきましたが、7000mを過ぎたあたりでじわりじわりと上位3選手から離されてしまいます。最終的に先頭争いはコエチ選手とケモイ選手の2人に絞られ、残り1周でリードを奪ったコエチ選手が27分56秒54で先着。ケモイ選手、ムァゥラ選手に続いて田村選手が28分13秒39・4着でフィニッシュして日本選手権初優勝を飾りました。日本人2番手は坂東選手で28分20秒72の自己新記録をマーク。村山紘選手が28分25秒95で3位となり、終盤で浮上した相澤晃選手(東洋大)が学生トップとなる28分32秒42・4位でフィニッシュしました。
男女日本選手権獲得者のコメントは、下記の通りです。

【日本選手権獲得者コメント】
◎田村和希(住友電工)日本選手権男子10000m 優勝 28分13秒39
外国人選手がオープン参加していたので、行けるところまで行って、あわよくば世界陸上の参加標準記録(27分40秒00)を突破して優勝するというのが今回のターゲットだったが、7000(m)手前で離れてしまった。
スタートから7000mまでは、もともと途中から(日本人は)僕一人になるだろうなと思っていたので、(実際に)1人になって外国人選手と走っていくという展開になったのはイメージ通りだった。なので、スタートから7000mまではうまく走れたと思う。そのあと(先頭から)離れても、8000~9000mの間くらいまでなら、いい動きでそのまま走れるかなと思っていたのだが、(実際は)かなり動きがグダグダになってしまった。途中で後ろも気になってしまったので、自分自身でもダメだなと思いながら走っていた。
4月にアメリカへ合宿に行かせてもらい、(合宿最後に出場した)ペイトンジョーダン(5月2日)の10000mで、できれば標準記録を切りたいと思っていた。しかし、今ひとつうまくレースできていなかったことと、日本選手権が控えているということを考慮して、(その10000mは)途中で棄権している。そこから2週間でこの大会を迎えたわけだが、調整の部分で少しうまく行っていない感じはあった。
ただ、せっかくこのように外国人選手と一緒に走ることができる状態だったので、タイムも絶対に狙えたはず。ペースもイーブンで引っ張ってもらえたのにもかかわらずこの結果なので、優勝できたことは嬉しいが、自分としては悔しさのほうが大きい。
日本チャンピオンになったということは素直に嬉しいと思っているが、目指しているのはもっと上。今回、非常に苦しい勝ち方になったが、余裕を持って勝てるくらいの領域に到達しないとダメだと思っている。実際に、今回、日本選手権に出ていない選手で、強い選手はいっぱいいる。そうした方々と戦ったとしても勝てるような強さを身につけないといけないと思っている。
(参加標準記録突破を)狙うとしたらホクレンディスタンスチャレンジのどこかの10000mになる。今度こそは(標準記録を)切りたい。まずは、次のレースに向けて、今日足りなかった残り3000mの部分を補えるような練習をしっかりと積み直したい。

◎鍋島莉奈(JP日本郵政グループ)
日本選手権女子10000m 優勝 31分44秒02
誰かが(先頭を)行くというふうに思っていたので、そこに自分がうまく乗っかって、最後でスパートをかけようと思っていた。そうやって自分の力をためて、最後で力を出しきるというレース展開が、自分は一番得意。そういうレース展開ができて、まずはよかったかなと思う。さらに、(普段からいつも)一緒に走っている先輩(の鈴木亜由子選手)が前にいたことによって、本当にいつもと同じリズムで走ることができた。それも勝因なのかなと思う。
10000mは、今まではペースメーカーがいて、そのペースに乗っかって記録を狙っていくレースには出たことがあったが、今回のように勝負がかかったレースというのは初めてだったので、すごく緊張していた。「自分はまだまだ挑戦者だ」という気持ちで思って臨んでいたので、一緒に走っていた選手全員のことが気になっていた。(先頭集団が)4人に絞られた段階で、後ろの選手がちょっときつそうだったので、その段階で「3人になった」と思った。そこで気持ち的にも余裕ができたのがよかったのもしれない。
(ラストで競り合った鈴木亜由子選手は)ずっと一緒に練習をしてきている先輩。ラスト1000mあたりから「亜由子さんが出るかもしれない」と覚悟して走ることができていて、しっかり反応できるようにしておこうという準備はできていた。自分が今回こういう結果を出せたのは、一緒に練習している亜由子さんのおかげだと思う。
前回のロンドン世界陸上は5000mに出場したが、予選落ちですごく悔しい思いをした。今回は、(10000mという)違う種目でまずは出場が決まったので、自分の力をどれだけ試せるかを楽しみに、これからの練習に取り組んでいきたい。世界の舞台で10000mを戦うというのは、まだまだ自分のなかでは未知の部分。でも、「何もわからないという状態を楽しめるというのが一番大事なところだよ」ということを亜由子さんから教えてもらったことがあるので、その知らない世界でどれだけ走れるかというのをやっていければと思う。また、今年は2種目に挑戦したいと考えているので、(6月末の日本選手権では)5000mも狙っていく。5000mは3連覇がかかっているのでしっかり順位を狙いつつも、まだ参加標準記録(15分22秒00)を突破していないので、どうやって切っていくのかも考えながら進めていきたい。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォート・キシモト
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