「世界リレー」は2014年に初開催、翌2015年に第2回が行われ以後は、世界選手権と同じく隔年(奇数年)で行われることになった。2017年の第3回大会までは、いずれもバハマの首都ナッソーで行われた。今回もバハマで開催される予定だったが、経済的理由などから辞退し、2019年はその舞台が横浜に移ることになった。
男女の4×100mRと4×400mRは上位10カ国に、男女混合4×400mRは上位12カ国に2019年ドーハ世界選手権の参加資格が与えられるとあって、その切符を目指して各国がしのぎを削ることにもなる。また、今回採用された男女混合2×2×400mR、男女シャトルハードルRは世界レベルの試合では初めての実施だ。
4月30日に発表されたエントリーリストでは、47カ国790名が登録。過去最多だった第2回大会の43カ国669名を大きく上回ることになった。
ここでは、4月30日に発表された各国のエントリー790選手の2018年1月1日から2019年4月30日までの公認ベストを調査し、その合計タイム(上位4人。混合リレーは男女2人ずつ。2×2×400mRは男女各1人)から各チームの戦力を探るとともにレースを展望してみた。
なお、上記の期間のベスト記録が不明で合計タイムを算出できない国についてはランク外に示した。また、その種目にはエントリーしていなくても、他の種目にエントリーされていれば、最大4人までの変更が可能なので、ここに示したデータと大きく変わる可能性があることをお断りしておく。いうまでもないことだが、レース当日にその選手が、2018年以降のベスト記録通りの状況にあるかどうかが何よりも重要である。

26カ国がエントリー。
過去3大会の入賞チームと日本の成績は以下の通り。
今回の2018年以降のベスト記録の各国上位4人合計では、アメリカが39秒73で、ジャマイカの40秒07を大きく引き離している。「自己ベスト」ということでもアメリカは、エントリーしている5人全員が「9秒台(9.74~9.93)」の記録を持っている。が、アメリカはバトンパスに難点があり、過去3回のうち決勝に進めたのは優勝した2017年の1回のみ。
世界の頂点を目指す日本は、上位4人の合計が40秒44で9番目。このデータからすると3組2着+2の予選を突破するのも厳しい位置にいることになるが、そこはお家芸ともいえるパスワークでカバーすることになる。
下記のデータは、日本が37秒60のアジア新記録で銀メダルを獲得した2016年・リオ五輪の決勝を走った8チームの各走者のリレー直前までの100mのシーズンベストの合計と実際のリレーのタイムを比較したものだ。なお、「失格」となったアメリカとトリニダード・トバゴのリレーのタイムも参考までに記載した。
上記の通り、100mのシーズンベストの合計で日本は6番目。しかし、見事なパスワークで100mの走力の劣勢をカバーして「銀メダル」を手にしたのだった。
今回のデータは、シーズンが開幕して間もないことで2019年のシーズンベストではなく2018年のベストも含むものだが、「37秒60」の日本記録をマークした時の合計タイム40秒52
を上回る40秒44。リオ五輪並みの2秒92をパスワークで稼げれば、「37秒52」で走れる計算になる。
ちなみに、2007年の大阪世界選手権で38秒03のアジア新記録をマークして5位だった時のリレー直前までの4人の100mシーズンベストの合計は「41秒15」でその差3秒12。2008年・北京五輪で銅メダル(38秒15/のちにトップだったジャマイカのドーピング違反で繰り上がりの銀メダルに)の時は、「合計41秒17」でその差3秒02。これらと同じく3秒0~3秒1くらいを稼ぐことができれば、「37秒3~4台」で走れても不思議ではない計算になる。
五輪・世界選手権・世界リレーを含む2007年以降12大会の1~4番目でフィニッシュしたチームのタイム(カッコ内は失格になったチームのタイム)は下記の通り。
このデータからすると、アメリカやジャマイカに「36秒台」とか「37秒台ちょっと」で走られると厳しいが、「37秒台半ば前後」の勝負であれば、日本チームの「金」も十分にチャンスがありそうだ。とはいえ、完璧なバトンパスを決めることが絶対条件である。
◆男子4×100mR/国別上位4人の合計記録(2018.1.01~2019.4.30)(PDF)

野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
写真提供:フォート・キシモト
男女の4×100mRと4×400mRは上位10カ国に、男女混合4×400mRは上位12カ国に2019年ドーハ世界選手権の参加資格が与えられるとあって、その切符を目指して各国がしのぎを削ることにもなる。また、今回採用された男女混合2×2×400mR、男女シャトルハードルRは世界レベルの試合では初めての実施だ。
4月30日に発表されたエントリーリストでは、47カ国790名が登録。過去最多だった第2回大会の43カ国669名を大きく上回ることになった。
ここでは、4月30日に発表された各国のエントリー790選手の2018年1月1日から2019年4月30日までの公認ベストを調査し、その合計タイム(上位4人。混合リレーは男女2人ずつ。2×2×400mRは男女各1人)から各チームの戦力を探るとともにレースを展望してみた。
なお、上記の期間のベスト記録が不明で合計タイムを算出できない国についてはランク外に示した。また、その種目にはエントリーしていなくても、他の種目にエントリーされていれば、最大4人までの変更が可能なので、ここに示したデータと大きく変わる可能性があることをお断りしておく。いうまでもないことだが、レース当日にその選手が、2018年以降のベスト記録通りの状況にあるかどうかが何よりも重要である。

【男子4×100mR】
26カ国がエントリー。過去3大会の入賞チームと日本の成績は以下の通り。
2014年 | 2015年 | 2017年 | |
---|---|---|---|
1) | 37.77 JAM | 37.38 GBR | 38.43 USA |
2) | 38.04 TTO | 37.68 JAM | 39.18 BAR |
3) | 38.19 GBR | 38.20 JPN | 39.22 CHN |
4) | 38.40 BRA | 38.63 BRA | 39.73 AUS |
5) | 38.40 JPN | 38.81 FRA | 39.83 FRA |
6) | 38.55 CAN | 38.85 SKN | DNF CAN |
7) | 38.69 GER | 38.92 TTO | DNF GBR |
8) | DNS FRA | 39.40 GER | DNF NED |
日本 | 5位入賞 | 3位入賞 | B決勝7位 |
今回の2018年以降のベスト記録の各国上位4人合計では、アメリカが39秒73で、ジャマイカの40秒07を大きく引き離している。「自己ベスト」ということでもアメリカは、エントリーしている5人全員が「9秒台(9.74~9.93)」の記録を持っている。が、アメリカはバトンパスに難点があり、過去3回のうち決勝に進めたのは優勝した2017年の1回のみ。
世界の頂点を目指す日本は、上位4人の合計が40秒44で9番目。このデータからすると3組2着+2の予選を突破するのも厳しい位置にいることになるが、そこはお家芸ともいえるパスワークでカバーすることになる。
下記のデータは、日本が37秒60のアジア新記録で銀メダルを獲得した2016年・リオ五輪の決勝を走った8チームの各走者のリレー直前までの100mのシーズンベストの合計と実際のリレーのタイムを比較したものだ。なお、「失格」となったアメリカとトリニダード・トバゴのリレーのタイムも参考までに記載した。
順) | 記録 | 国名 | 100m合計(差) | 1走 | 2走 | 3走 | 4走 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1) | 37.27 | ジャマイカ | 39.60(2.33) | 9.92 | 9.93 | 9.94 | 9.81 |
2) | 37.60 | 日本 | 40.52(2.92) | 10.05 | 10.36 | 10.01 | 10.10 |
3) | 37.64 | カナダ | 40.37(2.73) | 10.16 | 9.96 | 10.34 | 9.91 |
4) | 37.90 | 中国 | 40.70(2.80) | 10.30 | 10.08 | 10.08 | 10.24 |
5) | 37.98 | イギリス | 40.32(2.34) | 10.01 | 10.08 | 10.04 | 10.19 |
6) | 38.41 | ブラジル | 40.86(2.45) | 10.21 | 10.11 | 10.28 | 10.26 |
DQ | (37.62) | アメリカ | 39.58(1.96) | 9.97 | 9.80 | 9.97 | 9.84 |
DQ | (38.09) | トリニダード・トバゴ | 40.22(2.13) | 10.07 | 9.99 | 10.19 | 9.97 |
上記の通り、100mのシーズンベストの合計で日本は6番目。しかし、見事なパスワークで100mの走力の劣勢をカバーして「銀メダル」を手にしたのだった。
今回のデータは、シーズンが開幕して間もないことで2019年のシーズンベストではなく2018年のベストも含むものだが、「37秒60」の日本記録をマークした時の合計タイム40秒52
を上回る40秒44。リオ五輪並みの2秒92をパスワークで稼げれば、「37秒52」で走れる計算になる。
ちなみに、2007年の大阪世界選手権で38秒03のアジア新記録をマークして5位だった時のリレー直前までの4人の100mシーズンベストの合計は「41秒15」でその差3秒12。2008年・北京五輪で銅メダル(38秒15/のちにトップだったジャマイカのドーピング違反で繰り上がりの銀メダルに)の時は、「合計41秒17」でその差3秒02。これらと同じく3秒0~3秒1くらいを稼ぐことができれば、「37秒3~4台」で走れても不思議ではない計算になる。
五輪・世界選手権・世界リレーを含む2007年以降12大会の1~4番目でフィニッシュしたチームのタイム(カッコ内は失格になったチームのタイム)は下記の通り。
年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | |
---|---|---|---|---|---|
2007年 | 世選 | 37.78 | 37.89 | 37.90 | 37.99 |
2008年 | 五輪 | (37.10) | 38.06 | 38.15 | 38.24 |
2009年 | 世選 | 37.31 | 37.62 | 38.02 | 38.30 |
2011年 | 世選 | 37.04 | 38.20 | 38.49 | 38.50 |
2012年 | 五輪 | 36.84 | 37.04 | (38.07) | 38.12 |
2013年 | 世選 | 37.36 | 37.66 | (37.80) | 37.92 |
2014年 | 世リ | 37.77 | 38.04 | 38.19 | 38.40 |
2015年 | 世リ | 37.38 | 37.68 | 38.20 | 38.63 |
2015年 | 世選 | 37.36 | (37.77) | 38.01 | 38.13 |
2016年 | 五輪 | 37.27 | 37.60 | (37.62) | 37.64 |
2017年 | 世リ | 38.43 | 39.18 | 39.22 | 39.73(3チームが途中棄権) |
2017年 | 世選 | 37.47 | 37.52 | 38.04 | 38.34 |
このデータからすると、アメリカやジャマイカに「36秒台」とか「37秒台ちょっと」で走られると厳しいが、「37秒台半ば前後」の勝負であれば、日本チームの「金」も十分にチャンスがありそうだ。とはいえ、完璧なバトンパスを決めることが絶対条件である。
◆男子4×100mR/国別上位4人の合計記録(2018.1.01~2019.4.30)(PDF)

野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
写真提供:フォート・キシモト