2019.02.26(火)選手

【トップアスリートインタビュー】戸邉直人選手(つくばツインピークス)/男子走高跳

2月2日にカールスーエ(ドイツ)で行われたIAAF世界室内ツアー第2戦において、男子走高跳で2m35の日本新記録を樹立した戸邉直人選手(つくばツインピークス)。その後も、高い水準の記録で連戦を制し、世界室内ツアーのこの種目におけるツアーチャンピオンの座を獲得。日本人アスリートとしては初めてとなる快挙を達成しました。
戸邉選手は2月23日、2019年度からの所属が決まった日本航空の直行便を利用して、ヘルシンキより帰国。到着後、成田空港において記者会見に臨み、欧州転戦の様子や結果についての思い、この好成績に至るまでの経過、そして今後の展望などを、じっくり話してくださいました。
20名を超えるメディア関係各社が集まってのインタビューに、「行きは寂しく1人で出発したので、嬉しい限りです。いつもこうありたいなと思いますね」と笑顔を見せ、1つ1つの質問に丁寧に答えてくださった戸邉選手の言葉を、3つのトピックスに分けて、お届けします。



【topic1:欧州室内転戦を振り返って】

2m35のクリアは、「正直、自分でも驚いた」


Q:この転戦は、どういう位置づけで臨んでいたのでしょう?

戸邉:世界室内という大会が隔年で開催されていて、それが開催される年の場合は、世界室内で勝負するために組み立てていく必要があるのですが、今年はその中間年ということもあり、本当に屋外シーズンに向けての様子見というのが一番の目的でした。

Q:日本記録を出したときの心境は? また、総合優勝についての感想を。

戸邉:まず、日本記録は自分でも驚いたというのが正直なところでした。初戦でそこまで行けるとは思っていませんでしたから。勝負については試合の流れのなかで意識をしていて、2m35の1本目を終えた時点で優勝が決まったので、そこで一回勝負から解放されて、気持ち的には落ち着いてしまったような感じでした。そのなかで(3回目の試技で日本記録が)跳べてしまったので、驚いたというのが本音です。また、ツアーチャンピオンという点に関しては、1戦目を優勝できたことで、そこからはツアーチャンピオンを目標にその後の試合を戦いました。しっかり勝つことができてよかったなと、嬉しい気持ちでいっぱいです。

Q:日本記録を出したときの喜び方が特徴的だったのですが、あれは突発的に?

戸邉:はい(笑)。こう、くるくると…(笑)。すごく会場も盛り上がっていて、何人入っていたのかわからないのですが、満員だということは事前に主催者の方から聞いていました。確かあのときは、ほかの競技が終わってハイジャンプだけになっていたんです。みんなが私に注目してくれているなかで、音楽とかも流してくださっていたので、テンションも上がって…(パフォーマンスが出てしまった)という感じですね。

Q:今回は、記録も素晴らしいのですが、連戦のアベレージが非常に高いことと、あとは最終戦で、前半うまくいかないなか、徐々に状態を上げていったところにも成長を感じました。ご自身では、どう受け止めていますか?

戸邉:そうですね。特に、最終戦が私のなかではすごく印象に残ったというか、自信になった試合となりましたね。2月20日が試合だったのですが、16日がその前のバーミンガム大会という日程。バーミンガム大会では、20日の試合を見据えて省エネで行こうと、(2m)32の1回目を落としたとき、そこで優勝が決まったので、本数を重ねないために一気に(2m)36に上げて本数を絞ったのですが、それでも疲労は出て、試合当日もかなり疲れている状態でした。それに、デュッセルドルフのトラックがすごく私の苦手なタイプ…カチカチで、どう頑張っても跳ねないみたいな感じ(笑)で、最初の(高さとなった)2m20の1本目、2本目を落としたときは、正直なところ、「ああ、これはもう記録なしだな」と思ったほど(笑)。そのなかで3本目は、「吹っ切っていくか」と思っていったらいい跳躍ができて、そこから徐々に、徐々にエンジンがかかったという感じだったんです。そういうなかでも(2m)34まで跳ぶことができたのは、これまでの経験が生きたと思います。
実は、昨年のダイヤモンドリーグファイナルのブリュッセル大会で、私が(2m)26を1回で跳んだ時点では1位だったのですが、そこから“わらわらわら~”(笑)と抜かれて、結果6位になった経験があり、それが昨年の私のすごく印象に残っていることだったんですね。「(走高跳は)勝負を決めるその瞬間に、どれだけいい状態で、どれだけいい跳躍が出せるかが重要な競技なんだ」ということを思い知らされて、そのことをずっと念頭においてトレーニングをしてきました。それが実戦で出すことができたのが、そのデュッセルドルフの試合だったので」


伸びしろはまだまだある


Q:東京オリンピックまで、あと1年5カ月の今、どう感じていますか?


戸邉:帰りの飛行機のなかでも、いろいろ振り返ったりしていました。そのなかで今回の2m35という記録は、「いろいろやりきって出した記録」というよりは、「あれもできていないし、これもできていないけれど跳べた記録だな」と…。東京オリンピックまでの期間に、いろいろなことができるな、と思っています。

Q:具体的には?

戸邉:私が自分で一番伸びしろがあると思っているのは空中の動きです。まだまだ洗練されていないなと自分で思っているんです。それをなんとかするアイデアもあって、そこだけで3cmくらいは稼げるんじゃないかという実感が今はあります。

Q:(カールスーエ大会で日本記録の)2m35をクリアしたあとに臨んだ2m37も、2回目、3回目あたりは、動画を見た感じだと、十分に身体は上がっていた印象がありました。ご自身も、そういう感触はあった?

戸邉:そうですね。あれはもう、シンプルに踏み切りが近かったんです。高く跳ぶためには、ある程度(空中での跳躍)の幅が必要になってくるのですが、それまでの2m30を跳ぶかどうかくらいの跳躍と、2m35以上を跳ぶための跳躍とでは、もう明らかに必要な幅が違うんですね。あの1つの試合のなかでは、その変化に適応しきれませんでした。

Q:踏み切り位置は、どのくらい下げる必要があるのですか?

戸邉:1足長分くらい違うのかなと思っています。足のサイズは29cmですから、(具体的には)そのくらいですね。

Q:戸邉選手の活躍は、国際陸連のサイトでも大きく取り上げられました。

戸邉:ツイッターをやっている人に気にかけていただきました。最終戦のときには、前日の夜に呼ばれて、マンツーマンでSNS講座を受けました(笑)。

Q:国際陸連サイトのトップを飾った気分は、いかがでしたか?

戸邉:すごく不思議な感じでしたね。もちろん嬉しさもあったのですが、「あ、ここに自分が載っている」というような、なんか他人事のような感じで(笑)。

Q:親しくしているバルシム選手(ムタス・エッサ・バルシム/カタール、2m43:2014年、ロンドン世界選手権金メダリスト)からは、何か連絡はありましたか?

戸邉:はい、ありました。実は一昨年、彼が日本に来たときに「お前、来年、日本記録跳ぶだろう」というふうに言ってもらっていて、それは実現しなかったのですが、昨年秋にまた来日して、つくばで会ったときにも、「来年こそは」と言ってもらっていたんです。彼もそのことを覚えていて、「ほら、俺の言った通りになっただろう?」(笑)と、言ってきました」


室内大会、こんなところが屋外とは違う


Q:日本の場合は、室内陸上を見る機会はあまり多くありません。屋外での試合と、どんな違いがあるのですか?


戸邉:屋外との大きな違いは、風がないというのもあるのですが、それ以上に地面…サーフェイスが特徴的というか、クセが強い会場が多いことです。というのも、屋外の陸上競技場の場合は、コンクリートの上に全天候型走路を敷いてあるのが一般的で、(規定上)どこも同じなのですが、室内だと、場所によってすごく質が違うんです。例えば特設した骨組みの上に木の板などを貼り、その上に走路を敷いてあったり、時には体育館に直接、走路を1枚敷いただけだったり。もちろん屋外の競技場と同じ走路のこともあります。今回出た4試合も、それぞれ違っていて、それぞれにクセのあるサーフェイスだったのですが、そういったなかで安定して記録が出せたということは、しっかり実力がついている証拠なのかなと思っています。

Q:サーフェイスの違いによって、跳躍を変えたりするのですか?

戸邉:そうですね。私は、走高跳という競技は、陸上競技のなかでもサーフェイスとの相性が重要になってくる競技だと思っています。地面の状態に合わせて、踏み切りのタイミングとかを微妙に変えていかなければならないので、その会場ごとにいろいろ考えて、工夫していますね。

Q:室内陸上ならではの難しさは、サーフェイス以外にもあるのでしょうか?

戸邉:ありますね。室内は、基本的に狭いので長い助走がとれません。現在、私は6歩助走で跳んでいますが、6歩じゃないと助走をとれない会場がたくさんあるんです。あとは場所によっては、床自体が板だったりすると、それ自体にバネが生じること。バネがあれば跳べそうな気がしますが、そんなことはなくて、そのバネの感じに合わせなければなりません。室内大会だけすごく(記録の)いい選手というのがいて、それも1試合だけよかったりすることがあるのですが、床のバネとその人のバネが合うと、そういうことも起こります。最初の試合で2m35を跳んだあとは、(跳べた理由は)それだったのかなと…。たまたまそこの床と、私の今の技術がマッチしたから跳べてしまったのかなというふうにも、初めは考えました。

Q:カールスーエの会場は初めてだったのですか?

戸邉:2回目です。2年前にも出て、このときは(2m)26でした。あんまり記録が出る競技場だとは思っていなかったです。

Q:男子棒高跳の世界記録は室内のもの(6m16、2014年)です。跳躍種目は基本的に、室内のほうが記録は出しやすいと考えるのが一般的なのでしょうか?

戸邉:いえ、そうでもないですね。ハイジャンプでいえば、室内世界記録は2m43、屋外は2m45なので。室内だと気温が毎回25℃くらいで、非常にいい条件に設定してくれてはいるのですが、屋外だと気温がもっと高くて、もっと身体が動いたりする場合もあります。また、ちょっと追い風が吹いてくれたりする場合は、屋外のほうがいい条件になる可能性もありますから。


【topic2:急躍進の背景を聞く】

技術的にも体力的にも充実


Q:今回のツアーでは2m30台を安定して出すことができています。その要因については、どう考えていますか?

戸邉:やはり一番は、昨シーズンが終わってからのトレーニングがすごくうまくいったことでしょうか。技術的にも体力的にも充実した状態で、今を迎えることができているのかなと思っていて、それが一番の要因かなと思います。

Q:トレーニングで変えてきたことはあるのですか?

戸邉:トレーニング自体の内容や考え方は、基本的には昨年からあまり変えていません。今年の位置づけとしては、2019年、2020年といい流れで行くために、ある程度、体力的なベースを高めつつ、技術もまとめていくということを一番の目的にしています。それは昨年も同様で、その流れをずっと継続している感じです。

Q:変わっていないなかで、では、何が上積みされた?

戸邉:特定の“何か”がすごく効いたというよりも、技術的にも体力的にも、総合的にいい形でパフォーマンスにつながったのかなと思いますね。


2019年にシーズンにかけてのトレーニングは、「技術的なほうに振っている」


Q:以前の記事で、2017年までと比べると、2018年に向けては量を抑えて質を上げたという内容を見ました。そこをもう少し詳しく聞かせてください。

戸邉:具体的には、技術的なトレーニングを増やしました。体力的なものを減らしたという感じですね。体力的に高めようとすると、どうしてもトレーニング全体のボリュームが増えてしまうので、おろそかにするつもりはなくても技術的な質が落ちてしまうデメリットがあるので。東京オリンピックもかなり現実的に見えてくる時期になってきたので、技術的にまずは完成させないと間に合わないという危機感もあり、昨シーズンから2019年シーズンにかけては、技術的なほうに振っているかなという感じです。

Q:戸邉選手は、2015年あたりからの3年間は故障で苦しんでこられたわけですが、技術的な要素に振っているという変化は、その経験による故障予防での観点というよりは、技術をまとめていこうという目的が先にあってのことだったのですか? その結果、故障が減ったという感じなのでしょうか?

戸邉:故障が減ったのは体力的な向上があったからだと思います。昨年(2018年の成績が)良かった要因としては、やっぱりケガをしなかったことが大きくて、で、その背景としては2017年から2018年にかけて、ある程度体力的にもしっかりやってきたので、それがうまく効いてくれているのかなとみています。

Q:減らした体力的な練習というのは、どんなもの?

戸邉:体力的に何をやっているかというと、私の場合、走り込みとウエイトトレーニングが中心になるのですが、どちらもけっこう減らしました。頻度的にも減らしましたし、1回にやる量も減らしました。

Q:では、2017年に向けての冬季はしっかり(体力的要素のトレーニングを)積んだ上で、そのあと減らしたというイメージでしょうか?

戸邉:一気に「減らそう」というふうに考えたことはなくて、徐々に減ってきているという感じです。技術的に高めていこうとするなかで、どうしても体力的にやっていくと技術的にそっちのトレーニングの質を上げられない部分があるので、必然的に(体力的なものの比重が)下がって、技術が上がってという感じになっているというイメージですね。


助走を6歩に固定し、アームアクションを6年ぶりにシングルに


Q:「技術的」というのは、どういうところに重点を置いている?

戸邉:昨シーズンは、助走歩数がころころ変わりました。というのは、会場の広さとかでいろいろ適応しなければならず、その都度、調整が必要だったので、今年は、どの会場でもとれる6歩助走に決めて、その上で、踏み切りの技術とかもかなり重点的にやってきました。昨シーズンから今シーズンにかけて両腕で振り込んでいたのを片腕に変えたので、具体的にはそういったところですね。(今回の結果は)体力的な練習を減らしたことや、そういう技術の変化とかが総合的にはまったというか、そういう感じではないかと考えています。

Q:踏み切り時に、ダブルアームアクションからシングルアームアクションに変えた意図は?

戸邉:もともと私はシングルアームだったんです。それを、大学3年の2月くらいの時期にダブルアームに変えました。その理由は、力学的には両腕で振り込んだほうがどう考えても効率が良く、かつ世界のトップレベルはほとんどダブルアームを使っているという現実があったからです。そこから6年間やってきて、ダブルアームの技術自体はかなり洗練されてきた感じはあったのですが、踏み切りで両腕を(揃えて)振り込むためには、走っている(そこまでの)どこかで両腕の動きを合わせなければならないわけです。私の場合は、踏み切りの2歩前のところで両腕を前で合わせて、踏み切り1歩前で両腕を引いて踏み切るという形をとっていましたが、そうすると、その踏み切り2歩前のところで、どうしても腕の動き(両腕を前方へ出そうとする)につられて身体が浮いてしまう動きが出てしまって…。2018年のシーズン中は、ずっとそれをどうにかしようと、いろいろなことを試してみたのですが、どうにもなりませんでした。「だったらもう、思いきってシングルアームにしてみたほうが、意外といい踏み切りができるのかもしれないな」と考えて、そういう仮説を持って練習でやってみたら、すごくよかったので、シングルアームに変えました。

Q:それはいつのこと?

戸邉:昨年の8月31日にブリュッセルで行われたダイヤモンドリーグが、最後のダブルアームでの試合でした。そこで「もう、これはダメだ」と思って(笑)、帰国して次の日の練習で(仮説に沿って変える取り組みを)やりました。なので、9月の2日、3日あたりだったと思います。

Q:助走のほうは、屋外でも9歩でなく6歩でやっていくのですか?

戸邉:はい、6歩でやろうと思っています。私は7歩、8歩、9歩、6歩で2m30を越えているのですが、(歩数を競技会に応じて変えることには)それなりの準備が必要で、前日くらいから「こうやっていこう」と戦略的なものも考えたりするので、当日いきなり変えるというのは難しいんですね。「できるけど、やれなかった」というようなケースもあるので、それをしないためにも、もう6歩で固めてしまおうという感じです。

Q:6歩助走の場合、急にスピードを上げていかなければならない難しさがあると以前に話していました。そこはクリアできたのですか?

戸邉:助走スピードのコントロールがしにくいという面は確かにあるので、シビアな部分はあります。でも、そこも“伸びしろ”の1つかなと思っています。今回の遠征のなかでも、かなりスピードコントロールには苦労しました。その試合ごと、あるいは、その日ごとにいい助走速度を見つけるのに、毎回時間がかかったという反省はありました。

Q:助走スピードは、具体的にどのくらい細かく調整するのですか?

戸邉:具体的に「どれくらい」というのを、自分ではその場で把握することはできないのですが、私の踏み切り時の助走速度は、だいたい7.8m/秒から速いときで8.1m/秒に行くかどうかくらいの幅でやっています。それはその日の体調とか、さっき言った地面の違いとかで変えていかなければいけない部分なのですが、それがまだうまくコントロールできていない部分はあるなと思っています。

Q:ご自身のハイジャンパーとしての強みはなんだと思いますか?

戸邉:フィールド種目というのは、いろいろ変化する状況に適応する能力というのがすごく重要な競技だと私は思っているのですが、その能力が強みかな、と。いろいろな状況や環境に適応できる力が自分はあるかなと思っています。


【topic3:今後の展望】

長いシーズンとなる2019年、2m40を目標に


Q:屋外シーズンの試合スケジュールは?

戸邉:なんとなくは決まっています。4月の終わりにアジア選手権(4月21~24日、ドーハ)があるので、その前にもしかしたら記録会を挟むかもしれませんが、最初は、とりあえずアジア選手権が1つの目標になります。そのあと、大阪で開催されるゴールデングランプリ(5月19日、長居)に出て、6月にダイヤモンドリーグのローマ(6月6日)とラバト(6月16日)に出てから日本選手権(6月27~30日、博多)に戻ってきて、7月は日本でトレーニングをして、8月またヨーロッパに行って、9月にトレーニングをして、その後、10月は世界選手権(9月27日~10月6日、ドーハ。男子走高跳は10月1日に予選、10月4日に決勝を実施)へ。そういうイメージでいます。


Q:東京オリンピックを目指す上では、アジア選手権、世界選手権が重要になってきます。

戸邉:来年の東京オリンピック出場権獲得に向けては、ポイントランキング制が導入されるので、アジア選手権は、そういう意味でも非常に重要な試合となってきます。もちろん優勝を目指していきたいなと思っています。世界選手権は10月に行われますから、シーズンとしては例年よりも長くなるわけですが、この世界選手権も東京オリンピックに向けた試金石となる、非常に重要な大会になると思いますので、しっかり結果を残せるように頑張りたいと思います。

Q:記録面での目標を。

戸邉:記録としては2m40を目標にやっていきたいと思っています。

Q:そこについては、ビジョンは見えている?

戸邉:今回、ほとんどの試合で、2m36、2m37という高さに挑戦しているのですが、いずれも跳べてもおかしくない跳躍ができたかなという感触がありました。その(2m)36、(2m)37を越えたら、次は2m40に挑戦することになります。すごく具体的に、「あと、どこがどれくらいできたら跳べるのかな」というイメージがつきましたね。

Q:2m40は、今年中に出せそうですか?

戸邉:出せると思いますし、出したいと思っています。

博士号を取得。春からは「JAL」に所属


Q:春からは、日本航空の所属で競技を続けることを発表しました。JALに決めた背景を。

戸邉:アスリート社員だけでなくて一般の社員の方を含めて非常にいい雰囲気で、競技を応援してくださるすごくいい環境だなと感じました。ここで競技をすることで、自分の力にもつながると思ったし、その応援をエネルギーに変えることで、競技者としてより強くなれるなと思ったので決めました。

Q:仕事との兼ね合いや練習拠点は?

戸邉:拠点は変わらず筑波大学です。仕事面に関しては、かなり競技中心に…ということでご配慮いただいています。今の大学院と競技との両立よりも、より競技に力を注げるかなとイメージしています。

Q:日常生活自体は、これまでとどう変わりそうですか?

戸邉:今までは博士論文を書いていましたから、午前中にトレーニングをして、昼食をとってからは夕食の時間を除いて寝る前まで研究をやっているという感じでした。これからも研究的なことは、少しは続けていきますが、1日1~2時間くらいになるのかなと思うので、そういう意味では、かなり競技に集中できるようになると思います。

Q:3月末には博士(コーチング学)の学位を取得されます。どういうテーマの博士論文を執筆されたのですか?

戸邉:テーマは、「走高跳のコーチング学的研究」です。従来のスポーツ科学の研究では、あるテーマに絞って、何人かの被験者をもって統計的にどんな結果が出たかを見ているものが多いのですが、「コーチング学的」ということで、より実践を意識したような内容になっています。もちろん、従来(の研究で)やられていたような走高跳でより高く跳ぶためにどんな要素が必要かということを、何人かの被験者を使って統計的に調べたりもしましたし、その上で、自分のこれまでの競技力を向上させてきた過程の動作分析をして、何がそれに効いていったのか、トレーニング内容も含めて分析したような研究になっています。

Q:口頭試問は?

戸邉:(本審査は)遠征に出発する直前の、1月18日に終わっています。(口頭試問が終わったあとで)その場で結果がいただけるので、今回の遠征は、すごく開放感いっぱいの気持ち(笑)で出発しました。

Q:それでは、学業自体はひと区切り?

戸邉:そうですね。ただ、パフォーマンスを高めるなかで、私が大事にしているデータ分析みたいなものはあるので、それは大学を拠点にトレーニングをするなかで、今後も継続してデータをとって、自分で生かしてやっていきたいなと思っています。

Q:いよいよ本格的に、世界が主戦場となりますが、走高跳の場合は、バルシム選手がいて、王宇選手(中国、アジア大会金メダリスト:世界室内ツアー最終戦で、2m34の中国新記録を樹立)も頑張ってきています。そういう意味では、アジアレベルの大会の段階から楽に試合ができない状況です。

戸邉:王選手とは、(転戦先で)何度も相部屋になったりしているので、すごく仲がいいんですよ。(最終戦のときは)試合中は“おめでとう”とかそういうのはあったものの、あまりしゃべらなかったのですが、ホテルに帰ってからは、互いに「よかったね」みたいなところから始まって、「今シーズンはどうする」とか「次のオリンピックに向けてどうする」みたいな話を、いろいろしました。
ハイジャンプは、アジアで優勝できれば、世界でも優勝できるくらいのレベル。正直、しんどいなと思う部分はありますが、その環境が嬉しいというか、より強くならなきゃならない環境なので、それを力にしていきたいと思っています。

※このインタビューは、2月23日に行われた帰国会見の質疑応答および囲み取材における戸邉選手のコメントを、3つのトピックスに分けて再構成しています。

構成・写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)

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