2018.07.11(水)大会

【U20世界選手権】1日目:チームJAPAN最初の入賞者は、ダイヤモンドアスリートの髙松智美ムセンビ



7月10日、第17回U20世界陸上競技選手権大会が、フィンランド・タンペレ市のタンペレ・スタジアムで開幕しました。ここでは、日本勢の活躍を中心に、大会の模様をレポートしていきます。

大会初日のこの日、日本勢は、6種目の予選と、一発決勝となった女子5000m・男子10000mに出場するタイムテーブル。

午前9時から開始された午前のセッションでは、まず女子やり投予選A組に桑添友花選手(筑波大)が出場しました。この種目の予選通過記録は53m50で、これを超えられなかった場合は上位12名までが決勝に進出できます。桑添選手は2回目に52m04をマークして、3位で競技を終了。全体では4位で予選を通過しました。

続いて行われたB組には、武本紗栄選手(大阪体育大)が出場、1回目に48m80を記録しましたが、その後、思うように記録を伸ばすことができずB組7位、全体では15位にとどまりました。

3組3着+6の条件で行われた女子3000mSC予選は、西山末奈美選手(松山大)と野末侑花選手(北九州市立高)が出場しました。1組目を走った西山選手は、ラスト1周で3番手に浮上し、10分02秒89の自己新記録をマーク。7月13日の夜に行われる決勝へ駒を進めました。3組目に出場した野末選手は、終盤にペースダウンし、10分39秒24・9着でのフィニッシュとなりました。



女子800m予選には、塩見綾乃選手(立命館大)と川田朱夏選手(東大阪大)が出場。1組に入った塩見選手は2分05秒13、3組に入った川田選手は2分05秒08と、ともに1着でフィニッシュし、2日目の午後に行われる準決勝進出を決めました。

また、6組3着+6の条件で行われた男子100m予選でも、宮本大輔選手(東洋大、ダイヤモンドアスリート)が1組で2着(10秒50、+1.1)、福島聖選手(富山大)が3組で3着(10秒37、+0.5)と、順当に着順で準決勝進出を果たしています。



通過記録7m70の条件で行われた男子走幅跳予選は、A・B組が並行して行われ、A組に男子主将の橋岡優輝選手(日本大、ダイヤモンドアスリート)が、B組に酒井由吾選手(慶應義塾大)が出場。橋岡選手は1回目は踏み切りが合わず、7m35(+1.2)にとどまりましたが、2回目で修正し、全体でトップとなる7m92(+1.1)をマークして予選を突破。

酒井選手は、1回目で自己記録を1cm更新する7m69(+2.0)のパーソナルベストをマーク。通過記録の突破はなりませんでしたが、全体で3位につけて、こちらも決勝進出を果たしました。男子走幅跳の決勝は、2日目(7月11日)の17時55分から競技が行われます。

午後のセッションでは、大会最初の決勝種目として、17時40分から女子5000mがスタート。レースは、1周目から髙松智美ムセンビ選手(名城大、ダイヤモンドアスリート)と森林未来選手(デンソー)が先頭に立つ展開となりました。



森林選手は1000~1200mで後続に吸収されました(17分08秒55・14位)が、髙松選手は1000mを3分07秒71、2000mは6分21秒37とトップで通過。2200m手前で後続のアフリカ勢が追いつき、そこからは4位争いをしながらレースを進めていきました。6周目あたりからペースが上がり、髙松選手は7位に後退。ラスト1周でいったんは6位に浮上しましたが、バックストレートでかわされ、15分55秒74・7位でフィニッシュ。日本勢最初の入賞者となりました。

女子円盤投予選B組には、4月に52m38の高校記録(U20日本歴代3位)を樹立して、日本選手権でも初優勝を果たしている齋藤真希選手(鶴岡工高)が登場。徐々に記録を伸ばして3回目に49m84をマーク。B組で9位、全体では11位で3日目の夜に行われる決勝に駒を進めました。
この種目での決勝進出は、1996年のシドニー大会の室伏由佳選手(中京大、51m56、6位)以来2人目となります。

1日目の最終種目となった男子10000mでも、女子5000m同様にアフリカ勢が強さを見せるける結果となりました。



レースは序盤から前回3位のJacob Kiplimo選手(ウガンダ)、Rhonex Kipruto選手(ケニア)らが先頭集団をつくり、2400m付近で上位集団が8人なると、その後は徐々に絞られていく展開となりましたが、Kipruto選手が6000~7000mのラップを2分38秒76に引き上げてリードを奪うと、その後の2000mをそれぞれ2分42秒台でカバー、最後の1000mでは2分37秒68をマークし、27分21分08秒の大会新記録で快勝しました。

日本からは、6月のアジアジュニア選手権で4位入賞を果たしている三浦拓朗選手(中央大)が出場。30分12秒25・9位でのフィニッシュとなりました。


【選手コメント】

◎桑添友花(筑波大2年・宮城)
女子やり投 予選A組3位 52m04 ※決勝進出
この競技場の助走路は反発が強く、いつもより助走が進むことがわかっていたので、それを踏まえて(助走の)スタート位置を後ろにしていたのだが、1本も合わせることができなかった。その点に適応できなかったという印象が強い。2回目に52m04まで伸ばしたが、3回目でさらに修正しきれなかったところが大きい。決勝では、金メダルを目指して自分の投げをするしかない。思いきっていきたい。

◎武本紗栄(大阪体育大1年・兵庫)
女子やり投 予選B組7位 48m80
(48m79で13位に終わった)日本選手権のときと同じような感じで、やろうとしている動きができなかった。U20世界選手権だから(緊張してできなかった)というわけではない。
どこが悪いというよりは全部の動きがばらばらになっている感じがあって、今年はずっとその状態が続いていた。練習の段階では、“行けるかもしれない”という感触があったので、この大会でそれを消したかったのだが、試合が始まると、これまでと同じ状態になってしまった。

◎西山末奈美(松山大1年・愛媛)
女子3000mSC予選 1組3着 10分02秒89=自己新 ※決勝進出
予想していたのは、少し遅めのペースで入って、ラストでスピードが上がる展開だった。しかし、ケニアの選手が途中から前に出てきてペースが上がった。そこに対応できなかったことが今回の課題だと思う。決勝でも走るチャンスがあるので、入賞を目標に、しっかりこの舞台で結果を残して日本に帰れるようにしたい。

◎野末侑花(北九州市立高3年・福岡)
女子3000mSC 予選3組9着 10分39秒24
決勝に行くことが目標だったので、先頭に食らいつこうと思って臨んだが、ペースが速くてついていけなかった。自己ベストが10分15秒(10分15秒07、2018年)なので、それを超えるタイムを目標にしていたのだが…。2000m手前くらいから、けっこうきつくなってしまい、(脚を)上げるのがつらかった。粘れなかった後半をもっと粘れるようにして、もっとタイムを伸ばしていきたい。

◎塩見綾乃(立命館大1年・京都)
女子800m 予選1組1着 2分05秒13 ※準決勝進出
(レーンが)オープンになるまでで外国人選手にのまれたら自分のレースができないと思っていたので、積極的に前半から攻めていった。先頭を引っ張れたことが大きかったと思う。明日の準決勝は、みんなが狙ってくるはず。そこで確実に通過できたら、決勝はもう出しきるだけなので、まずは準決勝でしっかり勝負したい。

◎川田朱夏(東大阪大1年・大阪)
女子800m 予選3組1着 2分05秒08 ※準決勝進出
ほかの選手にのまれないように前半を飛ばして、後半で抜かれたときには、しっかりついていこうと思って臨んでいた。ラスト200(m)くらいからスパートをかけたのだが、最後まで(その)スパートがうまくいったことがよかったと思う。準決勝では、予選と変わらない走りをして、リラックスして、勝ち抜いていきたい。

◎宮本大輔(東洋大1年・埼玉) ☆ダイヤモンドアスリート
男子100m 予選1組2着 10秒50(+1.1) ※準決勝進出
調子はまだ上がりきっていない感じだが、とりあえずは余裕をもって予選を通過することができたので、明日(の準決勝)に備えたいと思う。スタートは悪くなかったが、中盤がまだ(調子が)上がっていないなという印象。準決勝では、もう一段階引き上げていきたい。

◎福島 聖(富山大1年・富山)
男子100m 予選3組3着 10秒37(+0.5)=シーズンベスト ※準決勝進出
海外の選手は後半が強いとわかっていたので、前半はゆったりめで出て、後半でついていこうという気持ちで走った。それがうまくはまって、シーズンベストの10秒37が出たので本当に嬉しく思う。体調はどんどん良くなってきているし、まだまだ修正できる部分もある。明日の準決勝では自己ベストを目指して頑張りたい。

◎橋岡優輝(日本大2年・東京) ☆ダイヤモンドアスリート
男子走幅跳 予選A組1位 7m92 (+1.1) ※決勝進出
練習跳躍のときは(助走が)走れすぎてしまって、うまく乗っていけなかったので、1本目は助走のスタート位置を50cmくらい詰めて臨んだ。(1回目の跳躍が7m35の失敗跳躍だったのは)試合になったとたんにそれができてしまったから。2本目では、(スタート位置を)70cmくらい下げて臨んだ。記録は7m92だったが跳躍自体は及第点というところ。まだ踏み切りが遠くてイメージ通りではない。決勝では、優勝して金メダルを日本チームに持って帰りたい。

◎酒井由吾(慶應義塾大1年・東京)
男子走幅跳 予選B組2位 7m69(+2.0)=自己新 ※決勝進出
1回目の7m69は自己新記録。予選通過記録の7m70を上回れなかったことは残念だったが、(7m)69を跳んで、“これで(決勝に)残るな”と思ったので、2・3回目は、明日(の決勝)に向けた自分の跳躍の組み立てをしていった。悪いところが浮き彫りになったので、決勝までにそこを修正していきたい。決勝ではメダルをしっかり持って帰れるように頑張りたい。

◎髙松智美ムセンビ(名城大1年・大阪) ☆ダイヤモンドアスリート
女子5000m 決勝 7位 15分55秒74
すごいしんどかった」というのが一番の感想。この大会では、最初は、(1000mごとのペースを)3分05秒くらいで行って、ラストで3分切るくらいに上げようと思っていて、そういう練習もしてきていた。しかし、先頭で走っていたあとに後ろに下がると、気持ちの面できつくなってしまった。3000m過ぎから抜かされ、“一人旅”のレースになってしまったところがしんどかった。
入賞はしたが、タイムがダメ。このタイムなら日本選手は誰でも行ける。日本代表として、もっと速いタイムを出したかった。入賞の嬉しさよりも、悔しさのほうが大きい。
ただ、こうして同世代の海外の選手と走る機会はなかなかない。外国人留学生の選手と一緒に走ることはあっても、ほかの国の選手がどれくらい速いかは知らなかったので、一緒に走ることができて、すごく楽しかった。もっと強くなって、また、世界の舞台でレースをしたい。

◎森林未来(デンソー・三重)
女子5000m 決勝 14位 17分08秒55
初めての海外の試合だったので、世界を経験するというか、挑戦者という気持ちで臨んだ。1カ月くらい前から体調があまり良くなかったので、できる練習をしてきた。そのなかでどれだけ今の力を発揮できるか、しっかり走ろうと思っていたのだが、やはり準備不足はあった。今は申し訳ない気持ちでいっぱい。でも、世界の大会に出場させてもらって、本当にいい経験ができたと思う。やはり世界の壁は大きいなというのを実感したし、いい刺激をもらった。また、こういう大会で走れるように頑張りたい。

◎齋藤真希(鶴岡工高3年・山形)
女子円盤投 予選B組 9位 49m84 ※決勝進出
予選通過記録が(自己記録を上回る)53mだったので、まずは自己新を目指して、その結果、決勝に進むことができたらいいなと思って臨んでいた。記録自体は1回目(47m87)が良くなくて、2回目(49m82)に記録を伸ばしたが、3回目(49m84)で伸ばしきれなかったという印象。それでも決勝に進めて、(投げる)チャンスが増えたのでよかった。決勝では、まずは楽しく投げられたらいいなと思う。

◎三浦拓朗(中央大1年・兵庫)
男子10000m 決勝 9位 30分12秒25
“世界”を経験できて、とても楽しかった。この大会では、8位入賞を目指していたので、最初は先頭集団についていったが、“自分の力じゃまだついていけない”と思って、ペースを抑えた。(2800m手前で10位から9位に上がり、前の8人を追う展開となったが)仲間や監督が声をかけてくださって、(入賞まで)“あともう一歩”というのはわかっていたが、そこで力を出しきれなかったのは自分の弱さだと思う。
一昨年(前回大会)の記録を見て、29分半を切らなければならないと思い、1000mを2分57(秒のペース)でいこうと練習してきたが、単独走になるとまだまだ弱かったので、そこを今後改善していきたい。


文:児玉育美(JAAFメディアチーム)


▼第17回U20世界陸上競技選手権大会▼

http://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1265/

▶1日目:チームJAPAN最初の入賞者は、ダイヤモンドアスリートの髙松智美ムセンビ

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▶4日目:高良彩花、セカンドベストの跳躍で、銀メダルを獲得!

▶5日目:男子棒高跳・江島雅紀、5m55の今季ベストで銅メダル!

▶最終日:吉田選手が3000mSCで過去最高の5位入賞!日本は、金2、銀2、銅2、入賞11の成績


第17回U20世界陸上競技選手権大会
開催日:2018年7月10日(火)~15日(日)
会場:フィンランド・タンペレ

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