2020年東京オリンピック男女マラソンでのメダル獲得を目指す日本陸連は、選手強化とリンクさせた新たな選考方法を導入しました( http://www.mgc42195.jp/mgc/ )。2019年9月以降に開催される五輪選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」への出場権を懸けて、選手たちがまず挑むのは、国内指定競技会によって構成される「MGCシリーズ」。ファーストシーズンとなる2017-2018年は、8月27日の北海道マラソン(男女)を皮切りに、11月12日にさいたま国際マラソン(女子)が実施されました。年内には、このあと12月3日に福岡国際マラソン(男子)が。本格的なロードシーズンの訪れとともに、その戦いも、一段と白熱していきそうです。
ここでは、北海道マラソンの男子の部を制し、MGCファイナリスト第1号となった村澤明伸選手(日清食品グループ)へのインタビューをお届けします。11月中旬、千葉県富津市で合宿中の村澤選手を訪ねて、MGC進出を決めた北海道マラソンを振り返っていただくとともに、現在の状況や今後の計画、そして、マラソンに懸ける思いを伺いました。
◎取材・構成/児玉育美(JAAFメディアチーム)
MGCファイナリスト第1号に
写真提供:北海道マラソン事務局
――東京オリンピックの選考方法として、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)という新しい枠組みができました。MGCについて初めて聞いたとき、どんな感想を持ちましたか?村澤:「ああ、そういう基準ができたんだ」というくらいの感覚でしたね。選考の基準は、いずれは自分がしっかり出さなければならない結果だと思っていましたし、特にそれに対して何か思うというようなことはなかったです。「自ずとそういう結果を求めるようになっていくんだろうな」と…。
――そして、村澤選手は、8月に行われた北海道マラソンでMGCファイナリスト第1号となったわけですが、それから2カ月半ほど経ちました。今、どういう状況にありますか?
村澤:次のマラソンに向けて、準備・練習をしているという段階に入っています。
――来年2月か3月あたりのレースへの出場を予定しているという話も伺いました。大会は決まったのですか?
村澤:11月、12月、そして1月の練習のこなし具合でレースが決まってくるかなと思っているので、まだ、2月か3月のどちらかで1本(走る)というくらいのイメージしかないです。現状の自分の身体の状態と、積み重ねてやってきている練習とをうまくマッチさせながら、1つ1つ段階を踏んでレベルを上げていけたらいいなと思っているところです。
――そもそも北海道マラソンを選んだ理由は? レース後のインタビューなどを拝見すると、MGCレースということ自体を、そんなに意識はしていなかったそうですね。
村澤:はい。もともとそういうふうに(MGCレースと)なる前から北海道を走ることは決めていたので。北海道マラソンは自分にとっては2回目のマラソンで、まずは、42.195kmという距離をしっかり走りきり、距離に対する自信をつけることを目指していました。また、夏場のレースを経験しておきたいというのもあって、そういったところを含めて考えたときに、ちょうど北海道がいい時期にあったので出たという経緯です。
――イメージ通りの走りや成果だったのでしょうか?
村澤:走る前には、正直なところイメージ自体をあまり描いていませんでしたし、タイムや順位に関しても特に意識していたわけではなかったので、イメージ通りだったといえるのかよくわからないのですが、結果として最後の最後まで自分の身体をしっかり動かしてゴールできたということで、当初の目的であった42.195kmという距離を走りきることができました。この点は、また次につながっていくかなと思っています。
逆算をしない、過去と比較しない
――マラソンに取り組むにあたっては、しっかり練習が積めた状態で臨めたと聞きましたが…。
村澤:そうですね。久しぶりに年間を通して練習できてきた上でのレースでした。途中、ちょっと休んだ時期もあったのですが、逆に年間を通してやってこられたことで、そういった中断もあまり気にしなくなったというか。やはり年間を通して練習を続けて、それを積み重ねていくことが本当に大切なのだなと改めて感じました。
――以前と変わったことはありますか?
村澤:あまり逆算をしないようにしたというのはあります。マラソン練習を始めるまでは、(目指す)1つのレースに対して「このくらいで走れないといけないな」と考えて、残りの期間から逆算して、「こういう練習をしていかなければならない」と帳尻合わせするというか、その時々で戦っていくことを繰り返していました。それが故障を繰り返す原因にもなっていたと思います。今は、もちろん次のレースに対する目的と結果というものは決まっているのですが、それに対して逆算して、「じゃ、今、これをやらなければならない」というようなことはしなくなりました。
――学生のころに比べると、故障で苦しむ時期が長かった印象がありますが、継続して練習できている背景には何があるのでしょう?
村澤:合宿などを多く組んでいただき、ずっとお世話になっているトレーナーさんに身体をチェックしていただいています。そういったなかで安心して練習ができるということが一番大きいかなと思います。
――以前と身体が変わってきたというようなことはありますか? ケガをしなくなったとか。
村澤:ケガをしない身体になっているかどうかは、自分ではちょっとわからないですが…(笑)。ただ、(トラック種目や駅伝で活躍したりしていた)大学のころの自分の感覚はもうないものだと思っているので、そこと比較して何かをするということはやめるようにしているというのはあります。
――あの走りができたときはこうだったという意識を持たないということですか?
村澤:はい。自分はけっこう都合のいい人間で(笑)、いいときのことしか頭の中に(記憶して)ないのですが、ただ、“いいときの感覚”といっても、もうそのころからは年数もずいぶん経っていて、あてにならなくなっていると思うんです。それに、じゃあ大学生のとき、ずっとそういう(いい)感覚で走れていたかというと、決してそうではないですし…。むしろ、そのころと比べて練習をしていると前に進めないと考えて、逆に、今の自分の状態や感覚をしっかりと積み上げていくなかでいい状態をつくっていけばよいというふうに思っています。
写真提供:日清食品グループ
(2017年11月16日収録)
>>【MGCファイナリスト】村澤明伸選手インタビュー Vol.2はこちら
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