EVENT REPORT

イベントレポート”現役選手だからこそやる。たくさんの子どもたちにチャンスをあげられるような大会にしていけたら”サニブラウン選手主宰「DAWN GAMES」決勝大会

パリ2024オリンピック競技大会、男子100m/4x100mリレー日本代表のサニブラウン・アブデル・ハキーム選手(東レ)が主宰する「DAWN GAMES」の決勝大会「DAWN GAMES FINAL Powered by TORAY」が10月13日、東京都調布市のAGFフィールドで開催された。

「日本の短距離の層を厚くしたい、そして陸上の人気を増やしたいと思った時に、まずは陸上人口を増やさないといけない。そのためにはやっぱり子どもたちの力が必要だと感じました。小中高にもっといろいろな機会、チャンスを作りたい」

これが、サニブラウン選手がDAWN GAMES創設にあたっての想いだ。

大会名も自身で命名している。「DAWN(ドーン)」には「夜明け」「黎明」という意味があり、陸上界にとって新しい時代の始まり、新たなフェーズの夜明けや革命をもたらす大会にしたいという考えから生まれている。

そんなサニブラウン選手の想いを、マネジメント契約をするUDN SPORTS、昨年6月に所属契約を交わした東レが支え、パリ五輪イヤーの真っ最中に並行して準備を重ねてきた。

その予選大会は6月9日に西日本(関西、中国、四国、九州/大阪・ヤンマースタジアム長居)、6月29日に東日本(北海道・東北、関東、北陸、東海)で開催され、上位選手が決勝大会に進出。現役選手が開く大会とあって、100mレースのみながら小学校、中学校、高校の男女各カテゴリーに、両大会合わせて約800人が参加するなど盛況となった。

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10月とは思えない日差しが降り注ぐ中で迎えた決勝大会は、スタンドから見守ったサニブラウン選手が「レベルが高いですね」と話すほど、各カテゴリーでハイレベルの争いとなった。

中学女子の部は、福田花奏選手(神河中3兵庫)が制した。

その第一声は「自分のレースを作ることに徹しました」。それは、前日に行われた「サニブラウントレーニングキャンプ」でサニブラウンから受けたアドバイス。全中では2位になるなど、「1位にならないと、タイムを出さないと、という思いがあって、それがプレッシャーになってしまう」という課題を、福田選手は感じていた。それに対して、サニブラウンからは「その前に楽しむこと、自分のレースを作ることに集中すること」の大切さを教わり、それを見事に実践した。

福田選手はさらに翌週の第18回U18/第55回U16陸上競技大会のU16 100mハードル(0.762m/8.50m)で13秒09(+1.6)と快走。1つ上のカテゴリーとなるU18日本新記録、さらにはU16アジア歴代1位相当の大記録をマークした。DAWN GAMESのイメージを体現するようなステップアップを遂げている。

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小学生男子は橋本悠生選手、小学生女子は東郷帆夏選手、中学男子は井原琉翔選手(箕面五中3大阪)、高校女子は橋本清愛選手(安城学園3愛知)、高校男子の1組は松丸孝之選手(目黒学院3東京)、2組は浅井央真選手(瑞陵3愛知)がそれぞれ制した。

今大会はパラレースも実施。男子100mに出場した齋藤暖太選手は、サニブラウン選手の母校である東京・城西高の2年生。短距離の名門の中で、「自分も強くなりたい」と一緒に練習に励んでいる。「尊敬しています」という先輩が主宰するレースで1着を勝ち取り、「将来はパラリンピックや世界パラでメダルを取れる選手を目指します」と言葉に力を込めた。

「精度を高めて、もっともっと大きな大会に」

前述したように、サニブラウン選手の思いが形になったこの大会だが、単にレースだけでは終わらない“仕掛け”が随所に見られた。

予選大会を含め、小学生を対象にした陸上教室を実施した。決勝大会では、サニブラウン選手をサポートする名和大輔トレーナーを中心に、サニブラウン選手、練習拠点(タンブルウィードTC)を共にするパリ2024オリンピック競技大会、男子走幅跳代表の橋岡優輝(富士通)もコーチ役を担当。2人組のストレッチや、不安定の中で軸を作る意識、股関節周辺との連動の大切さを伝えるメニューに一緒に取り組みながら、参加した小学生たちへ積極的にアドバイスを送った。

また、決勝大会出場者を対象に、大会をサポートした東レが、サニブラウンとの自社製品についてのトークセッションも開催した。

スポーツウエアの素材は綿やウールなどだけではなく、PETボトルや漁網、サトウキビなどの植物ほか、さまざまな素材からができていることをクイズ形式で説明。同社独自の吸汗速乾、撥水の技術は、シャツに水鉄砲で水をかけたり、広げた繊維にバケツの水を流してもほとんど地面に漏れないという実験をしたりして伝えた。

強い日差しをカットする日傘の紹介では、日傘を置いたイスと置いていないイスとで、20度近い気温差に。実際に体験したサニブラウン選手は「これ、ずっとお借りしていいですか?」と絶妙なリアクション。参加した選手たちも時に盛り上がり、時に真剣に聞き入るなど、充実のセッションとなった。

担当した東レの中園真介氏は「こうやっていろいろな素材に対して何かできないかなと、日々チャレンジして、考えて作っています。みなさんが毎日努力しているように、僕たちも頑張ります。僕たちも素材で世界を変えたいと思っていますので、みなさんもサニブラウン選手のように世界を変えられる選手になれるよう頑張ってください」とメッセージを送った。

決勝大会にはパラアスリート着用のスポーツ用義足を東レと共同開発している株式会社Xiborgが、体験コーナーを設置。同社代表取締役社長で、義足エンジニアの遠藤謙氏は健常者とパラアスリートが融合した大会の意義を次のように話した。

「パラアスリートたちの意識は『陸上をやりたい』というものなので、陸上が好きな人にも、ぜひパラ陸上を観てもらいたいと思っています。パラと陸上が融合する、ユニバーサルな環境を目指していければ」

レースに参加した齋藤選手も、「パラアスリートと健常者が同じ大会に出る機会はなかなかないので、こういった大会がもっと広まってくれればと思います」と思いを伝えた。

出場した選手にとっても、陸上教室に参加した小学生たちにとっても、「DAWN GAMES」に来た目的の大きな部分を占めるのが、なんといってもサニブラウン選手の存在。昨年、一昨年と世界選手権の100mで2大会連続ファイナルの舞台に立ち、今夏のパリ五輪でも準決勝で9秒96の自己新を叩き出した、日本最高峰のスプリンターが開いた大会であり、その選手が目の前にいることが、何よりも彼ら、彼女らの目を輝かせた。

サニブラウン選手自身も、「現役選手だからこそ」の意義を強く感じている。

「テレビで観ている選手が自ら大会を開くということは例がないと思います。最前線で戦っているからこそ、心に響くものがあるだろうし、親近感も湧くような経験ができるかなと思うんです。引退した後も、もっともっとこういう活動を続けていきたいと思うのですが、現役ならではの効果がものすごくあると思うので、こういう機会をもっと作って、大事にしていきたいと思います」

大会の前日からは「サニブラウントレーニングキャンプ」を開催し、全国からトップ選手を招待。普段行っているトレーニングを紹介し、練習後には1人約20分程度ずつの個別ミーティングを行った。練習中も含めて、参加した選手1人ひとりに真正面から向き合う姿があり、自身の経験してきたこと、世界トップスプリンターだからこそ伝えられることを、時間をかけて伝えてきた。

昨年の秋にも「サニブラウンスピードトライアル」を実施するなど、「子供たちや若い世代にチャンスを」という思いは、サニブラウンの中で年々強くなっている。そして、さらに大きくしていきたいという思いも――。自ら主宰した大会を終え、サニブラウンはこう語った。

「自分で計画してやる、ということにものすごい意味があると思っています。自分のやりたいことを実現するために何が必要なのか。運営のサポートはUDNさんにやってもらっていますが、全部を考えて、(プランを)出して、それをまとめてということを、空き時間や、飛行機で移動している時などでやっていました。
大会としてもっともっと精度を高めて、将来にはもっと大きな大会にしていきたい。お客さんにも入ってもらって、たくさんの子どもたちにチャンスをあげられるような大会にしていけたらと思います」

文・写真:月刊陸上競技編集部

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