2020.10.04(日)
【第104回日本選手権】3日目ハイライト
第104回日本選手権は10月3日、新潟・デンカビッグスワンスタジアムにおいて競技を迎えました。この日は、実施されたトラック7種目、フィールド4種目すべてが決勝というタイムテーブル。秋らしい晴天となった2日目に比べると、やや雲の多い天候となりましたが、各種目で熱戦が繰り広げられました。
最終日は、メインスタジアムの競技開始に先駆けて、女子円盤投が補助競技場でスタート。日本記録保持者の郡菜々佳選手(九州共立大)が2回ファウルしたのちに3回目が45m13・9位にとどまり、トップ8進出を逃す波乱がありましたが、 1回目で50m59を投げた齋藤真希選手(東京女子体育大)が、2回目に51m65まで記録を伸ばし、首位で前半を終了。4回目の試技で、自身が3月にマークしていた54.m19を大きく更新する55m41のU20日本新記録を樹立する投てきで、さらに記録を伸ばしました。5回目をファウルしたのちに、6回目も再び55m台に乗せる55m24のセカンドベストをスロー。3回目に51m62をマークしていた前回覇者の辻川美乃利選手(内田行AC)以下を寄せつけず、2年ぶり2回目の優勝を果たしました。これにより、女子円盤投は、2017年大会以降、辻川選手と齋藤選手が交互にチャンピオンの座を占める形となっています。女子に続いて補助競技場で行われた男子円盤投は、日本記録保持者の堤雄司選手(ALSOK群馬)が1回目に56m84を投げてトップに立つと、3回目にただ一人60m台に乗せる60m24をマーク。2年連続7回目の優勝を果たしました。5回目に56m57をマークした湯上剛輝選手(トヨタ自動車)が4位から浮上して2位を占め、2回目に55m89を投げて2位につけていた男子砲丸投覇者の幸長慎一選手(四国大)は最終的に3位で競技を終えました。
白熱した戦いが展開されたのは、男子110mHと女子100mHでした。先に決勝が行われた女子100mHは、前日の準決勝で全体トップタイムとなる13秒13をマークしていた寺田明日香選手(パソナグループ)が4レーンに、同2番手となる13秒17を出していた青木益未選手(七十七銀行)が6レーンに入って行われました。スタートから反応よく飛び出した青木選手が、第1ハードルでトップを奪うと、そのままリードを堅持して、大会タイ記録となる13秒02(-0.1)でフィニッシュ。今季、実に3回目となる自己新記録をマークして、13秒14で続いた日本記録保持者の寺田選手を圧倒し、2年ぶり2回目の優勝を果たしました。
その15分後に行われた男子110mHは、一度出発をやり直してのスタートとなりました。準決勝でトップタイムとなる13秒39をマークしている日本記録保持者(13秒25)の高山峻野選手(ゼンリン)が7レーンに、今季13秒27の日本歴代2位をマークして好調の前日本記録保持者・金井大旺選手(ミズノ、準決勝13秒40)が5レーンに、昨年の決勝で高山選手とともに日本タイ記録(当時)でフィニッシュし、同記録で2位となった泉谷駿介選手(順天堂大、準決勝13秒45)が4レーンに入って行われたレースは、金井選手と泉谷選手がほぼ一線で最初のハードルをクリア。2人が競り合いながらややリードを奪い、わずかに遅れて高山選手が続いていきます。その後、金井選手が終盤にさしかかるあたりで前に出ると、後続を突き放して13秒36(-0.1)で先着。高山選手がラストで泉谷選手をかわして13秒47で2位に、泉谷選手が100分の1秒差の13秒48・3位でフィニッシュしました。金井選手のマークした13秒36は、自身が日本記録を樹立して初優勝を果たした2018年大会に出した大会記録と並ぶもの。さらに、この記録は、前回大会で同記録1・2位となった高山選手と泉谷選手もマークしています。来年の日本選手権の大会記録欄は、“大渋滞”となりそうです。
若手・あるいは“新顔”による初優勝が目を引いた今大会ですが、最終日でも、初優勝を果たす選手が続出しました。まずトラック最初の決勝種目となった女子400mHでは、日本インカレを制して上り調子にあったイブラヒム愛紗選手(札幌国際大)が、日本歴代6位、学生歴代4位となる56秒50で快勝。前々回覇者の宇都宮絵莉選手(長谷川体育施設、57秒09・2位)と前回覇者の伊藤明子選手(セレスポ、57秒34・3位)の2度目の優勝を阻みました。4位には、高校生の山本亜美選手(京都橘高)が入り、U20日本歴代3位、高校歴代2位となる57秒43の好記録をマークしています。また、4選手が決勝進出を果たしたことで注目を集めた早稲田大勢では、4年生の小山佳奈選手が57秒44の自己新をマークして最上位(5位)に。3年生の関本萌香選手が57秒89(6位)で続き、1年生の津川瑠衣選手(58秒21)と川村優佳選手(58秒38、自己新記録)が7・8位でフィニッシュしました。
女子200mでは、前日の100mで2位の成績を残した鶴田玲美選手(南九州ファミリーマート)が、9月初旬にマークした23秒81の自己記録を一気に0秒63も更新する23秒17(-0.1)の快走を披露。前回覇者で前日の100mを11秒36の好タイムで制している兒玉芽生選手(福岡大)ら他選手を大きく引き離して、初優勝を遂げました。23秒17は日本歴代3位となる好記録。昨年までの自己記録が24秒43であることを考えると圧巻といえる大躍進です。23秒44で2位となった兒玉選手も日本インカレで記録した23秒68を塗り替える自己新記録で、日本歴代7位に浮上しました。3位・23秒78で続いた大石沙也加選手(セレスポ、旧姓:藤沢)も全日本実業団(優勝)でマークした23秒85のパーソナルベストを塗り替えての表彰台となりました。
男子走高跳では、2週前の全日本実業団で2m31をマークして優勝した真野友博選手(九電工)が、その好調を維持させて、頭一つ抜けたパフォーマンスを披露しました。2m10から試技を開始して、2m24までをすべて1回で成功。この2m24をほかに誰も跳べなかったため、ここで日本選手権初優勝が確定。一人で挑戦した2m27・2m30を、ともに3回目にクリアして、中12日で2回の2m30越えに成功しました。真野選手に続いては、2m20の記録を残した7選手のうち、会場のデンカビッグスワンスタジアムをホームとする新潟アルビレックスRC所属の長谷川直人選手と佐藤凌選手のほか、そして衛藤昂選手(味の素AGF)の3選手が2位を分け合いました。男子日本記録保持者(2m35)の戸邉直人選手(JAL)は、今季は調子が上がりきらない状態が続いていましたが、今大会も2m15を越えることができず、2m10(12位)にとどまりました。
このほか、男子三段跳は、世界大会代表実績を持つ山下航平(ANA)・山本凌雅(JAL)の“2トップ”が欠場したものの、今季好調の池畠旭佳瑠選手(駿大AC)が1回目から16m35(+0.8)を跳んで首位に立つと、2回目にマークした16m54(+0.7)で他を圧倒。初の日本選手権タイトルを獲得しました。わずかに踏み越し、ファウルとなったものの、最終6回目では、17mに迫るビッグジャンプも飛び出し、会場をどよめかしました。また、男子800mでは、序盤から先頭に出てレースをつくった瀬戸口大地選手(山梨学院大)が逃げきって、セカンドベストとなる1分47秒70で初の栄冠を手にしています。
女子800mは、前日の1500mを制した田中希実選手(豊田織機TC)に連覇の可能性も期待されたなか、800mをメインに据えている川田朱夏選手(東大阪大)が序盤から果敢に飛び出し、その川田選手と高校時代からライバル関係にある塩見綾乃選手(立命館大)とともにレースを支配しました。400mは塩見選手と川田選手がほぼ並ぶようにして61秒で通過。2人は、その後、いったんは最後方から順位を上げてきた田中選手と、前回覇者で序盤から3番手についていた卜部蘭選手(積水化学)に抜かれて3・4番手に下がったものの、最終コーナーを抜けてホームストレートに出てから再逆転。最後は川田選手が後続を突き放して2分03秒54で優勝。塩見選手が2分04秒24で続きました。3位の卜部選手は2分04秒56で、田中選手は2分04秒76・5位で、それぞれフィニッシュしました。これにより川田選手は、400mでの優勝(2018年)に続き、800mで日本選手権獲得者に名前を連ねることとなりました。
日本選手権最後の決勝種目となった男子200mでは、前日の100mで3位での小池祐貴選手(住友電工)が序盤から飛ばして、コーナーの出口でトップに立つ展開をみせます。ここから小池選手の1つ外側のレーン(6レーン)で走っていた飯塚翔太選手(ミズノ、100m4位)が追撃を開始。ラスト30mを切ったところで小池選手を逆転し、20秒75(-0.5)で2年ぶり4回目のタイトルを獲得しました。2位の小池選手は20秒88でフィニッシュ。この2人に続いたのは、前日の100mでも6位(10秒41)に食い込んでいる鈴木亮太選手(城西大)で、ラストで3番手にいた山下潤選手(ANA、DA修了生、20秒94・4位)をかわして小池選手に迫り、20秒89で3位を獲得する健闘を見せました。
大会終了後には、男女最優秀選手が発表。ともに決勝で大会タイ記録をマークして優勝を果たした男子110mHの金井大旺選手(ミズノ、13秒36)、女子100mHの青木益未選手(七十七銀行、13秒02)の「スプリントハードル男女チャンピオン」が、それぞれ受賞する結果となりました。