2019.06.26(水)
【第103回日本選手権】前日会見レポート&コメント
世界選手権ドーハ大会の日本代表選考会を兼ねて開催される第103回日本選手権の前日会見が6月26日午後、会場の博多の森陸上競技場(福岡県福岡市)において行われました。
会見には、男子100mに出場する桐生祥秀(日本生命)、サニブラウン・アブデルハキーム(フロリダ大)、小池祐貴(住友電工)、ケンブリッジ飛鳥(Nike)、多田修平(関西学院大)の5選手が出席。予選・準決勝を前日に控えての心境や体調、レースに向けての抱負を語りました。
◎桐生祥秀(日本生命)
最近、日本選手権では、いい結果を残していないので、今大会ではいい結果を残して終わりたい。
この大会に向けては、(日本選手権前のレースとなった)布勢スプリントから3週間あったので、最初の1週間は練習を詰め込んで、120~150mといった距離を走った。また、ジャンプ系とかバウンディングとかをいつもよりも多めに入れて、一発の力を大きくすることをやってきた。明日の試合では、それがうまくいけばいいなと思う。去年の日本選手権では、タイムを出せていないという焦りがあったけれど、今年はタイムも出ているし、コンディション的にもいい状態できている。自信も、去年と違って今年はある。
理想を言うなら、予選、準決勝は10秒0~1台で通過して、決勝でその疲れも見せず一発で勝負を決めたい。(ラウンドを勝ち上がっていくことは)アジア選手権でやってきた。それよりも一段階上(のレベル)で予選・準決・決勝とやっていきたい。
(自分も)もう社会人2年目。これから東京オリンピックも近づいてくるので、そのためには、ここで勝たないと…。大事な大会でラウンドを重ねてしっかり勝負するということは、これからの陸上人生にとっても大事だと思っている。今季はいい調子で来ているので、この状態からさらにタイムを上げ、東京(オリンピック)までにしっかり自分のパフォーマンスを上げていきたい。
ここまでは、(練習等で)いろいろと試したことがうまくいっている。日本選手権ではセイコー(ゴールデングランプリ)以上に全員が競り合いになると思う。そのなかでも自分の走りをしてゴールしたい。
◎多田修平(住友電工)
去年5位という結果で負けているので、今回は、優勝を目指して世界選手権の切符を勝ち取りたいと思っている。タイムは、勝ったら必然とついてくるものだと思っているので、そこまで意識していない。まずは、勝ちにこだわってレースをしたい。
まずは自分の得意であるスタートから中盤の部分をしっかり意識して、ほかの選手よりも飛び出したい。後半は苦手ということで、どうしても(差を)詰められることはあると思うが、それをしっかり補えるように、スタートから中盤で差をつけて粘れればいいかなと思っている。
昨シーズンはさんざんな結果だったが、去年の走りは、“乗り込み”がなくて、“その場もも上げ”みたいな感じで全然推進力がなかった。今季はタイム自体が10秒12で走れているし、しっかり地面をとらえることができているので、去年よりは自信もある。調子もいい感じで上がってきているので、しっかりレースに挑めたらなと思う。
去年、全然活躍できていないので、この日本選手権、そして世界選手権でアピールしないと、東京オリンピックの代表は絶対にないと思っている。ここからしっかり復活して、いいタイムを出して優勝できれば、世界選手権やオリンピックの代表枠も勝ち取れる。まずは、ここで復活の起点となることを実現させたい。
◎サニブラウン・アブデルハキーム(フロリダ大)
この大会では、練習で積み上げてきたことをしっかりやるのが一番の目標。日本で走るのは、ものすごく久しぶりなので、とても楽しみにしている。ほかの人のことは気にせず、自分の走りができればそれで満足。自分のやるべきことをやって、自分の課題をクリアできればと思う。
100mと200mでは、100mのほうが集中する部分が多いとは思うが、200mもしっかり走りたい。全米学生選手権のときにベスト(20秒08)は出たものの、ガス欠で最後は全然何もできなかったので、そこを修正していければと思う。
今回、4日間開催になったことは、めちゃくちゃ嬉しい。(前回2冠を達成した)2017年のときは、本当に(日程的にハードで)“満身創痍”で走っていたので。1日余裕ができたことで、(100mのレースを終えたあと)200mに切り替えて集中していくことができる。パフォーマンスにもいい影響が及ぶのかなと思っている。
東京オリンピックについては、まだ、ほとんど何も考えていない。今年は長いシーズンなので、まずはケガせずに終えられるようにすること。この日本選手権もしっかり1つの大事な大会としてとらえていければと思っている。
(100mの)日本記録保持者となったが、気持ちの部分では変わっているものはないと思う。10秒で走ろうが、9秒で走ろうがやることは同じ。課題となる点は、まだまだ多く、9秒台で走ったレースでも、コーチに指摘されたことは多々あった。そこをどんどん直していければ、いいタイムが出るのかなと思うし、タイム云々よりは走りの内容を大切にして、集中していければと思う。最近は、スタートの部分は比較的問題になっていないのだが、中盤から後半にかけてダレてしまうところがある。そこをしっかりまとめていけるようにしたい。オーバーストライド(にならないようにすること)もそうだが、練習で(意識して)やっていることを、試合でできればと思う。
◎小池祐貴(住友電工)
自分が主軸にしているところは、シーズンを通して成長すること。この試合でも、(天候などの)条件もあると思うが、自己ベストの更新を目指してやっていきたい。今回、自分に求められているのは、やはり2冠だと思う。個人的にも、自分の思い描くレースができれば、100mも200mも優勝争いできると思っている。
この日本選手権の前には、ヨーロッパに遠征して100mを2戦してきた。どちらも自分の試したいことをしっかり試すことができ、それを踏まえて、主にスタートの局面で、“もっとこうすれば改善できる”という点が見つかった。そこを修正すれば、もっといいレース、面白い記録が出るんじゃないかと思っている。
(具体的には)100mでは、陸上を始めたころからスタートがすごく苦手で、止まった状態からの素早い重心移動のところを、なかなか改善できなかったのだが、そこが欧州遠征後、非常によくなっている手応えがある。加速の上げていく局面を、今までより早めにトップスピードに持ってきて、中盤以降はいつも通り力を抜いてストライドを広げてリラックスしていけば、それが今の思い描いているレースになるかなと思っている。また、(今季は)100mのスピードが非常に上がっているが、200mにおいては、スピードが上がるとコーナーでは脚の負担が増えていくので、今回は、去年と同じくらいのスピードに敢えて抑えて、余力を残し、コーナーを抜けたところから後半の勝負にもっていこうかなと思っている。
自分の強みは、決勝に合わせることができるところ。予選・準決勝が終わって、そこから何を調整して、決勝で、一番いい走りをするか。“決勝でベストレースをする”というところに集中していきたい。
◎ケンブリッジ飛鳥(Nike)
レベルの高いレースになると思うが、久しぶりの優勝を目指して頑張りたい。(春先に故障のあった)脚はもう大丈夫かなと思っている。前回のレースのあとは、「日本選手権でしっかり勝負できるのか」という不安や焦りもあったが、今はやれることをやってきたと思っているし、焦りや不安というよりは、穏やかで、“あとは自分のやることをやるだけだ”という気持ち。精神的にもいい状態でここに来られていると思う。
この大会に向けては、ケガもあって自分の走りが崩れていたところがあったので、その崩れている部分を、いいときの状態にどれだけ戻せるのかというところをテーマに取り組んできた。
(サニブラウン選手が9秒97をマークしたのを知ったのは)ちょうど練習しているときで、一緒に練習していた仲間が教えてくれた。「すごいな」という気持ちと「悔しいな」という気持ちと、「日本選手権で一緒に走るのが楽しみだな」という気持ちになった。
大事なのは、自分の走りに集中して、ほかを気にせずに、どれだけ自分の走りに集中できるかということだと思う。レベルは準決勝あたりから高くなると思うが、今シーズンはあまりいいレースができていないので、予選から1本1本大事に走っていきたい。(予選のラウンドで)何かを試すとかいうよりは、しっかりと自分の走りを確認して、自分の理想とする走りに1本1本近づけていきたい。
日本選手権は6月27日~30日の4日間で、男女各17種目、計34種目の決勝が行われます。大会第1日の6月27日は、トラック種目は女子100m予選が14時35分から、フィールド種目は女子円盤投決勝が14時30分から、それぞれスタートし、4種目の決勝が実施されます。男子100mは、初日に予選(15時05分)と準決勝(19時35分)が行われ、決勝は2日目の最終種目として、20時30分にスタートの予定です。
タイムテーブル、出場選手、大会会場、テレビ放映およびライブ配信スケジュール、結果・速報など、大会に関連する情報は、公式ホームページ( https://www.jaaf.or.jp/jch/103/ )をご参照ください。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォートキシモト
会見には、男子100mに出場する桐生祥秀(日本生命)、サニブラウン・アブデルハキーム(フロリダ大)、小池祐貴(住友電工)、ケンブリッジ飛鳥(Nike)、多田修平(関西学院大)の5選手が出席。予選・準決勝を前日に控えての心境や体調、レースに向けての抱負を語りました。
【各選手コメント(記載は登壇順)】
◎桐生祥秀(日本生命)
最近、日本選手権では、いい結果を残していないので、今大会ではいい結果を残して終わりたい。
この大会に向けては、(日本選手権前のレースとなった)布勢スプリントから3週間あったので、最初の1週間は練習を詰め込んで、120~150mといった距離を走った。また、ジャンプ系とかバウンディングとかをいつもよりも多めに入れて、一発の力を大きくすることをやってきた。明日の試合では、それがうまくいけばいいなと思う。去年の日本選手権では、タイムを出せていないという焦りがあったけれど、今年はタイムも出ているし、コンディション的にもいい状態できている。自信も、去年と違って今年はある。
理想を言うなら、予選、準決勝は10秒0~1台で通過して、決勝でその疲れも見せず一発で勝負を決めたい。(ラウンドを勝ち上がっていくことは)アジア選手権でやってきた。それよりも一段階上(のレベル)で予選・準決・決勝とやっていきたい。
(自分も)もう社会人2年目。これから東京オリンピックも近づいてくるので、そのためには、ここで勝たないと…。大事な大会でラウンドを重ねてしっかり勝負するということは、これからの陸上人生にとっても大事だと思っている。今季はいい調子で来ているので、この状態からさらにタイムを上げ、東京(オリンピック)までにしっかり自分のパフォーマンスを上げていきたい。
ここまでは、(練習等で)いろいろと試したことがうまくいっている。日本選手権ではセイコー(ゴールデングランプリ)以上に全員が競り合いになると思う。そのなかでも自分の走りをしてゴールしたい。
◎多田修平(住友電工)
去年5位という結果で負けているので、今回は、優勝を目指して世界選手権の切符を勝ち取りたいと思っている。タイムは、勝ったら必然とついてくるものだと思っているので、そこまで意識していない。まずは、勝ちにこだわってレースをしたい。
まずは自分の得意であるスタートから中盤の部分をしっかり意識して、ほかの選手よりも飛び出したい。後半は苦手ということで、どうしても(差を)詰められることはあると思うが、それをしっかり補えるように、スタートから中盤で差をつけて粘れればいいかなと思っている。
昨シーズンはさんざんな結果だったが、去年の走りは、“乗り込み”がなくて、“その場もも上げ”みたいな感じで全然推進力がなかった。今季はタイム自体が10秒12で走れているし、しっかり地面をとらえることができているので、去年よりは自信もある。調子もいい感じで上がってきているので、しっかりレースに挑めたらなと思う。
去年、全然活躍できていないので、この日本選手権、そして世界選手権でアピールしないと、東京オリンピックの代表は絶対にないと思っている。ここからしっかり復活して、いいタイムを出して優勝できれば、世界選手権やオリンピックの代表枠も勝ち取れる。まずは、ここで復活の起点となることを実現させたい。
◎サニブラウン・アブデルハキーム(フロリダ大)
この大会では、練習で積み上げてきたことをしっかりやるのが一番の目標。日本で走るのは、ものすごく久しぶりなので、とても楽しみにしている。ほかの人のことは気にせず、自分の走りができればそれで満足。自分のやるべきことをやって、自分の課題をクリアできればと思う。
100mと200mでは、100mのほうが集中する部分が多いとは思うが、200mもしっかり走りたい。全米学生選手権のときにベスト(20秒08)は出たものの、ガス欠で最後は全然何もできなかったので、そこを修正していければと思う。
今回、4日間開催になったことは、めちゃくちゃ嬉しい。(前回2冠を達成した)2017年のときは、本当に(日程的にハードで)“満身創痍”で走っていたので。1日余裕ができたことで、(100mのレースを終えたあと)200mに切り替えて集中していくことができる。パフォーマンスにもいい影響が及ぶのかなと思っている。
東京オリンピックについては、まだ、ほとんど何も考えていない。今年は長いシーズンなので、まずはケガせずに終えられるようにすること。この日本選手権もしっかり1つの大事な大会としてとらえていければと思っている。
(100mの)日本記録保持者となったが、気持ちの部分では変わっているものはないと思う。10秒で走ろうが、9秒で走ろうがやることは同じ。課題となる点は、まだまだ多く、9秒台で走ったレースでも、コーチに指摘されたことは多々あった。そこをどんどん直していければ、いいタイムが出るのかなと思うし、タイム云々よりは走りの内容を大切にして、集中していければと思う。最近は、スタートの部分は比較的問題になっていないのだが、中盤から後半にかけてダレてしまうところがある。そこをしっかりまとめていけるようにしたい。オーバーストライド(にならないようにすること)もそうだが、練習で(意識して)やっていることを、試合でできればと思う。
◎小池祐貴(住友電工)
自分が主軸にしているところは、シーズンを通して成長すること。この試合でも、(天候などの)条件もあると思うが、自己ベストの更新を目指してやっていきたい。今回、自分に求められているのは、やはり2冠だと思う。個人的にも、自分の思い描くレースができれば、100mも200mも優勝争いできると思っている。
この日本選手権の前には、ヨーロッパに遠征して100mを2戦してきた。どちらも自分の試したいことをしっかり試すことができ、それを踏まえて、主にスタートの局面で、“もっとこうすれば改善できる”という点が見つかった。そこを修正すれば、もっといいレース、面白い記録が出るんじゃないかと思っている。
(具体的には)100mでは、陸上を始めたころからスタートがすごく苦手で、止まった状態からの素早い重心移動のところを、なかなか改善できなかったのだが、そこが欧州遠征後、非常によくなっている手応えがある。加速の上げていく局面を、今までより早めにトップスピードに持ってきて、中盤以降はいつも通り力を抜いてストライドを広げてリラックスしていけば、それが今の思い描いているレースになるかなと思っている。また、(今季は)100mのスピードが非常に上がっているが、200mにおいては、スピードが上がるとコーナーでは脚の負担が増えていくので、今回は、去年と同じくらいのスピードに敢えて抑えて、余力を残し、コーナーを抜けたところから後半の勝負にもっていこうかなと思っている。
自分の強みは、決勝に合わせることができるところ。予選・準決勝が終わって、そこから何を調整して、決勝で、一番いい走りをするか。“決勝でベストレースをする”というところに集中していきたい。
◎ケンブリッジ飛鳥(Nike)
レベルの高いレースになると思うが、久しぶりの優勝を目指して頑張りたい。(春先に故障のあった)脚はもう大丈夫かなと思っている。前回のレースのあとは、「日本選手権でしっかり勝負できるのか」という不安や焦りもあったが、今はやれることをやってきたと思っているし、焦りや不安というよりは、穏やかで、“あとは自分のやることをやるだけだ”という気持ち。精神的にもいい状態でここに来られていると思う。
この大会に向けては、ケガもあって自分の走りが崩れていたところがあったので、その崩れている部分を、いいときの状態にどれだけ戻せるのかというところをテーマに取り組んできた。
(サニブラウン選手が9秒97をマークしたのを知ったのは)ちょうど練習しているときで、一緒に練習していた仲間が教えてくれた。「すごいな」という気持ちと「悔しいな」という気持ちと、「日本選手権で一緒に走るのが楽しみだな」という気持ちになった。
大事なのは、自分の走りに集中して、ほかを気にせずに、どれだけ自分の走りに集中できるかということだと思う。レベルは準決勝あたりから高くなると思うが、今シーズンはあまりいいレースができていないので、予選から1本1本大事に走っていきたい。(予選のラウンドで)何かを試すとかいうよりは、しっかりと自分の走りを確認して、自分の理想とする走りに1本1本近づけていきたい。
日本選手権は6月27日~30日の4日間で、男女各17種目、計34種目の決勝が行われます。大会第1日の6月27日は、トラック種目は女子100m予選が14時35分から、フィールド種目は女子円盤投決勝が14時30分から、それぞれスタートし、4種目の決勝が実施されます。男子100mは、初日に予選(15時05分)と準決勝(19時35分)が行われ、決勝は2日目の最終種目として、20時30分にスタートの予定です。
タイムテーブル、出場選手、大会会場、テレビ放映およびライブ配信スケジュール、結果・速報など、大会に関連する情報は、公式ホームページ( https://www.jaaf.or.jp/jch/103/ )をご参照ください。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォートキシモト