2019.06.26(水)
【記録と数字で楽しむ第103回日本選手権】女子フィールド編(跳躍)
このページでは、第103回日本選手権の記録や数字に関しての少々(かなり?)マニアックな「みどころ」などを紹介します。なお、過去に紹介したものと重複している内容も含まれていることをお断りします。記録は6月21日判明分。
【走高跳】
★仲野春花が3連覇に挑戦
2017年は、1m77の同記録で21歳の仲野春花(早大)と40歳の福本幸(甲南学園AC)がそれまでの試技内容で並んでのジャンプオフとなった。その結果、1m80をクリアした仲野選手が初のタイトルを手にした。この種目での早大の選手の優勝も史上初だった。ここできわどく勝ったこともあって、17年のシーズンは日本人相手には無敗。翌18年も3位までが1m80の同記録ながら試技内容の差で連覇を果たし、今回は3連覇に挑む。3連覇を実現できれば、この種目での連勝記録としては歴代5位タイとなる。ちなみにトップは4連勝で、山内リエさん(1939~46年。戦争による中断あり)、曽根幹子さん(73~76年)、佐藤恵さん(90~93年)、そして上述の福本(2006~09年。旧姓の青山と現姓の福本で2連勝ずつ)の4人が並んでいる。
なお、仲野の母・牧子さん(旧姓・鈴木)は、100mHで6回入賞(3位1回、4&5位が各2回、6位1回)したハードラーだ。
★レジェンド・福本幸
女子トラック中長距離種目の「レジェンド」が早狩実紀ならば、女子走高跳のそれは、上述の通り、17年の優勝決定戦で惜しくも2位となった福本(旧姓・青山)である。1977年1月4日生まれで、今回の競技がある6月30日で、42歳5カ月と26日。これは、早狩の46歳7カ月についで男女全種目を含めて今大会の上から2番目である。1994年から18年までの25年間で優勝6回、2位5回、3位4回、4位3回、5・6位各2回、8位2回で計24回も入賞している。故障でエントリーしなかった96年、出産のためエントリーしなかった2010年を除き出場した24回はすべて入賞している。最後に優勝したのが36歳の時(13年)で記録は04年以降の15年間のチャンピオンで最もハイレベルな1m90!! その年の春には27歳の時と並ぶ自己タイ記録の1m92を跳んでいる。また、29歳から42歳までの、すべての「年齢別日本最高記録」も保持している(33歳はタイ記録)。
旦那さんである義永さん(1973年9月2日生まれ)も走高跳の選手で、今も競技を続けている。自己ベストは2m21(99年)。日本選手権では95年から06年の12年間で6回入賞(5位3回、7位2回、8位1回)している。年齢別日本最高記録もたくさん持っていて、34・35・38・39・41~45歳にその名が並んでいる。
★日本選手権での「順位別最高記録」
・2位以下に同順位が複数いる場合は、実質的に「*番目」で示した1)1.94 | 1988年 |
---|---|
2)1.92 | 2002年 |
3)1.90 | 1997年 |
4)1.84 | 1997・1998年 |
5)1.80 | 2002年 |
6)1.75 | 1985・1987・1992・1994・1996・1998・1999・2008・2012年 |
7)1.75 | 1992・1994・1996年 |
8)1.75 | 1994年 |
【棒高跳】
★2018年の覇者「シンデレラガール・南部珠璃」の今季は?
2018年は、初出場の南部珠璃(中京大)が4m09の自己ベストでタイトルを手にした。17年までのベストが3m50、18年5月に4m00を跳んで日本選手権出場資格を獲得、そして「日本一」とまさに「シンデレラガール」のようなストーリーだった。今回は「V2」がかかるが、今シーズンは2月にケガをして6月の日本学生個人選手権が第一戦で3m80(優勝)と出遅れているが、その後の3週間でどう仕上げてくるか、だ。★我孫子智美が勝てば優勝回数の歴代トップタイに
日本記録(4m40/2012年)を持つ我孫子智美(滋賀レイクスターズ)が、2008年から17年までの10年間で半数の5回を制している(08年、10~12年、17年)。その他の優勝経験者では、竜田夏苗(ニッパツ。13・15年)、青島綾子(新潟アルビレックス。16年)がエントリー。我孫子が6回目のタイトルを獲得すれば歴代トップの近藤高代と並ぶ。竜田なら3回で歴代3位タイに。18年に2位だった那須真由(RUN JOURNEY)は、自己ベストの4m01(2017年)を今シーズンは、4m10→4m15→4m20→4m25とどんどん更新し勢いがある。
★参加標準記録の引き上げでエントリー数が減少
1年前のこのページに、「史上最多の35人がエントリー」という小見出しで、-----以下のようなことを書いた。-----
2017年からインターハイの実施種目となったこともあってか、全体的なレベルが上がってきていて今回のエントリーは、史上最多の35人になった。参加標準記録(A=3m80、B=3m70)は、このところ据え置かれているが、至近5年間のエントリー数は、14年=18人、15年=20人、16年=21人、17年=26人、18年=35人の推移で、14年の2倍近い人数になった。時間がかかる種目だけに、次回は参加標準記録が引き上げられることになるかもしれない。
-----
と、その予測通り今回は「標準A」が3m80から3m90に、「標準B」が3m70から3m85となって、前回の35人から23人のエントリーに減少した。
★日本選手権での「順位別最高記録」
・2位以下に同順位が複数いる場合は、実質的に「*番目」で示した1)4.40 | 2012年 |
---|---|
2)4.20 | 2004・2009・2017年 |
3)4.10 | 2004・2009・2017年 |
4)4.00 | 2004・2009・2011・2012・2014・2015・2017年 |
5)4.00 | 2015・2017年 |
6)4.00 | 2017年 |
7)3.90 | 2009・2010・2017・2018年 |
8)3.90 | 2018年 |
上述の通り、14年から18年までエントリー人数はどんどん増えていったが、各順位別の最高記録には2004年や09年のものがかなり残っている。今回は4m台の参加資格記録を持つ選手が10人、自己ベストでは「4mボウルター」が12人エントリーしているので、8位入賞ラインが「4m00」の大台になる可能性もある。
【走幅跳】
★高良彩花が3連覇なら……
今春、園田学園高から筑波大に進んだ高良彩花が2連勝中。この種目での高校生の連覇は、1967年から高校生として3連覇した山下博子さん(三潴高)以来50年ぶりのことだった。なお、山下さんは中京大進学以降も連勝を続け、最終的には8連覇した。高良が3連覇を達成すれば、連勝記録の歴代4位タイになる。歴代2位は4連覇で、山内リエさん(1942~48年。戦争での中断あり)と湶純江さん(76~79年)が並んでいる。★2人の「U20記録」「U18記録」「高校記録」保持者
6m44の「U20記録(ジュニア記録)」&「U18記録(ユース記録)」&「高校記録」を、保持しているのは、中野瞳(和食山口)と上述の高良だ。中野は、12年前の兵庫・長田高校2年生だった2007年6月2日に跳び、高良が17年6月9日にそれに並んだ。ともに高校2年生の6月に6m44を跳び、同じ兵庫県出身、大学もともに筑波大というのも「縁」を感じる。
中野も高良も上記の「6m44」を更新できていないが、中野は18年に6m43、19年も6m42を跳んでいて、「12年ぶりの自己新」に挑む。高良は2001年3月22日生まれなので、2020年まで「U20資格」があるので、自己新ならば「U20日本新」となる。
※中野選手は欠場となりました。
★10年前のチャンピオン・桝見咲智子
2008・09年を連覇した桝見咲智子(九電工)が「10年ぶりの優勝」となれば、この種目での「久しぶりの優勝」の最長記録となる。81年から6年後の87年に勝った奥村仁子さんの「6年ぶり」がこれまでの最長記録。また桝見は1984年12月20日生まれで、競技が行われる6月27日で「34歳6カ月と7日」。この種目での最年長優勝は、2015年の岡山沙英子さん(1982年4月12日生まれ)の「33歳2カ月と15日」なのでこれを更新することになる。
桝見の参加資格記録は、今年4月にマークした6m21。優勝記録が17年の6m14や18年の6m22のレベルであれば、「10年ぶりの優勝」も十分に可能性がありそうだ。
★日本人の大会最高記録
大会記録の7m03はベレズナヤさん(ソ連。90年/追風参考で7m13)が保持。日本人の最高記録は、花岡麻帆さんの6m82(01年)。★日本選手権での「順位別最高記録」
・走幅跳では、公認と追風参考に関わらず順位がつくので追参の記録も含めた1)6.82 | 2001年/7.13w 1990年=外国人 |
---|---|
2)6.78 | 2001年 |
3)6.42 | 2008年/6.43w 1990年=外国人が1位 |
4)6.33 | 2008年 |
5)6.32 | 2008年 |
6)6.21 | 2006年 |
7)6.11 | 2008年/6.16 1993年=外国人が1位 |
8)6.05w | 1990年 |
【三段跳】
★優勝経験者の宮坂楓・坂本絵梨以外は、誰が勝っても初タイトル
2018年は坂本絵梨(日本室内TC)が宮坂楓(ニッパツ)の3連覇を阻止して初優勝。この種目での連覇は、吉田文代さんの6連覇(05~10年)、花岡麻帆さんの4連覇(99~02年)、3連覇が2人、2連覇は宮坂を含めて6人(吉田さんが6連覇以外に2連覇も1回)。2019年日本リスト1・2位の劔持早紀(13m42。長谷川体育施設)と森本麻里子(13m26。内田建設AC)の今シーズンの対戦成績は1勝1敗。坂本と宮坂以外は誰が勝っても初優勝となる。
★13m00オーバーの人数
13m00以上を跳んだ最多人数は、下記「順位別最高記録」の通り、2004年と18年の3人。今回は13m台が参加資格記録で7人、自己ベストでは10人いるので史上最多の4人以上が13m台をマークする可能性もありそうだ。★日本選手権での「順位別最高記録」
・三段跳では、公認と追風参考に関わらず順位がつくので追参の記録も含めた1)14.04 | 1999年 |
---|---|
2)13.34 | 2004年 |
3)13.00 | 2004・2018年 |
4)12.99 | 2004年 |
5)12.89 | 2015年 |
6)12.82 | 2015年 |
7)12.77 | 2015年 |
8)12.73 | 2010年 |
野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
写真提供:フォート・キシモト