2019.06.26(水)
【記録と数字で楽しむ第103回日本選手権】男子トラック編(800m、1500m、5000m)
このページでは、第103回日本選手権の記録や数字に関しての少々(かなり?)マニアックな「みどころ」などを紹介します。なお、過去に紹介したものと重複している内容も含まれていることをお断りします。記録は6月21日判明分。※6月25日に欠場者がリリースされました。
【800m】
★川元奨、連勝記録と優勝回数を「7」に伸ばすか?
2013年から6連勝中の川元奨(スズキ浜松AC)が「V7」となれば、この種目の歴代トップの連勝記録をさらに伸ばすことになる。歴代2位は、石井隆士さん(1974~78年)の5連勝。優勝回数では6回の横田真人さんと並んでトップタイだが、「7」となれば単独首位に立つことになる。★高校生のクレイアーローン竜波が制すれば……
クレイアーロン竜波(相洋高3年)が優勝すれば、この種目での高校生の制覇は「史上初」の快挙となる。1914年(第2回大会)に「第一高等学校」の沢田一夫が勝っているが、旧制高等学校であるため、現在にあてはめると大学2年生に相当する。クレイアーロンは、5月の世界リレーの「男女混合2×2×400mR(男女1人ずつが、400mを交互に2本走る)」に出場。1本目が50秒6、女子の塩見綾乃(立命大)が走っている60秒4のリカバリーの後の2本目を50秒1でカバー。最後の直線で3位に上がって見事に銅メダルを獲得した。トータル1分40秒7は、全体の2位で800mの日本記録を数秒も上回るベストを持つ選手にも勝っている。
★「実質的大会記録」は?
大会記録の1分46秒21は、ブラジルのバルボサさんが1993年にマークしたが、日本人の「実質的大会記録」は、川元の1分46秒22(2016年)。★日本選手権・決勝での「着順別最高記録」
1)1.46.22 | 2016年/1.46.21 1993年=外国人 |
---|---|
2)1.46.90 | 1994年 |
3)1.47.97 | 2017年 |
4)1.48.01 | 2017年 |
5)1.48.53 | 2017年 |
6)1.49.45 | 2017年/1.49.18 1993年=外国人が1位だったレース |
7)1.49.61 | 2003年 |
8)1.50.84 | 2014年 |
【1500m】
★館澤亨次が3連覇に挑む
日本記録(3分37秒42/2004年)保持者の小林史和さん(NTN)が2005年から08年まで4連勝(01・02年も優勝で計6回)したあとの09年からの9年間は連勝をした選手はいなかった。が、館澤亨次(東海大)が、2017・18年を連覇し「V3」に挑む。3連覇となれば、この種目では歴代4位タイ。歴代トップは4連勝で、上述の小林さんを含めて3人が並んでいる。
★「着順別最高記録」は28年前のものがズラリだが……
下に示した「着順別最高記録」には、28年も前の1991年のタイムが数多く残ったままだ。しかし、今シーズンは、松枝博輝(富士通)が3分38秒12(日本歴代3位)をマーク。松枝が初日の5000mで2年ぶりの優勝を果たし、1500mも制すればこの両種目での「二冠」は、2009年の上野裕一郎(エスビー食品)以来10年ぶり6人目となる。「日本一」や「表彰台」、あるいは「入賞」を目指して「勝負重視」の展開になるのは致し方ないところではあろうけれども、そろそろ「3分40秒切りが続出」というレースを見せてもらいところである。
<日本選手権・決勝での着順別最高記録>
1)3.38.88 | 1991年 |
---|---|
2)3.40.59 | 2005年/3.40.19 1989年=1位が外国人だったレース |
3)3.41.19 | 1991年 |
4)3.41.42 | 1991年 |
5)3.41.84 | 1991年 |
6)3.41.85 | 1991年 |
7)3.42.20 | 1991年 |
8)3.43.21 | 1991年 |
【5000m】
★10年間連覇なし
2006年から08年まで松宮隆行(コニカミノルタ)が3連勝したあとの09年からの10年間は、毎回異なる選手が優勝している。2018年は、超スローペースの展開で、優勝記録が14分21秒52と56年前に逆戻りしてしまった。そのレースを制した服部弾馬(トーネック)が「V2」を果たせば、この種目では12人目の連勝(3連勝以上も含む。うち、外国人が1人)となる。長期間、連覇が出なかった過去のデータを調べると第1回大会の1913年から23年までの9大会連続(5000m未実施を含め11年間)、51年から60年までの10年連続、62年から77年まで16年連続というのがある。ただし、51年からの10年連続と62年からの16年連続では複数回勝った選手がいる。「すべて別人が優勝」ということであれば、1913年からの9大会連続(11年間)というのがあり2017年段階で肩を並べていたことになる。
★1500mとの2冠は?
2017年に勝った松枝博輝(富士通)が、今回は日本歴代3位をマークした1500m(3分38秒12/6月1日)との二冠を狙っている。初日が5000m、3・4日目が1500mなのでタイムテーブルに問題はない。1500mのところで記載の通り、1500mとの「二冠」は、過去に5人で2009年が最後。★「住友電工」は10000mとの2冠なるか?
5月19日に行われた10000mは田村和希(住友電工)が初優勝。その田村は5000mにはエントリーしていないが、チームメイトの遠藤日向が2月に13分27秒81の室内日本新をマーク。1周200mのトラックで、記録を出すには不利とされている。全種目を網羅した国際陸連の採点表で室内の5000m13分27秒81は「1159点」。屋外の13分27秒81は、「1110点」。採点表が屋外と室内の条件の違いを考慮してのものなのかは何とも言えないところだが、室内の「1159点」を屋外の同じ得点にあてはめるとその記録は「13分14秒08」となる。
個人で5000mと10000mを同一年に制して「二冠王」となったのは日本人のみで18人で30回(他に外国人が3人で3回)あるが、同じチームの別人で「チームとして二冠」は、1982年と83年の「エスビー食品(5000m新宅雅也・10000m中村孝生)」、86年の「エスビー食品(5000m金井豊・10000m新宅雅也)」の3回しかない。
★最長身チャンピオン誕生なるか?
5月20日に行われた10000mで2位となった坂東悠汰(富士通)は身長190cm。箱根駅伝史上、最も背が高かった選手としても知られている。今季日本最高の13分26秒70を5月4日にマークしており「日本一」のタイトルも射程圏内にある。坂東が勝てば、「長距離種目では」という但し書きがつくが、「史上最長身の優勝者」となる。これまで最も身長が高かったチャンピオンは高岡寿成さんの「186cm」だ(のはず?)。★日本人の大会最高記録
大会記録はサイモン・マイナ・ムニさん(トヨタ自動車/ケニア国籍)が保持する13分14秒18(1998年)。日本人の「実質的大会記録」は、高岡寿成さん(カネボウ)で13分26秒06(1998年2位)。★日本選手権での「着順別最高記録」
1)13.26.06 | 1998年=2位だが日本人1位/13.14.18 1998年=外国人が1位 |
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2)13.32.72 | 2002年/13.15.98 1999年=外国人が1・2位 |
3)13.33.01 | 2002年/13.32.03 1999年=外国人が1・2位 |
4)13.34.42 | 2002年 |
5)13.40.87 | 2015年 |
6)13.41.13 | 2015年 |
7)13.41.74 | 2015年 |
8)13.41.81 | 2015年 |
野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
写真提供:フォート・キシモト