2019.06.18(火)
【第103回日本選手権】展望:男女5000m・3000mSC
◎男女5000m
今年は男女10000mが別開催。さらに日本選手権自体も4日間開催になったことで、「5000m&10000m」「1500m&5000m」出場の負担が軽減された。そうした状況下で迎える男子5000mでは、前述の松枝が1500mと5000mで2冠に挑むことを表明。さらに5月19日に行われた10000mで好走した坂東悠汰(富士通、2位)、相澤晃(東洋大、4位)もエントリーしている。前回覇者の服部弾馬(トーエネック)も当然連覇を狙ってのレースとなる。また、昨年からアメリカに拠点を置き、トレーニングに取り組んでいる遠藤日向(住友電工)は、2月に室内で13分27秒81の室内日本新記録を樹立しており、世界選手権参加標準記録(13分22秒50)突破も視野に入っている。気象状況にもよるだろうが、ハイペースでの競り合いを期待したいところだ。女子は、10000mを制した鍋島莉奈(JP日本郵政G)に2冠および5000mでの3連覇がかかるほか、競技復帰以降、活性化の起爆剤になっている新谷仁美(NTTC)もエントリー。新谷は4月のアジア選手権10000mでは五輪標準記録(31分25秒00)をクリアする31分22秒63で銀メダルを獲得したが、日本選手権10000mは鍋島、鈴木亜由子(JP日本郵政G)に続き3位。「世界で戦うこと」「常に勝利を目指すこと」にこだわって取り組んでいるだけに、この結果には、自身は決して満足していない。スピード面の課題を克服するためにも、果敢なレースを展開していくことだろう。
今季好調なのは、織田記念で15分20秒26、ゴールデンゲームズで15分19秒99をマークして世界選手権標準記録(15分22秒00)を突破している木村友香(資生堂)。2016年の第100回大会では1500mでタイトルを獲得しているが、2017年ロンドン世界選手権、2018年アジア大会と連続して、条件を満たしていながら日本選手権で敗れて代表入りを逃してきているだけに、今大会にかける思いも強い。初の世界選手権代表入りを、勝利で手に入れたいはず。今季は、1500mでも4分12秒06の自己新記録をマークしており、得意とするスパートには、より磨きがかかっている。木村と同様に、すでに世界選手権標準記録を突破している田中と岡本春美(三井住友海上)も、勝てばその場でドーハ行きチケットを手に入れられる。1500mと2種目に出場する田中としては、1日目に予選、2日目に決勝のある1500mで勢いをつけておきたいところ。一方の岡本は、故障からの復帰が間に合ってほしい。
このほか、5000mで注目したいのは、男女ともに、9月15日に大一番を控えるMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)ファイナリストがエントリーしていること。男子は、マラソン前日本記録保持者の設楽悠太(Honda)、アジア大会金メダリストの井上大仁(MHPS)、昨年、学生として唯一のMGCファイナリストとなった堀尾謙介(当時中大、現トヨタ自動車)がエントリー。女子では、アジア大会銀メダリストの野上恵子(十八銀行)、リオ五輪5000mファイナリストの上原美幸(第一生命グループ)が出場を予定している。これらの選手が、どのくらいのタイムで、どういうレースを展開するかをチェックしておくと、9月のMGCを、よりいっそう楽しめるはずだ。
◎男女3000mSC
男子3000mSCは、今年から社会人となった塩尻和也(富士通)がV2に挑む。世界選手権の標準記録は8分29秒00。自己記録の8分29秒14は、昨年のこの大会でマークした。今回も、代名詞ともいえる果敢な走りで、突破を目指すことだろう。昨年、9分30秒98まで記録を伸ばしてきた山口浩勢(愛三工業)、そして、8分29秒05(2017年)の自己記録を持ち、2015~2017年と大会3連覇を果たしている潰滝大記(富士通)らと競り合うようなレース展開になっていくようだと、記録の水準も自然と上がっていくはずだ。女子では、昨年のこの大会で10分07秒48の高校最高をマークして8位に入賞した吉村玲美(当時白鵬女高)が大東文化大進学後も躍進を続けていて、9分57秒46まで記録を更新してきた。前回覇者の石澤ゆかり(エディオン)を脅かす一番手となりそうだ。これに続くのは、アジア選手権代表の薮田裕衣(大塚製薬)、日本学生個人選手権覇者の西山未奈美(松山大)あたりか。この種目の場合は、まずは、複数年で安定して9分50秒を切り続けられるような選手が増えてくることが求められる。
なお、この種目には、日本記録保持者(9分33秒93、2008年)の早狩実紀(京都陸協)もエントリーしている。1972年生まれの早狩は、同志社大1年の1991年に3000mで東京世界選手権に出場した選手。日本選手権の初出場は1992年(3000m)で、800m、1500m、3000mSCで活躍してきた。高いレベルで長く競技を続けるベテランの走りに注目したい。
※記録、競技会の結果は、6月14日時点の情報で構成。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォートキシモト
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