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2011年 8月27日 〜 4日

テグ(韓国)

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テグ世界選手権 Day3 8月29日(月) (メディアチーム:児玉育美)

室伏,圧巻のパフォーマンスで
金メダル獲得!

室伏  大会3日目,日本チームは待望の金メダルを手にした。この日の夜行われた男子ハンマー投決勝で,日本記録保持者の室伏広治(ミズノ)が81m24をマークして優勝を果たしたのだ。オリンピックでは2004年アテネ大会を制している室伏だが,世界選手権は2001年エドモントン大会銀,2003年パリ大会銅と2大会連続でメダルを獲得したものの,過去に優勝はなく,今回が初めて。この大会で,世界チャンピオンの称号とともに,3つの色のメダルをすべてを手に入れることになった。
 前々日の予選で78m56のシーズンベストを投げ,トップで通過した室伏は,この日も圧巻のパフォーマンスを披露した。12名で行われた決勝の第3投てき者としてピットに入った彼は,1回目に79m72をマークして首位に立つと,2回目に81m03,3回目には81m24とシーズンベストを連発。2位以下に2m近い差をつけて前半を終了する。4回目こそ79m42にとどまったが,5回目に再び81m24をマーク。首位を守ったまま迎えた6回目。4回目に79m97を投げて2位に浮上していたクリチャン・パルシュ(ハンガリー)が大きな放物線を描いたが,記録は81m18と6cm及ばず。ここで室伏の金メダルが確定した。
 室伏は優勝が決まっても,全く集中を途切らせることなく最後の試技に挑み,優勝記録を更新することはならなかったが,この決勝で4回目の80m越えとなる80m83を投げて勝利に花を添えた。
 室伏は1974年10月8日生まれ。「36歳325日」での今回の優勝によって,世界選手権における男子最年長金メダリストとなった(注:1980年以前に開催された種目別での世界選手権は除く)。また,日本陸連が定めたロンドンオリンピック代表選考基準もクリアしたため,オリンピック代表切符も手に入れることになった。
*第30回オリンピック競技大会(2012/ロンドン)の派遣人数枠は、派遣団体である公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)により決定され、代表選手の正式決定は、JOC理事会による。
選手コメント
■室伏広治(ミズノ)
「まずはサポートをしてくれた多くの方々,応援してくれたファンの皆さん,トーレ(グスタフソン・テクニカルコーチ)さんをはじめとするチームの方々に感謝したい。
 決勝は,理想的なスタートを切ることができたと思う。81m50から82mの記録を目標にしていて,優勝ラインに届く投てきを,確実に,早い段階で投げたいと考えていた。
 実際に,1回目にメダルを確保する投てきができて,2回目に金メダルを取る投てきができ,その後も81m50,82mあたり目指して投げることができた。ほぼビジョン通りの投てき内容だったと思う。
 一番良かった投てきを挙げるとしたら5投目。投てき自体は,全体に安定はしていたが完璧ではなく,自分のなかではもうちょっと(投げたかった)というところもある。(ロンドンオリンピック代表に内定したので)来シーズンに向けて十分に下積みをして,いい形で準備していきたい」

男女400ハードル
岸本,久保倉が準決勝へ

久保倉  この日のモーニングセッションでは,男女400mハードルの予選が行われた。進出の条件は,どちらも上位4着+4。男子では3組に入った岸本鷹幸(法政大)が49秒51で5着ながらプラスで翌日の準決勝に進出した。安部孝駿(中京大)と今関雄太(チームアイマ)は,それぞれ51秒90(7着),50秒92(6着)で通過はならなかった。
 女子は,日本記録保持者の久保倉里美(新潟アルビレックスRC)が出場。1レーンという不利な条件もあって5着でのフィニッシュだったが、56秒66をマークしていたことでプラスで拾われ,2008年北京オリンピックに続き世界大会2回目となる準決勝進出を果たした。世界選手権におけるこの種目での準決勝進出は史上初。その準決勝は、30日19時より行われる。
選手コメント
■岸本鷹幸(法政大)
「タイムも,プラスで準決勝進出というのも,全然納得いかない。純粋な勝負で負けたような感じ。予選は次に進まなければという思いがあったが,次(準決勝)は何も失うものがないので,自分の力を出し切りたい」
■安部孝駿(中京大)
「逆脚で跳ぶところでバランスを崩して失速してしまった。(銀メダルを獲得した2010年の)世界ジュニアで互角に戦えた選手たちに、今の段階では負けている。しっかり出直して、来年のオリンピックで決勝が狙える力をつけたい」
■今関雄太(チームアイマ)
「世界のレース展開は違うなと感じた。国内ではラストまでしっかり走れるのだが、海外の選手が相手ということで、アクセルを踏みきれない部分があり、後半で置いていかれてしまった」
■久保倉里美(新潟アルビレックスRC)
「8台目あたりで遅れているのがわかったので、最後は必死で走った。予選が1レーンと知って、1台目の入りやコーナーの走りなどを意識して臨んだが、少し慎重に行き過ぎて、それがタイムロスにつながった。今大会は、準決勝で自分の走りがどれだけできるかを課題にしてきた。明日は日本記録を更新したい」

棒高跳決勝で澤野は14位
福島・金丸,決勝進出ならず

澤野  イブニングセッションでは、室伏が金メダルを獲得した男子ハンマー投とほぼ同じ時間帯に男子棒高跳決勝が行われた。この種目に、室伏が卒業した成田高校の後輩にあたる澤野大地(千葉陸協)が出場した。2003年以降5大会連続で出場し、2007年を除くすべての大会で決勝進出を果たしている澤野にとっては、2005年ヘルシンキ大会での8位を超える結果への挑戦。5m50から跳び始めた澤野は、これを2回目にクリアすると、シーズンベストとなる次の5m65を3回目に越えて、ロンドンオリンピック参加A標準記録(5m72)を上回る5m75に挑戦したが、これを攻略することはできず14位で競技を終了した。ちなみに、同一大会で5m65を14人がクリアしたのは史上初というハイレベルな戦いであった。
 トラックでは、女子100mと男子400mで準決勝が行われ、福島千里(北海道ハイテクAC)と金丸祐三(大塚製薬)が登場。この大会で日本女子短距離初の準決勝進出となった福島は,2着+2の進出条件のなか3組目に登場。1.5mという強い向かい風にも阻まれ,11秒59で8着にとどまった。男子400mの金丸は,46秒10で6着。ともに次のラウンドに駒を進めることはできなかった。
選手コメント
■澤野大地(千葉陸協)
「達成感よりは悔しさのほうが勝っている。決して戦えないレベルではないと思うので。反省点を上げるなら1回目にちゃんとまとめて跳べなかったことに尽きる。ただ,今までのなかで一番硬いポールを普通に使えたことは,すごい収穫。また,世界選手権で周りを見ながら自分をコントロールできる精神状態で臨めたことも,本当に良かったと思う。30歳でこれだけの身体に仕上げられるということがわかって,まだまだこれからだと思った。今後もケガをしないように,しっかりとトレーニングをしていきたい」
■福島千里(北海道ハイテクAC)
「戦う場なのに,自分の走りに徹しすぎてしまった。これを経験に,次はあえて相手によって自分の力を伸ばせるような走りができたらと思う。うーん,やっぱり悔しいです。でも,1回は走って(経験してみないと)みないと次もない。こういうことが分かったことはすごくプラスで,今後の練習だったり(9月1日からの)200mだったりで,今までと違うモチベーションでやれるかなというのがある。まだ世界選手権は始まったばかり。トータルでよかったと振り返るようにしたい」
■金丸祐三(大塚製薬)
「8レーンと聞いたとき段階で最初から行くレースを考えた。悔いが残るとしたら、ここで戦えなかった自分をつくれなかった今までの過程といえる。ただ,ここで終わりじゃない。もっと次につなげるためにどうすればいいかということに切り替えたい。300mまで人が見えなかったので行けるかと思ったが,そこから行かれてしまった。ラスト100mをどう対処していくか,もう1つ上のレベルをイメージして取り組んでいかなければ…。45秒5とかのレースを繰り返していてはダメ。“甘ったれてるんじゃない”と言われた気分だ」
写真提供:フォート・キシモト