陸上競技マガジン編集長・牧野的、第100回日本選手権の見どころ
Decade(10年)で“歴史”を語ることはある。しかし、今回は何と言ってもCentury(100年)である。どの競技にも先駆け、100回目の開催を迎えた陸上の日本選手権。先人たちが日本一を懸け戦い続けてきた最高の舞台の大きな節目は、オリンピック選考会という巡りあわせもあり、より特別な期待感を醸し出す。どの種目でも熱い戦いが繰り広げられることは間違いないだろう。
さて、今大会の見どころ、正攻法でいくと、リオデジャネイロ五輪につながる大会なので、派遣設定記録を突破している選手に注目したい。同記録は日本陸連が世界で戦う指針として設けている世界リスト12位相当の基準で、6月15日現在、同記録突破者は男子9名、女子3名いる。その12名は今大会の8位以内の最上位者となれば、即代表内定となるが、真の意味で世界へのチャレンジャーとなるには、やはり日本選手権優勝を果たしてからこそ。記録以上に「強さ」を見せてもらいたい。
そのなかでも、あえて1名、オリンピックでの期待も含めて挙げるとすれば、男子やり投の新井涼平(スズキ浜松AC)だろう。
新井は日本歴代2位(86m83)の自己ベスト、昨年の北京世界選手権では派遣設定(84m32)を上回る84m66をマークして入賞まであと一歩に迫った実績を持つ(決勝9位)。今年は大会ごとに記録面では波があるものの(シーズンベストは84m41)、世界のトップ選手しか出場が認められないダイヤモンドリーグ(DL)に3戦出場する機会に恵まれた。第2戦上海大会では6位入賞を果たし、DLでは日本人初のポイントを獲得するなど、世界での経験を積んでいる。
昨年の世界選手権で「向こう側のスタンドまで飛ばすつもりで」というコメントを発したように、大舞台でも物おじしないタイプ。やりを放った後の迫力満点の雄たけびと共に、87m60の日本記録に迫る、いや一気に更新する投てきを見せてくれると、目標として掲げている90m、そしてサンバのリズムが聞こえる表彰台へ、ぐっと近づくはずだ。
また、どのような結果になるか全く想像が尽かないが、ハンマー投の室伏広治(ミズノ)の一挙手一投足は見逃せない。一昨年まで不滅の日本選手権20連覇、オリンピック・世界選手権での金メダルを獲得した説明不要の“生きるレジェンド”は、東京オリンピック・パラリンピックのスポーツディレクターとして多忙な日々を送るなか、2年ぶりにサークルに足を踏み入れる。大会史の5分の1も勝者として名を連ねる室伏が100回目の大会に出場することは、節目に相応しいニュース。競技者である以上、常に競技を極める姿勢を失わない“2016年の室伏広治”が、どんな投てきを見せてくれるのか。
最後に。勝負の行方はもちろん、選手たちの息遣いや表情もつぶさに見ていきたい。どのような表情で競技に臨もうとしているのか。結果に対して、どんな喜怒哀楽を見せるのか。彼らが発するオーラが、競技場の空気をどう醸成するのか。100回目だからこそ、選手たちの “超人的”なパフォーマンスと “人間味”に触れてみたいと思う。
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第100回日本陸上競技選手権大会は6月24日~26日の3日間、名古屋市パロマ瑞穂スタジアムで開催。
リオデジャネイロ五輪代表選手選考競技会を兼ねた本大会をぜひスタジアムでご覧ください!
<第100回日本陸上競技選手権大会チケット情報> #100日本陸上
http://www.jaaf.or.jp/jch/100/ticket.html
写真提供:フォート・キシモト