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NEWS 2016.06.14

日本選手権の好勝負 ―オリンピック選考会の激闘(その3)

 

4年に1回巡ってくるオリンピックイヤー。代表最終選考会を兼ねて行われた日本選手権では、数多くの激闘が繰り広げられてきた。日本選手権を彩った好勝負をご紹介しよう。

 

その3 第92回大会女子10000m(2008年)
渋井、赤羽、福士の壮絶バトル

 

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2008年北京オリンピック代表選考会を兼ねて開催された第92回日本選手権のなかでも屈指の注目種目ともいわれていたのが女子10000m。出場選手全20名のうち、実に16名が五輪参加標準記録(A:31分45分00、B:32分20秒00)の突破者。6月27日に行われた決勝は、前評判に違わぬ戦いが繰り広げられた。

 

歴史に残る名勝負の主役を張ったのは、この種目の日本記録保持者(30分48秒89、2002年)で、マラソンでも日本歴代2位となる2時間19分41秒の自己記録を持ち、2001年世界選手権女子マラソン4位の実績を残している渋井陽子(三井住友海上)、2003年世界選手権以降、2004年オリンピック、2005年・2007年世界選手権と、この種目で常に代表入りを果たしてきた福士加代子(ワコール)、2006年に出産後、2007年に日本歴代9位となる31分23秒27をマークして同年日本リスト1位の成績を収めるなど進境著しい赤羽有紀子(ホクレン)の3選手。こうした持ち記録だけでなく、渋井と福士は“マラソンで逃した五輪代表の座をトラック種目で獲得なるか”が、赤羽は“ママさんランナーとして日本陸上界初の五輪代表入りなるか”が、それぞれ大きく注目されるなかでのレースとなった。

 

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2日目の最終種目として組まれたレースは、気温23.5度、湿度75%というグラウンドコンディションのなか20時05分にスタート。赤羽が先頭に立って1周を73秒で入ると、渋井と福士を従える形で1000mを3分06秒で通過。そこで春から2度のA標準突破を果たす好調ぶりを見せていた渋井がトップに立つと、以降を3分08秒、3分09秒7、3分10秒、3分09秒というペースでレースを引っ張り、赤羽、福士がつく展開に。その間、ついていけない後続の選手たちが徐々に脱落し、先頭集団は5400mで渋井、赤羽、福士、松岡範子(スズキ)の4人となり、7600mで松岡が遅れると、いよいよ優勝争いは渋井、赤羽、福士の3人に絞られた。
最初に動きを見せたのは、それまでずっと3番手にいた福士だった。8000mでロングスパートを仕掛けて逃げを図るが、渋井は離れず、いったん遅れた赤羽も再び追いつく。今度は赤羽が前に出たが、渋井と福士は動じない。8800m過ぎで再び福士が仕掛けたが、2人を振り切ることはできないまま、勝負の行方は残り1周まで持ち込まれた。

 

ラスト300m、バックストレートに入る付近で赤羽が勝負をかけてスパート。福士はここで離されたが、渋井は逃げる赤羽に食らいつく。そして、ホームストレートに入ったところで、今度は渋井が猛スパート。残り50m付近で赤羽をかわすと、Vサインを作った右手を高々と突き上げながら31分15秒07でフィニッシュラインに飛び込んだ。赤羽が0.27秒差となる31秒15秒34で続き、福士が31秒18秒79で3位。死力を尽くした3人は、ゴール後、互いに抱き合い、笑顔で健闘を称え合った。

 

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3人の記録はともに大会新記録で、1996年アトランタ五輪代表選考会として、やはり壮絶な優勝争いが繰り広げられた第80回大会を制した鈴木博美(リクルート)が樹立した31分19秒40(当時、日本新記録)を更新するもの。また、31分49秒90で4位に入った松岡までが再びA標準を上回り、9位までがB標準を突破と、種目全体としても五輪選考会にふさわしいレベルの高さで観客を魅了したのだった。(※敬称略、所属は当時のもの)

 

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(文:児玉育美/JAAFメディアチーム)

 

 

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第100回日本陸上競技選手権大会は6月24日~26日の3日間、名古屋市パロマ瑞穂スタジアムで開催。

リオデジャネイロ五輪代表選手選考競技会を兼ねた本大会をぜひスタジアムでご覧ください!

 

<第100回日本陸上競技選手権大会チケット情報>  #100日本陸上

http://www.jaaf.or.jp/jch/100/ticket.html

 

 

 

写真提供:フォート・キシモト