2024.02.21(水)大会

【日本選手権20km競歩 女子レポート&コメント】藤井菜々子が日本歴代2位の1時間27分59秒でパリオリンピック日本代表内定!



第107回日本選手権男子・女子20km競歩」は2月18日、本年8月に開催されるパリオリンピック日本代表選手選会を兼ねて、第35回U20選抜競歩大会との併催で、兵庫県神戸市の六甲アイランド甲南大学西側20kmコースにおいて行われました。当日は、雨と強風・低温に苦しんだ前年とは打って変わって、曇りがちではあったものの、競技開始の8時50分の段階で気温13.5℃という暖かさ。日本選手権男女が実施されている間に気温は15.5℃まで上がり、女子の終盤では、やや風が感じられるようになりましたが、例年に比べると総じて風も弱く穏やかで、雲の合間から日が差す時間帯には暑さも感じるコンディションのなかでのレースとなりました。

>>男子レポート&コメントはこちら

藤井が、日本歴代2位の1時間27分59秒でパリ五輪内定
2位・岡田も参加標準記録を突破!

男子に続いて行われた女子では、気温が15.5℃から17.0℃へと上がっていくなかでのレース。途中はまでは雲が厚く垂れ込めたことや風が出てきた影響で、さほど気温上昇は感じられませんでしたが、終盤になって日射しが強まり、体感温度が急に上がったように感じられるコンディションに。このため、男子ほどの好条件ではなかったものの、こちらでも複数の選手が派遣設定記録(1時間28分30秒)を見据えながらの戦いを進めていく展開となりました。



39名が出場して行われたレースは、午前10時35分にスタート。前日の記者会見でも派遣設定記録突破を目指すと明言していた前回覇者の藤井菜々子選手(エディオン)と岡田久美子選手(富士通、日本記録保持者1時間27分41秒)、さらには昨年著しい成長を見せた柳井綾音選手(立命館大)の3人が飛びだし、これに梅野倖子(順天堂大)、内藤未唯(神奈川大)、園田世玲奈(NTN)の3選手がすぐについて6人の先頭グループで、派遣設定記録をイーブン換算したペースと同じ4分26秒で、最初の1kmを通過していきました。

2周目に入ると、終盤で柳井選手が前に出て、藤井選手、岡田選手を従える形でレースを進めていきます。ここで内藤選手、園田選手が後れ、2kmを8分52秒(4分25秒)で通過したときには先頭は4人に、その後、梅野選手も後れて、4分27秒のラップを刻んで通過した3kmの段階で柳井・藤井・岡田の3選手に絞られました。3周目に入ったところで先頭に立ったのは藤井選手。藤井選手はこの周回のラップを4分21秒まで大きくペースアップ。柳井選手と岡田選手はこれにつきましたが、ここで4・5番手にいた園田・梅野選手以下を大きく突き放します。



以降は、藤井選手がトップを引き、4分24~26秒前後のペースで、レースを支配していく形となりました。5kmは、藤井・柳井・岡田の順で3人とも22分03秒で通過。8km付近までは、その状態が保たれました。しかし、藤井選手が4分22秒へとペースアップした8~9kmの周回で、柳井選手が振り落とされて、9km通過時点でその差は7秒に。ここで藤井選手につくことのできた岡田選手も、藤井選手が44分02秒(4分22秒)のスプリットで通過した10kmでは2秒差で続いたものの、次の周回で藤井選手が4分19秒へとペースを引き上げたことで、一気に10秒の差がついてしまいました。
藤井選手は、その後も4分21秒前後の好ラップを刻んで、後続との差を大きく引き離していきます。もちろん派遣設定記録は大きく上回るペース。そして1kmごとに、日本記録をイーブン換算したペースへと近づき、15km地点は、日本記録ペースを1秒上回る1時間05分45秒での通過となりました。その後、17kmまでは日本新ペースを維持しましたが、残り3周となったところでペースダウン。18周目と19周目は4分29秒、そして最終周は4分30秒で回ることとなり、残念ながら日本記録の更新はなりませんでしたが、2019年に出した自己記録(1時間28分58秒)を1分以上更新し、日本人女子2人目となる1時間28分切りとなる1時間27分59秒(日本歴代2位)の大会新記録でフィニッシュ。2年連続3回目のタイトルを獲得するとともに、パリオリンピックの代表に内定しました。



藤井選手に続いたのは岡田選手です。藤井選手との差が開いた11km以降も、ペースこそ落ちたものの派遣設定記録を上回るスプリットを13kmまで維持。「暑さもあって、後半バテてしまった」、ことから、派遣設定記録の突破が難しいと判断するやすぐに、参加標準記録を確実にクリアすることに目標を切り替えました。これまで多く見られた終盤のペースダウンを4分33秒に食いとどめ、最後の5kmでは4分32秒、4分31秒、4分32秒と持ち直したのちに、ラスト2周は4分28秒、4分25秒へとペースを引き上げる新たな側面も。自己3番目で日本記録を樹立した2019年以来の好タイムとなる1時間29分03秒をマークし、参加標準記録をクリア。大喜びしながらフィニッシュラインに飛び込んでくる姿が印象的でした(藤井選手、岡田選手のコメントは、別記ご参照ください)。



この「トップ2」に突き放される形となったものの、序盤で両選手に食らいついた柳井選手は3位。12kmまでは参加標準記録を上回るペースを維持しましたが、その後のペースダウンが大きく、疲労困憊でフィニッシュ地点に辿り着きました。それでもセカンドベストとなる1時間31分25秒をマークして、2年連続で3位を堅守。今後のレースにおける参加標準記録突破、あるいはWAワールドランキングによる代表入りに望みをつないでいます。このほか4位には園田選手が1時間33秒01で、5位には梅野選手が1時間35分36秒で続き、ベテランの渕瀬真寿美選手(建装工業)が6位(1時間36分38秒)を占める結果となりました。




U20男子10kmはインターハイ&国体覇者の逢坂がV
女子は、競歩歴半年の谷が大会新で優勝



昨年から、男女ともに10kmで実施しているU20選抜競歩は、日本選手権男女レースの終了後に行われました。男子10kmを制したのは、昨年のインターハイ、国体でタイトルを獲得している逢坂草太朗選手(川西緑台高3年・兵庫)。前半の5kmを20分45秒で入ると、後半を20分36秒のネガティブスプリットを刻むレースを展開。昨年のこの大会でマークした10kmの自己記録43分48秒(13位)を大きく塗り替える41分21秒をマークし、3つめの全国タイトルを手にしました。上位3選手が大会記録を更新する結果となった女子10kmは、昨年10月から競歩に取り組み始めたばかりという谷純花選手(金沢学院大1年・富山)がラストで抜けだし、46分49秒で初の全国タイトルを手にしています。

第107回日本選手権を獲得するとともにパリオリンピック日本代表に内定した池田・藤井両選手ほか、上位成績者のコメントは、以下の通りです。


【日本選手権獲得者コメント】

藤井菜々子(エディオン、ダイヤモンドアスリート修了生)
優勝 1時間27分59秒 =大会新記録、派遣設定記録突破
※パリオリンピック日本代表内定



今日の目標が、派遣設定記録を突破して優勝し、(パリオリンピック代表)内定だったので、今、ホッとしている。
展開としては、10kmくらいまでは、4分25秒前後で押していき、そこから少しずつ(ペースを)上げて、あわよくば(1時間)27分台を(出せたら)と思っていた。その通りのレースができたと思う。最初の10kmは、あまり呼吸も乱れずに、自分のペースで、大きな動きで余裕を持った歩きができた。身体も動いていたのでペースを上げた10km以降は、4分20~21秒前後のペースにハマって余裕で行くことができたが、15kmを過ぎてから暑くなったことと少し風も出てきたこともあり、最後はきつくて、残りの3kmはペースが落ちてしまった。そこが今後の課題かなと思う。
昨年のブダペスト(世界選手権)に出てみて、速いペースで全く戦えなかったことがけっこうショックで、「本当に見直しをやっていこう」と思って、4分25~26秒のレースペースを身体に刻み込む練習をしてきた。最初は、2kmのインターバルとかで取り組み、徐々に増やしていく形で進めたが、1月に宮崎で行ったナショナル(チーム)での合宿では、4分25秒前後で長い距離を歩けていたので、「これは出るかな」とは思っていた。レースでそれができたことで、「ちゃんと成果が出てきたな」と思った。
レースの途中では、「日本記録(1時間27秒41秒、岡田久美子、2019年)を更新するか」というアナウンスも出ていたが、自分としては「そこは、ちょっとどうかな」と思っていた(笑)。1時間28分を切れるかどうかというところで、ぎりぎり(1時間28分を)切れたので、ちょっとびっくりした。
前回の東京オリンピックは、挑戦者の気持ちで臨んだが、今年はエースとして、しっかり引っ張っていく立場になって、考え方も変わったし、もっと上位を目指したいという欲が出ている。パリオリンピックでは、上位入賞を目指したい。
今日のようなレースだとイーブンで行くが、世界大会では、後半のラップが上がっていくし、揺さぶりもある。特に、ラスト5kmからのラップを、世界のトップは4分ひとケタで行ってしまうので、どう対応していくかというのは課題になる。(揺さぶりも含めて)そういうレース展開に備える練習をもっとしなければいけないし、国際大会にどんどん出ていきたいなという気持ちがあるので、もっと(海外の)大会に出て学びたいなと思っている。
試合としては、このあと、世界競歩チーム選手権(4月)と、出られたら6月のラコルーニャ(WA競歩ツアー)も視野に入れて、8月(オリンピック)に向かうことを考えている。連戦している海外の選手を見て「強いなあ!」と思ったので、自分も負けじと連戦して学んでいきたい。


【参加標準記録突破者 コメント】

岡田久美子(富士通)
2位 1時間29分03秒 =パリオリンピック参加標準記録突破



2位という悔しさはあるけれど、参加標準記録を突破することができた。まずは、参加標準記録を突破しないと、WAワールドランキングの結果待ちということになってしまう。ここで突破できたことで、出場に向けてクリアになり、次につながったと安心した。
今日は、派遣設定記録突破を目指していたので、派遣設定のタイムよりもちょっと速いペースで進めていった。気温が高く、後半では暑さを感じてバテてしまったが、(派遣設定記録突破が)少し厳しくなってからは、自分のペースで確実に、参加標準突破とオリンピック出場というところを意識した。大きくペースダウンすることなく、粘ることができたと思う。今日のタイム(の水準)は、自分のなかでは4年ぶりくらいとなるタイム。身体を変えていく取り組みが、成果として出てきているのかなと思う。
ブダペスト世界選手権(35km競歩)は、大会直前に腰を痛めて欠場した。その後も腰や首に痛みが出て、全く練習ができておらず、コーチ陣にも「競技をやめたい」という話をするほどの状況が続いていた。そこからの今日の結果ということで、信じられないくらいよかったと思う。12月くらいまでは、椅子に座っているのもつらいくらいだったので、本当にどうなってしまうのかなという状況だったのだが、そこを助けてくれた人たちがいて、その方々への思いを込めて歩こうと思っていた。2位ではあったが、オリンピックに出場というところに関しては、確実なものになったと思うので、まずは感謝の気持ちを伝えたい。毎日、私の泣き言を聞いてくれた夫(森岡紘一朗コーチ)に感謝したい。
まだ内定は出ていないが、ここからは、しっかりとオリンピックで戦えるように頑張るぞという気持ちでいる。リオ(五輪)から東京(五輪)では順位が1つしか上がらなかったように、すごく難しく、厳しい戦いにはなると思うが、東京を経験したことで力もついてきていると思うので、入賞目指して頑張っていきたい。


【U20選抜競歩優勝者コメント】

■U20選抜競歩男子10km競歩 
逢坂草太朗(川西緑台高3年・兵庫)
優勝 41分21秒

今回は、(優勝した)インターハイ、国体のときよりも自信がなかった。10月ごろに右脚の甲を痛めて、うまく練習できず、この大会に臨むのはかなり不安があった。U20世界選手権の選考会ということで次につながるレースということもあり、しっかり1位を、最低でも2位を…と、順位を狙って臨んだ。本当は、スタート直後から、もっとトップの選手の真横にいるくらいが理想だったが、コースの幅が狭く、選手もいっぱいいたので、最初は第2集団の後方につける形になってしまった。2~3kmで徐々に上げていき、まく先頭のすぐ後ろあたりにつけて、ラストまで行けたのでよかった。
春から東洋大学で競技を続けるが、すでに川野(将虎)さんと一緒の合宿にも参加させていただいた。川野さんの練習や、食事、生活する様子を間近で見させていただき、練習に取り組む姿勢や、ほかの選手やコーチや先生にどう向き合うのかとかを知ることができたのは本当に勉強になった。
まだ決まってはいないけれど、もし、U20世界選手権の代表に選ばれたら、経験としてもそうだが、結果をしっかり出して、さらに次の大会につながるようにしていければと思う。具体的な目標はまだ決めることができていないが、出るからには金メダルを目指していきたい。


■U20選抜競歩女子10km競歩
谷 純花(金沢学院大1年・富山)
優勝 46分49秒 =大会新記録

競歩を始めて、まだ半年。優勝できるなんて全く思っていなかったので、びっくりしている。
レースの経験も全然ないこともあり、今日は、最初から飛ばすのは自信がなかったので、まずは集団のなかで粘れるところまで粘ろうとしたが、ラストスパートには自信があったので、「最後まで粘れれば、(優勝も)あるかもしれない」と途中から考えるようになった。最後に折り返してからのラスト500mは全力で行った。
監督からは私の歩きは「速いピッチが武器だ」と言われている。10kmのレースは、今回が初めてで、本当に長く感じたが、途中でキツくなったときに、監督から「ピッチを少し上げろ」と言われて、そこを意識したら歩きやすくなった。
もともとずっと長距離をやっていたが、去年の夏にケガをして、リハビリの一環として練習で取り組んだのが競歩を始めるきっかけとなった。最初は動きつくりもできないくらい下手で、練習にも全然ついていけず、「競歩は難しいなあ」と思っていた。しかし、学院(金沢学院大)の競歩は強くて、環境にも恵まれている。監督やチームメイトにいろいろと教えてもらったりアドバイスしてもらったりして、一緒に練習できたから、ここまで来られたのかなと思う。
まだ、本当に(優勝した)実感が湧かなくて、この先、どんな大会に出るとかも、はっきり決まっていないのだが、長距離もまだまだやる予定ではあるので、長距離と競歩、どちらも両立してできたらいいなと思っている。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:アフロスポーツ/フォート・キシモト


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▼【第107回日本選手権20km競歩】前日会見レポート&コメント
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