2024.04.01(月)選手

【ダイヤモンドアスリート】第5回メディア研修レポート:メディア対応や自分を表現することの大切さについて



第10期ダイヤモンドアスリートを対象とするリーダーシッププログラムが、2月29日に行われました。今回は、開催日を集中させて、2種類の研修を対面形式で行うタイムテーブル。まず、栁田大輝選手(東洋大学)、北田琉偉選手(日本体育大学)、澤田結弥選手(浜松市立高校)、永原颯磨選手(佐久長聖高校)の4名が、ダイヤモンドアスリートの栄養サポートを長年にわたり行っているエームサービス株式会社で午前中から実施された「栄養セミナー」で、座学および調理実習を受講。その後、海外合宿中の西徹朗選手(早稲田大学)もオンラインで合流し、メディアトレーナーの片上千恵先生(法政大学スポーツ健康学部 准教授)による「メディア対応」の研修を受けました。
ここでは、東京・北区の味の素ナショナルトレーニングセンターに戻って夕刻から実施されたメディアトレーニングの模様をご報告しましょう。

今回のメディア研修は、冒頭の挨拶で室伏由佳ダイヤモンドアスリートプロジェクトマネジャーが述べた「片上先生には、昨年も講義をしていただいたが、今回は“実践第一”ということで進めていただく。表情筋が筋肉痛になる人もいるかもしれない。楽しい研修、実りある研修にしていきましょう」という言葉のとおり、笑顔と活気に満ちあふれた90分間となりました。
オンラインで実施した昨年に続いて講師を務めたのは片上千恵先生です。アナウンサーとして活躍したのちにメディアトレーナーに転身した片上先生は、その後、IMAGE WORKS & Co.(イメージワークス)を立ち上げ、現在は企業の幹部やスポークスパーソンを対象にしたメディアトレーニング、プレゼンテーショントレーニング、危機管理対応トレーニング等で実績を重ねるほか、大学教員、研究者、スポーツ協会理事としても幅広く活躍しています。



前回は、オンライン取材での留意点を紹介することから研修を始めましたが、今回は、「まず、アイスブレイクということで、貴重な映像をみてもらいましょう」と、ダイヤモンドアスリートたちに、室伏マネジャーが2004年アテネオリンピック(女子ハンマー投)に出場した際、現地で対応したインタビュー動画を見せることからスタートさせました。紹介されたのは、競技直後にライブで行われた2分10秒のフラッシュインタビューの映像と、ハイライト番組内でそのインタビューを18秒に編集して放送された映像の2つ。片上先生は、室伏マネジャーのインタビュー対応を具体例として、「素晴らしかった点」と「改善できる点」を挙げるともに、編集が施される前と後の映像を比較して、「メディアは、取材した映像やコメントを編集して使うこと」「編集が施される場合でも採用されるのは、当事者ならではの言葉であること」などを説明しました。
また、一般メディアがニュースになると判断する「ニュースバリュー」には7つの要素(新規性、社会性、影響性、唯一性、意外性、人間性、時事性)があることを示したうえで、「ダイヤモンドアスリートである皆さんの場合は、すでに存在だけでニュースになる人たち。あなた自身の経験や考えは、ファンやメディアが知りたいと思っていることなので、自信を持って、あなたのことを話してほしい」と呼びかけました。


「ということで、ここからは自分たちの良かった点や課題点を振り返ってみましょう」と、続けて片上先生が流したのは、実際にダイヤモンドアスリートたちがインタビューに答えている映像です。実は、このメディア研修のために、昨年12月に行われたダイヤモンドアスリート認定式の際、終了後に行われた映像メディアの囲み取材において、片上先生から指定のあった質問を投げかけ回答してもらう、いわゆる“仕込み”を実施していたのです。研修では、質問の一つであった「あなたが取り組んでいる競技の魅力を教えてください」という問いに各選手が答える映像を、1人ずつ順番に流し、その都度、良かった点や気になった点、改善するとよい点などを、全員で確認していきました。



どの選手も、自身が取り組んでいる種目について、一所懸命取り組んでいる者ならではの視点や表現で、その魅力を伝えようとしていたことが共通点。片上先生は、映像を見たほかのダイヤモンドアスリートたちに感想を求めたり、「ここはあなたのいいところ、大切にしてほしい」と、それぞれの個性を示したりしながら、各選手が持つ魅力をクローズアップしていきます。さらに並行して、「一文が長すぎたよね」「目線が泳いじゃったかな」「このお辞儀の仕方だと自信がなさそうに見えちゃう」「声が小さいなあ」「腕は後ろに組むと、ゼスチャー ができなくなっちゃうよ」「話し終えると表情が硬くなっちゃうなあ」など、軽妙な語り口で改善点も指摘していきました。




時には、大爆笑も起きたなかで行われた、この「抜き打ち実践の振り返り」を経て、片上先生は、アスリートが受けるインタビュー場面を、①試合前、②試合後、③その他の3つに分けて、それぞれで求められる質問項目を次のように示しました。
①試合前(記者会見・囲み取材):試合のこと、ライバルのこと、コンディション(体調、天候など)、取り組んできた課題や戦略、目標、意気込み
②試合後(バックボード前、ミックスゾーン、記者会見):結果に対する感想、結果に繋がった要因、試合の分析、ファンへのメッセージ
③その他(情報バラエティ番組、オウンドメディア、YouTubeなど):試合や練習の裏話、プライベートの話

そのうえで、ニュース報道を目的として時間的な制限もある①と②では「聞かれる内容はだいたい決まっている」、③では「競技よりも人間性を聞かれる場合が多い」と、それぞれの特徴を示すとともに、①②については「何を聞かれるかわかっていれば、準備もできるはず」と事前に考えておくことをアドバイス。そのうえで、「あなたたちはダイヤモンドアスリート。競技に関する質問には、私たちがどんなに勉強しても、あなたたちのようには答えられない。自信を持って答えてほしい」と呼びかけました。
さらに、片上先生が強調したのは、「競技に関する分析にプラスして、“あなたたちは思いを伝える立場である”と言いたい」ということです。「選手の個性や人となりは、思いに表れ、そのことがアスリートのブランドをつくるという研究結果もある」と片上先生。アスリートのブランドイメージがどのように形成されていくのかを説明したうえで、「競技や種目をブランド化するためにも、“思い”が必要となる。アスリートが競技を分析できるのは当たり前のこと。ダイヤモンドアスリートである皆さんは、そこに留まるのではなく、さらに“意気込み”“勝利への執念”“悔しさ”“感謝”といった、あなた自身の思いを、ぜひ伝えていくようにしよう。そして、そうすることで、競技やあなた自身を、次なるステージへ進めていってほしい」と訴えました。



さまざまな形でメディア対応の大切さを示してきた片上先生が、この日の研修の総まとめとして示したのが「インタビュー成功のための5つのポイント」です。

①まずは「声と姿勢」:メッセージを伝える際に重要なのは、声と姿勢。話し始める前に、正しく立てているか、座れているかをチェック。目線はインタビュアーに向け、「5m先に届く声」で話すことを心掛けよう。
②具体的に話す:「応援よろしくお願いします」だけでは、あなたの個性は伝わらない。話す際には数字や固有名詞を入れて、具体的に。
③コメントの締め方:話しているうちに、コメントの締め方が分からなくなり、つい一文が長くなってしまいがち。一文は短いほうが歯切れ良く、意志的な印象を与え、コメントも使われやすい。一文を短くすることを心掛けよう。
④何度も同じことを聞かれたときの対応:特に試合後では、取材場面が複数となるため、何度も同じことを聞かれがちだが、大切なことはためらわずに何度でも同じことを繰り返そう。それによって、その言葉が「キーメッセージ」となって広がっていくことに繋がる。
⑤難しいこと、知らないことを聞かれたときは?:質問の意味がわからないときは、遠慮せずに聞き返す。答えるのが難しいことや知らないことは、そのことを正直に伝えるのがベスト。また、臨む競技会のレベルが高くなればなるほど、政治や人種問題などに関する質問が挙がる場面が増えてくる。日ごろから関心を持ち、最低限の知識は身につけておこう。

特に①②③は、実際のインタビュー映像でも課題として挙がった事柄で、なかでも①の「声と姿勢」については、「これは対面で実施するので、絶対に伝えたかったこと」と片上先生。インタビュー映像で声が小さいことを指摘されていた北田選手が、まず5m離れた位置の相手に届く声で話したあとに、同じ声量のままインタビューに答えることで声を大きくするイメージを掴む改善法に取り組みました。そこでは、「5m先に届く声を出すと、大きく口が開き、声も自然とワントーン上がることによって、滑舌も良くなる」といった追加情報も披露。このほか、姿勢については、座位で対応するとき(骨盤を立てることを意識)、立位で対応するとき(片脚重心でなく、両脚に等分して重心をかける)の正しい姿勢も紹介されました。②においては、「陸上は、小学生のとき、地元のクラブで始めた」を「陸上は、小学1年生のとき、地元の川中島ランニングクラブで始めた」と、永原選手が実際に言い換えてみることで、数字や固有名詞を出すと、より話が具体的になり、個性が生まれてくることが示されました。そして、③では、「短い文章を繋げて、たくさん話すようにするのがいい」と片上先生。「です。」「ます。」「でした。」を意識すると、一文を短くできることがアドバイスされました。



こうした具体的なテクニックが示されたうえで、片上先生が「メディア対応で一番大事なこと」として示したのは、「“何を伝えるためにインタビューに答えているのか?”を心に浮かべる」ということでした。「自分は、なんのためにメディア対応をしているのか? それがわかっていれば、伝えたい思いが明確になり、声も自然に大きくなるし、自然にゼスチャーも 出てくるもの」と述べ、「このことを“5m先に届く声を出す”ことと同時に思い出し、ダイヤモンドアスリートとして伝えたいことを、しっかりと伝えてほしい」と締めくくりました。

最後に「海外に出ると、握手をすることが多くなると思うけれど、日本代表であるなら 覚えておきたい」と、正しいお辞儀の所作を指導。ダイヤモンドアスリートたちは、片上先生の声に従って、美しく見えるポイントを1つずつ確認したうえで、最後に全員で片上先生へ「ありがとうございました」とお辞儀し、メディア対応の研修を終えました。

終了後、取材に応じた室伏マネジャーは、「オンラインで実施した昨年は、オンライン取材が多いタイミングならではの観点も含めた指導をいただけたが、対面での開催が実現した今回は、対面研修ならではの貴重なご指導となった。ここで教えていただいた立ち居振る舞いも含めたインタビュー対応の留意点は、日常において人前で何かを話すときはもちろんのこと、例えばプレゼンテーションを行ったり、面接を受けたりするときなどにも役立つ内容で、私自身、とても参考になった」とコメント。「今後、もっと人前に立つことが多くなるダイヤモンドアスリートの皆さんには、ぜひ、さまざまな場面で大いに活用していただきたい」と期待を寄せました。

文・写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)


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