「アスタナ2023アジア室内陸上競技選手権大会」が2月10日(金)から12日(日)の3日間、カザフスタンの首都アスタナ(※)で開催される。当初は2022年に実施予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で1年延期に。また、2020年の第9回大会(中国・杭州)もコロナ禍の影響で中止となっていたため、2018年以来5年ぶりとなる。
※2019年に改名した「ヌルスルタン」から、2022年9月に元の名称「アスタナ」へ戻した。
1月13日に決定された日本代表は総勢30名(男子16名、女子14名)。ブダペスト世界選手権をはじめ国際大会が目白押しの2023年の幕開けに、ふさわしい陣容となった。世界へ挑むチームJAPANの注目ポイントをお届けする。
※なお、男子走幅跳の橋岡優輝(富士通)は左大腿ハムストリングス痛のため、女子五種競技のヘンプヒル恵(アトレ)は足部の痛みのため欠場となり、総勢28名(男子15名、女子13名)となった。
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東京五輪&オレゴン世界陸上代表組がずらり
日本の「エース」的存在となるのは3000mの廣中璃梨佳(JP日本郵政G)だ。10000mで東京五輪7位入賞、オレゴン世界選手権では12位ながら日本歴代2位の30分39秒71をマークしている。5000mの日本記録(14分52秒84)保持者でもある。オレゴン後の秋シーズンはスピード強化を見据え、1500mや3000mなどのレースに積極的に出場。その中で11月末の全日本実業団対抗女子駅伝のエース区間・3区でトップに立つ力走を見せるなど、結果を残してきた。再び世界の入賞ラインに入るための一歩として、強豪がそろうアジアで力を試す。
3000mには、昨年10月の国体成年5000mで廣中に勝った山本有真(名城大)もエントリー。そのレースで日本人学生最高の15分16秒71をマークし、チームの全日本大学女子駅伝、富士山女子駅伝の5年連続2冠をエースとして牽引するなど、今最も勢いに乗る選手の1人だ。
また、男子3000mには東京五輪5000m代表の坂東悠汰(富士通)と、ダイヤモンドアスリートの駒澤大学ルーキー・佐藤圭汰が出場する。正月の駅伝(全日本実業団駅伝、箱根駅伝)では、坂東は3区で区間16位タイ、佐藤は直前の腹痛で出走せずと不本意な結果となった。そこからの巻き返しの大会となる。
上述の選手たちの他にも、今回はオレゴン世界選手権代表組が多く名を連ねる。再び世界の舞台に立つために、ワールドランキングのポイントを確実に積み上げていく構えだ。
男女60mハードルには、ともにオレゴンのセミファイナリストとなった石川周平(富士通)、青木益未(七十七銀行)が出場する。室内でも、石川は昨年の世界室内選手権出場、青木は日本選手権室内3連覇中と、実績も経験もある。
このほか、男子の野本周成(愛媛陸協)は昨年3月の「世界室内選手権」で準決勝全体で8番目タイ。抽選でファイナルを逃したが、室内で大きなキャリアを刻んだ。女子の清山ちさと(いちご)も、国内での勝負強さには定評がある。
男子走幅跳には橋岡とともにオレゴン世界選手権に出場した山川夏輝(佐賀県スポ協)も代表入り。2020年に試合前の跳躍練習中に負った脚の大ケガを克服し、初めて挑んだ世界大会だった。
男子走高跳の赤松諒一(アワーズ)、女子1500mの卜部蘭(積水化学)、女子走幅跳の秦澄美鈴(シバタ工業)、さらに男女4×100mリレーでそろって2走を務めた鈴木涼太(スズキ)、君嶋愛梨沙(土木管理総合)が60mにエントリーされた。いずれもアジアにはハイレベルの選手がそろう種目であり、自身の立ち位置をしっかりと確認する大会になるだろう。
各種目でハイレベルのアジアに挑戦
世界選手権代表以外にも、注目選手は目白押し。特に中距離は勢いのある選手が名を連ねた。男子1500mは東海大学の現役・OBコンビ。飯澤千翔が学生ラストシーズンだった2022年は日本選手権初優勝、1500mで日本歴代2位の3分36秒55をマークと躍進を遂げ、世界への距離を一気に縮めた。先輩の荒井七海(Honda)も、昨年6月の「ホクレン・ディスタンスチャレンジ20周年記念大会」で前日本記録だった自己ベスト3分37秒05を塗り替える3分36秒63を出している。室内の1500m(3分39秒51)、1マイル(3分56秒60)の日本記録保持者でもある。
昨年5月にはともに高地合宿をし、飯澤は先輩から競技に取り組む姿勢などを学んだという。2007年大阪世界選手権の小林史和(NTN/現・愛媛銀行監督)以降、五輪、世界選手権の舞台から遠ざかっている種目だが、世界へのステップとできるか。
800mには金子魅玖人(中央大学)、塩見綾乃(岩谷産業)の日本選手権覇者と、男子の2022年ランキングトップの薄田健太郎(筑波大学)、女子1500mには昨年7月に自身初の4分10秒切り(4分09秒41)を果たした後藤夢(豊田自動織機)がエントリー。アジアの強豪に挑む貴重な経験の場となるだろう。
フィールド勢では、女子三段跳の森本麻里子(内田建設AC)が1月22日に行われたドイツ・ルクセンブルクの室内競技会で、昨年3月に作った自身の日本記録を7cm更新する13m38と、早くも好調ぶりをアピール。屋外でも昨年は日本歴代2位の13m84をマークしており、日本人2人目の14mジャンプ、さらに屋外日本記録(14m04)更新も視野に入る。ワールドランキングでも世界選手権出場が狙える位置にいるだけに、ポイントをしっかりと獲得しておきたいところだ。
女子走幅跳の髙良彩花(筑波大学)も昨年は4年ぶりに自己記録を更新する6m50をマークしたほか、高いアベレージを残している。社会人1年目のシーズンに向けて、弾みをつけられるか。男子走高跳の瀬古優斗(滋賀陸協)、三段跳の伊藤陸(近畿大工業高専)、女子棒高跳の那須眞由(KAGOTANI)も、さらなる飛躍への試金石となるだろう。
男女混成競技も、日本トップ級の顔ぶれ。男子七種競技は昨年、十種競技で日本人3人目の8000点オーバーを果たした奥田啓祐(第一学院高教)と、胸椎分離症を克服して日本歴代5位(現・6/7807点)をマークした丸山優真(住友電工)、女子五種競技は日本記録保持者・山﨑有紀(スズキ)が挑む。
文:月刊陸上競技編集部
写真提供:フォート・キシモト
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■【アジア室内陸上】日本代表選手が決定!
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■【アスタナ2023アジア室内陸上競技選手権大会】 日本代表選考要項
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