2018.03.30(金)その他

記録と数字からみた「9秒98」や「9秒台」についての“超マニアックなお話” 第7回「桐生選手に続く日本人選手の「9秒台」の可能性」

◆桐生選手に続く日本人選手の「9秒台」の可能性


桐生選手の更なる記録の短縮や、新たな日本人選手の「9秒台」を占うデータを紹介しよう。



2017年の「日本10傑」と世界リストでの順位は、「表14」の通り。

【表14/2017年日本10傑と2017世界リスト・世界歴代の順位】
順)記録風速氏名
(所属)
月日2017世界世界歴代
1)9.981.8桐生祥秀
(東洋大)
9.0916位98位
2)10.000.2山縣亮太
(セイコー)
9.2420位126位
3)10.050.6サニブラウンAハキーム
(東京陸協)
6.2433位198位
4)10.071.8多田修平
(関学大)
9.0943位236位
5)10.081.9飯塚翔太
(ミズノ)
6.0447位265位
5)10.08-0.9ケンブリッジ飛鳥
(ナイキ)
6.2347位265位
7)10.131.9原翔太
(スズキ浜松AC)
6.0470位411位
8)10.201.9九鬼巧
(NTN)
6.04124位717位
9)10.221.9諏訪達郎
(NTN)
6.04147位861位
10)10.231.9藤光謙司
(ゼンリン)
6.04161位935位
10)10.230.6宮本大輔
(洛南高)
6.16161位935位

「10傑平均記録」は「10秒104」だった。

これまでの歴代最高は、2016年の「10秒181(10.01~10.27)」、歴代2位が2014年の「10秒201(10.05~10.27)」、歴代3位が2013年の「10秒223(10.01~10.33)」で、それらを大きく上回った。

「2017年世界100位」は10秒17で、7人が入傑した。



100位以内の国別人数は、

1)27人 アメリカ
2)15人 ジャマイカ
3)8人 イギリス
4)7人 日 本
5)6人 南アフリカ
6)4人 カナダ、トリニダード・トバゴ
8)3人 トルコ
9)2人 バルバドス、キューバ、中国、アンティグア・バーブーダ
13)1人 18カ国

で、日本は堂々の4位に食い込んだ。

よりハイレベルな「10秒09以内(計52人=10秒09はいなくて10秒08まで)」に限れば、

1)16人 アメリカ
2)8人 ジャマイカ
3)6人 日 本
4)5人 イギリス、南アフリカ

となって、イギリスを抜いて3位に進出する。
この層の厚さが、2016年リオ五輪・銀、2017年ロンドン世界選手権・銅という400mリレーでの連続メダル獲得につながったといえよう。

2017年に「10秒09以内」をマークしている6選手(桐生、山縣、サニブラウン、多田、飯塚、ケンブリッジ)の公認条件での「個人の10番目の記録」「10傑平均」「10秒0台以内の回数」を「表15」に示した。参考までに、2016年以前に10秒09以内で走った6選手のデータも付記した。


【表15/10秒09以内の日本人選手の個人別10位・10傑平均・10秒0台の回数】

 PB ~10位平均10秒0台以内回数
桐生祥秀9.98~10.0910.04311回
山縣亮太10.00~10.1010.0619回
サニブラウン10.05~10.3010.1704回
多田修平10.07~10.2310.1692回
飯塚翔太10.08~10.3510.2561回
ケンブリッジ10.08~10.1810.1351回


 PB ~10位平均10秒0台以内回数
伊東浩司10.00~10.2410.1354回
朝原宣治10.02~10.1510.1024回
末續慎吾10.03~10.1510.1092回
江里口匡史10.07~10.2410.1571回
塚原直貴10.09~10.2310.1601回
髙瀬慧10.09~10.2710.1791回


このデータを、9秒台で走っている125選手を含め10秒09以内の世界歴代選手(日本人12選手を含め307人。10秒0台は182人)と比較してみた。

  • 9秒台がベスト記録の125選手のうち、桐生選手の9秒98は歴代98位タイ。
  • 個人の10番目の記録が判明している9秒台の選手は123人で、桐生選手の自己10番目のタイム10秒09は69位タイ、個人10傑平均の10秒043は72位である。
  • しかし、自己ベストが「9秒9台」の93選手に限ると9秒98は66位タイだが、自己10番目の記録が判明している91人中10秒09は39位タイ、10傑平均の10秒043は42位で、中位以上。

桐生選手がいかに安定したタイムをマークしているかということがわかる。

また自己ベストが「9秒90~94」の34選手との比較でも、自己10番目の記録は16位相当、10傑平均は26位相当で、何ら見劣りしない。

これと同じく2017年に10秒0台で走った他の日本人5選手についても「10秒0台がベスト記録(10.00~10.09)」の182選手のデータと比較した。

なお、182人のうち、個人の10番目までの記録が判明しているのは160人である。

日本人5選手の「ベスト記録」「10秒0台の回数」「10番目の記録」「10傑平均」の10秒0台の選手の中での各順位は「表16」のようになる(「自己記録」「10秒0台の回数」は182人中の順位。「10位記録」「10傑平均記録」は160人中の順位)。


【表16/10秒0台の歴代選手の中での日本人の順位】
 自己記録10秒0台回数10位記録10傑平均記録
山縣亮太1位/182人中2位/182人中2位/160人中3位/160人中
サニブラウン73位/182人中24位/182人中118位/160人中94位/160人中
多田修平111位/182人中52位/182人中76位/160人中92位/160人中
飯塚翔太140位/182人中82位/182人中135位/160人中143位/160人中
ケンブリッジ140位/182人中82位/182人中36位/160人中53位/160人中

以上の通りで、自己ベストが10秒00の山縣選手は、当然のことながら「10秒0台の選手」の中では「最も9秒台に近い位置」にいる。さらに「10秒0台の回数=9回」「10位記録=10秒10」「10傑平均=10秒061」もそれぞれ上位にいて、非常に安定していることを示している。なお、自己ベストが「9秒9台」で個人の10番目の記録が判明している91選手と比較しても、山縣選手の「10位記録」は47位タイ、「10傑平均記録」は51位タイで何ら遜色ない。

ちなみに桐生選手が9秒98をマークする以前のデータを上記に当てはめると、「自己記録=10秒01」は17位相当、「10秒0台の回数=10回」「10位記録=10秒09」「10傑平均記録=10秒054」はいずれも2位相当となる。

他の日本人4選手のベスト記録は、10秒0台の後半(10.05~10.09)ではあるが、200mが専門で100mを走る機会が少ない飯塚選手以外の「10傑平均記録」は160人中の二桁順位で、桐生・山縣選手と同じく安定したタイムを残していることがわかる。

さらに、自己ベストが10秒0台の182人の「10秒0台の回数」をベスト記録別に細かく見ていくと「表17」の通り。

【表17/自己ベスト10秒0台の選手が10秒0台をマークした回数】
PB1回2回3回4回5回6回7回8回9回10回11回合計
10秒0042113121116人
10秒0123411213人
10秒0225221113人
10秒0333322114人
10秒047222316人
10秒056122112人
10秒0618412126人
10秒07216229人
10秒08173121人
10秒0921122人
合計101人30人16人12人12人2人4人3人1人01人182人



上記のように、10秒0台が「1回」という選手が182人中の101人で55.5%を占める。

当然のことながら、ベスト記録がいい選手ほど10秒0台の回数も多い。
が、ベスト記録10秒05で10秒0台を計4回マークしているサニブラウン選手は10秒05が2回に10秒06が2回という内訳。しかもすべてが2017年の記録である。

2017年に10秒0台で走った33選手の中では、ともに10秒00がシーズンベストのマイク・ロジャース(アメリカ。ベストは9秒85=2011年。9秒台は計39回)とユニエル・ペレス(キューバ。ベストも10秒00=2017年)の5回に続いて3番目の回数だ。

また、10秒07と10秒08の多田選手も自己11番目(10秒24)までの記録がすべて2017年のもの。

2017年のシーズンベストが10秒07以下の10選手の中で、2017年に複数回の10秒0台をマークしたのは、多田選手が唯一である。さらにシーズンベスト10秒06の6人を含めても2017年に複数回の10秒0台で走ったのは多田選手のみだ。

10秒08がベストのケンブリッジ選手も個人の10番目の記録は10秒18で、自己記録から0秒10以内で10回も走り、10傑平均記録(10秒135)ではサニブラウン選手(10秒170)と多田選手(10秒169)を上回る。「向風0.9m」の条件下での10秒08は大いに光る。

さらには、200mを得意とする飯塚選手、あるいは2016年に10秒09で走り、これまた200mを得意とする高瀬選手を含め、10秒09以内の現役選手が7人もいるのは何とも頼もしい限りである。

なお、2017年のベストが10秒0台の33選手のうち、9秒台の自己記録を持っているのは、13人(9.72~9.99)で39.4%にあたる。以上のようなことからしても、10秒00で「9秒台に最も近い位置」にいる山縣選手を筆頭に、10秒0台をひとつのシーズンに複数回マークしたサニブラウン選手と多田選手の他、10秒0台の自己ベストを持つケンブリッジ選手、飯塚選手、高瀬選手は、いつどこで誰が「9秒台」で走っても不思議ではない状況にあるといえよう。

★最終回<第8回>
・五輪&世界選手権の「ファイナリスト」への条件
に続く...


※記録情報は2017年12月31日判明分
文:野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)

写真提供:フォート・キシモト


記録と数字からみた「9秒98」や「9秒台」についての“超マニアックなお話”
▼第1回「世界記録と日本記録の進歩は?」 
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11324/
▼第2回「桐生選手のトップスピードは時速42.0㎞」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11327/
▼第3回「桐生選手のピッチ、ストライドの年別の変化/日本歴代上位選手とのピッチ・ストライドの比較」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11337/
▼第4回「「初9秒台」の以前とその後」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11338/
▼第5回「世界の9秒台選手の特徴」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11367/
▼第6回「「9秒台」の時の「風速」」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11366/
▼第7回「桐生選手に続く日本人選手の「9秒台」の可能性」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11368/
▼第8回「五輪&世界選手権の「ファイナリスト」への条件」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11369/
▼2018年4月~「日本グランプリシリーズ」が始まります!
http://www.jaaf.or.jp/gp-series/

▼5月20日(日)「セイコーゴールデングランプリ陸上2018大阪」開催!
http://goldengrandprix-japan.com

▼6月24日(金)~26日(日)「第102回日本陸上競技選手権大会」開催!
http://www.jaaf.or.jp/jch/102

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