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2016年 5月3日 (火・祝) 

静岡(エコパ)

大会詳細情報


2016年日本グランプリシリーズ第4戦の静岡国際陸上は5月3日、リオデジャネイロ五輪代表選考会を兼ねて、静岡県小笠山総合運動公園エコパスタジアムで開催され、全13種目のグランプリ種目(男子6/女子7)のほか、特別種目として男子パラ100m、女子4×100mR・4×400mRが行われました。

リオデジャネイロオリンピック参加標準記録を突破するパフォーマンスが見られたのは男子200mと男子400mH。男子200mでは飯塚翔太選手(ミズノ)が、サニブラウン・ハキーム選手(城西高校・東京)を終盤で突き放して20秒38(+1.0)で優勝。男子400mHは野澤啓佑選手(ミズノ)が49秒07で圧勝しました。

このほか、女子ハンマー投では、渡邊茜選手(丸和運輸機関)が大会新記録となる66m79を投げて、自身の持っていた日本歴代3位記録を更新。男子砲丸投では、17m76で優勝した宮内育大選手(桜門陸友会)と17m64で2位の畑瀬聡選手(群馬綜合ガードシステム)が大会新記録を、3位の武田歴次(日本大学)が17m17の大会タイ記録をマークしました。

特別種目として実施された女子4×100mRと女子4×400mRは、45秒11と3分34秒58にとどまり、リオデジャネイロオリンピック出場権獲得の可能性は、5月8日のゴールデングランプリ川崎大会以降に持ち越しに。また、同じく特別種目として行われた男子パラ100mには、5月1日に鳥取で開催された日本パラ陸上競技選手権男子走幅跳(T42クラス:片大腿切断など)で6m56の世界新記録を樹立して優勝した山本篤選手(スズキ浜松AC)がT42クラスの100mに出場し、2着に2秒以上の差をつける12秒94(+0.6)で圧勝。また、T44・47クラス100m(+1.6)では、T44クラス(下腿切断など)の日本記録保持者(11秒85)である佐藤圭太選手(TOYOTA)が11秒82の自己新でフィニッシュ(4着)。自身の日本記録を塗り替えるともに、アジア新記録を樹立しました。佐藤選手は、5月8日に開催されるセイコーゴールデングランプリ川崎大会にも出場の予定です。

文/児玉育美(JAAFメディアチーム)

おしらせ

  • レースレポートを掲載しました
  • リザルト(決勝一覧)を掲載しました
  • 概要を掲載しました

レースレポート

リオデジャネイロオリンピック代表選手選考会を兼ねた第32回静岡国際陸上競技大会が5月3日に静岡スタジアムで開催されました。

■注目の男子200mは、飯塚選手がサニブラウン選手を抑え優勝

男子200mは、昨年の段階で藤光謙司選手(ゼンリン、20秒13)と高瀬慧選手(富士通、20秒14)がすでに日本陸連の定める派遣設定記録(20秒28)を突破しており、オリンピックに出場に向けては“激戦種目”。静岡国際には、昨年、両選手に続くタイムをマークしているサニブラウン・ハキーム選手(城西高校・東京、20秒34)と飯塚翔太選手(ミズノ、20秒42)が出場しました。

予選は、1組目のサニブラウン選手が20秒74(-0.5)、2組目の飯塚選手が20秒70(-1.0)と、ともに向かい風のなか余力を残す走りで1着通過。最終種目として行われた決勝では、スタートしてすぐにこの2人がリードを奪い、競り合いながらコーナーを抜けていく展開となりましたが、飯塚選手が終盤でサニブラウン選手を突き放し、20秒38(+1.0)でフィニッシュ。サニブラウン選手が20秒54で続きました。

昨年は、日本選手権200m決勝で肉離れするなど、ケガの影響で不本意なシーズンと過ごした飯塚選手ですが、この冬はしっかりトレーニングができ、4月初旬にアメリカでシーズンイン。2戦目となった4月9日のレースでは20秒49(+1.1)をマークし、すでに五輪標準記録を突破。今回は、派遣設定記録(20秒28)を狙うべく臨んだ国内初戦でした。

レース後、飯塚選手は「派遣(設定記録20秒28)には届かなかったが、優勝できたのと、ずっと課題にしていた前半の流れ…足を回しすぎず、後半につながる走り…ができたという点で内容がよかったので満足。ハキームくんといいレースができて楽しかった。こんなに気持ちよく走り切れたのは久しぶり」と声を弾ませました。目指していた派遣設定記録の突破はなりませんでしたが、「日本選手権に向けて時間があるので、このくらい(のタイム)からだんだん上げていけばいいのかなと思っている」とコメント。「日本選手権では優勝して、その時点で内定をもらえるようにしたい。今年は、ベスト更新を目指して頑張る」と頼もしく言い切りました。

昨年、世界ユース選手権100m・200mで2冠を達成し、“ライジング・スター”として世界中から注目を集めたサニブラウン選手は、このレースがシーズン初戦。「予選はとりあえず通過しようという感じ。決勝は、予選の走りを踏まえて、前半をしっかり行けるようにしようと思って」レースに臨んだといいます。前半はイメージ通りのレースができていたようですが、後半で飯塚選手のスピードに置いていかれてしまい、「後半は見事にタレてしまった」と振り返りました。しかし、「まだまだ行ける気がしている」と不安は全くない様子で、「今回が初戦なので、これから試合をいくつか重ねていくなかで、後半の課題とかを日本選手権までに修正できればいいと思っている」と話しました。今季の目標については、「派遣(設定記録)は切っておきたいな、というのはある」と、さらりとコメント。それが実現すれば、2001年以降更新されていない日本ジュニア記録(20秒29、大前祐介)が塗り替えられることになります。

■野澤選手が49秒07の自己新で快勝。再び五輪標準記録を突破

4組タイムレース決勝で行われた男子400mHは、最終目で49秒07をマークした野澤啓佑選手(ミズノ)が優勝を果たしました。野澤選手は、昨年、北京世界選手権出場は逃したものの、9月に行われた全日本実業団で2015年日本リスト1位となる49秒08をマークしている選手。五輪参加標準記録(49秒40)を再び突破するとともに、自己記録も100分の1秒更新しました。

今季から、14歩で行っていた前半のインターバルを、「3台目まで13歩で行き、そこから14歩に切り替え、どこまで押せるかという形のレース」に変更。これまではレースの流れのなかでしっくり来ないという理由から、14歩で走ってしっかりリズムをつくる戦術を選択していましたが、「技術練習をするなかで、14歩では詰まってしまうことが多くなってきたので、それなら台数を決めて13歩で行ったほうがスピードに乗れるだろう」と、チャレンジすることにしたそうです。試合で挑戦したのは4月初旬のオーストラリア選手権決勝に続き2回目。前回、ラストで大きく失速してしまった反省から、「終盤、14歩で押していけないとわかったところで、(インターバルを)刻む意識で10台目に合わせるように走った。それよって最後までうまく流れていくことができた」と振り返りました。

昨年マークした自己記録からわずか100分の1秒の更新ではあったものの、「前半のスピード感が全然違った」と言い、「14歩のときはずっと詰まる形だったので、今のほうがリラックスして水濠あたりまでは行けている」と好感触を得た様子。「今日のレースでは8割方うまく流れている。あとはラスト120mの8~10台目。そこに関してはまだ5~6割の完成度」と課題を挙げ、「日本選手権までに、レース展開を定着させたい。それができれば記録はついてくると思う」と話しました。また、リオデジャネイロ五輪に向けては、「僕自身、今年25歳になるので、チャンスといえば今回が一番大きいのかなと思う。昔の(日本の)ヨンパーレベルから比べると、まだ48秒台の選手がいない。そのレベルに達して初めて世界が見えてくるのかなと思っているので、早い段階でそこを狙っていきたい」と意欲を語りました。

女子ハンマー投で渡邊選手が自身の日本歴代3位記録を更新

女子ハンマー投は、渡邊茜選手(丸和運輸機関)が5回目に大会新記録となる66m79を投げて優勝。今季すでに4月初旬にオースストラリアで66m24をマークし、日本歴代3位でもあった自己記録を更新していましたが、今大会で再びそれを塗り替える結果となりました。

競技後の感想を求められた渡邊選手は、「自己新よりも日本記録(67m77、室伏由佳、2004年)を狙っていたので、どちらかというと悔しい気持ちのほうが強い」とコメントしました。この大会では、70mライン近くを狙っていたそうで、「国内初戦ということもあり、気持ちがたかぶって前半は力んでしまった」と苦笑い。
「一番手応えがあった」と振り返ったのが6回目の試技で、「ベスト8に入ってからいい流れとなり、(5回目に)68m後半が出たので、もう1回ここから上げていくぞという気持ちで」臨み、良い感覚でターンもできていたそうですが、リリースのところでハンマーがわずかに早く手から離れてしまったとのこと。「あそこで最後まで振り切れていたら…」と悔しがりました。

冬場に重点的なウエイトトレーニングや食事面の改善を行った結果、全体的にパワーアップが図れたといい、その成果は、特に「安定感がついた」というところに表れているといいます。今季の目標は「まずは日本新記録を出すこと、日本選手権で勝つこと」。この大会で66m台を安定して投げられる感触は得られた様子。目標達成に向けての課題として、修正が必要だった前半の試技内容を挙げ、「前半からもっと行ければ70m台は行けると思う」と話しました。

女子両リレーは、45秒11、3分34秒58にとどまる

オリンピックの各国リレー出場枠は全部で16。昨年のワールドリレーズ入賞の8カ国がすでに出場を決めているため、日本の女子4×100mR、4×400mRは、残り8枠となった出場権を獲得するために、IAAFランキング上位8カ国に食い込む必要があります。ランキングの対象となるのは、2カ国以上が出場した競技会でマークした記録で、しかも上位2つの合計タイム。このため、静岡国際とゴールデングランプリ川崎の2大会に海外チームを招待し、特別種目としてトライアルを行うことになりました。

その1戦目となった静岡国際ですが、3分30秒前後の記録が求められるなか、青山聖佳選手(大阪成蹊大学)、市川華菜選手(ミズノ)、千葉麻美選手(東邦銀行)、吉良愛美選手(アットホーム)のオーダーで臨んだ女子4×400mRは3分34秒58にとどまり、五輪切符獲得に向けた前進はならず。また、女子4×100mRは、2走を務める予定だった福島千里選手(北海道ハイテクAC)がウォーミングアップで左ハムストリングスの違和感を訴えたため、大事をとって、この日の出場を回避。北風沙織選手(北海道ハイテクAC)、土井杏南選手(大東文化大学)、世古和選手(CRANE)、エドバー・イヨバ選手(日本大学)のオーダーで臨みましたが、45秒11にとどまりました。

福島選手が欠場した女子200mを制したのは、高校生の齋藤愛美選手(倉敷中央高校・岡山)。齋藤選手は、全3組でのタイムレースとなった決勝の2組目に出場し、23秒96でフィニッシュ。海外招待選手を含めた記録上位者が走った3組目が向かい風1.5mだったこともあり、3組目トップのバーバラ・ピエール選手(アメリカ、23秒99)を抑え、見事優勝を果たしました。齋藤選手は、4月29日に行われた織田記念女子100mでも、11秒88(-1.8)をマークして3位に食い込み、2位の世古選手に続き、日本人2位の成績を収めたばかり。優勝が決まった直後は、喜びよりも驚きが先に立ったようで、花束とトロフィーを受け取ったあとも、「信じられない」を連発していました。

「今日は順位やタイムより、前半をちゃんと加速するというレース内容を重視していた」という齋藤選手は、「スタートでほかの選手との差を開いたことで、自分に余裕が持てたので、後半も力むことなく走れた」と振り返り、「スタートで飛ばすことによって、後半がすごく気持ちよかった。久しぶりに楽しいなという感触を味わった」と笑顔を見せました。

文/児玉育美(JAAFメディアチーム)