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2016年 5月8日 (日) 

神奈川(等々力)

大会詳細情報

お知らせ

  • 大会レポートを掲載しました。
  • リザルトを掲載しました。
  • 大会の詳細情報はオフィシャルサイトをご覧ください→こちら

大会レポート

 国際陸上競技連盟(IAAF)ワールドチャレンジ第3戦のセイコーゴールデングランプリ陸上2016川崎を5月8日、リオデジャネイロ五輪代表選考会を兼ねて、神奈川県川崎市の等々力競技場において開催しました。

 朝から快晴となったこの日は、競技開始時刻(正午)の気象状況が気温27℃、湿度43%、東北東の風1.7mと、やや風はあったものの、この時期の競技会としては絶好といってよいコンディション。男子400mHの野澤啓祐選手(ミズノ)と男子やり投の新井涼平選手(スズキ浜松AC)が日本陸連の定める五輪派遣設定記録を突破し、男子400mHの松下祐樹選手(チームミズノ)、女子400mHの久保倉里美選手(新潟アルビレックスRC)、女子やり投の海老原有希選手(スズキ浜松AC)が五輪標準記録を上回るなど、ハイレベルのパフォーマンスが続出したほか、女子400mHの石塚晴子選手(東大阪大学)、女子やり投の北口榛花選手(日本大学)がジュニア日本新記録をマーク、また、男子棒高跳では江島雅紀選手(荏田高校・神奈川)が高校新記録を樹立しました。

 ここでは、日本選手の活躍を中心に、大会の模様をご紹介します。


注目の男子100m、日本人トップ争いは山縣選手が制す

 昨シーズン100mで9秒74、200mでは19秒57とともに自己新記録をマークし、100mの世界リストでは世界記録保持者のウサイン・ボルト選手(ジャマイカ)を抑え1位となったジャスティン・ガトリン選手(アメリカ)に、昨年3月に追い風参考記録(3.3m)ながら9秒87をマークしている桐生祥秀選手(東洋大学)、4月29日の織田記念100mを向かい風2.5mのなか10秒27で優勝して復活を印象づけた山縣亮太選手(セイコーホールディングス)、さらには昨年の世界ユース選手権100m・200m2冠を達成したサニブラウン・ハキーム選手(城西大城西高校・東京)ら日本勢がどう挑むかが注目された男子100mは、向かい風0.6mのなか行われ、ガトリン選手が10秒02で快勝、力の差を見せつけました。

2位争いを制したのは山縣選手で、10秒21でフィニッシュ。バルバドスのラモン・ギテンズ選手が10秒26で3位となり、桐生選手は0.01秒差の10秒27で4位、サニブラウン選手が10秒34で5位という結果になりました。

日本人トップとなった山縣選手は、桐生選手に先着したことに対して、「これで日本選手権に向けて自信を持って臨める」とコメント。「1本しかない(一発決勝)ということで、独特の緊張感のなかで迎えたレースだった。タイムに関しては不満が残る点が多いが、明確な課題や修正点が見えたので、これを次につなげていきたい」とレースを振り返りました。また、スタート直後にバランスを崩してしまったこととラストで力みが出てしまったことを反省点として挙げ、「力むことなく1試合1試合こなして、まずはオリンピック標準を切ることを目標にし、心にゆとりを持った状態で自己ベストを狙っていきたい」と今後に目を向けました。

4位に終わった桐生選手は、レース後、ミックスゾーンで最初に出た“率直な感想を”との問いに、「次、勝ちます」と答えました。また、悪かった点として「スタートの音が自分の思っていた感覚より早く聞こえて、焦ってしまった」とスタートの出遅れを挙げ、「最初の30mくらいがダメだと後半もダメになる。その悪い癖が出たかなという感じ」と振り返りました。そして、「まだ2戦目、冬季練習をしっかりして強くなっていると思うし、最終的に夏勝てばいいので、今日のことを前向きにとらえて次の大会で頑張る」とコメントしました。

「観衆も多くて非常に楽しいレースだった」と振り返ったサニブラウン選手は、自身の走りについて「中間疾走はわりといいペースでギアを上げられた。あとはスタートのところでしっかり“ドン”と出られれば、よりいい自分のフォームが出せるのかなと思った」と話すとともに、「後半の伸びはけっこう通用するんだなと感じた。これを200mに持っていければ…」と200mの記録向上に向けても、よい手応えが得られた様子でした。

男子400mHで野澤選手が今季世界2位の48秒67!

 男子400mHでは、5月3日の静岡国際を49秒07の自己新で優勝した野澤啓佑選手(ミズノ)が初の48秒台突入となる48秒67でフィニッシュ。日本陸連が定めた派遣設定記録(48秒74)も突破して優勝を果たしました。48秒67は今季世界リスト2位で、昨年の北京世界選手権では6位に相当する好記録。また、この記録によって、野澤選手は日本歴代で9位に浮上することとなりました。

 静岡国際のレポートでもお伝えしように、今季から第3ハードルまでのインターバルを13歩に変更した野澤選手は、前半から飛ばしていくレース展開が可能となったことで、よりスピード感の高いレースが展開できるようになっていました。静岡国際のレース後、「日本選手権までに、レース展開を定着させたい」と話していましたが、ゴールデングランプリでは自己記録を大幅に更新する好走を見せ、新たなレースパターンが着実に身につきつつある様子を印象づけました。

レース後、「派遣設定記録を破るのが目標で挑んできたので嬉しい。調子も悪くはなかったので、しっかりレースをまとめることができれば、クリアできるかなというイメージはできていた」と振り返った野澤選手ですが、一方で、「次の試合というのが勝負になると思う。そこで記録がどれだけ出せるか。ここで満足せずに頑張っていきたい」と気を緩める様子はなく、次戦として予定している東日本実業団選手権を見据えていました。また、「日本選手権でしっかり優勝して、その場に代表になれるよう頑張りたい。まだ(出場は)決まっていないけれど、(リオ五輪に出られたら)しっかり予選を通って、準決勝で勝負できるようにしたい」とコメント。48秒台への突入を果たしたことで、その可能性は一段と高まってきたといえそうです。

 また、このレースでは、昨年の北京世界選手権で準決勝進出を果たした松下祐樹選手(チームミズノ)が3位に食い込み、自己記録を0秒04秒更新する49秒10をマークしています。


男子やり投で新井選手が84m41をマーク

 男子やり投では、昨年84m66をマークして、すでに派遣設定記録(84m32)を突破している新井涼平選手(スズキ浜松AC)が、1回目から再び派遣設定記録を上回る84m41を投げ、2014年にマークした自己記録86m83(日本歴代2位)、さらには日本記録(87m60、溝口和洋、1989年)更新を期待させる滑り出しを見せました。しかし、2回目は82m12、3回目が75m80、4回目は80mラインを越えたものの足を踏み出してファウル、5回目80m40、6回目が81m91と記録を伸ばすことができず、結局1回目の試技が決勝記録に。勝負は1回目に85m07を投げてトップに立っていたヤクブ・バドレイフ選手(チェコ)が、5回目で今季世界最高となる86m76を投げ、さらに記録を伸ばして優勝を果たしました。

 4月29日の織田記念は78m07の6位にとどまり、この大会に「(調子を)合わせたい」と話していた新井選手。84m41は、現時点で優勝したバドレイフ選手に次いで今季世界リスト2位となるものでしたが、「記録に関しては、今日やりたい投げの一番低い投げだったというのが自分の印象。コンディションもよかったので、とてももったいない試合をしてしまった」と満足できていない様子で、「(1回目の試技のあと)修正を加えて、さらにスピードを加えていければ、もっと高い記録の投げもできたと思うが、そこで気負ってしまった。まだスピードに技術が間に合いきっていないという印象」と振り返りました。やりに力を加える時間が長くなっていると話し、「さらにスピードを上げて、高いスピードのなかで、それ(やりに力を加えること)を一瞬にまとめられるようになれば」と課題を挙げました。

 リオデジャネイロ五輪に向けては、「間違いなく自分の100%以上を投げないといけない試合になってくる。そこに合わせるには、早い段階からいい記録を投げていないと…」と厳しい戦いになることを想定している様子。「日本選手権で90mを目標にしっかりと投げて、それを超えた上で、自信を持ってリオに臨むのがベストだと思っている。そうなるよう精進していきたい」と決意を新たにしていました。

 男子やり投には村上幸史選手(スズキ浜松AC)とディーン元気選手(ミズノ)も出場しましたが、村上選手が79m86で6位、ディーン選手は77m67で8位という結果でした。


北口・石塚選手がジュニア新、江島選手が高校新を樹立

 この大会で活躍が目立ったのが2020年東京オリンピックに向けての成長が期待されるジュニアアスリートたち。ジュニア日本新記録2つ、高校新記録が1つ誕生しています。

 男子棒高跳では、大会直前にユース日本記録保持者(5m36)で、日本陸連ダイヤモンドアスリートでもある江島雅紀選手(荏田高校・神奈川)の追加出場が決定。この日、5m02から競技を開始した江島選手は、これを1回に、5m22を1回目に、5m32を2回目に越え、高校新記録となる5m42(従来の高校記録は5m41、笹瀬弘樹、2007年)は2回目の跳躍で大きく身体を浮かせて軽々とクリア。続いて挑戦した5m52はジュニア日本記録(5m50、澤野大地、1999年)を上回るものでしたが、さすがにこのクリアはなりませんでしたが、5位で競技を終了しました。

 昨年は目標にしていた世界ユース選手権(6位)とインターハイ(11位)が不本意な結果に終わる悔しさを味わってきたこともあり、「やっとダイヤモンドアスリートと自分でいえるような立場になれたかなと思う。本当に嬉しい」と笑顔を見せた江島選手。「今年に入って5回目くらい(の試合)なので、感覚はしっかり持てていた」と振り返り、ジュニア日本記録への挑戦となった5m52の試技についても、「2本目までは高さを感じたが、3本目はしっかりと振り上げたら浮きがあったので、今年中には(5m)60までは跳べるかなという感覚を得られた」と声を弾ませました。今年の目標はインターハイとU20世界選手権。U20世界選手権では、「世界ユースで取れなかった金メダルを取りに行きたい」と意欲を見せました。

 女子やり投では、昨年の世界ユース選手権金メダリストの北口榛花選手(日本大学)が3回目に61m38のビッグスロー。学生日本新記録、ジュニア日本新記録となる日本歴代2位の好記録をマークして日本人4人目の60mスロワーに仲間入りするとともに、五輪標準記録(62m00)に62㎝まで迫りました。

「自分がイメージしているより“投げきった”感覚がなかったので、やりの軌道を見て、60(m)飛んでいるのにびっくりした」と振り返った北口選手。一方で、「60mを投げられるとずっと言われ続けて、今日やっと61m38を投げられたことはすごく嬉しいが、ちょっと喜びすぎたなというのがある」ということを、五輪参加標準記録(62m00)に届かなかった反省点として挙げ、「次の日本選手権に向けて、しっかり調整して、62mを飛ばせるようにしたい」と抱負を語りました。

 女子400mHでは、昨年のインターハイで400m、400mH、4×400mRで3冠を達成している石塚晴子選手(東大阪大学)が、ジュニア選手としては初の56秒台となる56秒75をマークして3位に食い込み、自身が昨年インターハイで樹立したジュニア日本記録(57秒09)を塗り替えました。

レース後、「走る前に北口榛花ちゃんが(やり投で)ジュニア記録を出していて、自分も頑張りたいと思っていたが、まさかこんなに(記録が)出ると思っていなかったので、びっくりしている」と感想を述べた石塚選手。今季は、「世界ジュニア(U20世界選手権)でメダルを取ることが目標」としながらも、リオ五輪参加標準記録(56秒20)に対しては「目指すべき記録として、一つ(意識を)置いている部分ではある」と話し、「今回も、歩数的にも完成されたレースではないので、記録はまだ向上していくと思う」と突破の可能性を期待させる言葉を聞かせてくれました。


海老原選手と久保倉選手が五輪標準記録を突破

 ジュニア日本新記録が誕生した女子やり投と女子400mHですが、その上位に収まったのはともに日本記録保持者である海老原有希選手(スズキ浜松AC)と久保倉里美選手(新潟アルビレックスRC)。五輪参加標準記録を突破するパフォーマンスを披露しました。

前回のこの大会で日本記録(63m80)を樹立した女子やり投の海老原選手は、1回目に五輪参加標準記録の62m00を上回る62m13をマークして首位でスタート。前半の試技内容に不満の残った織田記念での課題をクリアするような入りを見せました。しかし、その後、思うように記録を伸ばすことができず、最終投てきで62m59を投げたカナダのエリザベス・グリードル選手に逆転され、惜しくも2位で競技を終了。

「ラストクロスで右足を着いたときの姿勢をちゃんと整えておくという1点だけを練習投てきから意識して」臨んだという海老原選手は、1回目にイメージ通りの投てきができたがゆえに、「2回目以降で“ちょっとスピードを上げよう”とか“もうちょっと姿勢を…”とか考えて、修正を加えていくうちに、少しずつずれてしまった」と振り返り、「1回目を投げたときは、勝てるかなと思ったのですが…」と悔しさをにじませました。

 女子400mHは3大会連続の五輪出場を目指す久保倉選手が、55秒23で優勝したローレン・ウェルズ選手(オーストラリア)に差はつけられたものの56秒14をマークして2着でフィニッシュ。56秒20の五輪参加標準記録を突破しました。

 昨年はケガに苦しみ、9連勝がかかった日本選手権も敗れるなど、思い通りに行かないことが多かった1年となった久保倉選手。この冬は、「オリンピックを目標に、一からやり直してきた」と振り返り、「参加標準記録を切ることが今回の最低限の目標だった。静岡(国際)からきちんと修正できたところが一番の収穫」と安堵した様子を見せながらも、「ここからまだまだベースを上げていかなければならないので、あともうひと踏ん張りしたい」と、まだまだ改善すべき余地があることを示しました。


今年もパラリンピック種目を実施

この大会では、昨年からパラリンピック種目のレースが実施されるようになりましたが、今回はT44クラス(片下腿切断または機能全廃)とT47クラス(片前腕切断)の選手が出場しての男子100mが行われました。レースは、前回(T44/T44で実施)優勝者のジャレッド・ウォレス選手(T44、アメリカ)が唯一10秒台となる10秒97(-0.8)の大会新記録で1着。T47クラスの多川知希選手(AC・KITA)が11秒34をマークして2着で続きました。また、静岡国際で11秒84のアジア新記録を樹立していた佐藤圭太選手(TOYOTA)は、11秒94をマークして4着でフィニッシュしました。

また、女子走幅跳には、T44クラスの中西麻耶選手(大分県身体障害者陸上競技協会)と高桑早生選手(エイベックスHD)がオープン出場。この種目で5月に5m51のアジア新記録を樹立した中西選手は5m22(+2.8)をマーク、ロンドンパラリンピック100m・200mでともに7位入賞を果たしている高桑選手は4m85(-0.2)をマークしました。


男子400mはウォルシュ選手が優勝、男子200mの日本人トップは飯塚選手

 男子400mでは、静岡国際で優勝して大会直前に追加出場が決まったウォルシュ・ジュリアン選手(東洋大学)が、1レーンに入ったにもかかわらず、45秒68の自己新記録でフィニッシュ。2004年五輪、2005・2007年世界選手権金メダルのジェレミー・ウォリナー選手(アメリカ)、2009年世界選手権銅メダリストのレニ・クォー選手(トリニダード・トバゴ)ら実績のある海外選手を抑えて優勝し、五輪参加標準記録45秒40へと迫る勢いを見せました。

 向かい風0.6mの条件で行われた男子200mはアーロン・ブラウン選手(カナダ)が20秒32で優勝しました。前半からスムーズな走りを見せた飯塚翔太選手(ミズノ)が2位でフィニッシュ。記録は20秒40で、静岡国際(20秒38)に続く安定感を見せましたが、派遣設定記録(20秒28)の突破はなりませんでした。また、すでに派遣設定記録を突破(20秒13)している藤光健司選手(ゼンリン)はこの大会が今季初戦。20秒90で6位でした。


 女子走幅跳には、昨年日本歴代2位の6m84をマークして、派遣設定記録(6m84)を突破している甲斐好美選手(VOLVER)が出場しましたが3回目にマークした6m33(+0.5)が最高記録で5位。この種目を6m61(+1.7)で制したティアナ・バルトレッタ選手(アメリカ)は、そのあと行われた女子100mにも出場し、向かい風1.7mのなか11秒23で2冠を果たしました。

また、オリンピック出場枠獲得を目指し、静岡国際に続いて、この大会でも女子4×100mRと女子4×400mRが行われました。

4×400mRは、青山聖佳選手(大阪成蹊大学)、市川華菜選手(ミズノ)、樫山楓選手(至学館大学)、吉良愛美選手(アットホーム)のオーダーで臨み3分33秒72で優勝。

4×100mRは、中国(袁琦琦、韋永麗、葛曼棋、梁小静)が42秒83の大会新記録で優勝。齋藤愛美選手(倉敷中央高校・岡山)、土井杏南選手(大東文化大学)、世古和選手(CRANE)、エドバー・イヨバ選手(日本大学)のオーダーで臨んだ日本Aが43秒95で2位となりました。なお、女子100mと4×100mRに出場予定だった福島千里選手(北海道ハイテクAC)は左大腿部の違和感のため大事をとって欠場しました。

(文/児玉育美(JAAFメディアチーム)

オンエア情報

テレビ:TBS系地上波 5月8日(日)15時00分~16時54分(予定)/BS波 5月8日(日)13時00分~14時54分(予定)
ラジオ:かわさきFM 79.1MHz 5月8日(日)14時00分~17時00分(予定)