3月25日、日本陸連は「ジャパンマラソンチャンピオンシップ(JMC)シリーズ」の「シリーズⅢアワード」を東京都内で開催。上位を占めた男女8選手を表彰するとともに、会場に招待したファンとの交流会を行いました。
JMCシリーズは、日本陸連が選手の強化と日本のマラソン活性化、さらには公認マラソン大会の体系化を目指して、2021年に創設したもの。1つの年度を「期」、2期分を「シリーズ」として、2年間のシリーズ総合成績をポイントで競います。第2期(2022年4月~2023年3月)および第3期(2023年4月~2024年3月)からなる「シリーズⅢ」は、3月10日に行われた名古屋ウィメンズ2024をもって全加盟大会が終了し、男女それぞれに総合成績が確定。この日、開催されたシリーズⅢアワードで、ポイントランキングによる上位8選手が表彰されました。
シリーズⅢアワードは、「表彰式」「ファン交流会」の二部構成で実施されました。最初に主催者を代表して、日本陸連の尾縣貢会長が登壇。「なんとかマラソンレースを通して選手を強化したい、全国のマラソンレースを活性化したいという思いから、JMCシリーズが生まれた。我々の考え方、向き合い方に賛同いただき、日本のマラソン全体の競技力向上、活性化に協力をいただいたJMC加盟レースの皆さま、本当にありがとうございます」と挨拶を始めた尾縣会長は、「マラソンレースは、運営の裏で、本当にたくさんの方々のご理解とご協力を得て開催している」と、まず、マラソンを取り巻くすべての人々に感謝の意を伝えました。そして、登壇を控える受賞選手に向けて、「1人1人の鮮烈のシーンがよみがえってくる。皆さんは、レースのなかで喜びだけではなく、悔いや苦しみや葛藤など、多くの葛藤が生まれたと思うが、今日は、私たちは、そのすべての頑張りに敬意を表したい」と呼びかけ、「今日はとにかく、自分で自分を褒めていただきたい」と述べたのちに、ユーモアたっぷりに「これ、どこかで聞いたフレーズです。有森(裕子)さん」と、有森副会長が1996年アトランタ五輪女子マラソンで銅メダルを獲得した際に残した名コメントを用いて選手を労ったうえで、「では、皆さん、ランナーの皆さんを称えつつ、ぜひ、このアワードを楽しんでいただきたい」と締めくくりました。
男女1~8位を占めた選手への表彰は、まず女子から行われました。プレゼンターを務めた有森副会長から、全選手に目録が授与されたほか、シリーズⅢチャンピオンとなった前田穂南選手(天満屋)にトロフィーが贈られたのちに、各選手が受賞の挨拶を行いました。
男子も同様に行われ、男子のプレゼンターを務めた瀬古利彦ロードランニングコミッションリーダーが目録を授与。シリーズⅢを制した小山直城選手(Honda)にチャンピオントロフィーが贈呈されたのちに、それぞれが挨拶を行いました(男女上位3選手のコメントは、別記をご参照ください)。
【JMCシリーズⅢ 上位8選手】
<女子>
1位 前田穂南(天満屋) 2606ポイント
2位 安藤友香(ワコール) 2598ポイント
3位 鈴木亜由子(JP日本郵政G) 2581ポイント
4位 新谷仁美(積水化学)* 2569ポイント
5位 松田瑞生(ダイハツ) 2567ポイント
6位 加世田梨花(ダイハツ) 2520ポイント
7位 細田あい(エディオン) 2520ポイント
8位 佐藤早也伽(積水化学)* 2471ポイント
*都合により欠席
<男子>
1位 小山直城(Honda) 2766ポイント
2位 細谷恭平(黒崎播磨) 2761ポイント
3位 其田健也(JR東日本) 2705ポイント
4位 西山雄介(トヨタ自動車) 2629ポイント
5位 大迫 傑(Nike)* 2623ポイント
6位 山下一貴(三菱重工) 2620ポイント
7位 赤﨑 暁(九電工) 2617ポイント
8位 横田俊吾(JR東日本) 2615ポイント
*都合により欠席
次に、シ リーズⅢから新設されることになった新人賞の表彰が行われました。新人賞には、今年2月に行われた大阪マラソンを、初マラソン日本最高記録となる2時間06分18秒で制し、日本学生新記録を樹立した平林清澄選手(國學院大學)が選出。平林選手は、田﨑博道専務理事よりトロフィーを受け取ったのちに、受賞した心境をコメントしました(平林選手のコメントは、別記をご参照ください)。
続いて、トップアスリートから市民ランナーまで、シリーズⅢおよび第3期(2023年度)のJMCシリーズに出場した多くのランナーを対象に、いくつかの切り口から選手の活躍を振り返る特別発表の時間に。「シリーズⅢ最多出場数」「第3期最速タイム(男女トップ3)」「第3期初マラソン最速タイム(男女トップ3」「第3期学生マラソン最速タイム(男女トップ3)」の4部門で、素晴らしい成績を残した選手が紹介され、その活躍が称えられました。
>>特別発表の詳細はこちら
最後に、開幕を直前に控える第4期についての紹介も行われました。2024年4月から2025年3月に該当する第4期は、シリーズⅣとシリーズⅤをまたぐ期として位置づけられ、日本で開催される東京世界選手権(2025年)、名古屋アジア大会(2026年)の代表選考にもつながる重要な1年となります。加盟大会には、第4期最初の大会となる「ふくい桜マラソン」(3月31日開催)をはじめとして、現段階で、「長野マラソン」「北海道マラソン」がすでに名前を連ねており、今後、増えていく予定であることがアナウンスされました。
第1部終了後にはマラソン日本記録の表彰が行われました。今年1月の大阪国際女子マラソンを、2時間18分59秒の日本新記録を樹立して優勝し、2004年アテネオリンピック金メダリストの野口みずき選手が2005年から保持していた日本記録を、実に19年ぶりに塗り替えた前田選手に、田﨑専務理事から日本記録賞が贈られました。
第2部では、ファンとの交流会です。応募に当選したマラソンファン30名を、シーズンⅢアワードに招待。ファンの皆さんは、最前列で表彰式の模様を見守ったあと、交流会に参加した安藤・鈴木(亜)・松田の女子3選手と細谷・其田・西山・平林(平林選手は途中から参加)の男子4選手、そして瀬古リーダーとの交流を楽しみました。
今回、司会進行役にタレントとして活躍する「現状打破応援隊長」M高史さんが起用。いつものユニフォーム姿とは異なるスーツ姿でばっちり決めたM高史さんは、軽妙な語り口で参加者をリラックスさせるとともに、ときどき飛んでくる瀬古リーダーの“暴投”もうまくキャッチしながら絶妙なやりとりでファシリテートしていきました。
参加した小学生が中心となって行われた質疑応答では、「走るうえで大切にしていることは?」「スタートのピストルの音が苦手。どうやったら克服できる?」「マラソンを始めようとしたきっかけは?」「レースが始まる前に、どうやって緊張をほぐしたりリラックスしたりしているか?」「練習前のルーティンはある?」といった質いかけが。選手たちからは、トップアスリートならではの考え方や心構えが示されたり、ときには日常の楽しみなどレースとは違う側面を見せたりと、それぞれの個性が感じられる回答が続き、“強くなるためのヒント”が随所に感じられる時間となりました。
【JMCシリーズ「シリーズⅢ」男女上位選手および新人賞コメント】
<男子>
1位 小山直城(Honda)
このたび、このような賞をいただいて、とても嬉しく思っています。今シーズンでは、安定して2本のレースを走って、この結果につながりました。この結果は、今後の競技人生の自信になります。このシリーズ(Ⅲ)では、4本の対象レースに出場しました。暑いなかの北海道マラソン(第2期:2022年8月)、勝負レースのMGC(マラソングランドチャンピオンシップ、第3期:2023年10月)、そして東京マラソン(第2期:2023年3月)、大阪マラソン(第3期:2024年2月)では、自己ベストを狙う大会として出場しました。この経験は、今後のレースの糧になります。引き続き、皆さんのご声援をよろしくお願いします。本日はありがとうございました。
2位 細谷恭平(黒崎播磨)
このたびは、このような賞をいただき、ありがとうございます。昨シーズン(3位)に続き、またこの場に立つことができて、とても嬉しく思います。今後もマラソンランナーとして、さらに成長できるように頑張っていきたいと思います。
3位 其田健也(JR東日本)
昨年(1位)に引き続き、トップ3に入ることができたので、良かったと思います。安定感は出てきたのですが、まだ突き抜けた結果というのが残せていませんので、来年度以降しっかり勝負できる選手になりたいと思います。引き続き、応援よろしくお願いします。
<女子>
1位 前田穂南(天満屋)
初めてこのような賞をいただき、とても嬉しく思います。また、次の目標に向かってチャレンジしていきたいと思います。本日はありがとうございました。
2位 安藤友香(ワコール)
本日は、このような賞をいただき、とても嬉しく思います。また気持ちを新たに、1日1日を大切に頑張っていきたいと思いますので、今後とも応援のほど、よろしくお願いします。
3位 鈴木亜由子(JP日本郵政G)
このような賞をいただき、大変嬉しく思います。目標が達成できずに悔しい気持ちはありますが、自分の目標を超えるために挑戦した今回の経験を、今後の糧にしたいと思います。本当にありがとうございました。
<新人賞>
平林清澄(國學院大學)
このような受賞させていただいて、とても嬉しく思っています。「このトロフィー、すごく重いな」と感じています。今回、受賞できたのは、たくさんの方の応援のおかげかと思いますし、まだ大学生ですので、チームのみんなのおかげというところもあるのかなと思っています。箱根駅伝を走る学生でも、マラソンは走れるということが、証明できたのではないかなと思っています。まだこれが自分のマラソン人生の始まりだと思いますので、「箱根から世界へ」を体現できるよう、まだまだ精進してまいりたいと思います。本日は本当にありがとうございました。
※各選手のコメントは、JMCシリーズアワードにおける受賞後スピーチをまとめる形で構成しています。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト
【JMCシリーズアワード】ARCHIVE
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