2024.02.16(金)大会

【日本選手権20km競歩】10000字インタビュー:藤澤勇アンバサダーに聞く スペシャル展望 ~パリオリンピックへの切符は、誰の手に!?~



第107回日本陸上競技男女20km競歩が2月18日、今年も兵庫県神戸市の六甲アイランドで開催されます。今回は、8月に行われるパリ2024オリンピックの日本代表選手選考競技会を兼ねての実施です。

日本の競歩は、長年にわたって着実に力をつけ、オリンピックや世界選手権をはじめとする国際大会で、多くのメダル獲得や入賞を果たすまでに成長。今や「日本のお家芸」として世界に誇る存在へと発展してきました。そんななか、パリオリンピックでは競歩の種目設定が変更に。個人種目としての実施が20km競歩のみとなり、もう1種目は国別対抗で行われる男女混合競歩リレーが採用されることになったのです。この影響で今回の日本選手権では、長い種目(35km、50km)を得意としてきた選手も、20kmでの代表権獲得を目指すことに。世界レベルのトップウォーカーたちが神戸に顔を揃え、一段と険しくなった“パリ行きプラチナチケット”を巡る戦いに挑みます。

まさに「世界一熾烈なオリンピックトライアル」、さて、その勝負の行方は――!?
ここでは、昨年に続いて大会アンバサダーを務める元日本代表の藤澤勇さん(ALSOK)にインタビュー。長年にわたって活躍してきた「20kmのスペシャリスト」ならではの鋭い視点と、「競歩ニッポンの宣伝隊長」として奔走する現在の競歩愛に満ちた視点から、日本選手権20km競歩の見どころを教えていただきました。

構成・文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト


“過去イチ水準”の大一番必至!

―――昨年に続いて、藤澤さんに今大会の見どころをご紹介いただきます。藤澤さんは、現役時代に20km競歩で、オリンピック2大会(2012年ロンドン、2016年リオ)、世界選手権3大会(2009年ベルリン、2015年北京、2017年ロンドン)に出場。日本の競歩が「世界に追いつけ、追い越せ」と、どんどん強くなっていった時期に活躍しました。31歳のときに1時間17分52秒(2019年)というすごい自己記録をマークしています。そんな実績や経験を持っている藤澤さんが見て、ずばり、今回の日本選手権、どんなレースになると思いますか?
藤澤:“超熾烈”という言葉に尽きるんじゃないですかね。35kmがなくなって、みんなが、まず20kmの代表を狙ってくることになるので…。

―――まず、その部分の説明をお願いします。
藤澤:はい。今まで、ずっと長く実施されていた「50km競歩」が、前回の東京大会(2021年)を最後として、翌2022年のオレゴン世界選手権から「35km競歩」に変更されました。しかし、その35km競歩も、最終的にパリオリンピックの実施種目から外れ、代わって「男女混合競歩リレー」という国別対抗の団体種目が行われることになったんです。男女各1名の2選手でチームを組み、マラソンと同じ42.195kmを4つの区間に分けて、男子、女子、男子、女子の順でリレーして競うことがわかっています。

―――つまり、「個人種目」は20km競歩のみになってしまい、これまで長い距離を主戦場としていた選手も、戦いの場を20kmに移さなければならなくなったわけですね。
藤澤:はい。その通りです。そして、4月にアンタルヤ(トルコ)で開催される世界競歩チーム選手権の日本代表も、今回の日本選手権で選考されることになりました(https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202402/06_173843.pdf )。日本の混合リレーのオリンピック出場権は、実は、この世界競歩の結果によって何枠確保できるかが決まるんですね。混合リレーの選考基準は、まだワールドアスレティックス(WA,世界陸連)の運用が明示されていないために、詳細を確定できない状況にありますが、現段階で20km競歩の成績から代表が選考されることは、すでに日本陸連の選考要項(https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202309/21_112516.pdf)に示されています。

―――競歩については、日本陸連が独自に派遣設定記録をつくっています。これは、WAが設定する参加標準記録を上回るものです。
藤澤:男子の派遣設定記録は1時間19分30秒で、参加標準記録は1時間20分10秒。女子の派遣設定記録は1時間28分30秒で、参加標準記録は1時間29分20秒です。

―――特に、突破者が多い男子の場合は、これらの記録を出すことは大前提となりますね。そして、選考競技会となっているのは、この日本選手権20km競歩と、3月17日に開催される全日本競歩能美大会です。ここで、選考の優先順や内定の条件を整理しておきましょうか。
藤澤:はい。まず、即時の内定が出るのは、日本選手権で派遣設定記録を突破した最上位者の1名のみとなります。

―――男子はすでに6名が派遣設定記録をクリアしているというのに、日本選手権当日に派遣設定記録をクリアしたうえで最上位、つまり優勝しなければ内定にはならない。厳しいですねえ。
藤澤:そして、もう一つ大事なのが、3位以内に入っておくことです。なぜなら、この内定に続く選手の選考条件は、日本選手権3位以内かつ派遣設定突破、能美競歩3位以内かつ派遣設定突破、日本選手権3位以内かつ参加標準突破、能美競歩3位以内かつ参加標準突破という順で決まっていくからです。これらよりも下位の条件となるワールドランキングにより参加資格を得た場合でも日本選手権の順位が最も優先されますから…。

―――いずれにしても神戸での20kmが、選手たちにとって“パリ行き”を懸けた大一番になるということがよくわかりました。競歩の国内選考競技会は、昨年から「世界一熾烈な代表争い」をキャッチコピーとしていますが、これまでを上回っての“過去イチ水準になる”と言いきってしまってもよいでしょうか?
藤澤:いいと思います。選手たちは、かなり鼻息荒く(笑)、練習をやっていますから。20km勢は、昨年のブダペスト(世界選手権)でうまくいかなかった悔しさもあって、猛烈な練習をしていると聞いています。

―――どうやら、すでに“フジサワファイル”には、いろいろなコンフィデンシャル情報が網羅されているようですね(笑)。どのくらいの状況にあるのか、明かしていただけることはありますか?
藤澤:うーん。どこまで言っていいのかな(笑)。まあほんと、みんなが“世界記録を狙えるんじゃないか”くらいのイメージで取り組めていますよ。

―――この種目の世界記録は、日本の鈴木雄介選手(富士通)が2015年にマークした1時間16分36秒です。それを更新する可能性もあると?
藤澤:はい。

―――オリンピック本番を見据えつつ、世界中から注目を集めるレースとなりそうですね。


池田・山西を軸に川野が絡む「3強」
序盤からハイペース必至か



―――まずは、男子から詳しく伺っていくことにしましょう。現段階で、パリオリンピックの派遣設定記録を突破しているのは、記録の順に、池田向希(旭化成)、川野将虎(旭化成)、古賀友太(大塚製薬)、高橋英輝(富士通)、村山裕太郎(富士通)、髙橋和生(ADワークス)の6選手、そして、野田明宏選手(自衛隊体育学校)が参加標準記録を突破しています。意外なことに、世界選手権2連覇(2019年ドーハ、2022年オレゴン)の実績を持つ山西利和選手(愛知製鋼)の名前がまだない状況ですが、当然、クリアしてくることになるでしょう。上位候補は、このあたりとなってくるのでしょうか?
藤澤:そうですね。

―――当日内定を得るためには、派遣設定記録を突破しなければなりません。1時間19分30秒というタイムは、イーブンでいけば、4分を切る…3分59秒くらいで淡々といけば突破できるわけですが、男子の場合、実際にそういう展開にはならないですよね?
藤澤:ならないでしょうね。みんな、かなりの仕上がりなので、身体が動いてしまうというか、もっと速いペースで進むと思いますよ。入りとしては、世界記録に近いペースで行ってしまうかもしれません。

―――初っぱなからイーブン換算1km3分50秒くらいで入る可能性があるということですか?
藤澤:はい。

―――実際に、どんな流れで進んでいくと予想しますか?
藤澤:調子が上向いてきているのは池田選手と山西選手。そして、川野将虎選手が、ブダペスト世界選手権35kmでメダルを獲得したあと、昨年10月の高畠競歩(全日本競歩高畠大会の20kmの部)で一気に1時間18分52秒まで持ってきました。彼は、おそらく挑戦者の立場で挑んでくると思いますが、20kmでも日本歴代3位の1時間17分24秒(2019年)という自己記録も持っている選手ですからね。軸となるのは池田と山西、そこに次いで川野。この3強だと思います、まずは。

―――東京オリンピック・オレゴン世界選手権銀メダリストの池田選手に、ドーハ・オレゴン2連覇の山西選手、そして35kmでオレゴン銀・ブダペスト銅の川野選手…。この3人が軸になるとなれば、最初から速いペースで進んでいきそうですね。そのほかの選手たちは、ついていくような感じになるのでしょうか? それとも別の集団をつくる?
藤澤:男子の場合は、この大会が“代表入りを左右する一発レースになる”といえる状況なので、もう一緒に行くしかないでしょうね。6回の優勝経験を誇るベテランの高橋英選手、昨年、ブダペスト世界選手権で日本人最上位(12位)となった古賀選手、ブダペストでは35kmで6位入賞を果たした野田選手、そして昨年10月の全日本競歩高畠大会で派遣設定記録を突破してきた髙橋和選手あたりは、チャレンジしてくると思います。


「きつくても、行くしかない」
世界記録更新の瞬間に立ち合えるかも!?



―――レースの見どころは?
藤澤:まずは入りの5kmですね。果たして、どれくらいで行くのか。世界記録をイーブンで行くとしたら19分09秒(注:実際の鈴木選手の5km通過は19分04秒)。最初から、そのくらいのスプリットを刻んでくるかもしれません。

―――まあ、気象条件にも左右されるところではあるでしょうが…。それが期待できちゃう?
藤澤:盛っちゃっていますかね(笑)? いや、行けるくらいの地力は、みんな十分についています!

―――そうなると、上位争いにつける人は絞られてしまうのでは?
藤澤:可能性はありますが、昨年、ブダペストで、優勝したアルバロ・マルティン選手(スペイン、35km競歩と2冠)を含む上位3選手が1時間17分台でフィニッシュしているレースに、日本勢は敗れているんですよ。その悔しさもあるでしょうし、また、ここ最近、日本選手がこのあたりの記録を出せていません。パリで戦うために、ここで記録を出して自信をつけたいという考えで挑んでくるんじゃないかな、と。

―――そういう入りになったとき、明暗が分かれるとしたら、どのあたりになりますか?
藤澤:やはり15kmあたりですね。世界選手権でも15km以降で3分43秒といったラップが出ています。世界のライバルを意識するなら、15km以降で、そのペースに上げられるかも見どころになりそうです。

―――速く入った場合も、5~15kmまでの10kmをうまく歩かないといけませんね。もし、藤澤さんが歩くとしたら、何を意識すると思いますか?
藤澤:いやあ、そうなったら、もうきつくても行くしかないです。みんな、その流れに乗っていくと思いますよ。私が自己ベスト(1時間17分52秒)を出したレースは、鈴木選手が世界記録を出した2015年の全日本競歩能美大会でしたが、そのときは彼がぐいぐい行っちゃったけれど、「追いつこう、ついて行こう」という感じで、みんながついて行きましたから。

―――なるほど、置いていかれてしまうと厳しいのですね。
藤澤:そうですね。あと、個人的には、池田選手が、ブダペスト世界選手権で行なったレースの完成形を見せてくれるかどうかにも注目しています。ブダペストでは今までとは異なるレースパターンに挑戦し、序盤から飛び出すと10kmを38分37秒で通過と、一時は大きくリードを奪ったのですが、15kmで後続に追いつかれて逆転、終盤で失速しました(15位)。あの展開を見直して以前のように他選手につく戦略を選ぶのか、それとも失敗をブラッシュアップして自分の勝ちパターンとしてモノにしてくるか、とても興味ありますね。


さらなる飛躍を期して上位に挑む面々と
主戦場シフト組の戦略は!?



―――隙あらば上位へ、というラインでは、いかがでしょうか? 先ほど名前の挙がった古賀選手、アジア選手権で優勝した村山選手がいます。また、まだ参加標準記録には届いていませんが、オレゴン世界選手権で8位入賞を果たした住所大翔選手(順天堂大大学院)も力のある選手です。
藤澤:古賀選手は、ブダペストで日本人トップとなったことが自信になったはずです。昨年は、山西選手のオレゴン世界選手権金メダル獲得で、日本が得たワイルドカードにより「4枠目」での代表でしたが、今回は、きっちり3枠内で出場権を獲得することを狙っていると思います。村山選手は、ペースを上げられる練習をしてきたと聞いています。ここへ来て土台がしっかりできてきた印象がありますから、歴代の富士通…錚々たる顔ぶれの先輩たちがやってきた練習をベースに、かなり攻めた練習をしてきているのではないかと思います。住所選手は、昨年は、一昨年のオレゴン世界選手権で入賞し、期待されたなかでうまくいかない厳しい1年となりました。メンタル面な部分、忍耐的な面を見直して臨んでくると思います。

―――昨シーズンを通して、藤澤さんが「お、来たな!」と思った選手はいますか?
藤澤:ひと皮剥けたということでは、髙橋和選手でしょうか。ようやく1時間20分を切りましたから。

―――髙橋和選手というと、35kmとか50kmのイメージが強かったので、1時間19分26秒という高畠の結果は驚きました。
藤澤:あのときは、各5kmを、一人で20分を切っていくスプリットで、安定して歩ききったんですよね。「ああ、地力がついたな」と思いました。私もそうだったのですが、この(1時間20分という)殻を破ると楽になるんですよ。ここから大きくステップアップしていくイメージで臨めるんじゃないかと思いますね。合宿でも、池田・山西選手にチャレンジしている様子が見られましたから、同じ土俵で戦う覚悟で挑んでくると思います。髙橋和選手は、実は、日本の競歩陣のなかではいち早く、“厚底シューズ”にフィットさせた選手。そこも躍進に結びついていると思いますね。

―――ブダペスト世界選手権の競歩で話題になった“厚底対応”ですね。日本の競歩界も進んできたということですか?
藤澤:チャレンジした選手もいますし、チャレンジしてやめた選手もいます。アジャストさせるべく試行錯誤している選手もいます。ちょうど、パリオリンピックや2025年に東京で開催される世界選手権に向けて、過渡期といった状況でしょうか。

―――今までとは異なる視点でレースを見る人、続出しそう(笑)。
藤澤:はい。そういう意味では、今回の日本選手権は“足元に注目”という、新しい楽しみ方や発見があるかもしれませんね。

―――長い距離…50kmや35kmから挑んでくるいうことでは、野田選手、丸尾知司選手(愛知製鋼)の名前が挙げられます。この2人はどうでしょうか?
藤澤:野田選手は、自分の流れのなかでやってきているようですね。本人は、優勝を狙うと明言していますし、そう言えるだけの日々の練習に取り組めています。昨シーズンでメンタル的に強くなって、世界選手権(35km)も6位に入賞しています。自信を持って上位争いに絡んでくると思いますよ。ベテラン年代となった丸尾選手は、20kmでも1時間19分42秒(2015年)という自己記録は持っていますが、距離の長いほうが持ち味を出せるタイプ。スピードを一気に切り替えなくてはならないという点で苦労しているようです。ただ、難しさがあるなかで、それでも強い思いを持ってチャレンジしていますから、どんな戦い方をするか楽しみです。彼の場合は、おそらくトップ集団には入らず、後方の位置でペースをつくっていく展開で、3位以内を目指したレースをしていくことになるかなと思いますね。たぶん、ずっと長い距離で活躍してきた勝木隼人選手(自衛隊体育学校)も、そうした戦略をとるのではないでしょうか。

―――派遣設定記録を視野に入れて、順位を狙う展開?
藤澤:しっかりまとめるレースができるタイプですから、イーブン(ペース)で押していき、スピード持久力で後半のラップを上げて、1時間19分30秒を切っていくような歩きをしてくると思いますね。


派遣設定記録の突破を狙う藤井
岡田は35kmの経験生かし、8回目のVと内定を



―――続いて、女子のほうを見ていきましょう。現時点で、派遣設定記録、参加標準記録ともに突破者はゼロ。男子に比べると、やや寂しい状況です。しかし、豊富な実績を持つエース格から著しい躍進を見せている若手まで、さまざまな立ち位置にいる選手が、それぞれに派遣設定記録突破を狙って神戸に照準を定めています。これまでよりも層に厚みを増した状態で、上位争いを期待することができそうです。
藤澤:はい。その通りですね。まず、世界選手権で2大会連続入賞(2019年ドーハ7位、2022年オレゴン6位)を果たしている藤井菜々子選手(エディオン、ダイヤモンドアスリート修了生)は、派遣設定記録を狙っています。

―――2019年にマークした自己記録1時間28分58秒を上回っていくことになりますね。状態はどうなのでしょうか?
藤澤:練習は順調にできていて、調子も上がっているということでした。私も参加標準記録あたりの狙うのかなと思って、本人に聞いたのですが、「派遣の突破を目指しています」と。

―――それは頼もしいですね。あとは、この種目の日本記録保持者(1時間27分41秒、2019年)でもある岡田久美子選手(富士通)でしょうか。昨年は、日本選手権35kmで2時間44分11秒の日本新記録を樹立。派遣設定記録を突破して優勝したことで、20kmではなく35kmで5回目の世界選手権代表の権利を勝ち取りました。残念ながら大会直前に腰を痛めて、本番は欠場という形になってしまいましたが、前回の神戸は藤井選手に次いで2位。20kmでも出場できる状況だったんですよね。
藤澤:はい。ブダペストでは本当に悔しい形となってしまいましたが、コンディショニングに関する見直しなども行って、腰も完治しているとのこと。トレーニングにもしっかり取り組めていて、今年の元旦競歩では、10kmで日本新記録(42分46秒)をマークして完全復活を印象づけました。前回は、優勝した藤井選手に後れをとりましたが、今大会は一緒に派遣設定記録を狙っていくようなレースができる準備をしてきていると思います。

―――岡田選手は、35kmに取り組んだことで、20kmに何か変化は出てくるのでしょうか?
藤澤:短い期間で20kmから35kmに距離を延ばして、再び20kmに戻してくるというのは、本来であれば、すごく勇気のいる決断だと思うんですね。でも、フィジカル面の取り組みを変えるなどしたと聞いていますから、ベースになる部分は確実に強くなっているはず。私も一度、50kmを経験してから1時間17分台をマークした経験があるのでわかるのですが、おそらく35kmに取り組んだことで、練習の幅も、視野も広がったと思います。そこは必ず20kmでも生きてくるはずです。


ツートップに挑む新鋭・柳井
35kmの園田はレース終盤の存在感に期待



―――岡田選手は勝てば8回目の日本選手権獲得。藤井選手は2年連続3回目の優勝となります。近年は、この「ツートップ」が女子20kmをリードしてきたわけですが、今年は、もしかしたら柳井綾音選手(立命館大)が、そこに加わってくるかもしれません。
藤澤:大学1年生の前回、初の20kmをほぼ単独で歩いて1時間33分46秒をマークして3位に。アジア選手権代表として出場した3月の全日本競歩能美大会では1時間30分58秒まで記録を伸ばした選手ですね。

―――昨シーズンは、ワールドユニバーシティゲームズに出場して6位に入賞。さらに、直前に出場が確定して世界選手権も経験しました。
藤澤:彼女は、駅伝のための長距離トレーニングをして体力を高めて、それを競歩に生かしていくという独特のスタイルで取り組んでいる選手です。高校くらいまではあるけれど、あのレベルになっても続けているのは珍しいです。

―――昨年の日本選手権や能美を見ていると、一人で押していけるパワフルさが印象的でしたが、どういう点が強さの秘密だと思われますか?
藤澤:駅伝の走り込みで身体をつくっているそうですが、使う筋肉が全く違うと思うので、正直、私にはちょっとわからないです(笑)。チューブを使ったトレーニングで筋力アップを図っていると聞いたので、競歩で使う筋肉をそういったフィジカルトレーニングで鍛えているかもしれませんね。

―――神戸では、派遣設定記録のクリアを狙っていくと話していました。元旦競歩では、岡田選手に次いで2位。42分58秒の学生新記録をマークするなど調子を上げています。実際に、戦うとなったときはどうでしょう? まだ、2人との差はあるとご覧になりますか?
藤澤:ありますね。ありますけれど、2人にチャレンジしていってほしいですね、ぜひ。

―――男子ではハイペースな入りになるとの予想でしたが、女子の場合は、レース展開はどうなると思いますか?
藤澤:上位争いするタレントが絞られていますから…。藤井選手は、自分との戦いで、まずは派遣設定記録を狙ってくると思います。そこに岡田選手や柳井選手が、どういう動きを見せるかでしょうか。

―――派遣設定記録を狙う場合、女子は、どんなペース設定でいけばよいのでしょう。
藤澤:女子の場合は、イーブンで押していくほうが確実でしょうね。そのうえで、あわよくばネガティブスプリットで、しっかりと後半を上げていくというのがベストだと思います。

―――そうなると、1km4分25秒あたりのペースが目安になるのでしょうか。きっと単独歩になるよりは、複数で行ったほうが記録は狙いやすいですよね。
藤澤:そうですね、終盤でどこまで競い合いながら行けるかが派遣設定記録を狙っていくうえでは、大きく影響するんじゃないかと思います。

―――ここまで挙げた3選手のほかで、注目すべき選手を挙げるとしたら誰でしょう?
藤澤:園田世玲奈選手(NTN)ですね。2大会連続出場となった昨年のブダペスト世界選手権の35kmで7位入賞を果たしました。自信を持って臨んでくると思います。

―――35kmで成果を出し始めたころから、20kmでもしっかり歩けるようになってきました。
藤澤:はい、そう思います。園田選手の20kmの自己ベストは、昨年の能美でマークした1時間32分11秒ですが、昨年の世界選手権では20kmを1時間33分33秒で通過しています。早朝とはいえ8月のレースでこれが出せるということは、余裕度がかなり上がっているのではないかとみています。

―――自己記録以上の力は、すでにある?
藤澤:はい。そう思います。そして、もし「4分30秒のペースで押していく」という戦いになった場合は、かえって強いかもしれません。

―――そのうえで、後半でペースを上げていけるから?
藤澤:いけますね。彼女の持ち味は後半の体力なので。

―――そうなると前半後れていても、園田選手が終盤で順位を上げて、上位に迫る可能性もあるわけですね。
藤澤:はい。前半からチャレンジする柳井選手と、後半、それを追いかける園田選手という構図になる気がしますよ。


殻を打ち破りたい梅野・内藤
ベテラン渕瀬は「3位以内」を意識



―――若手では、梅野倖子選手(順天堂大)が昨年、アジア選手権、世界選手権、アジア大会と、日本代表として立て続けに出場を果たしました。経験値が高まったことで、今年大きく伸びてくる可能性もありそうです。
藤澤:梅野選手は、とにかく1分1秒でも記録を伸ばす戦いになります。自分で決めたレースペースで行く可能性もありますが、話を聞いたときには「前半から積極的な歩きをしたい」ということでしたので、もしかしたら上位争いにチャレンジしてくるかもしれません。できたら日本選手権はそういう流れを期待したいですね。おそらく能美にも出ていくパターンになると思うので、日本選手権ではタイムアタックして、今までの殻を打ち破るようなレースをしてほしいな、と。そこは、とにかく記録を伸ばしていく必要のある内藤未唯選手(神奈川大)あたりにも共通して言えることだと思います。

―――神戸で、大きくステップアップするような結果が残せれば、自信を持って能美に挑めますものね。
藤澤:はい。男子の場合は難しいですが、女子は、日本選手権でタイムを狙って、能美で順位にこだわるという戦略もとれます。“もう1本”を考えたレースになると思いますよ。

―――ベテランの渕瀬真寿美選手(建装工業)は、いかがでしょう? 世界選手権(2009年ベルリン、6位)、オリンピック(2012年ロンドン、8位)の実績を残している20kmはもちろんのこと、50kmでも世界選手権(2019年ドーハ、11位)に出場、35kmでもブダペスト世界選手権に出場し、自己記録を更新して14位(2時間52分57秒)の成績を残しました。
藤澤:本人に聞いたら、久しぶりの20kmということで、「楽しんで、しっかり歩きたい」というコメントが返ってきました。あとは「まずは3位以内に入ること」を優先事項として挙げています。順位さえきっちり押さえておけば、タイムはその後、上げていくことができますから。そのあたりは、ベテランらしい戦略の立て方だなと思いますね。

―――男女ともに各選手の状況を知っていると、よりいっそう面白く見られそうですね。パリオリンピックに向けて、レベルの高い、緊張感あふれるレースを期待したいです。


日本の競歩を育ててくれた輪島市への思いを込めて



藤澤:
最後に一つ、とても大事なことを伝えさせてください。元旦に起きた能登半島地震では、長年、日本選手権(35km、および50km)の開催地や合宿地として、いつも温かく私たちを迎え入れてくださってきた輪島市をはじめとする地域が甚大な被害を受けました。競歩の選手たちはみんな、とても心を痛めていて、1日も早い復興のために、少しでも力になれたら…という思いを強く持っています。

―――日本選手権20km競歩の会場でも、募金活動を行う計画があるそうですね。
藤澤:はい。ぜひ、来場された方に、協力をいただけたらと思います。また、アスリート委員会が実施しているチャリティオークションでも、競歩の選手たちが出品しています。こちらにも参加していただけると嬉しいです。そして、日本選手権20km競歩に出場する選手たちはみな、「お世話になった輪島の方々を元気づけられるように、思いを込めてレースに挑みたい」と話しています。こうやって、いろいろな形で、少しでも被災地のために頑張る試合にできたら…というのが、競歩の選手や関係者みんなの共通した思いなんです。

―――そうした思いも込めて臨むことになる日本選手権、素晴らしいレースになることを祈っています。本日は、どうもありがとうございました。

(2024年2月6日収録)



【ライブ配信】

■2024年2月18日(日)8:50 競技開始予定



【スケジュール】

08:50 男子20km競歩  スタート
10:08 男子20km競歩  フィニッシュ予想/優勝者インタビュー
10:35 女子20km競歩  スタート
12:03 女子20km競歩  フィニッシュ予想/優勝者インタビュー
12:30 U20選抜 男子10km競歩 スタート
13:10 U20選抜 男子10km競歩 フィニッシュ予想
13:25 U20選抜 女子10km競歩 スタート
14:10 U20選抜 女子10km競歩 フィニッシュ予想


【観戦のおともに】楽しむ情報掲載中


>>https://www.jaaf.or.jp/racewalking/

▼観戦ポイントをご紹介:世界一熾烈な代表争いを現地で観戦しよう!
https://www.jaaf.or.jp/news/article/19492/
▼競歩あるあるを紹介中!
https://www.jaaf.or.jp/news/article/19476/
▼競歩のルールをご紹介!
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202202/07_183011.pdf
▼パリ2024オリンピック日本代表内定条件
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202401/24_154707.pdf


【能登半島地震】チャリティーオークション




>>https://auction.hattrick.world/top/1424
日本陸上競技連盟アスリート委員会は、バリュエンスジャパン株式会社と連携し、能登半島地震復興支援のためのチャリティーオークションを実施しております。
このオークションの収益は、日本赤十字社などを通じて被災地の救援に役立てていただく予定です。
毎年4月に日本陸上競技選手権大会・35km競歩を開催している石川県輪島市をはじめ、被災地の皆様が安心して過ごせる日々が一日も早く戻りますよう、お祈り申し上げます。

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