2016.09.05(月)選手

【リオ五輪帰国後インタビュー】 第2回 男子50km競歩[荒井選手](その2)

スポーツマンシップを学び、素晴らしいライバルをもたらした
ダンフィ選手との接触騒動

――この大会では、ダンフィ選手と3位争いをするなかで接触があり、荒井選手は3位でフィニッシュしたあと、カナダから抗議が出て、いったん失格となり、その後、日本が上訴して、再び覆って3位が確定するという出来事がありました。実は、恥ずかしながらダンフィ選手について、あまりよく知らなくて・・・。
荒井:僕も、そんなに絡んだこと、なかったです。今まで。

――上位にいたほかの選手は、実績のある人たちばかりだったじゃないですか? それもあって、(ダンフィ選手は)単に飛びだしているだけじゃないか、どこかで失速するんじゃないかと見ていたんです。
荒井:でも、今回2位になったタレント選手・・・彼とは一緒に合宿をやったりするのですが・・・彼は大会の前に、「今回は、ダンフィが来るぞ」と言っていたんです。やっぱり当たりましたね。たぶん練習を一緒にやっていて、強いというのがわかっていたのだろうと思います。僕もダンフィ選手のことは、顔は知っていたし、そこそこ速いこと(注:ダンフィ選手は2015年世界選手権で20kmと50kmの2種目に出場してともに12位、リオ五輪でも2種目に出て20kmは10位、50kmは自己記録を2分以上更新しての4位入賞だった)も知ってはいたのですが、まさか、最後まで競り合うことになるとは思っていなかったので・・・。

――接触した瞬間はどんな感じだったのですか? 避けられなかった?
荒井:暑さもあったし、あのあたりになると身体も極限の状態まで来ていて、正直、気遣う余裕が一切ないんですよ。もう、いかに早くゴールするかということしか考えていなかったです。余計な遠回りとかも一切したくないし、ただただ1秒でも速く相手よりゴールしたいという気持ちで歩いていて、その結果、当たってしまったというだけ。どっちかがぶつかってやろうとか、ぶつけて倒してやろうとか、そういうのは僕も向こうも全然ありませんでした。

――では、レースをしている当事者同士は・・・。
荒井:互いにベストを尽くして真剣に勝負していて、たまたまそうなっちゃっただけで、悪意というのは、全くなかったし感じなかったです。なので、僕はそのまま気づかずレースをして、ゴールで、なんとか勝てた。そうしたら、“訴えられているぞ”ということになって、“え、なぜだろう”と思って・・・。結局、抗議したのはダンフィ選手自身ではなく、(接触を見た)カナダチームの関係者だったわけです。

――まあ、もし、逆の立場であったら・・・。
荒井:はい、たぶん日本も抗議していたと思いますね。自国の選手にメダルを取らせたいと思うでしょうし。しかも、50km、歩いてきていますから(笑)。僕も相手の立場だったらと思うと、気持ちはわかります。

――最終的に、日本の上訴が通って、失格は取り消しとなったわけですね。ダンフィ選手は、レース後にもそのことを荒井選手に謝ったそうですが、その後、ウェブサイト上でも改めて自身の声明を出し、この件についてわだかまりが残らないように対処していました。
荒井:すごいですよね。あんなにスポーツマンシップにあふれた人はいないなと。いい選手と、いい試合ができたなと思いました。このオリンピックで、一番学んだと思うのは、スポーツの精神というか、お互いを尊重しあう気持ちというか、そういうもの。勝負は1人じゃできなくて、そして、国境を越えて、相手を思いやる気持ちが大切なんだということを、ダンフィ選手との件で実感しました。本当に、今回のレースは、一生思い出に残るレースでしたね、ただのレースではなくて。素晴らしいライバルに出会えたということでも。

――これからずっと競い合う相手になっていくのでしょうね。
荒井:そうですね。おそらく来年の世界選手権でも一緒に歩くことになると思います。次はぶつからないようにしないと(笑)。ちゃんと間隔開けて・・・(笑)。

国別の団体戦を実感したオリンピック
選手の気合いの入り方も違った

――荒井選手にとっては、初めてのオリンピックでもありました。3大会連続出場している世界選手権とは、何か違いはありましたか?
荒井:うーん、違いというなら、ほかの競技の選手もいるということですが、やはり国同士の戦いだなというのをひしひしと感じました。世界選手権は陸上競技だけでそれぞれの戦いという感じですけど、オリンピックというのは団体戦というか、盛り上がり方が全然違うなと。選手自身の気合いの入り方も違いました。世界選手権と違って、オリンピックはもう、“このために・・・”という感じがあった。まあ、僕自身もそれはありましたけれど。

――そのなかで、メダルを獲得したわけですから・・・。
荒井:まあ、運良かったですよね、ホントに(笑)。

――いやいや、それはとんでもなくすごいことです。荒井選手の場合、(最終選考レースの)輪島で五輪の代表切符を確実にするまで、出場も見えていなかったわけですし。おそらく選考レースのあったころは、お母様のこと(昨年11月に他界)もあって精神的にもとてもきつかっただろうと思いますし。
荒井:きつかったですね。なんとか内定が取れて、こうやって初めてのメダルが取れた。それがオリンピックでできたというのは、なかなかできることじゃないと思うので、まあ、運に恵まれていたかんじゃないかと(笑)。

――運も実力のうちです。
荒井:ありがとうございます。

>>リオ五輪帰国後インタビュー 第2回 男子50km競歩[荒井選手](その1)はこちら
>>リオ五輪帰国後インタビュー 第2回 男子50km競歩[荒井選手](その3)はこちら

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◎写真/競技写真:フォート・キシモト、インタビュー写真:高橋将志
◎取材・構成/児玉育美(JAAFメディアチーム)

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