東京2025世界陸上財団は5月13日、来年9月13日~21日に開催を控える「東京2025世界陸上」の大会ロゴをメディアに向けて発表するイベントを行いました。イベントは、世界選手権本番の舞台となる東京・国立競技場において二部構成で行われ、第1部で、大会の象徴となるロゴが初披露。第2部では、近隣の小学生を招いて、発表会見に出席した女子やり投の北口榛花選手(JAL)と男子走幅跳の橋岡優輝選手(富士通)と交流する時間が持たれました。
東京2025世界陸上の大会ロゴは、昨年11月から一般公募を開始。368点の応募があったなか、デザインの専門家、トップアスリート、公募により選出されたメンバー(公募委員)から成る選定委員会による選考を経て決定しています。
第1部として行われた記者会見には、東京2025世界陸上財団の武市敬事務総長、ロゴデザイン選定委員会の木村雅彦委員長に加えて、ゲストとして、小池百合子東京都知事、女子やり投の北口榛花選手(JAL)、男子走幅跳の橋岡優輝選手(富士通)が登壇しました。
まず、主催者を代表して武市事務総長が、大会ロゴについての説明や、「東京2025世界陸上」におけるデザイン開発の方針、選定までのプロセスなどを紹介。「多くの方の参画により選ばれた東京大会のロゴが、出場するアスリートを鼓舞するとともに、国内外の多くの方々に親しまれることを期待いたします」と挨拶。来賓として招かれたワールドアスレティックス(WA)カウンシルメンバーの有森裕子日本陸連副会長や協賛スポンサー各社代表者も見守るなか、大会ロゴのデザインが発表されました。
大会ロゴは、「世界-東京-つながる。」がテーマ。WAロゴで用いられている扇形の枠のなかに、東京の都市コードである「TYO」をモチーフに、世界のアスリート、日本、東京が結びつくイメージがストライプで組み込まれました。陸上トラックのレーンを表すストライプを用いたことでスピード感や躍動感を印象づけると同時に、どこか日本の伝統美をも感じさせる仕上がりに。さらに、カラーコンセプトには、黒、ゴールド、赤の3色を採用。「T」の黒はいろいろな国のカラーを混ぜ合わせた調和を、「Y」のゴールドは一番を目指す尊さを、「O」の赤は日本の日の丸を表しています。
その後、ロゴデザインの制作者であるクリエイティブディレクター・デザイナーの中川亮氏が登壇。「1984年、私がまだ芸大生(大阪芸術大学)のころ、ロバート・マイルズ・ラニアンがデザインしたロサンゼルスオリンピックのロゴが大好きで、いつか自分も大きなスポーツイベントのロゴのデザインに関わりたいと思ってデザイナーを続けてきた」と言う中川氏は、「私のデザインしたロゴが選ばれたことを大変嬉しく、誇りに思う」と挨拶するとともに、「今回のロゴは、東京の都市コードである“TYO”の3文字をモチーフとして、陸上競技の持つ“より速く、より高く、より遠くへ、さらに遠くへ”というイメージをデザインとして表現した。また、世界中のアスリートが東京に集い、東京の人たち、東京という街とつながり、より素晴しい大会になることを祈りとして込めた」と、制作したデザインのコンセプトやロゴに込めた想いを話しました。
このロゴについて、「“こういうふうにしましょう”という予見を超えて、品格すら感じさせるようなクオリティにつなげていただいた」と述べたのは選定委員会の木村委員長。「デザイナーが主体となって選ぶのではなく、アスリートの皆さんやオーディエンスを代表する皆さん(公募委員)と平等に議論しながら選んでいったことが今回の特徴。“それぞれが教え合う”プロセスは、とても楽しく、学びの多い時間だった」と振り返り、「アクティブな意見交換の結果、最終的に全員一致で(賛成の)手を上げる素晴しい審査ができた」と、選定に至るまでの模様を明かしました。感想を求められた小池都知事は、「このロゴのなかには、東京らしさ、日本らしさ、そして陸上競技の躍動感がしっかりと詰め込まれている。大会の成功とともに、このロゴも記憶に刻まれるように、そして選手の皆さんには記録をしっかり打ち立てていただきたい」とエール。また、“アスリート代表”として、北口選手、橋岡選手も、それぞれに大会ロゴを目にしての感想を述べました(両選手のコメントは、下記をご参照ください)。
記者会見のあとに行われた第2部では、小学生とアスリートの交流の時間が設けられました。ゲストとして記念撮影にも参加した新宿区立四谷第六小学校4年生の児童73名が、日本陸連指導者養成課スタッフによる進行のもと、北口選手・橋岡選手と一緒に身体を動かしたのです。
当初の計画では、交流会は世界選手権の舞台となるスタジアム内のトラックで行われる予定でしたが、あいにくの雨模様となったことで屋内での実施に。しかし、参加した子どもたちは、ワクワクした表情で北口選手と橋岡選手を出迎え、2人が登場すると元気な声で挨拶。両選手とともに「ミラーゲーム(相手の動きを真似するゲーム)」からスタートすると、橋岡選手と北口選手がそれぞれ歩きながらスローモーションで示した走幅跳の空中動作とやり投のスローイング動作の真似や、身体を使ってのジャンケンなどを行っていきました。一つ一つに取り組んでいくたびに、瞳を輝かせながら、楽しそうに歓声を上げる子どもたちの様子を見て、北口選手や橋岡選手の笑顔もいっそう大きくなりました。
最後に北口選手と橋岡選手が、ともに「地声で大丈夫」とマイクを使わずに、子どもたちへ挨拶。「少しだけだったけれど、今日はみんなと一緒に身体を動かせて、すごく楽しかったです。私はやり投という種目をしていますが、次は競技場で実際にやりを投げている姿を見に来てくれたら嬉しいです」と話した北口選手の言葉を受けて、司会者が「北口選手の試合、見に行きたい人」と呼びかけると、子どもたちは手を上げながら「はーい!」と元気に応え、北口選手を喜ばせました。また、橋岡選手が「次は、競技場で跳んでいる姿を見てもらえたら…。僕がやっている走幅跳は、8m以上跳びます。たぶんみんなが授業している教室の横幅よりも広いくらい」と話し始めると、子どもたちから、「ヤバッ!」「えーっ!」と驚きの声が上がる場面も。「…というのを頭の中に入れて応援に来てくれたらなと思います。今日はありがとうございました」と橋岡選手が締めくくると、子どもたちは、大きな声で「ありがとうございました!」と挨拶を返して拍手。短いながらも楽しい交流の時間を終えました。
【記者会見登壇選手コメント】
◎北口榛花(JAL、ダイヤモンドアスリート修了生)
ロゴ発表の動画は疾走感があって、まだ1年も先なのに、もうドキドキ緊張しちゃうような(笑)、そんな気持ちになった。日の丸の部分がロゴに入っているのを見て、私が海外を遠征し始めたころ、海外で出た記事を翻訳機で訳したときに、“日出ずる国のキタグチが…”と訳されたことを思い出した。日本と陸上を象徴できるような素晴しいロゴだと思う。これから世界中のアスリートが、このロゴの場所を目指して、切磋琢磨してくると思うので、しっかりと準備できたらと思っている。
私は、近年、ヨーロッパで試合をすることが多くなっていて、日本のファンの皆さんや日本でお世話になってきた方々の前で試合をすることが、なかなかできなくなっている。2025年の東京世界陸上では、たくさんの方々が現地に足を運んでくれればいいなと思う。また、世界陸上は、試合ではあるけれど、お祭りのような面もあって、陸上競技のことを知らない方々でも楽しめる試合、陸上を見始めるきっかけになる試合だと思う。いろいろな方々に楽しんでいただける、そんな試合になったらいいなと思う。
◎橋岡優輝(富士通、ダイヤモンドアスリート修了生)
「日本らしい和のテイストと、直線が表すトラックの雰囲気がうまく相俟っているな」というのと、TOKYOの“O”が日の丸という形で入り込んでいるところに、すごく日本らしさがある。また、伝統的であり、品もある、とてもいいロゴデザインだなと感じた。2025年には、このロゴが世界陸上のアイコンになってくるので、僕自身とても嬉しく思うのと同時に、もう今から緊張しているし、本当に頑張らないとな、と…(笑)。ロゴひとつ見るだけで、選手がそれくらいの気持ちになるような、いいロゴになったと思う。
せっかく東京で開催される世界陸上なので、日本の方々に現地まで足を運んでいただいて、観客の皆さまと一緒に楽しめるような、いい試合にできればなと思う。世界陸上は、陸上に特化した“世界一”を決める試合なので、オリンピックとはまた違った雰囲気がある。本当に“陸上だけを突き詰めた人たち”がトラックで競い合うので、その緊張感であったり、その選手がどういう表情をしているかだったりを、現地で見てもらえれば伝わりやすいのかなと思う。1人でも多くの人に現地に来てもらえるように、まずは僕たちが頑張っていければなと考えている。
※登壇選手のコメントは、記者会見における発言に、会見後の囲み取材でのコメントを加えて構成しています。
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▼【東京2025世界選手権】世界陸上競技選手権大会 関連情報
https://www.jaaf.or.jp/tokyo2025wch-foundation/
▼【2025年世界陸上競技選手権大会】東京開催決定について:国立競技場で34年ぶり、日本では18年ぶりに開催!
https://www.jaaf.or.jp/news/article/16789/
文・ 写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト