2024.04.25(木)選手

【記録と数字で楽しむ第108回日本選手権10000m】男子:日本歴代1~4位、10傑内7名が勢揃いで「26分台」を目指す



5月3日(金/祝)、静岡県袋井市の小笠山総合運動公園静岡スタジアム(通称;エコパ)でパリ五輪代表選考会を兼ねた「第108回日本選手権・10000m」が行われる。同日の「静岡国際」が終了したあと、女子が19時30分、男子が20時10分のスタート。レースの模様は、19時25分から、NHKのEテレ(教育)で、生中継される。

ここでは、現地観戦やTV観戦のお供に、「記録と数字で楽しむ第108回日本選手権・10000m」をお届けする。
なお、2023年12月10日の日本選手権前に本コーナーで紹介した記事やデータと重複している部分もあるが、データは最新のものに更新した。

・記録や情報は、4月18日判明分。
・年齢は、2004年5月3日のもの。
・文中、敬称略。


<エントリーリストはこちら
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https://www.jaaf.or.jp/jch/108/10000m/


【男子】日本歴代1~4位、10傑内7名が勢揃いで「26分台」を目指す

今大会の参加資格は、2023年1月1日~24年4月14日に「28分16秒00」の申込資格記録突破者(および日本選手権クロカン優勝者)で、オープン参加の外国籍の1名を含め計37名が申し込んだ。しかし、外国籍選手を除き、ターゲットナンバーの「30名」を超えたため出場できずに涙を呑むことになった選手も6名出た(https://www.jaaf.or.jp/files/competition/document/1841-4.pdf)。

日本人に限ると資格記録の27分台は、28名。23年12月の日本選手権の19名を大きく上回った。
24年4月14日現在の日本歴代10傑と11位以下の今大会出場者の10番目までは、
・氏名の前の「×」は、今大会不出場者。
1)27.09.80塩尻和也(富士通)2023.12.10
2)27.12.53太田智樹(トヨタ自動車)2023.12.10
3)27.13.04相澤晃(旭化成)2023.12.10
4)27.22.31田澤廉(トヨタ自動車)2023.12.10
5)27.25.73×伊藤達彦(Honda)2020.12.04
6)27.27.49羽生拓矢(トヨタ紡織)2022.11.26
7)27.28.13小林歩(NTT西日本)2023.12.10
8)27.28.50×佐藤圭汰(駒大2年)2023.11.25
9)27.28.92田村和希(住友電工)2020.12.04
10)27.29.69×村山紘太(旭化成)2015.11.28
    
12)27.30.69鈴木芽吹(トヨタ自動車)2023.11.25
17)27.36.75葛西潤(旭化成)2023.11.25
20)27.38.66篠原倖太朗(駒大4年)2023.11.25

日本歴代10傑中の7名が集結。1~4位は「全員集合」だ。
上記の歴代リストの通り、前回は上位3名が従来の日本記録(27.18.75/相澤/2020.12.04)を上回った。今回もパリ行き切符を目指しての好レースが期待できそうだ。


◆パリ五輪の内定条件

パリ五輪参加標準記録は、塩尻の日本記録(27.09.80)上回る「27分00秒00(10kmロードの記録も有効)」で、有効期間は2022年12月31日~24年6月30日。
今大会での五輪代表内定条件は、
A)2023ブダペスト世界選手権で8位以内の成績を収めた日本人最上位の競技者で、2023年11月1日から2024年6月30日までに、ワールドランキング対象競技会において参加標準記録を満たした競技者。

B)第108回日本選手権の優勝者で、24年6月30日までに五輪参加標準記録を満たした競技者。

「A」の「世界選手権8位以内」は誰もいない。
「B」の「今大会優勝&27分00秒00をクリア」のためには、日本記録を10秒更新する必要があり、それが実現すれば日本人初の「26分台」を目撃できることにもなる。


◆「WAランキング」でのパリ行き切符は、4月16日時点で残り3枚

24年4月16日現在で、ロード10kmを含めて「27分00秒00」の参加標準記録突破者が世界で16名(トラック11名、ロード5名。各国4番目以下の選手を含めると計21名)、さらに「クロスカントリー枠(3レースの平均)」で8名が出場権を獲得していて計24名。ターゲットナンバー「27」の残りは、3枠だ。パリ行き切符を確実にするには、日本選手権で優勝して6月30日までに「27分00秒00」をクリアすることだ。

が、そのハードルは高く、日本記録を10秒更新しなければならない。

5月3日の日本選手権優勝者が6月30日までに「27分00秒00」を突破できなかった場合は、世界陸連が集計する24年6月30日現在の「ワールドランキング(WAランキング/Road To Paris 24)」で、出場枠(ターゲットナンバー)の「27番目以内」に入る必要がある(発表されるのは、日本時間の7月3~4日あたりの見込み)。現時点(24年4月16日現在)での日本人選手のランクは、以下のとおりだ。

<WAランキングの日本人順位/24年4月16日現在>
・カッコ内は、自身の1番目と2番目のレースでのポイントを示す。
26)1221pt(1231・1212)田澤廉(トヨタ自動車)
27)1220pt(1256・1184)太田智樹(トヨタ自動車)
28)1216pt(1270・1162)塩尻和也(富士通)
以上が、1国3名以内での日本のトップ3だ。
日本人4番目以下の選手の「相当順位」は、
・氏名の前の「×」は、今大会不出場者。
36)1176pt(1181・1171)×佐藤圭汰(駒大3年)
42)1165pt(1172・1158)田村友佑(黒崎播磨)
43)1165pt(1166・1165)篠原倖太朗(駒大4年)
44)1164pt(1216・1112)小林歩(NTT西日本)
45)1155pt(1184・1126)大川歩夢(プレス工業)
47)1151pt(1177・1126)鈴木芽吹(トヨタ自動車)
50)1146pt(1147・1145)×清水歓太(SUBARU)
51)1145pt(1177・1114)難波天(NTT西日本)
ここまでが、「WAランキング(Road To Paris 24)」に掲載されている選手だ。

42位以降に日本人がずらりと並んでいるようにみえるが、実際には他国の4番目以下の選手をカウントしない「相当順位」で記載したためこのようになる。有効期限内の上位2レースの平均ポイントによる実際の順位は、田村が65位で、一番下の難波が99位という位置になる。

23年日本選手権では、塩尻、太田、相澤、田澤の順でフィニッシュし、いずれも自己ベストで上位3名が従来の日本記録(27.18.04)を上回った。が、上記のランキングでは、田澤、太田、塩尻の順で相澤はランク外だ。これは、「WAランキング」のポイントに組み込まれる「自己2番目のレース」のポイントが田澤、太田、塩尻の順に高かったことによる。
よって、23年日本選手権で最も高い1270ptをあげた塩尻、それにつぐ1256ptの太田は、「2番目のレースのポイント」が低いため、2レース平均では田澤の下にランクされている。5月3日に塩尻と太田が前回のようなポイントを稼げれば、田澤を一気に逆転する可能性がある。

なお、相澤が「ランク外」なのは、有効期間内(22年12月31日~)に23年日本選手権しか走っていないことによる。相澤のこのレースでのポイントは「1250pt=記録1205pt+順位45pt」。2レース目となる今回の日本選手権で、前回のようなポイントを稼げれば一気に五輪切符圏内に入ってくる可能性もある。これと同様に1レースで1250pt以上を獲得しているような他国の選手も、ランク外から一気に上がってくるかもしれない。

上述の通り、日本人トップ3は、26位・田澤(1221pt)、27位・太田(1220pt)がギリギリ圏内、日本記録保持者の塩尻が次点の28位(1216pt)と日本の3選手がボーダーラインで残り切符を争う状況だ。25位のフランス人選手は「1235pt」で、10000m27分25秒48(記録1186pt+順位70pt=1256pt)と10kmロード27分07秒(記録1215ptのみ)の平均だ。また、29位のオーストラリア人選手は「1203pt」である。

21年東京五輪、22年オレゴン世界選手権、23年ブダペスト世界選手権でのボーダーラインの2レース平均のポイントは「1190pt台あたり」だったが、今回は現時点で27番目に位置する太田のポイントが「1220pt」と大幅に上回っている。順位によるポイントがつかずに記録ポイントのみでの「1190pt」は「27分23秒01」、「1200pt」は「27分16秒70」、「1210pt」は「27分10秒40」、参加標準記録の「27分00秒00」は「1226pt」である。このあたりのレベルでの記録ポイントの差は、概ね「0秒63で1pt差」「6秒3で10pt差」というところである。

「順位ポイント」は、大会のグレードによっていくつかに区分されているが、日本選手権のカテゴリーは「B」で、各順位のポイントは以下のとおりだ。
1位 60pt
2位 50pt
3位 45pt
4位 40pt
5位 35pt
6位 30pt
7位 25pt
8位 20pt

よって、日本選手権では、ひとつでも上の順位でフィニッシュすることが「WAランキング」のポイントを稼ぐためには非常に重要である。1位と2位の順位ポイントの「10pt差」を27分台前半のレベルのタイムに換算すると約6秒3差、1・3位の「15pt差」は、9秒5くらいの差になる計算だ。ほとんど差がなくほぼ同タイムでフィニッシュしても、WAランキングのポイントでは、上記のようなタイム差がついたのと同じ扱いになるのだ。

また、記録ポイントが「1170pt」の「27分35秒73」であっても、日本選手権でトップフィニッシュすれば順位ポイントの「60pt」が加算されるのでトータルは「1230pt」となり、2レース平均での現在のボーダーラインである1220ptを上回るポイントを稼げることになる。

このところの「WAランキング」のシステムでは、「27番目と28番目」のポイント差が1点差とか同点で、世界大会出場のボーダーとなるケースもある。「WAランキング」のポイント(整数値)が同じ場合は、小数点以下での比較はせず、2レースのうちで最も高いポイントを獲得した選手を上位とする。2レースとも同得点の場合は、同順位となる。これらは、5試合の平均ポイントでランク付けする短距離種目なども同様である。10000mを走っての「0秒01差」が1ポイント差となるケースもあり、それが天国と地獄の分水嶺となるかもしれないのだ。


◆至近9年間の日本選手権での入賞歴

・今回の出場者に限る。掲載順序は、直近年の順位順
151617181920212223
塩尻和也1
太田智樹52
相澤晃84113
田澤廉824
小林歩5
大川歩夢6
難波天7
田村友佑8
市田孝433843
鈴木芽吹3
田村和希13

2021年まで3000mSCを主戦場とし、18年には日本選手権のタイトルも獲得した塩尻が22年から5000mと10000mに参戦。この時はともに9位で入賞にはあと一歩だったが、23年は6月に5000mを制し、アジア選手権(2位)とブダペスト世界選手権にも出場。その勢いで12月には10000mの日本選手権を日本新(27.09.80)で制して二冠王となった。

上表の通り、日本選手権入賞歴ということでは、塩尻に破られる前の日本記録保持者・相澤がコンスタントだ。18年以降の6年間で、不出場だった21年以外は2度の優勝(20・22年)を含めすべて入賞している。

前回2位の太田は2大会連続入賞中。24年も好調で3月16日にはアメリカで27分26秒41。「3月の日本最高(従来、27.28.04/田澤/2023.03.04)」をマークした。

前回4位の田澤も20年から3回入賞し、駒大時代から常に注目されてきている。

「入賞歴」ということでは、市田孝(旭化成)が安定して好成績を残している。日本選手権初出場の16年以降の8年間で20・23年以外はすべて入賞。しかも、うち5回は、3位3回、4位2回と非常にコンスタントだ。


◆日本選手権の連勝記録◆

この種目での連勝記録の歴代リストは、
1)6連勝村社講平1934~39年
2)4連勝佐藤悠基2011~14年
3)3連勝末永包徳1942・46・47年(43~45年は戦争で中止)
〃)松宮隆行2006~08年
5)2連勝大西増夫1952・53年
〃)林田積之介1956・57年
〃)林田・青木積之介1960・61年=2回目の連覇
〃)大槻憲一1969・70年
〃)喜多秀喜1977・78年
〃)中村孝生1982・83年
〃)浦田春生1988・89年
〃)T・オサノ1990・91年
〃)A・ニジガマ1994・95年
〃)大迫傑2016・17年

塩尻が連覇を果たせば、14人目で15回目、日本人では12人目で13回目となる。


◆日本歴代TOP4の10000mでの対戦成績

23年の1~4着で、それがそのまま日本歴代1~4位でもある塩尻、太田、相澤、田澤の10000mでの対戦成績は、以下の通りだ。

  塩尻和也vs太田智樹
2017.05.25関東学生3)28.35.44○●9)29.17.37
2017.09.08日本学生4)28.47.50○●7)29.09.06
2018.05.24関東学生3)28.26.84○●15)29.34.41
2022.05.07日本選手権9)28.04.70●○5)27.54.88
2022.11.26八王子LD21)27.49.88●○18)27.47.76
2023.05.04GG延岡1)27.46.82○●4)28.04.47
2023.12.10日本選手権1)27.09.80○●2)27.12.53
   5-2 

  塩尻和也vs相澤晃
2018.05.24関東学生3)28.26.64○●7)29.08.27
2022.05.07日本選手権9)28.04.70●○1)27.42.85
2023.12.10日本選手権1)27.09.80○●3)27.13.04
   2-1 


  塩尻和也vs田澤廉
2022.05.07日本選手権9)28.04.70○●10)28.06.34
2023.05.04GG延岡1)27.46.82○●2)27.51.21
2023.09.30アジア選手権5)28.35.02●○4)28.18.66
2023.12.10日本選手権1)27.09.80○●4)27.22.31
   3-1 


  太田智樹vs相澤晃
2018.05.24関東学生15)29.34.41●○7)29.08.27
2021.11.27八王子LD5)27.33.13○●20)27.58.35
2022.05.07日本選手権5)27.54.88●○1)27.42.85
2023.12.10日本選手権2)27.12.53○●3)27.13.04
   2-2 


  太田智樹vs田澤廉
2021.04.21兵庫リレー3)28.56.22○●21)29.41.18
2021.06.06デンカカップ8)28.59.45●○1)27.52.52
2022.05.07日本選手権5)27.54.88○●10)28.06.34
2023.05.04GG延岡4)28.00.47●○2)27.51.21
2023.12.10日本選手権2)27.12.53○●4)27.22.31
   3-2 


  相澤晃vs田澤廉
2020.12.04日本選手権1)27.18.75○●8)27.46.09
2022.05.07日本選手権1)27.42.85○●10)28.06.34
2023.12.10日本選手権3)27.13.04○●4)27.22.31
   3-0 

上記のとおり、それぞれの3人とのトータルでの勝敗は、

塩尻は、10勝4敗。全員に勝ち越し。
太田は、7勝9敗。田澤に勝ち越し。相澤と引き分け。塩尻に負け越し。
相澤は、6勝4敗。田澤に全勝。太田と引き分け。塩尻に負け越し。
田澤は、3勝9敗。全員に負け越し。

相互間の序列は、
塩尻>太田=相澤>田澤
といった感じになる。


◆塩尻和也の日本記録(27.09.80)の時のペース

23年12月10日の日本選手権(国立)で塩尻が27分09秒80の日本記録をマークした時の400m毎は下記のとおり。
参考までに、最初の100mと200m、途中1500m、8500m、8800m以降は100m毎のタイムを記載した。
先頭走者ではなく、すべて塩尻の通過タイム。カッコ付き数字は、その地点での塩尻の通過順位(オープン参加の外国籍選手を除く日本人での順位)を示す。
・以下、筆者による非公式計時
100m12)16.3    
200m12)32.5    
400m9)1.04.564.5   
800m6)2.10.666.1   
1000m6)2.43.3 2.43.3  
1200m7)3.16.866.2   
1500m7)4.07.2    
1600m7)4.23.366.5   
2000m7)5.28.865.52.45.55.28.8 
2400m7)6.34.866   
2800m7)7.40.365.5   
3000m7)8.13.8 2.45.0  
3200m7)8.45.965.6   
3600m6)9.50.464.5   
4000m6)10.56.566.12.42.75.27.7 
4400m6)12.02.465.9   
4800m6)13.07.665.2   
5000m6)13.40.9 2.44.4 13.40.9
5200m6)14.13.065.4   
5600m6)15.18.865.8   
6000m4)16.24.065.22.43.15.27.5 
6400m4)17.29.665.6   
6800m4)18.35.165.5   
7000m4)19.08.1 2.44.1  
7200m3)19.40.565.4   
7600m3)20.46.265.7   
8000m3)21.51.565.32.43.45.27.5 
8400m2)22.57.365.8   
8500m2)23.13.4    
8800m2)24.02.164.8   
8900m1)24.17.9    
9000m1)24.34.2 2.42.7  
9100m1)24.50.0    
9200m1)25.05.963.8   
9300m1)25.21.5    
9400m1)25.37.3    
9500m1)25.52.9    
9600m1)26.08.662.7   
9700m1)26.23.7    
9800m1)26.39.5    
9900m1)26.54.6    
10000m1)27.09.8061.22.35.65.18.613.28.9(前後半差△12.0)

残り3000m8.01.7
残り2000m5.18.3
残り1500m3.56.4
残り800m2.03.9
残り600m1.31.5
残り500m1.16.9
残り400m1.01.2
残り300m46.1
残り200m30.3
残り100m15.2

この時の電子ペーサー(ウェーブライト)の設定は、「27分15秒」「27分40秒」「28分00秒」の3種類で、先頭グループは当然のことながら「27分15秒」と併走する展開だった。

スタート直後からオープン参加のS・キプロノ(黒崎播磨)がペースメーカー役をつとめ、最初の3周は電子ペーサーの少し前を、1300m付近からは併走した。塩尻は、前半はキプロノから10m遅れくらいの日本人6~7番手の位置をキープ、6000mで4位(日本人集団8名)、7200mで3位(同集団5名)、8400mで2位(同集団4名)と徐々に前方に出て順位を上げていった。8900mで日本人先頭(同集団3名)に。9200mでキプロノと2人に。9380mでキプロノの前に出て徐々に引き離す。9000m付近からは電子ペーサーの前を走り、最終的には相澤の日本記録(27.18.04)を8秒24更新する「27分09秒80」でフィニッシュした。「前半13分40秒9」に対し「後半13分28秒9」で、後半の方が12秒0速いネガティブスプリットだった。が、それでもパリ五輪参加標準記録27分00秒00には約10秒及ばなかった。


◆五輪参加標準記録「27分00秒00」の平均ペースは「400m64秒8」、「1000m2分42秒0」

このところの五輪と世界選手権の参加標準記録は、どんどん引き上げられてきている。

<世界大会の参加標準記録と前年にそれを上回った世界と日本の人数>
  参加標準前年突破数世界日本
2016年五輪28.00.002015年=81人11人
2017年世選27.45.002016年=52人1人
2019年世選27.40.002018年=20人0人
2021年五輪27.28.002020年=13人2人
2022年世選27.28.002021年=37人1人
2023年世選27.10.002022年=13人0人
2024年五輪27.00.002023年=8人0人
2024年=13人0人(4月16日現在)
・24年パリ五輪はロード10kmの記録も有効なため23年と24年4月16日現在で1国3名までで実質16名がクリア。

上記の通り、「参加標準記録」、どんどん引き上げられてきている。

21年東京五輪からは「WAランキング」による出場資格付与の制度が導入された。

24年パリ五輪に向けては、ロード10kmを含めて有効期限の24年6月30日までに「27分00秒00」をクリアした選手と「クロカン枠」で8名がパリ行き切符を獲得する。上述の通り、24年4月16日現在で「標準記録突破16名+クロカン枠8名=24名」がすでにパリ行き切符をゲットしている。「WAランキング」による残り切符は、3枚。
よって、日本人選手がパリに行くには、5月3日に優勝して6月30日までに「27分00秒00」を突破するのか最も確実だ。
「27分00秒00」を平均ペースでならすと、400m「64秒8」、1000m「2分42秒0」である。

これまで世界や日本の様々な競技会の10000mで好記録が出た時のペースを調べると、前後半の落差が数秒、あるいは後半の方が速いということが多い。上述の塩尻の日本記録の時も後半の方が12秒0速いネガティブスプリット。世界記録26分11秒00の時も「13分07秒73+13分03秒27」だった。女子の世界記録29分01秒03も「14分42秒2+14分18秒8」で後半の方が23秒4も速かった。

「前半で貯金を作って……」とハイペースで突っ込むと、踏ん張りどころの6000mあたりから苦しくなって終盤に大きくペースダウンしてしまうというケースをよく見かける。そうなると、ラスト1000mや残り1周のスピードも上がらずに、結果的には、「前半の貯金」を大きく取り崩してしまい目標にほど遠い結果に終わってしまうことも多いようだ。

レース当日の気象条件にもよるが、「27分00秒00」のためには、400m「64秒8」、1000m「2分42秒0」から大きく外れることなくスタートから安定したペースを刻むことがポイントだ。

1000m2分42秒0で刻んでいった場合のタイムと、塩尻の日本記録(27.09.80)を比較した。
 27.00.0日本記録(27.09.80) 
1000m2.42.02.43.32.43.3
2000m5.24.05.28.82.45.5
3000m8.06.08.13.82.45.0
4000m10.48.010.56.52.42.7
5000m13.30.013.40.92.44.4
6000m16.12.016.24.02.43.1
7000m18.54.019.08.12.44.1
8000m21.36.021.51.52.43.4
9000m24.18.024.34.22.42.7
10000m27.00.027.09.802.35.6
となる。
日本記録の時の1000m毎を1秒0ずつ速く走れれば、27分00秒切りが実現することになる。

「27分00秒00切り」をトラックでクリアしたのは、24年4月18日現在の世界歴代リストで78名による153回しかない。

同じ世界歴代順位を100mにあてはめると、9秒92相当。パフォーマンスの回数153回ならば9秒86という記録になる。
全種目を網羅した「WAスコアリングテーブル(2022年版)」の「27分00秒00」の得点は「1226pt」。100mならば9秒95に相当する。

パリ五輪の各種目の参加標準記録を「WAスコアリングテーブル」のポイントで比較すると、下記のようになる。
種目参加標準記録ポイントターゲットナンバー
100m10.001206pt56
200m20.161195pt48
400m45.001180pt48
800m1.44.701183pt48
1500m3.33.501195pt45
5000m13.05.001191pt42
10000m27.00.001226pt27
マラソン2.08.10.1191pt80
110mH13.271202pt40
400mH48.701195pt40
3000mSC8.15.001189pt36
20kmW1.20.10.1187pt48
走高跳2.331206pt32
棒高跳5.821217pt32
走幅跳8.271197pt32
三段跳17.221188pt32
砲丸投21.501211pt32
円盤投67.201193pt32
ハンマー投78.201175pt32
やり投85.501179pt32
十種競技84601198pt24

ターゲットナンバー(参加人数の制限枠)が、10000mの27名に対し、100mが56名、200~800mは48名、マラソン80名、フィールド種目32名、十種競技24名などの違いがある。この人数の多少によっても参加標準記録の設定レベルに違いが出てこようが、記録のポイントで比較する限り、10000mのレベルが最も高い。

今回の日本選手権で「27分00秒切り」あるいは日本記録更新に向けては、23年日本選手権のキプロノと同じように27分09秒96のタイムを有するオープン参加のM・イマニエル(トヨタ紡織)が、ペースメーカーの役目を果たしてくれそうだ。

そして、前回と同じく「電子ペーサー(ウェーブライト)」という頼もしい味方も存在する。トラック内側の縁石のところに1m毎にLEDライトを設置し、設定したペースで発光していく機器だ。
ライトは何色かに色分けができ、いくつかの目標記録別に点灯させることができる。

前回の日本選手権での設定ペースは、「27分15秒」「27分40秒」「28分00秒」だった。今回の設定ペースはこの原稿の締め切り時点(4月21日)では明らかにされていないが、「パリ五輪参加標準記録の27分00秒」「日本記録の27分10秒」に設定される可能性がありそうだ。その他にも2種類くらいのペースが設定されることになるだろう。


◆日本選手権での着順別最高記録

・2023年大会終了時。
1)27.09.802023年
2)27.12.532023年
3)27.13.042023年
4)27.22.312023年
5)27.28.132023年
6)27.36.932020年
7)27.36.292020年
8)27.46.092020年
9)27.47.762023年
10)27.50.322023年

20年は、上位3人が従来の日本記録(27.29.69)を上回り、入賞者8人中6人が自己ベスト、15人が27分台でフィニッシュするという日本陸上競技史上最高レベルのレースとなった。同一レースでの日本人の「27分台15人」は、すべての競技会を含めて現在でも史上最多人数だ(歴代2位は、21年・八王子ロングディスタンス・第7組の14人)。そして20年の日本記録(27.18.04)を上位3人が破ったのが23年で、5着までが着順別最高記録。9・10着も従来の最高を上回った。しかし、27分台は12着までで、20年の15着までには及ばなかった。今回は、エントリー記録の27分台が史上最多の28名。気象状況に恵まれれば、上位もその後方も史上最高レベルになるかもしれない。


◆2015年以降の世界大会の日本代表とその成績

2015年以降の世界選手権と五輪の代表と本番での成績は以下のとおり。

<至近7世界大会の代表と成績>
「★」は、今回の日本選手権出場者。

2015北京世界選手権18)28.25.77鎧坂哲哉(旭化成)
 22)29.50.22村山謙太(旭化成)
 23)30.08.35設楽悠汰(Honda)
   
2016リオデジャネイロ五輪17)27.51.94大迫傑(Nike ORPJT)
 29)28.55.23設楽悠汰(Honda)
 30)29.02.51村山謙太(旭化成)
   
2017ロンドン世界選手権出場者なし 
   
2019ドーハ世界選手権出場者なし 
   
2021東京五輪17)28.18.37相澤晃(旭化成)★
 22)29.01.31伊藤達彦(Honda)
   
2022オレゴン世界選手権20)28.24.35田澤廉(駒大)★
 22)28.57.85伊藤達彦(Honda)
   
2023ブダペスト世界選手権15)28.25.85田澤廉(トヨタ自動車)★

これまでの世界大会代表で今回出場するのは、相澤と田澤。16年リオデジャネイロ五輪を最後に、誰も出場できなかったのが2回。3人のフルエントリーができていない。今回のパリ五輪には、8年ぶりにトリオで出場してもらいたいものだ。


野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)


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【第108回日本選手権・10000m特設サイト】


https://www.jaaf.or.jp/jch/108/10000m/



【第107回日本選手権・10000mアーカイブ】




【大会概要】

■大会名:第108回日本陸上競技選手権大会・10000m
■開催日程:5月3日(金・祝)
■開催会場:静岡・エコパスタジアム
■実施種目:19:30 女子10000m、20:10 男子10000m
■申込記録
男子:28分16秒00 女子:32分30秒00(5000m:15分40秒00)
■申込記録有効期間
2023年1月1日から2024年4月14日まで
■ターゲットナンバー
男子:30名 女子:30名
詳細はこちら(大会要項

【パリ五輪 参加標準記録】

■参加標準記録
男子:27分00秒00 女子:30分40秒00
■参加標準記録有効期間
2022年12月31日から2024年6月30日まで

【パリ五輪 日本代表内定について】

パリ2024オリンピック競技大会 トラック&フィールド種目日本代表選手選考要項 より抜粋

1)ブダペスト2023世界陸上競技選手権大会で3位以内の成績を収めた日本人最上位の競技者で、参加資格有効期間内に、ワールドランキング対象競技会において参加標準記録を満たした競技者。
2)1)に該当者がいない種目において、ブダペスト2023世界陸上競技選手権大会で8位以内の成績を収めた日本人最上位の競技者廣中璃梨佳で、2023年11月1日から2024年6月30日までに、ワールドランキング対象競技会において参加標準記録を満たした競技者。
3)第107回日本選手権・10000m優勝者で、第107回日本選手権・10000m終了時点までに参加標準記録を満たした競技者。
4)第108回日本選手権の優勝者であって、参加資格有効期間内に参加標準記録を満たした競技者。

パリ2024オリンピック日本代表選手選考ガイド(画像をクリック!)


【パリ五輪 参加有資格者一覧】

https://www.jaaf.or.jp/news/article/18659/



【日本選手権】4月20日チケット発売開始!

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