2017.07.15(土)委員会

【Subject5】東京2020オリンピックマラソン強化キックオフミーテキング報告

subject5 質疑応答

 最後に、原監督から、いくつかの疑問が投げかけられ、各登壇者が、それぞれに自身の考えを述べました。

■駅伝とマラソン指導の違い(選手との向き合い方)

原:駅伝とマラソンにおける指導の違いや選手との向き合い方について、瀬古さん、ご意見を。

瀬古:箱根駅伝、あれで勘違いをしていますね。地方の大会(関東学連主催)なのに、ちょっと頑張るともう天下を取ったみたいに放送されます。そんなに力もない選手なのに、報道だけはものすごい。そうすると選手は勘違いしちゃうんです。そこは監督たちが、厳しく言っていかないと。

原:はい、頑張ります。坂口さんは、どう思われますか?

坂口:マラソンはもともと設計図が違うので、駅伝の練習として30kmや40kmをしたり、1000mを10本、15本やったりしても、マラソンは走れません。マラソンという設計図のなかでやっていかないと。瀬古さんが言われたように、マラソンがあって駅伝はあるけれど、駅伝があってマラソンはないんです。駅伝も駅伝で大変だと思いますが、マラソン選手を育てるのは時間がかかるし、めちゃくちゃ労力がかかります。本当に情熱をかけてやらないと…。できてチームで1人か2人。だからこそ、やはりマラソンは別に考えてもらいたいですね。
そして、もう1つ。陸連で合宿を計画していますけれど、集めてこのトレーニングをやれ、競えということをやろうとしているわけではなく、できれば指導者にも来てもらいたいんです。一番選手を知っているのは指導者なので。そして、互いに刺激しあって強化していければと思っています。ただし、自費になってしまうとは思うのですが…。

原:なかなか陸連はお金がないようで、各所属チームにお願いする形になるそうですが、その予算確保には、瀬古さんから頼んでいただくことはできますよね?

瀬古:そりゃ、伝えるよ。大丈夫!

原:瀬古さんに協力していただけるとのことですので(笑)、ぜひ、チームジャパンとして行きましょう。

山下:選手との向き合い方に関してですが、私は、ロンドン五輪に向けてと、リオ五輪に向けてとでは、チームのなかで駅伝とマラソンの指導の仕方を変えました。ロンドン五輪のときは駅伝をやりながらマラソンをやるということで、選手を出す(尾崎好美)ところまで行きました。そして、リオに向けては、スタッフと会社にわがままをお願いして、駅伝はスタッフに任せ、完全にマンツーマン体制で、ほぼ1年くらい1人だけを見る形でやらせていただきました。選手は田中智美なのですが、3000m、5000m、10000m、マラソンと全部大幅に自己ベストを更新しました。その経験から、指導者が選手にちゃんと向き合えば、今の実業団のなかでもかなり行けると思うんです。だから、坂口さん同様、陸連合宿には指導者も…、極端な話、指導者だけに来ていただいてもいいのではないかと思うほどです。そこで本当に真剣にその選手のことを考えて、強化をすれば、私はかなり行けると思います。

瀬古:(マラソン強化は)絶対に他人任せにしないことですね。自分の選手は、本当に大事にする。24時間向き合う、そういうのが大事だと思います。

■フィジカルトレーニングの必要性

山下:走り込みはもちろん大事だけど、汚いフォームで走り込んでも汚いフォームが磨かれるだけだと思うので、やはりフィジカルトレーニング、リハビリトレーニングをして、正しい筋肉をつけて、その子がケガしないようにしてやることが必要です。そこが日本には欠けていると思います。

原:走るために必要な部位に筋力をつけるという発想ですね。

山下:はい。走動作をきちんと理解したうえで、その子にとって必要なところを埋めていってあげないと。

原:青山学院では、「青トレ」という形の取り組みで、パフォーマンスが上がっています。いろいろなチームでフィジカルの重要性について研究していただければと思います。


■マラソン界の東京五輪での「レガシー」は何と考えるか?

原:河野さんにお聞きしましょう。日本マラソン界の東京五輪での「レガシー」は何と思われますか?

河野:今回、選考を変えたことで、どういう形で選手が出てくるのか。それ自体がレガシーになるのかなと思っています。2020年を目標とするために、選考方法に手をつけたわけですが、そこでどれだけのボリュームで選手が今までよりも上がってくるか。また、それによって2020年をどう戦えたか。そして、その2020年までに鍛えられた選手が、2024年、2028年に活躍できるか。それらすべてがレガシーになるのではないかと。そして、今回、こういうキックオフミーティングを通して、マラソンや長距離、あるいは陸上競技界で、それぞれの指導者が学んで選手に還元していく姿勢をつくっていくことがレガシーになればいいと思います。サッカーのワールドカップでフランスの代表監督をしたロジェ・ルメールという人は、「指導者は学ぶのをやめたら、教えるのをやめなければならない」という言葉を常に肝に銘じさせているそうです。これはフランスの指導のなかのいわゆるキーワードになっています。「指導者が学ぶ」ということがまず大前提であることを共有したいと思いますし、そういう姿勢のなかで残っていった結果がレガシーという形になるのではないかと思います。


■東京五輪マラソン日本代表選手の期待値は?

原:最後に、ずばり東京五輪マラソン日本代表選手への期待値を、宣言してください。

瀬古:「目標は金メダル」と言ったけれど、それが簡単に取れるものではないというのはよくわかっています。だけど、勝負する以上はやっぱり1番。1番を目指して、2番、3番、入賞したというのだったら、これはもうしょうがない。でも、最初から諦めて練習して、やっぱり3番でしたというのでは、やっていてもつまらないと僕は思います。なので、1番になる練習をしてほしいし、1番になる生活をしてほしい。そして、1番になる応援をしましょう!

坂口:男子は新しい選手も出てきていますが、状況的には非常に厳しい。ですが、これだけ素晴らしい実業団という制度があって、そのなかでこれだけの選手層を抱えている国は、ほかにはありません。なので、みんなが今から力を合わせてやれば、きっといい結果が出ると思います。瀬古さんが金メダルを目指すと言うように、トップを目指してやっていきたいと思いますので、皆さん、よろしくお願いします。

山下:「神ってる」という言葉が流行りましたが、神がかったレースをすれば奇跡も起きると思います。絶対に金メダルを取ります。
 

※本稿は、行われたパネルディスカッションをもとに、読んで理解しやすくすることを目的として再構成しています。原則として実施された内容に沿ってまとめていますが、一部に、編集を施したり割愛したりしている箇所があります。

取材・構成:児玉育美(JAAFメディアチーム)

【Subject1】マラソン界の現状
【Subject2】日本マラソン界の課題と本質の洗い出し
【Subject3】学生アスリートを、どう強化するか
【Subject4】強化体制を考える

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