第29回南部忠平記念陸上が7月10日、札幌市の厚別公園競技場で開催され、6月末に行われた日本選手権でリオデジャネイロ五輪代表入りを果たした選手が出場したほか、追加選出を期して五輪標準記録突破を目指す選手も多数出場しました。当日は競技が開始される直前から雨模様となるあいにくのコンディション。さらに低温、強風と、記録を狙うには厳しい条件となったこともあり、残念ながら派遣標準記録、五輪参加標準記録の新たたな突破者は現れませんでした。
■男子棒高跳は五輪代表の山本選手・荻田選手が悪天候下で5m60
男子棒高跳には、五輪代表に選出されている山本聖途選手(トヨタ自動車)と荻田大樹選手(ミズノ)が出場。ともに5m50から競技を開始しました。この高さを山本が1回で、荻田選手は2回目にクリア。5m60をパスして5m70に挑みましたが、ともに越えることができず、同記録ながら試技内容の差で山本選手の優勝となりました。なお、日本選手権に優勝し、1週間前の日本大学記録会で派遣標準記録および五輪参加標準記録である(5m70)を上回る5m75を跳んだ澤野大地選手(富士通)は棄権しました。
【選手コメント】
・山本聖途選手:オリンピックを想定してどんな天候でも跳べるようにと臨んだ。この天候で5m50を1回で跳べたことは評価している。身体の状態はすごくいいので、本番に向けて、助走の最後のスピードをもっと上げられるように、しっかりとトレーニングしていきたい。
・荻田大樹選手:強風下で跳んだ織田記念で助走から踏み切りの部分のバランスを崩し、その狂いの修正に苦しんだ。時間はかかったが、1つ1つの動きを見直し、積み重ねるように改善に取り組み、ようやく「これだ」という感覚が戻ってきている。本番まで精度を高めていきたい。
・澤野大地選手:招待していただいたので出場したかったが、2週続けて負荷の高い試合を行っていたため、この天候(雨、低温)下ではケガの恐れもあると判断して棄権させていただいた。現段階では(代表選出を)待つ身だが、万全の状態で臨めるよう準備したい。
■男子三段跳は山下選手が優勝
男子三段跳には、五輪代表に選出されている長谷川大悟選手(日立ICT)が出場したほか、日本選手権を制した山本凌雅選手(順天堂大学)が参加標準記録(16m85)の突破を、5月の関東インカレでその16m85を跳んで記録的には条件を満たしながら日本選手権で3回ファウルに終わったために現段階では選出されていない山下航平選手(筑波大学)が再度記録を狙って、競技に挑みました。しかし、悪天候の影響もあり、3人とも1回目の試技でマークした記録を伸ばすことができず、16m18(+2.1)の山下が優勝、16m01(+1.4)の山本が2位、長谷川は15m89(+1.2)という結果にとどまりました。
【選手コメント】
・長谷川大悟選手:今回は、課題の確認や助走の状況を把握したいと思って臨んだ。(ベストの16m88を跳んだ)織田記念以降、助走スピードを高めることにポイントを置いてきた。今日は記録的には今ひとつだが、助走のリズムは日本選手権よりも固まってきたと感じている。やるべきことはわかっているので、あとはしっかり跳躍を積んで8月に備えたい。
■女子100mH、男子走幅跳は追い風に苦しむ
男子200mと110mH、女子100mと100mHは、決勝に加えて、記録に挑戦するチャレンジレースが設けられた今大会。女子100mHで日本選手権を獲得している木村文子選手(エディオン)が五輪参加標準記録で日本記録(金沢イボンヌ、2000年)でもある13秒00の突破に挑みました。1レース目で追い風参考記録(+3.1)ながら13秒06(+3.1m)をマークした木村選手は、2レース目は13秒12(+4.3m)でフィニッシュ。記録の突破はなりませんでした。なお、両レースとも木村選手は2着。韓国の鄭蕙林選手が12秒86、12秒91で先着しています。
男子走幅跳は1回目に7m79(+2.8)を跳んだ猿山力也選手(モンテローザ)が首位で前半を終えましたが、4回目に入って城山正太郎選手(東海大北海道)が7m84(+2.1)で逆転すると、さらに日本選手権優勝の嶺村鴻汰選手が(モンテローザ)が7m85(+3.8)をマークして、これを上回る展開となりました。しかし、20℃を切る気温と強い追い風に各選手とも苦労し、その後は記録を伸ばすことができません。城山選手は追い風1.4mのなか最終跳躍で8mを大きく超えるジャンプを見せたものの無念のファウル。嶺村選手の優勝となりました。
【選手コメント】
・木村文子選手:(参加標準記録が破れず)悔しいけれど、4年間やってきたことは間違いではなかったと実感している。やることをやれば12秒台は出る。それを証明するためにも自分がまず12秒台の世界に行くことをやり遂げたい。チャレンジし続ける。