U20カテゴリにおける世界一の座を競って、隔年で実施されているU20世界陸上競技選手権大会(以下、U20世界選手権)の第21回大会が8月5~9日、アメリカ・オレゴン州のヘイワードフィールドにおいて開催されます。今回、日本は、選手43名(男子27名、女子16名)、役員21名の代表選手団で大会に臨みますが、出発当日の7月31日、その結団式を、千葉県成田市内のホテルで行いました。
結団式には、同日の夕刻に成田空港を出発する便で現地へ移動する選手41名および役員17名が出席。見送りに来た家族や関係者、取材に訪れたメディア関係者の見守るなかで行われました。
最初に日本選手団を代表して、チームリーダーを務める強化委員会の杉井將彦シニアディレクターが挨拶に立ちました。まず、「U20世界選手権、日本代表おめでとうございます」と選手たちを祝福するところから話を始めた杉井シニアディレクターは、U20世界選手権のメダリストが、その後、世界選手権やオリンピックでも活躍しているという世界的な傾向から、「日本陸連強化育成部では最重要競技会として位置づけている」と説明。「日本チームとしても、この大会で優勝した選手が、今、日本代表として活躍してくれている。まず、私たちは、この大会で成果を上げたいと考えている」と、チームジャパンとしての方針を話しました。
そして、自身の「忘れられないシーン」として、2018年タンペレ大会(フィンランド)大会で、日本勢の金メダル獲得が続いた際に、会場でジャパンコールが起きたり、多くの祝福を受けたりしたエピソードを挙げ、「今回、この世代の本当の意味での日本代表選手、戦う力がある人たちが揃ってくれた。ぜひ、あのタンペレの興奮を、オレゴンで見せていただきたい」と呼びかけました。
さらに、「代表に選考するにあたっては、入賞する力、メダルを取る力、そして優勝の可能性があるというところで皆さんを選考している」と述べたうえで、これらを実現するために、「まずは、この大会で自己記録を出すということが、その条件の一つになってくると思っている」と指摘。「国内とは全く違う環境下で、どうやって自己記録を更新するか。気を引き締めて、ぜひ、その瞬間に向けて、準備をしてほしい。このなかから1人でも多く、日の丸を掲揚して君が代が流れる、そんなシーンをつくってくれることを期待している」と、選手たちを激励しました。
次に、日本選手団の男女キャプテンを務めるアツオビンアンドリュウ選手(九州共立大学)とガードナレイチェル麻由(早稲田大学)がそれぞれ登壇。選手を代表して、大会に向けての意気込みを述べました。
男子キャプテン就任を、「このような大役を任せていただき、大変光栄に思う」と述べたアツオビン選手は、「ここにいる全員が、日本代表としての誇りを胸に、それぞれ厳しい練習を積み重ねて、ここまでたどり着いたと思う。世界は、これまで以上にハイレベルで、より一瞬の判断が勝敗を左右する舞台となっている。一人一人が自信を持って、仲間を信じて、応援してくださる方々への感謝の気持ちを忘れずに、チームジャパン全員で最高の結果を持ち帰ることができるよう全力で戦い抜きましょう」と仲間たちに力強く呼びかけました。
女子キャプテンに指名されたガードナ選手は、「私たちは、日本代表としての誇りを胸に、日の丸を背負い、この舞台で戦えることを大変誇らしく思っている。選手一人一人が選ばれた者としての自覚と責任を持ち、真摯に競技に向き合っていく」と選手全員の思いを代弁する決意を述べたうえで、「私自身の目標としては、決勝の舞台に駒を進め、U20日本記録の更新を目標に全力を尽くしたい」ときっぱり。「日本代表としての誇りを胸に、チーム一丸となって、世界に挑んでいきましょう」と締めくくりました。
続いて行われたのは、「日本代表選手等の肖像等および日本代表の公式衣類の着用」に関する説明です。これは、ほとんどの競技者が、このU20世界選手権で初めて日本代表として選手団入りする陣容であるなか、日本代表として求められる自覚や責任を、U20年代のうちから正しく理解してもらうことを期してのものです。ここでは、日本陸連がどのくらいの金額の事業規模で運営されているかや、支出および収入の大まかな内訳などが解説されたうえで、オフィシャルパートナーからの協賛金が、全収入の約半分を占めることが、事務局担当者から示されました。そのうえで、U20世界選手権のような国際競技会派遣における支出も、「そうしたオフィシャルパートナーが、皆さんの活動に共感し、支えてくださっている」ことを示唆。こうした説明を受けて、認識を深めた選手たちは、真剣な表情で配布された資料に目を通し、日本代表として活動する期間に必要となる留意事項を確認していました。
最後に、フォトセッションの時間が設けられ、集合写真を撮影して結団式は終了。日本選手団は、その後、成田空港へ移動し、シアトルを経由して現地へ移動する夕刻の便で、日本を発ちました。大会は、8月5日から9日まで5日間の日程で開催。チームジャパンの活躍の模様は、日本陸連公式X等で、ご紹介の予定です。また、大会公式サイト(英語)などU20世界選手権に関する情報は、こちら( https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/2027/ )をご参照ください。
また、結団式終了後には、男子キャプテンのアツビオン選手、女子キャプテンのガードナ選手のほか、男子400mハードルで今季U20世界リスト1位を占めている後藤大樹選手(洛南高校)など上位での活躍が期待される選手8名が囲み取材に応じました。各選手のコメントは、以下の通りです。
【代表選手コメント(要旨)】
アツオビンアンドリュウ(九州共立大学) ※男子キャプテン
出場種目:男子ハンマー投
今シーズンは、記録も順調に伸ばしていくことができていて、また、自己ベストも連続的に更新できているので、今回も狙えそうだなという実感を持っている。男子キャプテンに任命されたが、選ばれたからといって「なんかやるぞ」という思いはなく、本当に変わらず、ただ結果を出すだけだと思っている。キャプテンのプレッシャーとかは、特に感じていない。コミュニケーションは普通に、今まで通り取っていこうと思っているが、結果でしっかり(日本チームを)引っ張っていけるようなキャプテンになれればと思っている。
U20世界選手権は、自分のなかで、今シーズン一番の目標と捉えていた大会。しっかり自分のベストパフォーマンスを出せるようにしたい。大会での目標は、自己ベストおよびU20日本記録(ともに73m54)を更新すること。順位としては、3位以内…メダル獲得を目指して頑張っていきたい。
ガードナレイチェル麻由(早稲田大学) ※女子キャプテン
出場種目:女子400mハードル
今シーズンは、着々と自己ベストも更新でき、日本選手権の決勝という夢の舞台で5位に入賞できたので、いい波が来ていると思っている。U20世界選手権では、しっかりと決勝に舞台に駒を進めて、自己ベスト(56秒99)の更新、そしてU20日本記録(56秒75、石塚晴子、2016年)の更新を目指して全力を尽くしたい。自分が将来、国際大会の日本代表に当たり前のように選ばれる選手になるためには、U20世界選手権は通過点だと思っている。まずは、ここでしっかり決勝の舞台に上がって、結果を残したい。
私は、前半からスピードを出して、そのまま維持できることが持ち味。そこをしっかり生かしたい。また、日本選手権では後半で少しペースが落ちて順位を下げてしまったので、後半をしっかり走りきれるよう頑張りたい。
(キャプテン就任については)まさか自分がキャプテンに選ばれると思っていなかったのですごく驚いた。大役を任せてもらえることを誇りに思って、結果を残してキャプテンとして(チームに)勢いをつけられたらなと思う。
清水空跳(星稜高校)
出場種目:男子100m・男子4×100mリレー
今季は、4月に肉離れをして、7月5日の布勢スプリントが(100mとしての)初戦となった。ケガ明けの初戦で10秒28(+1.2)というのはかなり速いタイムで、自分のなかでも満足できるものだったが、そのあとまた再発してしまった。ただ、その後はしっかり調整して、ここまでやってきたつもり。U20世界選手権は、タイムも順位も、やれるすべてを出しきっていきたいと思っている。
U20世界選手権は、自分にとって、今年一番大きな大会であるし、自分が一番取りたいタイトルでもある大会。自己ベスト(10秒00、2025年)に近い10秒0台だったり、1台だったりを目標にしたいところだが、まずは、しっかり走りきるところを見せたい。ケガが長引いたことや再発に気をつける必要もあることなど、不安なところはあるが、そのなかで、できるパフォーマンスをしっかりしていきたい。
注:清水選手は事前に肉離れを発症していましたが、選手本人および関係者で協議のうえ、回復状況を確認しながら、出場を目指して準備を進めてきました。しかし、現地で改めてコンディションを確認した結果、選手の安全と今後を最優先に考え、日本代表チームとして総合的に判断。現地時間の8月3日に欠場を決定しました。(8月4日追記)
菅野翔唯(東京農業大学第二高校)
出場種目:男子100m・男子4×100mリレー
今季は、初戦のころは10秒6~7台など記録が伸びない時期もあって、けっこう不安を覚えることもあったのだが、日本選手権から一気に調子が良くなって(予選で10秒16の自己新記録をマークし、準決勝までに進出)、現在はいい感じで来ている。このままPB(パーソナルベスト)を狙って頑張りたい。
去年の試合や今年のシニアの大会で、自分は後半で力んでしまう傾向があることに気づいたので、日本選手権以降は、顧問と話し合いながら、自分の走りができるようにすることを意識した練習に取り組んできた。戦う相手はどんどん速くなっているけれど、自分がやることは変わらない。自分の走りができれば、自然と順位もタイムもついてくると思うので、(U20世界選手権では)自分の走りをしたい。また、この大会は、今回だけで終わるのではなく、来年の世界選手権や再来年にあるオリンピックに向けての良い経験になると考えている。今回の経験を生かして、もっともっと速くなりたいなと思っている。
世界大会となると、いつもとは違う環境で戦うことになる。自分よりも速い人がいっぱいいるが、そのなかでも自分の走りをすれば競り勝つことも可能だと思う。そういう意味で、「自分の力が、どのくらい世界に通用するのかな」という楽しみもある。目標は、PBを更新して、メダルを獲得すること。自分は後半が弱いけれど、海外の選手はだいたい後半に追い上げてくると思うので、そこで自分の走りをして、競り勝ちたい。
本田桜二郎(早稲田大学)
出場種目:男子1500m・男子3000m
日本でやれることは、すべてやってきた状態。1500mでいうなら、(予選で3分37秒53の自己新記録をマークし、決勝では2位の成績を収めた)日本選手権の時よりも、状態的には上がっている。日本の皆さんの期待に応えられるような結果を残していきたいなと思っている。今季、これまでの試合は、本当に満点に近い結果を残すことができている。U20世界選手権は、前半シーズン最後の試合。シーズン全体を振り返ったときに、「今年の前半シーズンは本当に悔いなくできたな」という状態になるような試合をしていきたい。
ここまで、国内で出場してきたレースでは、(シニアカテゴリーにおいて)だんだんと試合のレベルも上がっているなかで、そのほとんどで結果を残すことができた。今回のU20世界選手権においても、世界だからと特に臆することなく、自分のレースができると思っている。この「臆することない走り」というのは、自分の武器と思っていて、世界の舞台であっても過度にプレッシャーを感じることなくレースを進めることができる。誰と一緒に走るのかはわからないが、自分よりレベルの高い選手が相手であっても、決めているレース展開ができることは、自分の強みになると思っている。
大会には、1500mと3000mの2種目に出場するが、自分の得意種目である1500mでのメダル獲得が一番の目標。走り自体は、日本でのプレースタイルと変えたくないので、大会本番でも積極的な走りをして、そのなかで優勝やメダルを目指していきたい。また、3000mは、「世界を経験できたらいいな」という位置づけで出場を決めた。まずはついていって、できれば入賞できたらいいなと考えている。
ドルーリー朱瑛里(岡山陸協) ※ダイヤモンドアスリート
出場種目:女子1500m
ここまでいろいろなことがあって、必ずしも順調ではなかったが、こうして最終的に、U20世界選手権の代表に選ばれることができた。私自身、この大会に向けては、すごく準備してきたものがあるので、本番では、しっかり自分の力を出しきることができればいいなと思っている。
順調でなかったときは、いろいろな人のサポートを借りたり、自分と向き合う時間をよりしっかりつくったりすることに取り組んできた。体調面や練習環境の課題などは、そうしたなかでのいろいろな人の支えがあったからこそ、自分は今、ここにいられるのだと感謝している。
U20世界選手権に向けては、今、ワクワクしているという気持ちが一番にある。大会に向けた練習も順調に積むことができているので、「自分の力を発揮して、どれだけ勝負することができるのか」というところを、すごく楽しみに感じている部分が大きい。
大会では、予選・決勝をしっかり走りきって、決勝では、優勝争いにも踏み込めるようなレースがしたい。これまで多くの人に応援していただき、支えてもらってきたので、そういった方々に、しっかりと結果で恩返しできるような走りを見せることができたらいいなと思う。また、秋には、(ワシントン大学進学のために)拠点が変わるという、自分にとって大きな環境の変化を迎えることになる。大学に入学する前の最後のレースということで、自分自身、そこでしっかりと結果を出して大学に行きたいと思っているので、そういう意味でも、すごく楽しみな部分が大きいと感じている。
古賀ジェレミー(順天堂大学) ※ダイヤモンドアスリート
出場種目:男子110mハードル
今季は山あり谷ありといった感じで、うまく行くこともあれば、(転倒するなど)悪い結果に終わることもあって、自分の気持ちという面でも成長できる部分がたくさんあった。U20世界選手権では、のびのびと競技して、世界大会の金メダルを取りたいなと思っている。
「谷」となる結果だったときも、悪い「谷」ではなく、次に試合に向けて練習する機会をいっぱい持てるような試合内容だった。U20世界選手権では、ここまでに高めてきた力を見せることができたらなと思う。
カテゴリは違うけれども、自分にとっては小さいころから夢見ていた世界大会。緊張する思いもあるけれど、楽しみだなという気持ちのほうがとても大きく、今はすごくワクワクしている。自分は、周りの人を意識してしまうと、自分のレースができるタイプではないので、いつもと同じように、今までやってきたことを信じて、自分のレースができればと考えている。
大会での目標は、U20アジア記録(12秒96、陳圓将<中国>、2024年)を更新しての金メダル獲得。その金メダルを、お世話になった方々…お母さんとか、先生とかに、いっぱいかけてもらえるようにしたい。ここまでのレースでは、「(12秒台に)行けそう、行けそう」と(気持ちがはやって)転んだりしているので、この大会に向けた練習では、「地に足を着けて狙っていく」と表現している動きを意識してきた。その練習がすごくいい状態でできていて、ハイハードルだけでなく、ジュニアハードル(U20世界選手権で用いられる規格、高さ99cm)にもつながってくると思っている。その部分を本番のレースを出すことができれば、面白い戦いができるのではないかと楽しみにしている。
後藤大樹(洛南高校) ※ダイヤモンドアスリートNextage
出場種目:男子400mハードル
今シーズンは、自分の想像を超えてきたレースが多かった。今回のU20世界選手権でも同じように想像を超えるレースができたらいいなと思っている。
(想像を超えるという点では)去年、洛南高校に入って、まず1年目で(インターハイで)優勝できるとは思っていなかったし、今年の日本選手権も「出られたらいいね」くらいの感覚だった。なので、今、こういう場に立っている自分が、まだ信じられない思いのほうが大きいというのが正直なところである。ただ、U20世界選手権は、ずっと目標にしてきた大会。また、自分の夢の舞台であるアメリカで試合ができるということで、本当に、この日が来ることを楽しみに待っていた。(楽しみと不安を挙がるとしたら)今の気持ちは、「楽しみ100%」。まずは「アメリカを楽しむ」という気持ちが一番大きい。
(U20世界歴代4位で、U20今季世界最高記録となる48秒09で優勝した)日本選手権以降も試合が続いていたが、1つ1つの試合を調整するというよりは、レースを練習のつもりというか、いわば練習の延長という感覚で臨んできていた。そういう意味で、この大会に向けて、いい感じに調整してくることができたと思っている。
U20世界選手権で目指すのは、タイム(を狙う)というよりは、海外の舞台で勝ちきるということ。「楽しみながら勝ちきる」というところを意識して頑張っていきたい。今回は、自分にとっては初めての世界大会で、どんな選手がいるのか全くわからないし、また、どういう会場なのかもわからない。そういう点で、(9月に出場する)アジア大会であったり、これから(挑戦していくことになる)の世界陸上だったりに出ていくためのステップアップの場になるのかなと感じている。
海外の大会で日本と一番大きく違うのは、(ウォーミング)アップの部分かなと考えている。非常に恵まれている日本(の環境や設備)とはかなり違うはず。海外での勝ち方、海外での適応力が試されると思う。しっかりそこで勝ちきる力を、この大会で身につけたい。
文・写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)



























