2022.05.30(月)大会

【第106回日本選手権展望】女子跳躍編 ~走幅跳・今シーズン連勝中の秦が世界選手権参加標準記録に挑戦!三段跳・森本は4連覇を目指す!~



第106回日本陸上競技選手権大会」が6月9~12日、大阪市のヤンマースタジアム長居で開催される。今回は、7月15~24日にアメリカで行われるオレゴン世界陸上競技選手権大会の日本代表選手選考競技会を兼ねており、5月7日に実施された男女10000mと、6月4~5日に実施される男女混成競技(十種競技、七種競技)を除くトラック&フィールド34種目(男女各17種目)の決勝が組まれるタイムテーブル。2022年度日本チャンピオンの座が競われるとともに、2024年パリオリンピックに向けた最初のビッグステージとなる世界選手権の出場権を懸けた戦いが繰り広げられる。

オレゴン世界選手権の出場資格は、昨年の東京オリンピックと同様に、ワールドアスレティックス(WA)が設定した参加標準記録を突破した者と、各種目におけるターゲットナンバーを満たすまでのWAワールドランキング上位者に与えられる。日本における選考は、日本陸連が定めた代表選考要項(https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202112/16_191504.pdf )に則って進められるため、日本選手権で即時内定を決めるためには、3位以内の成績を上げたうえで、日本選手権での競技を終えた段階で参加標準記録を突破していることが条件。まず、これを満たした競技者が、第1次日本代表選手として大会翌日の6月13日に発表され、以降、条件を満たした段階で随時追加がなされ、参加標準記録有効期間が終了する6月26日以降に、全代表が出揃うことになる。

即時内定とならなかった場合でも、日本選手権における成績(順位)が大きな鍵となるだけに、どの種目でも大激戦となることは必至。ここでは、オレゴン世界選手権代表の座を巡る戦いに焦点を当てて、各種目の注目選手をご紹介していく。

※エントリー状況、記録・競技結果、ワールドランキング等の情報は5月27日判明分により構成。ワールドランキング情報は、同日以降に変動が生じている場合もある。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト

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【女子走高跳】

今シーズン好調の高橋渚、昨年チャンピオンの武山による白熱した同級生対決!

全選手の出場資格記録をみると、2名の1m80を筆頭として、1m78が3名、1m76が8名。今季日本リストを見ても、2名の1m80を筆頭に、1m76以上が7名、1m74以上が11名となっており、特に入賞を巡るラインを予測することは、非常に難しい状況になっている。
優勝に近いところにいるといえるのは、髙橋渚(メイスンワーク)か。昨年の日本選手権は4位にとどまったが、秋に行われた日本インカレを制した際にマークした1m79は、2021年日本リスト1位となった。3月の日本選手権室内では、日本大1年時の2018年日本選手権(2位タイ)で成功した自己記録に並ぶ1m80をクリアして、屋外より先に「日本一」の称号を手に入れた。屋外シーズンに入ってからも4月の日本学生個人選手権で再び1m80を跳んでいる。東京高3年の2017年にインターハイを制して以降は、全国大会では上位争いの常連といえる存在で、日本インカレも2回の優勝経験を持っている。社会人として臨む今大会で、初のタイトル獲得を、自己記録を更新して実現させたい。


高橋に続いて、5月22日に1m80をクリアしてきたのが、前回チャンピオンで、高橋とは同学年となる武山玲奈(エディオン)だ。この記録は、昨年、一昨年とマークしている1m78を更新する自己新記録。日本選手権室内では1m74で2位タイの成績を収めたものの、屋外では1m70、1m65と安定感を欠く結果が続いていただけに、「エンジンがかかった」という状況であるのなら、連覇に挑む日本選手権での高橋との同級生対決は、白熱したものになるだろう。


今季日本リストで、この2人に続いているのが伊藤楓(日本体育大)だ。5月20日の関東インカレで1m77を跳んで1年生優勝を果たしている。髙橋と同じく東京高の出身で、自己記録は昨年マークした1m78。この記録を上回ってくるようだと、武山とともに2位タイの成績を収めた日本選手権室内同様に、再び先輩の髙橋とともに表彰台に立つことも可能だろう。このほかでは出場者のなかで最も高い自己記録(1m83、2017年)を持つ仲野春花(ニッパツ)は、早稲田大時代の2017年・2018年に連覇を果たしている選手。昨年は1m70にとどまったが、今季は九州実業団で1m76をクリア。調子を上げてきている。シーズンベストの跳躍で、再び上位争いに絡んでいきたい。
一方で、1m80に届かないレベルでの戦いになってしまうようだと、勝負の行方は全くわからなくなってくる。優勝争い、上位争い、そして入賞争いともに、1回の試技のミスが明暗を分けることになるだろう。



【女子棒高跳】

10年ぶりに、大阪長居での日本記録更新なるか!?

2012年6月9日に日本選手権で樹立された4m40の日本記録(我孫子智美)が、10年と1日後となる2022年6月10日に、当時と同じ長居スタジアムで更新されるかもしれない。というよりは、オレゴン世界選手権参加標準記録が4m70であることを考えると、ぜひとも更新して、少しでもその差を縮めてほしいと願わずにはいられない。
今季好調なのは、2019年・2020年と連覇を果たしている那須眞由(KAGOTANI)だ。兵庫リレーカーニバルで4m33をクリアして、2019年にマークした自己記録4m25を3年ぶりに更新して優勝を果たすと、翌週行われた木南記念でも4m20で制している。どちらも雨のコンディション下での結果であること、クリアはならなかったが兵庫リレーカーニバルでは4m41の日本記録にも挑戦したことは、大きな自信となったはず。気象状況に恵まれれば、更新の実現は十分に可能といえるだろう。
5月5日の水戸招待で、その那須に勝利しているのが竜田夏苗(ニッパツ)。日本選手権では2013年と2015年にタイトルを獲得している選手だ。今季は、4月に4m15をクリア。水戸招待を4m13で制したのちは、東日本実業団を4m10で優勝した。2019年に4m30を跳んでいて実力は十分。ただし、好不調の波が大きい点が課題で、これが本番でどう出るか。


屋内で4m30の自己記録(学生記録、2020年)を持つ諸田美咲(栃木スポ協)は、前回、初優勝を果たした選手。3月の日本選手権室内では4m21を跳んで2連覇を果たしており、これに続き屋外でも連覇に挑むことになるが、屋外でのシーズンベストは、東日本実業団での4m10(2位)にとどまっている。連覇達成なるかは、日本選手権室内の際に痛めた脚の回復次第といった感がある。


この3選手に続く層では、学生陣による上位入賞を巡る戦いが熾烈となりそうだ。2020年に4m13(高校記録)を跳んでいる古林愛理(園田学園女子大)、2019年に4m15のU20日本記録を樹立している田中伶奈(香川大)は自己記録を更新してトップ3に迫っていきたい。また、水戸国際で4m03の自己新をマークしている村田蒼空(前橋女高)は、その際に攻略できなかった4m13の高校記録に挑戦していく試合となるだろう。昨年4m01の高1最高をクリアしている柳川美空(前橋育英高)は2020年日本選手権で3m90の中学最高記録を樹立して6位に食い込んだ実績を持つ。今季は屋外では3m83がシーズンベストだが、3大会で3m80台の記録を残しているほか、3月のU20日本選手権室内では3m90(村田に続き2位)をマークしている。条件が整えば、4m02のU18日本記録(山地里奈、2017年)を更新するジャンプが期待できそうだ。



【女子走幅跳】

今シーズン連勝中の秦が世界選手権参加標準記録に挑む!

オレゴン世界選手権の参加標準記録は、昨年の東京オリンピックと同じ6m82で、ターゲットナンバーは32。前回大会の展望でもスケールアップを紹介した秦澄美鈴(シバタ工業)が、今季はさらなる充実ぶりを見せている。昨年の屋外シーズンは、2回目の優勝を果たした日本選手権(6m40)を筆頭に、出場全試合を6m40以上の記録で優勝。自己記録も6m65まで更新したが、その勢いは、今年に入って加速している。3月の日本選手権室内で室内日本記録(6m57、花岡麻帆、2003年)に迫る6m52をマーク。屋外では初戦となったブリスベントラッククラシック(オーストラリア、オープン参加)を6m42(+1.6)で滑りだすと、国内初戦の兵庫リレーカーニバル(6m60、+1.8)、連戦の疲労を考慮して2回の試技に絞った木南記念(6m43、-0.6)、WAコンチネンタルツアーゴールドとして開催されたセイコーGGP(6m63、+0.5)とレベルの高い水準で、連勝を続けているのだ。
これによりWAワールドランキングでは21位に浮上。東京オリンピックでは実現ならなかったワールドランキングによる出場が十分に見えてくる状況となった。シーズンベストに迫る記録で優勝を果たせば、その可能性はさらに高まっていくことになるが、秦本人は、頼もしくも6m82の参加標準記録を突破しての出場に強い意欲を見せている。実現すれば、初の世界選手権出場だけでなく、2006年に長居スタジアムを沸かせた6m86の日本記録(池田久美子)に迫ることとなる。


秦を追うのは、兵庫リレーカーニバル、木南記念、セイコーGGP(3位:日本人2位)で秦に続く成績を残している髙良彩花(筑波大)だ。自己記録の6m44(2018年)は今もU20日本記録、U18日本記録、高校記録として残る。日本選手権では園田学園高2年の2017年に初優勝、2018年と2020年にも制している選手。筑波大4年となった今季は、日本学生個人選手権優勝(6m20)でシーズンインすると、関東インカレでは後半に記録を上げていく試技内容で、セカンドベストの6m38をマークして4連覇を達成した。4年ぶりの自己記録更新が見える状態に仕上がっていて、日本選手権でこれが飛び出せば、秦に土をつける可能性もある。


上位争いは、この2人に絞られそうだが、表彰台や入賞を巡る争いは混戦必至の状況だ。兵庫リレー、木南記念、セイコーGGPの3大会で秦・髙良に続いたのは、今季日本リスト3位(6m20)につけている小玉葵水(東海大北海道)。昨年マークしている6m24の自己記録を更新して、初の日本選手権表彰台を狙える力はついている。前回6m20(追い風参考)を跳んで3位となった竹内真弥(ミズノ)は、100mHでも4位に入賞した選手。走幅跳と100mHの2種目に取り組むなかで着実に力をつけてきた。走幅跳の自己記録は日本女子体育大3年時の2019年に日本インカレを制した際にマークした6m28。地元大阪でこれに迫る記録をマークして、「表彰台の常連」を目指したい。昨年、自己記録を6m25まで伸ばした嶺村優(オリコ)は、日本選手権は、2020年・2021年と続けて4位の成績を残している。初の表彰台なるかにも注目だ。


【女子三段跳】

室内日本記録保持者の森本が4連覇を目指す!

女子三段跳のオレゴン参加標準記録は14m32で、日本記録(14m04、花岡麻帆、1999年)を出しても届かない。まずは14m台の突入と、日本記録を上回っていくことが必要といわれながらも、なかなか記録の水準が高まっていかない状況が長く続いていた。日本陸連は、この種目も、走幅跳や円盤投などとともにWAワールドランキングの順位を上げていくために、「まずはアジアでメダル獲得を狙っていくなかで、世界大会出場に近づけていく」方針を掲げているが、コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、2020年2月に予定されていたアジア室内以降、アジア選手権、アジア大会と、WAワールドランキングにおいて高いポイントが得られるカテゴリーに属する大会が軒並み中止(あるいは延期)に追い込まれている。ヨーロッパをはじめとする地域では同クラスの大会が実施されていることを考えると、非常に不利といえるだろう。
しかし、それに負けまいと複数の選手たちが活況を見せている。先頭に立って牽引しているのが、現在3連覇中の森本麻里子(内田建設AC)だ。2018年に13m台に突入すると着実に記録を伸ばし、昨年は日本選手権で13m37をマーク(日本歴代8位)。今年は3月の日本選手権室内で13m31を跳んで、1999年から据え置かれていた室内日本記録(13m27、花岡麻帆)を更新して2連覇を達成する好スタートを見せると、屋外初戦の織田記念を日本歴代3位となる13m56で優勝。中3日で臨んだ静岡国際をセカンドベストの13m55で制し、5月15日の東日本実業団(13m44)まで連勝を続けている。織田記念こそ記録にばらつきがみられたが、以降の大会では、風の状況を問わずファウルをすることなく確実に13m30を上回るシリーズを残しており、記録の水準、安定感ともに、一段階レベルアップした印象だ。森本自身は、14m04の日本記録を視野に入れつつも、「(32というオレゴン世界選手権の)ターゲットナンバー内に入っていくためには、13m80以上のアベレージが必要」と、まずは13m台後半の記録での安定を目指している。これを実現させるパフォーマンスで、地元大阪で4連覇を果たしたい。


そしてもう1人、動向を注目したいのが今春から社会人となった髙島真織子(九電工)だ。昨年、13m台を突入したばかりだが、織田記念で13m35をマークすると、静岡国際では日本歴代6位に浮上する13m48を2回跳んで、前半は森本に先行した。日本学生個人選手権(オープン出場)では4.1mの追い風参考ながら13m52の跳躍も見せている。2人が13m台後半の記録で、シーソーゲームを繰り広げるようだと、記録・勝負ともにワクワクするような戦いになるだろう。


今季、日本選手権室内、織田記念、静岡国際と、この2人に続いて3位を占めている船田茜理(武庫川女子大)は、静岡国際で13m18をマークして、昨年出した13m11の自己記録を更新している。また、前回の日本選手権で2位に食い込んだ髙良彩花(筑波大)は、三段跳の技術練習はほぼしていないという状況ながら、日本学生個人選手権(13m19、+2.1)と関東インカレ(12m93、+0.5)でともに走幅跳との2冠を果たしている。自己記録は昨年マークした13m20だが、「13m30~40くらいは跳べる」感触は持てているという。複数による競り合いのなかで、まずはトップエイトのラインが13m台に引き上げられるような状態になることを期待したい。


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■オレゴン2022世界陸上競技選手権大会 日本代表選手選考要項
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