2022.03.08(火)大会

【世界競歩チーム選手権】川野が東京五輪に続く世界大会4位入賞!~男子35km競歩 レポート&コメント~



オマーンの首都マスカットにおいて開催されているワールドアスレティックス(WA)主催の「世界競歩チーム選手権」は、3月5日に大会2日目を迎えました。

この日は、男女35km競歩と男子20km競歩が行われるタイムテーブル。日本勢は、個人・団体総合でともに金メダルを獲得した男子35kmと男子20kmに、それぞれ3選手が出場しました。
暑さを避けるために7時スタートで実施された男子35km競歩では、川野将虎選手(旭化成)が2時間37分36秒で4位に入賞、また、髙橋和生選手(ADワークスグループ)が2時間39分08秒で10位、勝木隼人選手(自衛隊体育学校)が43位・3時間03分01秒でフィニッシュ。各国上位3名の順位を合計したポイントで争う国別団体では4位の成績を収めました。

これまでの50kmに代わる新規種目として、世界大会で初めて採用された35kmは、男女同時に行われました。号砲が鳴った午前7時は、気温24℃、湿度59%というコンディションでしたが、太陽の位置が高くなっていくにつれて、日陰の全くないコース上に強い日差しが降り注ぎ、選手たちの影がより濃く路面に映し出されていくようになっていきます。会場では、気温は29℃まで上がる見通しであるとのコメンタリーも流れ、気温上昇に伴う暑さが懸念されるなか、レースはスタート。ちなみに、競技終了時点の気温は28℃まで上がる厳しい条件でした。

前日に行われた女子20kmと同じく、片道1kmを折り返して2kmを周回していくコースは、大きなカーブを描いているうえに、1kmのなかで27mの高低差と、「坂」と表現したほうが正確といえるほどの起伏があり、選手たちは、その上り下りを何度も繰り返す形となります。

男子35kmに出場したのは全部で65選手。初めての35kmであることや、前日の女子20kmで得られたコース特性、終盤の気象条件が過酷になることへの懸念、チーム対抗としての戦略などを考慮されたようで、レースはスローな滑りだしとなりました。最初の1kmは先頭が4分57秒で通過。大きく後れた者を除く55名弱の選手が、大きな塊のまま進んでいきます。先頭集団は最初の5kmを23分28秒で通過しましたが、このあたりから、3km過ぎで前方に出てきたミロスラフ・ウラドニク選手(スロバキア)が、リードを広げると他選手がペースを上げて追いつくという状況が何度か繰り返されました。10kmは46分03秒、15kmは1時間08分47秒、20kmは1時間31分18秒で通過。下り基調となる1kmと上り基調になる1kmとでは区間タイムに10秒以上の差が生じる周回を重ねていくなかで後れる選手が出てきて、集団の数が削られていきます。

22km手前ではアレクシ・オヤラ選手(フィンランド)が飛び出し、一時は後続に7~8秒の差をつける場面もあったものの、25kmを1時間53分42秒で通過した直後に吸収され、26kmを通過した段階で、先頭グループは、日本の川野選手、髙橋選手を含む10名となり、これに3~4秒差ごとに2選手が続くというところまで絞られました。

ここでペルセウス・カルストローム選手(スウェーデン)が前に出ると、アルバロ・マルティン選手(スペイン)、魯寧選手(中国)、マルク・トゥル選手(スペイン)が続いて4人の先頭集団が形成されましたが、27km手前でカルストローム選手とマルティン選手が抜けだします。2人は、27~28kmの1kmを4分05秒に引き上げて魯選手とトゥル選手を突き放すと、その後は、マッチレースを繰り広げていきました。

両選手は競り合いながら29km以降を4分15秒、4分17秒、4分18秒、そして31~32kmは4分07秒までペースを上げ、32kmを同タイム(2時間30分20秒)で通過していきましたが、その直後の上りでカルストローム選手が一気にリード。この1kmを4分17秒で刻み、28km地点でマルティン選手に18秒の差をつけました。カルストローム選手は次の1kmを4分11秒に引き上げる強さを見せ、勝利を確信した状態となった最後の1kmも4分26秒でカバーして2時間36分14秒でフィニッシュ。この種目の初代チャンピオンに輝くとともに、自身の最高成績であった2019年世界選手権20km3位を上回って、初めての世界大会金メダルを獲得しました。

2時間36分54秒で続いたマルティン選手も20kmを主戦場とし、東京オリンピックでは4位入賞を果たしている選手。銀メダル獲得は、2016年のこの大会20kmにおける銅メダルを上回る自身の最高成績でした。

日本勢では、前述の通り、川野選手と髙橋選手が終盤にかかるあたりまで先頭集団でレースを進めていましたが、レースが動き始めた27km付近で髙橋選手は後れ、川野選手はミゲル・アンヘル・ロペス選手(スペイン)とともに、先頭から落ちてきたトゥル選手をとらえて4位を争う展開となりました。28kmの段階で11秒だった先頭との差は、その後、開いてしまったものの、単独で3位を歩いていた魯選手との差が徐々に縮まり、33kmで魯選手をかわすとメダルを狙っての勝負に。この競り合いは、残り1kmを切っても続きましたが、最後の折り返しの前に配置されていたゼネラルテーブルの付近で仕掛けたロペス選手がリードを奪って2時間37分27秒で3位となり、川野選手は2時間37分36秒でフィニッシュ。メダルまで9秒という惜しい結果ではありましたが、東京オリンピック(50km)での6位を上回り、世界大会での自己最高成績となる4位入賞を果たしました。

シニア日本代表として初めての世界大会であった髙橋選手は、川野選手は上位入賞争いから後れてからもよく粘り、ラスト2周となった31kmまでは7位を狙える位置でレースを進めていました。しかし、32km地点で9位に後退すると、ラスト1周で中国の扎西楊本選手にかわされ、2分39分08秒でフィニッシュ。10位でレースを終えました。また、勝木選手は、最初は先頭集団の後方に位置していましたが、思うようにペースを上げられず、5km以降で後れ始めると、その後は45~46位あたりでレースを進める苦しい展開となりました。終盤では立ち止まるなどして1kmのペースが7分台となる場面もあり、体調が心配されましたが、最後まで歩ききって3時間03分01秒・43位でフィニッシュ。これによって各国上位3名の順位を合算して、総数の少なさを競う国別団体の対象を維持。合計57ポイントで、団体4位の結果を残しました。

なお、日本陸連で定めているこの種目のオレゴン世界選手権派遣設定記録は2時間30分00秒、WAが定めた参加標準記録は2時間33分00秒でしたが、コース条件と気象条件の厳しさにより、この大会での突破はならず。今回出場した選手たちも含めて、代表入りを狙う選手たちは、4月に開催される日本選手権35km競歩において記録・順位を狙っていくことになります。

男子35km競歩

川野将虎(旭化成)4位 2時間37分36秒

このレースの前の段階で、今年1月に、貧血であることが判明していた。しかし、この世界競歩までの期間で、そこからしっかりと立て直して、レースに臨むことができた。結果は4位ということで、目標としている世界陸上の出場、さらには世界陸上での活躍に繋がるレースができたかなと思っている。
レースに当たっては、今回は団体金メダルを、1つの大きな目標として出場していた。団体金メダルを獲得することはできなかったが、チーム一丸となって戦うことはできたように思う。
この大会は、アップダウンの激しいコースであるうえに、(レース)後半にかけて、気温もかなり上がってくる気候だった。後半の20km以降で、苦しくなってしまったのだが、そこでどれだけ粘れるかということが、今回、自分のなかでは大きなポイントになった。
今後は、まずは世界陸上の代表権を獲得するために、その選考会で目標を達成させることが、直近の目標となる。また、その先にある世界陸上に向けても、気を緩めず、精いっぱい取り組んでいきたい。

勝木隼人(自衛隊体育学校)43位 3時間03分01秒

まず、たくさんの応援をいただいたことに感謝したい。
コースを言い訳にはできないが、今まで歩いたなかで一番アップダウンの激しい、すごく難しいコースだったと思う。
今日は、ハードなコンディションであることはわかっていたので、後半で(順位を)上げていくレースができれば…と思っていた。しかし、考えていた以上に下りで内臓のほうがやられてしまい、戦略とか関係なく、そのまま(ペース・順位ともに)落ちてしまう結果になってしまった。
若い選手たちのおかげで、団体では4位入賞という結果になった。私自身は、4月に行われる日本選手権35km競歩に向けて、精一杯頑張っていきたい。ダメージからの回復次第ではあるが、うまく回復してくれるようだったら、そこで、オレゴン世界選手権の出場権獲得を狙っていきたい。

髙橋和生(ADワークスグループ)10位 2時間39分08秒

今回が初めての日本代表ということで、緊張もしていたが、スタッフの方々やほかの選手の励ましによって、終始落ち着いたレースを進めることができた。レースはなるべく後ろのほうで力を溜めて、ラスト5kmで入賞ラインに食い込みたい思っていたのだが、最後まで脚を残すことができなかった。アップダウンの多いコースであることは、事前に把握はしていたので、いかに下りで脚を使わず、上りで前(の選手)との差を詰めるかということを意識していたが、前半は、そこができていたのだが、終盤になると下りで脚を使ってしまい、最後でペースを大きく落としてしまった。それによって個人入賞を逃してしまったところは悔いが残る。
目標としていた団体金メダルを獲得することができず、悔しく思う気持ちもあるが、途中、先頭集団でレースを進めていけたことは、今後の自信になった。また、日本代表として出場できる機会があれば、さらによい結果を目指して頑張っていきたい。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)



▼世界競歩チーム選手権
https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1634/ 

▼アーカイブ(YouTube『TBSチャンネル』)
■女子20km https://youtu.be/u3SFag0wKgg 
■男子35km https://youtu.be/ya9JyBMdtbw
■男子20km https://youtu.be/_T3OazzTcdo

▼東京2020オリンピック入賞者インタビュー(池田向希選手・山西利和選手・川野将虎選手)
https://www.jaaf.or.jp/olympic/tokyo2020/ 

▼3月 川野将虎選手 壁紙カレンダープレゼント!
 https://www.jaaf.or.jp/news/article/15749/ 


文:児玉育美(JAAFメディアチーム)

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