2020.11.30(月)大会

【第104回日本選手権長距離】展望:遠藤に日本選手権初優勝のチャンス!学生の吉居、高校生の石田にも年代別新記録の可能性~男子5000m編~



トラックで行われる長距離種目の第104回日本選手権が12月4日、東京オリンピック代表選考会を兼ねて、大阪・ヤンマースタジアム長居において開催される。

新型コロナウイルスの感染拡大・緊急事態宣言発令の影響で延期を余儀なくされた当初の日程を、世界陸連(WA)が各国の公平性に配慮して設けたオリンピック参加にかかわる諸条件(参加標準記録、ワールドランキングポイント)の適用除外期間(4月6日~11月30日)が明けた直後となるタイミングに再設定。さらに、昨年から別日程で行っている10000mだけでなく、5000mと3000m障害も組み込むことで、長距離種目すべてをオリンピック代表選考レースとして実施できるようにした。

今回の内定条件は、各種目ともに「優勝者で、日本選手権終了時点に東京オリンピック参加標準記録を満たしている競技者」であること。すでに有効期間中に参加標準記録を突破している競技者は優勝を、まだ突破していない競技者は参加標準記録を上回っての優勝を目指して、勝負に挑むことになる。ここでは、各種目における注目選手や見どころをご紹介していこう。

※情報や記録・競技会等の結果は、11月23日時点の情報で構成。


■「東京2020オリンピック競技大会」日本代表選手内定条件まとめ
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202011/17_124348.pdf


文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト


【男子5000m】

男子5000mの東京オリンピックの参加標準記録は13分13秒50で、日本歴代では5位相当となる。ここ数年の日本リスト1位記録が13分20秒を切ることができていないことを考えると、かなり高いハードルといえる状況だった。しかし、今季は、遠藤日向(住友電工)の13分18秒99を筆頭に、6名の選手が13分20秒台をマーク。リスト上位選手の記録水準が高まっている。東京オリンピックは1年延期になってしまったが、この1年でレベルをもう一段引き上げることができれば、参加標準記録突破の可能性も現実味を帯びてくる。そういう意味でも、今回の日本選手権では、ハイペースで競り合うなかで、複数の選手が13分20秒を切っていくような展開になることを期待したい。

今大会の優勝候補の筆頭は、やはり遠藤といえるだろう。中学(郡山四中)、高校(学法石川高)のころから、その年代のトップランカーとして数々の実績を残してきた選手。日本代表として世界ユース選手権やU20世界選手権出を経験するなかで世界との差を肌で実感し、トラック種目で世界と勝負することを期して、高校卒業後、実業団入りの道を選んだ。2018年からはアメリカの名門バウワーマントラッククラブで指導を受けており、こうしたトラックを主軸にした取り組みによって、2017年には3000mで7分54秒79のU20日本記録、2019年には5000mインドアレースで13分27秒81の室内日本記録を樹立するなど着実に成長。今季はコロナ禍の影響で国内でのトレーニングを余儀なくされたものの、7月のホクレンDC千歳大会5000mで日本歴代7位の13分18秒99までタイムを縮めている。

日本選手権には、1500mで4位となった高校3年時の2016年から出場しているが、以降、2017年は1500m2位、2018年は5000m2位、2019年は5000m7位。そろそろ「日本一」の称号を手に入れたいところだ。9月の全日本実業団(5000m)、10月の日本選手権(1500m)と秋シーズンのレースに出場していない点が気にかかるが、万全の状態で臨み、オープンで出場するジャスティス・ソゲット(Honda、13分15秒83)、ベナード・キメリ(富士通、13分16秒61)らとうまく競り合うことができれば、参加標準記録に迫る記録での初優勝も夢ではない。

遠藤に迫る存在として挙げるとしたら、松枝博輝と坂東悠汰の富士通コンビか。ディフェンディングチャンピオンでもある松枝は、今季は7月8日のホクレンDC深川大会で13分26秒25をマークし、2017年に出した13分28秒61の自己記録を塗り替えると、その10日後の千歳大会で13分24秒29へと再更新して、遠藤に続き日本人では2着(全体5着)でフィニッシュ。安定感も印象づけた。勝てば2年連続3回目の戴冠となる。そこに待ったをかけそうなのが今季社会人2年目の坂東だ。4月末に判明した疲労骨折の影響で秋シーズンからのスタートとなったが、9月の全日本実業団5000mで13分22秒60と自己記録(13分26秒70)を更新し、日本人トップの4位に食い込む好走でレースに復帰。新型コロナウイルス対策として熊谷スポーツ文化公園内の周回特設コース(4.2km)での開催となった11月3日の東日本実業団駅伝では4区(8.4km)を務めて区間賞を獲得している。ここでマークした23分18秒は、同じく8.4kmで行われた2・4・5・6区を通じて日本人トップ。6区を務めた松枝のタイム(23分32秒:区間2位)も14秒上回っている。

自己記録だけで見るなら、前回2位で、昨年7月にはベルギーで13分22秒72をマークしている田中秀幸(トヨタ自動車)も上位争いに加わる力はあるといえる。今季は13分37秒83がシーズンベスト。参加標準記録に迫っていくためには、13分36秒台にとどまっているセカンドベストをいかに引き上げていけるかも課題になりそうだ。

出場も含めての動向が気になるのは、男子マラソン日本記録保持者(2時間05分29秒、2020年)で、この種目の東京オリンピックの日本代表にも内定している大迫傑(Nike)。今回の日本選手権には、5000mと10000mの2種目にエントリーしてきた。マラソンに取り組む以前は、トラック種目でもレベルの高い結果を残してきていることはご存じの通り。5000mの日本記録13分08秒40は、2015年に大迫がマークしたものだ。10000mに絞るのか、それとも両種目ともに出場するのかは、この大会の位置づけや目的によって変わってくるはずだが、もし、5000mにも出場した場合は、レース展開、記録ともに、大きな注目が集まることになるだろう。

このほかでは、学生陣では、11月1日の全日本大学駅伝2区(11.1km)で17人抜きを演じ、31分24秒で区間賞を獲得したことで大きく注目された川瀬翔矢(皇學館大)も5000m・10000mの両方にエントリー。2月にハーフマラソンで1時間01分18秒をマークして注目を集めたが、今季は5000m・10000mでも成長著しく、5000mは11月15日に13分32秒73まで、10000mは11月21日に28分10秒41まで、それぞれ自己記録を更新してきている。入賞争いに絡むことを目指すのなら、5000mのほうが可能性は高いかもしれない。



世代別の新記録という観点からは、吉居大和(中央大)と石田洸介(東京農大二高)に注目したい。大学1年生の吉居は、7月に13分28秒31のU20日本記録を樹立している選手。ハーフマラソンでも10月の箱根駅伝予選会で、3000m障害に出場する同学年の三浦龍司(順天堂、1時間01分41秒)に続いて、それまで大迫が保持していたU20日本最高記録に並ぶ1時間01分47秒(U20日本歴代2位タイ)をマークしている。13分25秒を切って学生歴代上位記録に迫るような走りが見られるかもしれない。石田は、1500m・3000mで中学記録、5000mで中学最高記録をマークするなど、福岡・浅川中時代から活躍してきた選手。高校3年の今季は5000mで7月に13分36秒89の高校新記録を樹立すると、9月には13分34秒74まで更新した。日本選手権は今回が初挑戦。年長の選手たちの胸を借りて思いきりのいいレースを展開することができれば、再び記録を塗り替える可能性も十分にある。


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