2020.09.28(月)大会

【第104回日本陸上競技選手権大会・混成競技】中村明彦選手・山﨑有紀選手 (スズキ)がアベック優勝!3度目のキングとクイーンに輝く



第104回日本選手権混成競技が9月26~27日、U20全国陸上競技大会混成競技と併催する形で、長野市営陸上競技場において行われました。

男子十種競技は、日本歴代2位の8180点の自己記録(2016年)を持ち、日本選手権でも2016・2017年に優勝の実績を残している中村明彦選手(スズキ)が7739点で制して、3年ぶりに3回目の選手権を獲得しました。また、女子七種競技は、山﨑有紀選手(スズキ)が5799点を上げて、3連覇を達成。スズキ勢がアベック優勝を果たす結果となりました。



 

■十種競技は、中村が3年ぶり3回目の戴冠!


男子十種競技は、初日は、第1種目の100mでトップに立った清水剛士選手(三重陸協)が、4種目めの走高跳終了時点で2位に下がった以外は首位をキープして3975点を獲得。これを中村選手が3940点(2位)で追い、前回4位の田上駿選手(順天堂大)が3933点(3位)で、片山和也選手(宝グループ)が田上選手に9点差(3924点・4位)で続く滑り出しとなりました。2日目を得意とする日本記録保持者(8308点、2014年)の右代啓祐選手(国士舘クラブ)は、6位(3880点)からのスタートする展開です。

翌2日目は、上位が常に僅差でひしめき、1種目ごとに目まぐるしく首位が入れ替わる大激戦が繰り広げられました。最初の110mHで、種目別トップを取った田上選手(14秒15)と14秒21をマークした中村選手が4888点の同得点で2人が1位に躍り出ると、円盤投を終えた時点では田上選手(5485点)が単独首位に立ち、中村選手(5472点)が13点差で2位に。そして円盤投のトップ記録(44m51)をマークして757点を獲得した右代選手が、8位から3位(5470点)に浮上しました。

7種目めの棒高跳では、中村選手と右代選手が豪快な跳躍を披露。ともに4m90をクリアして880点を獲得し、ここで中村選手が6352点でトップとなり、右代選手が2点差で2位につけます。右代選手は、第9種目のやり投で3種目連続1位記録となる61m33を投げて累計得点を7108点とし、中村選手を逆転。52m33で623点を稼得した中村選手は、円盤投・棒高跳・やり投で徐々に順位を上げてきた片山選手と並ぶ6975点で、1500mに臨むこととなりました。

ここまで各種目でのパフォーマンスに集中して、総合順位を把握していなかったという中村選手は、やり投を終えた段階で「右代さんとの一騎打ちになっていて驚いた」とのちにコメントしましたが、得意の1500mでは先頭を走りきり、今大会初めての種目別トップとなる4分27秒06でカバーして764点を加算。総合で7739点をマークして、3年ぶりに3回目となるタイトルを手にしました。

レース後、「人生で一番きつい1500mだった」と振り返った右代選手は、その1500mは4分57秒26のタイムでフィニッシュ。7684点で中村選手に続く結果となりました。この2選手に続いたのは田上選手。1500mを種目別2位の4分29秒57で走って7619点で競技を終了。9種目を終えた段階で3点リードされていた片山選手(7603点で総合4位)を逆転し、初めて表彰台に上がることとなりました。

なお、併催されていたU20全国陸上の十種競技は、昨年のインターハイ覇者(八種競技)の池田塁選手(国士舘大)が初日でトップに立つと、2日目は棒高跳終了後にいったん梅田朔也選手(中京大)に首位を奪われたものの、円盤投で再逆転。1500mでそのまま逃げきって6750点を獲得し、優勝を果たしています。
 



■七種競技は山﨑選手が3連覇


女子七種競技は、日本歴代2位となる5907点(=学生記録、2017年)の自己記録を持ち、日本選手権を2015年から3連覇しているヘンプヒル恵選手(アトレ)が、ここ2年苦しんでいたケガから復活。2018年に日本歴代3位の5873点をマークして、この大会では2連覇中の山﨑有紀選手(スズキ)との勝負に注目が集まりました。

ヘンプヒル選手は、得意種目で今季自己記録を更新している第1種目の100mHを13秒54(+0.1)で滑り出すと、2種目めの走高跳では自己新記録となる1m73に成功、砲丸投11m95、200m25秒27(+1.1)と繋げて3455点を獲得。日本記録(5962点、2004年)更新も期待できる状態で、2日目を迎えました。一方、100mHを13秒95(+0.1)でスタートした山﨑選手は、走高跳が1m58にとどまる大誤算があったものの、砲丸投(12m13)、200m(24秒81、+1.1)と2連続で種目別トップ記録をマーク、ヘンプヒル選手と184点差の3271点で初日を終えました。

2日目最初の走幅跳は、山﨑選手が3回目に6m05(+1.6)の自己ベストを跳んで3つめの種目別1位と獲得すると、ヘンプヒル選手も6m03(+1.1)をマークして、ヘンプヒル選手4314点、山﨑選手4136点で、第6種目のやり投を迎えました。しかし、ここでヘンプヒル選手が1回目の試技で右膝を痛めるアクシデントに見舞われてしまいます。テーピングを施し、2回目の試技で25m45の記録を残して最終種目の800mへと繋げたヘンプヒル選手は、800mをスタートしたところで棄権。4705点・14位で競技を終えました。

ヘンプヒル選手のアクシデントに対して、「びっくりしたし、言葉が出ない思い」と振り返った山﨑選手ですが、競技中は自分のパフォーマンスに集中することを心がけたといいます。やり投で全体2位の47m60をマーク、そして最終種目の800mでは4つめの種目別優勝となる2分18秒11でフィニッシュ。総合で5799点を獲得して3連覇を達成しました。

2位は、初日を3位で終えていた日本インカレ覇者の大玉華鈴選手(日本体育大)。2日目は得点が伸ばせず、やや苦しみましたが、最後まで粘って5358点をマーク。3位も学生の藤本瑠奈選手(金沢星稜大)が5218点で続きました。逆に、後半で大きく順位を上げたのは山田紗和子選手(東大阪大)。2日目は11位からのスタートでしたが、種目別1位となったやり投(48m77)などで得点を重ね、5147点で4位に食い込みました。

同時開催で行われたU20全国陸上の七種競技は、初日に濱口紀子選手(日本体育大)が2887点を獲得してトップに立ちましたが、10点差で2位につけていた伊藤桃子選手(東京学芸大)が2日目最初の走幅跳で逆転すると、そのまま首位をキープ。4943点を獲得して優勝しました。




 

【優勝者コメント】

◎日本選手権男子十種競技

優勝 中村明彦(スズキ) 7739点

辛い2日間だった。1日目を終えた段階で、記録がかなり悪く、その落ち幅で2日目も回ってしまったら、表彰台以前の記録と順位になると考え、(2日目に向けて)自分の今の身体の状態で持ち直せるぎりぎりの記録はどれくらいかというのを書き出した。そこにきっちり乗せることができたという感じ。書き出した記録は、(110mH)14秒20、(円盤投)35m、(棒高跳)4m90、(円盤投)53m、(1500m)4分30秒。それで計算すると(合計は)7698点あたりだったので、なんとかそれを最低限クリアしつつ、どれだけ上乗せできるかが勝負だと思っていた。2日目に、いいペースで回すことができた点は、成長した部分というか、ベテランさしさが初めて出せたのかなと感じている。

優勝が見えてきたのは、やり投が終わってから。2日目は(各種目を終えても)その都度の総合順位等を確認せず、自分のやることは何かを考えたり、身体のケアをしたりしていた。自分がどれだけいい記録を出して、(順位を)引き上げて行くかということしか考えていなかったので、やり投が終わって右代さんとの一騎打ちになっていたことに驚いた。1500mも、「20秒(の差を右代選手に)つければ大丈夫」と聞いていたが、後ろも見ないで走ったし、ゴールしたあと右代さんのタイムも聞いていなかったので、勝ったことは、(タイム差を)計算してくださった周囲の皆さんが教えてくれて知った。

(8月に肉離れをしていたが)肉離れ自体が初めての経験だったこともあり、不安があった。そのなかで7700点台に乗せられたのは、ケガしてからの経過を考えれば、よかったのかなと思う。今回は、(東京オリンピック出場を目指すうえで)アジア選手権に出るためにも(代表選考ラインの対象となる)2位以内に入る必要があった。そういった意味でも、1日目から持ち直せたのはよかった。

今回の結果で、「“ベテラン”に両足突っ込んだな」ということを実感した。「右代さんは、こういうなかで1年1年戦ってきたんだな。辛かっただろうな」と思い、本当にリスペクトという気持ち。自分も今回辛かったが、でも、辞めるわけにもいかない。今日、試合を終えてみて、(現役生活は)終わりかけかもしれないけれど、まだ終わらないぞというふうに思えるようになった。

今季の試合出場は、たぶんこれでおしまいになる。来年は、(今年中止となったアジア室内が)もし開催されるのであればアジア室内に出場したいし、行くことができるのであればヨーロッパの室内大会でポイントを狙っていきたいなと思っている。その後は、屋外でアジア選手権に出て、それで日本選手権で勝負するというのが、(東京オリンピック出場のための)ルートとなる。
 



◎日本選手権女子七種競技

優勝 山﨑有紀(スズキ) 5799点


勝ちきれたことは嬉しかった。点数は5799点なのだが、いろいろあったなかでの点数なので、自分のなかではすごく自信になっている。これからが楽しみだなというのと、力がしっかりついてきているなという手応えを感じた。

1日目を終えた段階では、調子がよかったために(浮き足立って)落ち着くことができなかったところと、走高跳で足が合わなかったことを反省した。特に(1m58に終わってしまう失敗となった)走高跳でうまく行っていたら、(その後の)砲丸投と200mのパフォーマンスももうちょっと違ってたかもしれないと思い、かなり落ち込んだ。

走高跳で(本来取れるべき点数を)150点くらい落として、この結果(5799点)。今になって計算をして、「あーあ、もったいなかったな」とは思うけれど、そこが混成競技の難しいところといえる。競技中はそこを考えても仕方がないので、(取り損なったぶんを)カバーすることに集中した。

2日目は、やるべきことはしっかりできたように思う。練習でやってきたことをしっかり発揮することができたし、会場の雰囲気を自分のものにすることもできていた。また、これまで優勝したときと変わってきたなと思ったのは、一発の記録がなくなったこと。走幅跳も3回のアベレージが高かったし、やり投でも今回はきっちりとアベレージの高い記録を残すことができた。

あとは(課題を挙げるとしたら)メンタル的な問題。自分が試合でしっかりパフォーマンスできるように準備していくための心を、今後、どうやって成長させていくか。今シーズンは(コロナ禍で)これまでとは違う特別なシーズンの流れになってしまっているので、試合に出られたかったこと(の影響)は大きかったとは思う。ただ、そこはみんな一緒なので、仕方のないところでもある。練習拠点に戻って、対策をしっかりと考えていきたい。



 

◎U20全国陸上混成競技

十種競技

優勝 池田 塁(国士舘大) 6750点

点数的には悪くない結果。今回は、試合の前の段階で目標の点数を先生と決めていて、それが6800点台だった。最後の1500mでタレてしまい、50点届かなかったけれど、そこは次の混成に出るときの、いい課題になるかなと思う。

取りこぼしは少しあるものの、全体的にベストに近い記録を出すことができた。6kgでの砲丸投と棒高跳とやり投は自己ベスト。反対に、取りこぼしたと感じているのは走高跳と走幅跳。調整のときに調子がよかったので、もう少し狙えたかなと思う。あとは1500mがやはりちょっと(満足できない)という気持ちがある。

大学では、右代(啓祐)さんも練習に来られることがあり、その際には、アドバイスをいただいたり、一緒に練習させてもらったりと、多くを学ばせてもらっている。日本のトップの人と練習できて幸せだなと思う一方で、力の差をすごく感じている。今後の目標は、まずは来年、全カレ(日本インカレ)に出て入賞すること。あとは4年生になったときに、右代さんの記録に並ぶくらいの選手になっていたい。


 

◎U20全国陸上混成競技

七種競技

優勝 伊藤桃子(東京学芸大) 4943点


ずっと「日本一を取る」という目標があったので、今回は順位を目標にして2日間戦ってきた。優勝できたことは、素直に嬉しい。記録面では、最低面を下回る種目が何個か出てしまった。よかった種目は特になく、すべてが普通か普通以下だったなという思いはある。しかし、大学に入って少しずつ環境や考え方を変えてきたなかで、その変えてきた部分を安定して出せていた。そこはよかったところかなと思う。

次の試合は、関カレ(関東インカレ)。七種競技に出場する予定でいる(注:10月に分割して開催。混成競技は10月24~25日に実施)。今年は、環境が変わったこともあって、全カレ(日本インカレ)前も思うように練習に詰めたような満足感がなく、とりあえず挑戦するという感じで出場していたし、日本選手権もその2週間後ということで、やはり練習が積めたという感じがない状態で来ている。技術練習やスプリントなど課題としている部分はたくさんあるので、(関東インカレに向けては)いったん疲労を抜いてから、課題を1つ1つ練習していきたい。

 

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォートキシモト

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