2018.11.19(月)選手

【MGCファイナリスト】設楽悠太選手インタビュー Vol.2

 


11月に入って、2018年度のロードシーズンがいよいよ本格化。来年9月15日に行われる東京オリンピック男女マラソン代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」出場権を懸けて行われる「MGCシリーズ」の第2ステージも、男子第2戦として12月2日に「福岡国際マラソン」が、12月9日には女子第2戦の「さいたま国際マラソン」が、それぞれ行われます。
今回のMGCファイナリストインタビューは、設楽悠太選手(Honda)の登場です。
設楽選手は、2月の東京マラソンで、男子マラソン日本記録を16年ぶりに更新する2時間06分11秒をマーク。長く停滞していた日本男子マラソン界に、新しい風を吹き込みました。この日本記録は、10月のシカゴマラソンで、同い年の大迫傑選手(Nike)によって2時間05分50秒へと塗り替えられています。
東京マラソンの際に右足を痛めた影響もあり、この夏は、レースから遠ざかっていた設楽選手ですが、じっくりとトレーニングを積んで、秋に入ってトラックで本格的に復帰。現在は、11月から始まるロードレースに向けて、着実に調子を上げつつあります。また、10月29日には、福岡国際マラソンに出場することが正式に発表され、このレースでの走りにも、早くも期待が集まっています。
男子マラソン界を“目覚めさせた男”は、どんな経緯でマラソンに取り組んだのでしょうか? 10月26日、Honda陸上部の寮で、日本記録を樹立した東京マラソンを振り返っていただくとともに、独自のスタイルで取り組む調整法、ライバルとなる大迫選手への思いなどを伺いました。

◎取材・構成/児玉育美(JAAFメディアチーム)
◎写真提供:フォート・キシモト

>>【MGCファイナリスト】設楽悠太選手インタビュー Vol.1


走ることは嫌いだった子ども時代
双子の兄・啓太の背中を追って


―――子ども時代の話を聞かせてください。陸上を始めたきっかけは、小学校6年生くらいのころに、双子の兄である啓太さん(現、日立物流)と一緒に陸上教室に通うようになったのが最初だったそうですね。お母さまの勧めで…と伺いましたが?
設楽:あんまり覚えていないのですが、「やってみれば」みたいな感じで言われて。正直、走ることが一番嫌いでしたし…。
―――なんと! 走るのは嫌いだったのですか? スポーツ自体は?
設楽:身体を動かすことは好きでした。でも、陸上は、親の勧めがなかったら、たぶんやっていなかったですね。
―――それでは、陸上界としては、勧めてくれたお母さまに感謝しなくては(笑)。
設楽:(笑)。はい。
―――その後、中学(男衾中)、高校(武蔵越生高)も陸上部に。当時は、お兄さんのほうが活躍されていました。陸上をやろうという意欲は強まっていたのですか?
設楽:いやあ、強まらなかったですね。練習もきついですし、中学のときは、もうサボることしか考えていなかったです。先生が出張でいないときにバスケをやっていたら、途中で帰ってきて、めちゃくちゃ怒られたこともあります。
―――「帰ってきちゃった」みたいな?(笑)。
設楽:「やべーな」って思って、ボールを速攻で片づけて、走りに行きました(笑)。
―――それでもずっと陸上を続けることになったのはなぜ?
設楽:兄貴の存在がでかいですね、やっぱり。これが双子じゃなくて、1年違いだったとしたら、たぶん僕は陸上を続けていなかったです。双子だからこそ、本気で陸上ができたと思うし、今でもあいつの背中の追って競技をやっているので。あいつの存在は本当にでかいです。
―――それは「負けたくない」という気持ちなのでしょうか?
設楽:いいえ。僕たち、本当に勝ち負けは争っていないので。2人で一緒に結果を残すことが、僕たちの夢であり、目標でもあるんです。それに向かって、今も頑張っている途中ですね。
―――それでは高校でも陸上を続けることになったのは、「一緒に頑張ろう」という思いから?
設楽:そうですね。特に僕は、「高校で陸上をやりたい」とかは全くなくて、「あいつと同じところでいいや」という思いだったんです。とりあえず一緒のチームでやりたいという気持ちが一番強かったので。
―――中学では全中駅伝に出場、高校でも全国高校駅伝初出場を果たしました。そうやって、同じチームで一緒に頑張れたことは…。
設楽:はい、楽しかったですね。同じチームで走れたことは。
―――そして東洋大学に進学。先ほどもお名前が挙がりましたが、東洋大学では酒井監督の存在も、とても大きかったようですね。陸上に対する向き合い方は、大学で変わってきた?
設楽:酒井さんは、選手として、大学4年間だけを見るのではなく、大学を卒業してからのことも考えて、練習メニューを考えたりとかしてくれたので、信頼して練習に取り組んできました。東洋大学じゃなかったら、僕ら2人、ここまで成長できなかったと思います。
―――現在は、練習メニューは自分で考えて、組み立てているということですが…?
設楽:はい。大学のときは「言われたことをやればいいや」みたいな感じでやっていましたが、社会人になったら結果がすべて。結果が出なかったらクビになりますし、生活もできない。「言われたことをやっているだけじゃ、強くなれないな」ということは僕自身も感じていたので、今は、練習メニューは、その日ごとにスタッフと相談しながら、内容を変更したりしながらやっています。
―――そういう意味では、本当に「陸上でやっていく」と腹が据わったのは、社会人になってからだったのでしょうか?
設楽:そうですね、社会人になってからですね。「もっと上を目指したいな」という気持ちになれたのは。
―――試合など、直接的なきっかけとなった出来事はあるのですか?
設楽:いえ、特にきっかけとかはないです。応援してくれる人がたくさん増えて、そういう人たちを喜ばせたいというか、応援される選手になりたいというのが一番の思いでしょうか。つらいときも応援してくれる方の支えがあって乗り越えられましたし、ケガで苦しんでいるときも「復帰戦、楽しみにしているよ」と、声をかけてくださる人がたくさんいたんです。復帰して、こうやって状態が少しずつ上がってくることができたのは、皆さんのおかげだと思っています。

MGCは、「もう、やるしかない」
先のことは考えず、目標を1つ1つクリアしながらやっていく


―――マラソンでは、東京オリンピックの日本代表選手選考にあたって、MGCという枠組みが新たにできました。初めて聞いたときは、どういう印象を持たれましたか?
設楽:特に何も感じていなくて、「暑いなか、走りたくないな」という感じでしたね。暑いのは、本当に嫌いなので。
―――「ああ、そうなったんだ」という感じ?
設楽:そうですね。決まったのならもう仕方ないな、みたいな感じで。もう、やるしかないので。
―――その「やるしかない」、来年の9月15日。そこまでに、やっておかなきゃと思うことはあるのでしょうか?
設楽:ないですね。特に暑さ対策もしないですし。今は駅伝のレースが近いので、マラソンのことは置いておいて、駅伝に集中したいです。
―――では、今、ご自分でイメージしている将来像は、何かありますか?
設楽:いやあ、全く考えていなくて…。あんまり先のことは考えたくないタイプです。次の試合がもう控えているので、それに向けて準備している途中ですし、そんなに先のことを考えている余裕が、今はないですね。
―――どちらかというと、近いところに目標を定めて、そこに向けて進んで、それがクリアできたらまた次の目標を見つけていく?
設楽:そうですね。今は、そうやっていますね。
―――2020年東京オリンピックに対する思いは?
設楽:もちろんやっぱり兄弟で出たいという思いはあります。でも、まずはそこじゃなくて、次の試合に向けて、ですね。2人とも集中してトレーニングを積んでいますし、1つ1つのレースをクリアしていければ、東京オリンピックでも日本代表を勝ち取れると思うので。まずは目標を1つ1つクリアしながらやっていきたいです。
―――目標達成に向けて、もっとここを強くしたいとか、高めていきたいというようなところはあるのでしょうか?
設楽:ないですね。「ここを強くしたい」と思っても強くならないし、練習をやりながら感覚をつかんでいければ、自然と強くなれると思うので、そこはもうどんどん練習を積んでいくしかないです。
―――どちらかというと、「ここだけ」というのではなくて、練習をするなかで全体のベースを上げていくような感じなのでしょうか?
設楽:はい、そういう感じです。

大迫選手の日本新は「出して当たり前」
一緒に、マラソン界を盛り上げていきたい


―――今年のベルリンマラソンでは、エウリド・キプチョゲ選手(ケニア)が2時間1分台(2時間01分39秒)という世界記録を出しました。どんな感想を抱きましたか?
設楽:キプチョゲ選手とは、僕も昨年のベルリンで一緒に走っていますが、本当に素晴らしい記録で、「手が届かないところまで行っちゃったな」みたいな感じです。でも、それでも追いかけなければいけない存在。自己記録では5分くらい違いますが、少しずつ縮められたらいいなという思いがありますね。
―――また、シカゴマラソンでは大迫傑選手(Nike)が2時間05分50秒をマーク。設楽選手の持っていた日本記録を21秒更新しました。こちらについては?
設楽:まあ、大迫選手も、普通に走れば僕の記録は超えられると思っていたので、「出して当たり前」と思いました。ただ、21秒差というのは…。実は、彼が早稲田大学で、僕が東洋大学のときの2011年の箱根駅伝で、(東洋大学は早稲田大学に)21秒差で負けているんです。21秒更新されたと聞いたときは、まず、そのことを一番に思い出しましたね。
―――偶然にも、21秒だった…。
設楽:はい。なんかあるんですかね(笑)。
―――次は、設楽選手が21秒更新する…?
設楽:(笑)。そうですね。まあ、彼の記録は簡単に出せるタイムではないので…。とりあえず、記録よりも、彼と一緒にマラソン界を盛り上げたいです。今、短距離が盛り上がっていますが、その波に乗って、マラソンも盛り上げていきたいなと思っています。
―――設楽選手は、来年の東京マラソンにも出場したいと以前から話していましたが、計画は変わらず?
設楽:はい、東京は、一応、出る方向でいます。
―――では、大迫選手と一緒に走るのは、そこになるのでしょうか?
設楽:そうですね。社会人になってからはたぶん、ロードで対決するのは初めてです。大学のときは駅伝で3回、同じ区間を走りましたが、そこで2回勝っています。トラックで勝つのは厳しいけれど、ロードだったら可能性はあると思うので、勝ちたいですね。
―――いよいよ今年度のロードシーズンに入りました。今後のレースは、至近が11月3日の東日本実業団駅伝、そのあとは11月18日に上尾ハーフマラソンに出場予定と伺っています。マラソンは?
設楽:マラソンも年内には考えていて、試合もほぼ決まっています。僕の口から言ってもいいのですが、まだ、ちょっと…。
―――数日中に発表されるでしょうから、それは公式発表を待つことにしましょうか(笑)。本日は、ありがとうございました。


(2018年10月26日収録)

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