2018.02.14(水)選手

【MGCファイナリスト】前田穂南選手インタビュー Vol.1



 2019年9月以降に実施される東京オリンピック男女マラソン代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」出場権を懸けて、2017-2018シーズン、2018-2019シーズンの2期にわたって展開している「MGCシリーズ」。昨年8月27日の北海道マラソンからスタートしたファーストシーズン(2017-2018年)も、残すところ男子は2戦(東京マラソン2018、第73回びわ湖毎日マラソン大会)、女子は1戦(名古屋ウィメンズマラソン2018)となりました。
 今回のMGCファイナリストインタビューは、女子第1号の前田穂南選手(天満屋)に登場いただきました。前田選手は、自身2度目のレースとなった北海道マラソンで2時間28分48秒の自己新記録で女子の部を制し、MGC出場権を獲得。1月28日には大阪国際女子マラソンに出場し、自己記録を一気に5分も縮める2時間23分48秒の好記録をマークして2位の成績を収めています。
 インタビューは、大阪国際女子マラソンの翌日に実施。これまでの経過も振り返っていただきながら、今後の展望を伺いました。

◎取材・構成/児玉育美(JAAFメディアチーム)

いろいろな挑戦ができた大阪
自己記録を5分も更新

写真提供:フォート・キシモト

――大阪国際女子マラソンでは、25kmで前に出るなど、積極的なレースが印象でした。レースを振り返って、どう思いますか?
前田:MGCの資格を(すでに)取っているということで、いろいろと挑戦することができました。25km過ぎたところで飛び出して、勇気出して走れたことは、一番の収穫だったかなと思いますし、大幅に自己ベストを更新することもできました。また、次への課題と感じたこともたくさんあるので、しっかりと強化していきたいと思います。
――満足はできている?
前田:悔しい気持ちもありますけど、今回のレースの目標とした2時間26分切りと自己ベスト更新は達成できたので、そこは嬉しいです。
――そもそも北海道マラソンを終えて、次のレースを大阪にしようと決めたのは、どういう経緯からだったのですか?
前田:レースの計画は、いつも年間で立てています。なので、北海道に出て、次は大阪というのは決まっていて…。
――もともと決めていたわけですね。
前田:はい。
――2時間26分切りを目標にしていたということですが、「こういうレースがしたい」とか、「こういう展開にしたい」とか、自分のなかで想定していたことはあったのでしょうか?
前田:(武冨豊)監督に、25kmで出るように言われる前は、30kmまではペースメーカーについて走って、後半どれくらい余力をもって勝負できるかというレースになることを考えていました。
――監督は、なぜ、25kmから出ることを指示されたのでしょう?
前田:世界と戦おうと思ったら、最初から仕掛けていくこともやっておかないと、今後のためにならないと言われて…。
――とはいえ、けっこう勇気のいることですよね。レース後の会見では、「あまり深く考えずに行った」と仰っていましたが、監督からそう言われた瞬間は、戸惑いや不安の思いと、「やってみよう」という思いと、どちらが強かったのですか?
前田:「元気だったら出てみよう」という気持ちでした。
――北海道マラソンのときは、25kmの段階でけっこうきつかったとのこと。そのときと比べて、今回の状態は違っていた?
前田:違いましたね。もちろん北海道のときとは気候も違うし、北海道はペースメーカーもいなかったというのもありますが、今回は、ペースメーカーがレースをうまく引っ張ってくれたこともあって、前半、落ち着いてリラックスして走れました。北海道のときより楽だったし、うまく走ることができたと思います。
――北海道マラソンや、初マラソンだった去年の大阪国際女子マラソン(2時間32分19秒)のときと比べて、自分で「強くなったな」と実感した点はありましたか?
前田:準備の段階で、質の高い練習ができていました。マラソン前の練習を比較すると、北海道マラソン前とかは楽に(身体を)動かせることが多かったのですが、今回のマラソンに向けては、すごくしんどい日が多くて…。
――それは、北海道マラソン前よりも、質の高い練習を行っていたから?
前田:そうです。とてもきつくて…。でも、そのなかで、しっかり我慢して、粘って走ることを継続できたのが、今回のレースの結果にもつながったかなと感じています。

「並ばれたときは、いっぱいいっぱい」
対応力と筋力が課題に

写真提供:フォート・キシモト

――「悔しさもあった」ということですが、それは、優勝した松田瑞生さん(ダイハツ)に並ばれたとき、すぐに置いていかれてしまったことでしょうか? あのとき、どういう状況だったのですか?
前田:後ろから来ているのはわかっていたのですが、もうきつくなっていて、並ばれたときには、いっぱいいっぱいでした。身体も全然動かなくて、そのまま離されてしまいました。
――ペースの変動については、レース後、どう評価したのでしょう?
前田:35kmから40kmが落ちているので…。
――17分26秒ですね。
前田:はい。そこを16分台で粘りたかったというのはあります。
――5kmごとのペースとしては、どのくらいを想定していた?
前田:ペースメーカーが17分00~10秒くらいで行くということで引っ張っていてくれたので、それに合わせることを考えていました。
――25kmでご自身が前に出て、30kmまでの5kmを16分41秒にペースを引き上げました。次の5kmは16分50秒で通過しています。30km以降は、そのくらいのペースで、どこまで押していけるかという思いだったのでしょうか?
前田:はい。
――呼吸のほうがきつかった? それとも脚が?
前田:呼吸より、脚ですね。ふくらはぎがだんだんパンパンになってきて…。レースが終わってからも、もうやばかったです(笑)。
――そのあたりが、レース後の会見で今後の課題として挙げていた「並ばれたときに対応できるようにすること」というのと、「筋力アップ」の部分ですね。
前田:はい、そうです。

 
初マラソンから1年
3つのレースを経験して

 

――初マラソンを去年の大阪にしようと決めたのはどういう経緯で?
前田:マラソンには、ずっと挑戦したいと言っていました。地元ということもあり、走るのなら大阪に出たいという思いがありました。
――その初マラソン。2016年のロードシーズンに入る前から脚をしっかりつくっていたのに、故障があって不安を持ちながらの挑戦になったと聞きました。
前田:はい。あのときは、駅伝シーズンに入る前からマラソン練習をしていて、ずっと順調に来ていたのですが、駅伝前に脚が気になり始めて、その後、腓骨筋に痛みが出てしまいました。駅伝が終わってから、合宿でアルバカーキ(アメリカの高地)に行ったり帰国後に山陽女子ロードのハーフマラソン(1時間17分39秒で34位)に出たりしましたが全然ダメで、年末はほとんど練習ができなくて…。1月に入ってようやく練習し始めた感じだったので、走れるかどうかわからない状態で臨んでいました。
――初マラソンの前に、その状態というのは精神的にもきついですね。
前田:はい。
――その後、東京オリンピックの選考方法として、マラソングランドチャンピオンシップという新しい仕組みができました。MGCについて最初に聞いたとき、どういう印象をお持ちになりましたか?
前田:けっこう(な回数の)マラソンを走って、選考会に出ていかないとダメというのが、なんか大変そうだな(笑)と思いました。
――なるほど。確かに、代表になるまでには最低でも2回は走る必要がありますからね。でも、前田さんの場合、初マラソンを2時間32分台でスタートして、2回目の北海道で自己新を出してちゃんとMGCの資格も獲得し、3回目の大阪で一気に5分も更新。非常にスムーズに進んでいる印象があるのですが。
前田:でも、実は、今回も北海道のあと、全日本実業団のトラックが終わってから。すねを痛めていたんです。だから、駅伝の前とかはちゃんと練習できていなくて…。
――じゃあ、昨年の段階では、この大阪に向けて、必ずしもしっかりと取り組めていたわけではなかったのですか?
前田:ぎりぎりなんとか間に合いました(笑)。11月からはちゃんと走れた感じはあります。
――そのうえで、1月のアルバカーキでの合宿で、手応えをつかめる練習ができたというわけですね。
前田:はい。

 
(2018年1月29日収録)


>>【MGCファイナリスト】前田穂南選手インタビュー Vol.2はこちら
>>マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)特設サイト

関連選手

JAAF Official Partner

  • アシックス

JAAF Official Sponsors

  • 大塚製薬
  • 日本航空株式会社
  • 株式会社ニシ・スポーツ
  • デンカ株式会社

JAAF Official Supporting companies

  • 株式会社シミズオクト
  • 株式会社セレスポ
  • 近畿日本ツーリスト株式会社
  • JTB
  • 東武トップツアーズ株式会社
  • 日東電工株式会社
  • 伊藤超短波株式会社

PR Partner

  • 株式会社 PR TIMES
  • ハイパフォーマンススポーツセンター
  • JAPAN SPORT COUNCIL 日本スポーツ振興センター
  • スポーツ応援サイトGROWING by スポーツくじ(toto・BIG)
  • 公益財団法人 日本体育協会
  • フェアプレイで日本を元気に|日本体育協会
  • 日本アンチ・ドーピング機構
  • JSCとの個人情報の共同利用について