2017.09.15(金)大会

【レポート】日本インカレ 女子800m/女子やり投/男子400m/男子走幅跳など

 第86回日本学生陸上競技対校選手権大会(日本インカレ)が、9月8~10日、福井運動公園陸上競技場(福井県福井市)において行われました。会場は、来年の福井国体の会場となるスタジアム。やや風が強めの傾向にあったものの期間中は快晴に恵まれました。大会2日目の9月9日に男子100m決勝で桐生祥秀選手(東洋大)が9秒98(+1.8)の日本新記録、日本学生新記録を樹立するなどの素晴らしい記録が誕生したほか、各種目で対校戦ならではの白熱した勝負が繰り広げられました。対校得点では、男子は99点を獲得した日本大学が6年連続20回目の総合優勝を飾り、女子は日本体育大学が66点で、41年ぶりに8回目となる総合優勝を果たしています。
 本サイトでは、男子100mについてのレポートは、すでにご紹介ずみ( http://www.jaaf.or.jp/news/article/10895/ )ですが、以下に、そのほかの好結果について、お伝えしましょう

◎女子800mで2分00秒92! 北村選手が独走で日本学生新を樹立
 最終日に行われた女子800mで、北村夢選手(日本体育大)が2分00秒92でフィニッシュ。日本記録(2分00秒45、杉森美保、2005年)に0.47秒まで迫る日本歴代2位をマークするとともに、2003年に西村美樹選手(東学大)が出した日本学生記録2分02秒10を塗り替える日本学生新記録で優勝を果たしました。
 前日の9日に予選を2分10秒95(1着)で通過すると4×400mR予選でアンカーを務め(1着、3分40秒87)、そののちに準決勝を2分10秒24(1着)で走って決勝に進んでいた北村選手。4レーンに入った決勝では、スタートしてレーンがオープンになった段階からトップに立つと、そのまま後続との差をぐんぐんと広げていくレースを展開しました。200mを29秒5(筆者の計測による、以下同)で通過すると、その段階で独走態勢に。400mを59秒1で、バックストレートが向かい風となった影響で600mは1分30秒2での通過となりましたが、残り200mを30秒7でカバーし、2分00秒92でフィニッシュしました。
 レース後、開口一番に「最初から積極的に行って、タイムを狙うレースをしていたので、結果が出て本当に嬉しい」と声を弾ませた北村選手。「日本記録までは狙っていなかった」と言いつつも、この大会は、「最低限、学生新を出す」という目標で臨んでいたそうで、「400mは58秒台で入ろうと思っていて、うまく入ることができた。後半も落ちることなくレースを運べたので記録につながったかなと思う」と振り返りました。
 北村選手の昨年までのベスト記録は2分04秒57。今季は6月3日の日体大記録会で2分02秒52の自己新をマークしたほか、7月にもフィンランドで2分02秒67のセカンドベストを出しており、また、関東インカレ(2分05秒73)、日本学生個人選手権(2分04秒69)、日本選手権(2分04秒62)、そして今回の日本インカレと、国内のビッグタイトルをすべて獲得しています。記録や成績だけ見ると今季急成長したように見えますが、実は、そのポテンシャルの高さは、以前から関係者の間で非常に注目されていた選手でした。
 自身は、「以前に比べると、フォームが安定して、600mからの落ち込みがあまりなくなった」と感じており、また、記録の向上とともに、「日本人初の1分台を自分が出したい」という思いが明確になったといいます。ロンドン世界選手権の参加標準記録2分01秒00を上回るこの結果ですが、「将来的には世界で戦える選手になるのが目標。少しずつ力はついてきているなと思っているが、まだまだ世界には上がごろごろいる。今の結果には満足しないで、これからもしっかりやっていきたい」と力強く言い切りました。
 次戦は、10月7日に決勝が行われる愛媛国体の予定。このレースには、山形インターハイで2分02秒57、2分02秒74の高校新記録をマークした塩見綾乃選手(京都文教高)、川田朱夏選手(東大阪大敬愛高)も成年種目にエントリーすることが明らかになっています。“夢の1分台突入の可能性は?”という問いに、「高校生2人もいるので、狙えなくはないかも」と北村選手。国体では、ハイレベルな競り合いからの好記録誕生が実現するかもしれません。
 ちなみに、北村選手は800mのあとに行われた女子4×400mR決勝でアンカーを務め、大会記録に0秒14秒と迫る3分37秒44で制して2冠を達成し、41年ぶりとなる日本体育大の総合優勝に大きく貢献しました。国際陸上競技統計者協会(ATFS)会員の野口純正氏の計測によると、このときの北村選手のラップは52秒9。ラストの100mは13秒8で走っていたとのことです。

◎60mを超えての対決! 女子やり投は北口選手が制す
 この大会最初決勝種目となった女子やり投は、60mを超えるところで優勝争いが繰り広げられました。まず、この大会2連覇中で、今季はロンドン世界選手権に出場(予選敗退)、台北ユニバーシアードでは日本歴代2位、日本学生新記録となる62m37をマークして銀メダルを獲得した斉藤真理菜選手(国士舘大)が1回目の試技で59m61を投げて、自身が昨年マークした大会記録(58m21)を更新して首位に立つと、2回目には60m24に記録を伸ばしてトップで前半を折り返します。後半に入ると、3回目に53m06を投げて5位でベスト8に臨んでいたダイヤモンドアスリートの北口榛花選手(日本大)が4回目の試技で56m11を投げて3位に、5回目には58m54をマークして2位まで浮上、最終投てきで今季初の60mオーバーとなる60m49を記録してトップに立ちました。2位以上が決まった状態で最終投てきを迎えた斉藤選手は、逆転を期してピットに立ちましたが54m78にとどまり連覇ならず。北口選手の初優勝が決まりました。
「正直なところ、1回目(51m59)を投げたあとは、“今日もダメなのかな”と思っていた」と苦笑いした北口選手。ユニバーシアードでは、決勝まで駒を進めたものの前半の試技で記録を伸ばせず、ベスト8進出を逃して10位で競技を終えるという悔しい思いを味わったばかり。このときは「あれこれと考えすぎて投げてしまった」と話していましたが、今回はその反省を踏まえ、「やり先がぶれないようにすることを意識した。助走は悪くないと言われていたので、やりを引いたときに肩をしっかり入れて、やり先を右に残せるように心がけ、あとは思いきり振り切ることを考えた」とポイントを絞って試技に挑んでいたことを明かしました。
 優勝記録となった6回目の試技は、「投げたときはいい感じがなかったし、やり先も上がってしまったので、刺さった場所を見て60mを超えたことがわかった」と必ずしも満足のいく投てきではなかった様子。しかし、「今年はなかなか勝負にかかわることができずにいたので、勝ててよかった。本当はもうちょっと良い記録でガッツポーズがしたかったけれど、60m台は1年ぶり。これが(復調の)きっかけになればいいなと思う」と、久しぶりに晴れやかな笑顔を見せました。
 北口選手とは逆に、後半の試技に精彩を欠いてしまった斉藤選手は、感想を求められると、「ダメダメでしたね」とコメント。「調子は悪くはなかったが、後半の試技は力んで、変に力が入って、やり先が上がってしまった」と振り返りました。世界選手権、ユニバーシアードを連戦した8月を経てのこの大会でしたが、「疲れはあるけれど、それは言い訳にはできないこと」ときっぱり。「60mを超えることができたのはよかったけれど、北口さんに負けたのは悔しい。次の(試合となる)国体で、ベストが出せるように頑張りたい」と反省しきりの様子でした。

◎リオ五輪代表のウォルシュ選手、ケガからの復活V
 男子400mでは、昨年のリオ五輪で男子400mと男子4×400mRに出場しているウォルシュ・ジュリアン選手(東洋大)が46秒80で優勝しました。昨年の日本リスト1位で、日本歴代7位となる45秒35を筆頭に、45秒台を7回マークする安定感を見せていたウォルシュ選手は、今季は3月に45秒62で走り、44秒台突入も期待されていましたが、1走を務めたワールドリレーズ(4月22日)の予選レース中に左脚ハムストリングスの肉離れに見舞われ、その後の世界選手権、ユニバーシアードの代表選考競技会への出場を諦めざるを得ない状況となっていました。7月23日のトワイライトゲームスを46秒75で制して復帰を果たしたものの8月の世界大会出場はならず。7月、8月とトレーニングを積んで今大会を迎えていました。
 バックストレートを強い向かい風が吹くなかでのレース。ウォルシュ選手は、「大会記録(45秒75、山口有希、2004年)更新を狙うつもりだったが、この風ではタイムは出せないと思ったので、勝負に徹した」と振り返りましたが、2位(47秒65)に0.85秒の差をつけての快勝は、完全復帰を印象づけるのに十分なものでした。
 肉離れの原因を「自分の管理不足」と言い、「ケガしたことで、治療やケアの大切さを学んだし、ケガをしない走りや生活を心がけるようになった」「(復帰に向けての練習では)ひと月ごとにタイムが上がってきたので、ワクワクしながらやっていた」と振り返ったウォルシュ選手。「東京五輪の前に、こういうことを身につけることができてよかった」と話していました。
 3日目には大会最終種目となった男子4×400mR決勝のアンカーを務め、2位に1秒以上の差(1秒01)をつけて3分07秒15で優勝。100mで9秒台をマークした桐生選手とともに東洋大のエースとしてトラック優勝(57点)に大きく貢献しました。

◎男子走幅跳では2選手が8mオーバー
 優勝した桐生選手が9秒98の日本新記録、2位の多田修平選手(関西学院大)も10秒07の好記録をマークし、会場を興奮の渦に巻き込んだ大会2日目の男子100m決勝が行われたその時刻は、ホームストレートのスタンド側では男子走幅跳決勝が行われていて、まさにその競技が佳境に入ろうとするタイミングでした。追い風基調で行われていたこともあり、1回目から川島鶴槙選手(順天堂大)が追い風に乗って7m97(+2.5)の好記録をマーク。全般に水準の高い戦いとなりましたが、100mの決勝後には、桐生選手に近しい2人の選手が好パフォーマンスを見せ、会場をさらに沸かせました。
 4回目の跳躍で、桐生選手と洛南高時代の同級生で親友でもある山川夏輝選手(日本大)が7m93(+2.7)をマークして2位に上がってくると、5回目には、その山川選手に逆転された桐生選手の大学の後輩となる津波響樹選手(東洋大)が、公認ぎりぎりとなる2.0mの追い風に乗って、ジュニア日本歴代2位タイとなる8m09の大跳躍でトップに躍り出ます。最終跳躍では、今度は山川選手が8mを超えるビッグジャンプを披露。再逆転なるか注目されるなか発表された記録は8m06で、わずかに3cm届きませんでしたが、追い風1.9mで公認記録となり、山川選手は昨年マークしていた自己記録(8m00)を更新して競技を終了しました。直後に4×100mR決勝を控えていた津波選手は6回目をパス(1走を務めたリレーは2位)。最終跳躍者の川島選手が公認の自己新記録となる7m92(+1.2)を跳んだものの逆転はかなわず、津波選手が優勝、山川選手は2位という結果となりました。
 津波選手は、昨年までのベストは7m69(+1.4)でしたが、昨年は日本学生個人選手権で追い風参考(+2.9)ながら7m86を跳んで2位の成績を残している選手。那覇西高(沖縄)3年時には世界ユース選手権(カリ・コロンビア)の代表にも選ばれています。100m10秒47(+1.2、2016年)のスピードが持ち味で、土江寛裕コーチによると、「ダッシュは10~20mまでは桐生の前を走る選手」とのこと。今季は、8月の沖縄県国体最終予選で7m77(+1.8)の自己新記録をマークし、上り調子にありました。
 一方、昨年8mジャンパーの仲間入りを果たしていた山川選手は、今季は台北ユニバーシアードの日本代表にも選ばれましたが、本番では予選で7m53(+1.0)にとどまり、決勝進出に10cm届かず、悔しい敗退を喫したばかり。その雪辱を果たす結果となりました。
 男子走幅跳は、この大会までは大学1年生にして日本選手権を制したダイヤモンドアスリートの橋岡優輝選手(日本大)がマークした8m05(+1.4)が、今季日本リストのトップを占めていました。残念ながら橋岡選手は渡航直前に起こした肉離れにより代表に選ばれていたユニバーシアードを欠場、そして、この日本インカレも欠場しており、復帰が待たれているところですが、この大会で近い年代の選手が複数8m台をマークしたことで、1992年以来、日本記録(8m25、森長正樹)が更新されていないこの種目での、さらなる活況を期待することができそうです。 

◎山西、山本、塩尻選手は貫禄の勝利。女子短距離では中村選手が3冠達成
 このほかにも活躍が光った選手は複数見られました。男子では台北ユニバーシアード男子20km競歩で金メダルを獲得した山西利和選手(京都大)が、10000m競歩に出場して40分22秒28で2連勝。また、ユニバーシアード男子10000m銅メダリストで、2016年リオ五輪男子3000mSC代表の塩尻和也選手(順天堂大)は、この両種目にエントリー。初日の10000mを日本人2位の4位(28分47秒50)でフィニッシュすると、最終日の3000mSCでは大会記録(8分33秒65、A・ドリウッジ、1999年)に1秒15まで迫る8分34秒80を独走でマークし、3連覇を果たしました。
 男子三段跳で世界選手権(予選敗退)、ユニバーシアード(銅メダル)代表の山本凌雅選手(順天堂大)は走幅跳・三段跳に出場し、走幅跳は5位(7m66、+2.4)、その走幅跳で脚を痛めながらも臨んだ最終日の三段跳では、1回目にあっさりと16m77(+2.7)を跳んで2年連続3回目の優勝を決めました。また、4選手が5m50に挑戦するレベルの高さとなった男子棒高跳は、前回覇者の鈴木康太選手(中京大)とダイヤモンドアスリートの江島雅紀選手(日本大)との戦いに。5m50を1回でクリアして、5m60を2回失敗したのち、逆転をかけて5m65にバーを挙げた江島選手がこの高さを越えられず競技を終了したことで、5m60の大会タイ記録を2回目にクリアしていた鈴木選手の2連覇となりました。
 女子では、台北ユニバーシアード女子4×100mRで銅メダルを獲得した中村水月選手(大阪成蹊大)が、100m(11秒56、+2.3)、200m(23秒81、+1.3)、4×100mR(2走、45秒20)を制して3冠を達成。また、女子七種競技は、今季、自身の持つ日本学生記録を5907点に更新して、日本選手権3連覇を果たしていたヘンプヒル恵選手(中央大)が膝を痛め、台北ユニバーシアードとともに、この日本インカレも欠場しましたが、山﨑有紀選手(九州共立大)が5550点をマーク。ヘンプヒル選手が昨年マークした5547点を3点更新する大会新記録で初優勝を果たしました。

(文:児玉育美/JAAFメディアチーム)

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