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2016年 4月30日 (土)  〜 1日 (日)

和歌山(紀三井寺)

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大会詳細情報

お知らせ

  • 大会レポート(2日目)を掲載しました。
  • リザルトを掲載しました。
  • 大会レポート(1日目)を掲載しました。

大会レポート(2日目)

 リオデジャネイロ五輪代表選考会を兼ねて行われた日本選抜陸上和歌山大会は、5月1日、第2日が行われました。この日は、若干の風はあったものの雲一つない晴天となり、気温も午前から夕方まで24℃で安定する絶好のコンディション。男子十種競技で右代啓祐選手(スズキ浜松AC)がリオデジャネイロ五輪参加標準記録(8100点)を突破する8160点をマークして優勝を果たしたほか、女子七種競技やジュニア女子3000mSCでも好記録が誕生しました。

■右代選手、セカンドベストで五輪標準記録も突破

男子十種競技は、初日を4066点で折り返し、2日目で4094点を獲得した右代選手が8160点の大会新記録で優勝。日本記録でもある自己ベスト(8308点)には届きませんでしたが、パフォーマンス日本歴代2位となるセカンドベストをマークして五輪参加標準記録(8100点)を突破し、通算7回目の8000点オーバーを達成しました。

自己記録マイナス54点で終えた初日は、「9割5分くらいで全部の種目を終えることができた」と話していた右代選手ですが、2日目も初日と同様の展開となりました。6種目めの110mHを15秒00(-0.6)、7種目めの円盤投は48m12と、ベストには及ばないものの五輪標準記録を突破するためにボーダーとなるラインをキープ。8種目めの棒高跳で4m90を越えて8100点突破をほぼ確実にすると、やり投では66m71をマークして8200点台が見える水準まで引き戻せたことで、苦手の1500mに余裕をもって挑める状況となりました。

競技終了後、「悪いところは1個もなく、ベストよりちょっと下のところで10種目終えることができたので、この結果に結びついたかなと思う」と振り返った右代選手は、「8300、8400、8500、さらなる上という(記録の)可能性を、この大会で感じることができた」と手応えを実感した様子。しかし、「標準記録は突破したが、陸連が定める派遣設定記録(8311点)にはまだ届いていない。それをしっかり超えられるように、もう一度しっかり身体をつくり直したい」と、視線はすでに6月11~12日に長野で行われる日本選手権へと向けられていました。

 初日をトップで折り返していた中村明彦選手(スズキ浜松AC)は、110mHを14秒21(±0)で走り、円盤投では自己ベスト(36m94)をマークして自己記録(8043点)に62点差まで迫りましたが、棒高跳(4m80)、やり投(47m34)でうまく加点することができず7929点にとどまりました。再度、日本選手権で、目標とする五輪標準記録突破に挑みます。

■ヘンプヒル選手、日本歴代2位の5730点で連覇!

 女子七種競技では、昨年のこの大会を日本学生新記録(5678点)で制したヘンプヒル恵選手(中央大学)が5730点の大会新記録をマーク。日本学生記録を更新するとともに、2001年に佐藤さよ子選手(当時、日立土浦)が記録した5713点も上回り、日本歴代2位に浮上しました。

 前半4種目終了時点で自己記録を11点上回っていたヘンプヒル選手は、走幅跳で5m89(-0.6)を、やり投で43m23をマークして着実に得点を重ね、最終種目の800mは2分16秒07で走り切り、2連覇達成となりました。

 この大会に向けては「今日5800点を出して、次(の大会)で6000点を狙いたかった」という青写真を描いて臨んでいただけに、必ずしも満足のいく結果ではなかったようですが、「自己ベストが1つも出ないなかでの5700点だったので、そこはまずまずかなという感じ。ここでしっかり5700点が出せたことは次のステップにつながると思う」と評価し、「去年に比べて、ばらつきがなくなってきたがすごく大きい。コンスタントに自分のなかのアベレージを上げて競技することができた」と振り返りました。一方で、パフォーマンスの発揮の仕方が力頼みになった結果、疲労が激しく、最終種目の800mでエネルギーが切れてしまった点を課題として挙げ、「筋力がすごくついたので(力任せで)カバーはできるけれど、それでは限界がある。もっと力を抜いて記録が出せるようになれば、後半にも余裕が出るんじゃないかと思う」と話しました。

 女子七種競技では、日本歴代4位となる5668点をマークして2位に食い込んだ宇都宮絵莉選手(長谷川体育施設)の健闘も光りました。今春、園田学園大学を卒業して社会人になったばかり。昨年のこの大会でマークした自己記録(5460点)を大幅に更新し、今後に期待を抱かせる結果となりました。

■女子3000mSCでも好記録誕生

 U20世界選手権およびアジアジュニア選手権の代表選考レースとして行われたジュニア女子3000mSCでも好記録が誕生しました。優勝した向井智香選手(名城大学)がジュニア歴代2位、学生歴代4位、日本歴代10位となる10分00秒40をマーク。また、2位の柴田佑希選手(北九州市立高校・福岡)も10分08秒92の高校最高記録でフィニッシュしました。 9分53秒72のジュニア日本記録(高見澤安珠、2015年)が目標だったこともあり、レース後、「10分を切りたかった」とちょっぴり悔しそうな表情を見せた向井選手は、愛知・至学館高校3年の昨年、インターハイで800m・1500mの2冠を達成している選手。そのスピードを生かしての挑戦となりました。高校2年時(2014年)の全国高校選抜で2000mSCに出場経験があり(5位)、3000mSCは2月の合宿でタイムトライアルを経験(10分38秒)していたものの、レースとしては初挑戦。ペース配分やどこが苦しいかなどがわからなかったため、「1000mまでは様子を見ながら、あとはレースの展開に任せる」イメージで臨みました。3周目の周回でリードを奪うと、その後は徐々に広げていく展開に。「きつかったのは、周りに人がいなくなってから。あまりペース走とかもしていないので、“このペースでいいのかな”という不安があった」と振り返りました。

初レースを終えての感想は、「競れば、もっと行けるんじゃないか」というもの。「次は日本記録(9分33秒93、早狩実紀、2008年)を目指して、練習を積みたい」と意欲を見せる一方で、「少しでも可能性があるなら狙いたい」と800mと1500mでもU20世界選手権代表入りを目指す意向を示しました。

 10分08秒92と、従来の高校最高記録10分19秒73(丹羽七海、2012年)を大幅に更新した柴田選手は、「スタートの直前に監督から、高校最高が10分19秒(73)で、2000mを6分40秒で通過すれば行けるかもしれないと言われていた」なかレースに臨みました。優勝した向井選手同様、3000mSCは初挑戦。しかし、2000mSCでは6分47秒90の自己記録を持ち、昨年、カリ(コロンビア)で開催された世界ユース選手権では7位入賞を果たした実績を持っています。「3000mSCは初めて。きついだろうと思っていたラスト1000mで粘れたのはよかった」と評価しつつも、「前に食らいついていけなかったことが悔しい」と振り返りました。

記録更新に向けて問われると、「私は3000mを中心に駅伝で頑張っているので、この種目が専門というわけではないけれど」と前置きしながらも、「もし、出られることがあったら今度は10分を切ってみたい」と楽しみなコメントを返してくれました。 このほか行われた種目では、ジュニア男子3000mSCを荻野太成選手(神奈川大学)が8分48秒26で制し、グランプリ種目として実施された女子三段跳では宮坂楓選手(ニッパツ)が13m14(+1.0)をマークして優勝を果たしました。

文/児玉育美(JAAFメディアチーム)

大会レポート(1日目)

 2016年日本グランプリシリーズ第3戦の日本選抜陸上和歌山大会が4月30日に開幕しました。 リオデジャネイロ五輪代表選考会を兼ねている本大会の会期は2日間。例年行われている男女混成競技(男子十種、女子七種)に加え、今年は男子ハンマー投、女子走幅跳・三段跳の5種目がグランプリ種目として実施されるほか、7月にビトゴシチ(ポーランド)で行われるU20世界選手権(世界ジュニア選手権が本年より名称変更)および6月にホーチミン(ベトナム)で開催されるアジアジュニア選手権の代表選考レースとして、ジュニア5000mと3000mSCの男女4種目も併催されるタイムテーブルとなりました。

■男子十種競技は中村選手が70点差でリード

 男子十種競技は前半の5種目が行われ、8043点(日本歴代2位)の自己記録を持つ中村明彦選手(スズキ浜松AC)が4136点をマークして首位に立ち、これを日本記録保持者(8308点)の右代啓祐選手(スズキ浜松AC)が70点差の4066点で追う展開となりました。  トップでは折り返したものの、オリンピック参加標準記録の8100点を突破するためには、得意種目の多い1日目に、もう少し得点を稼いでおきたかった中村選手。この冬は1~2月に出場した室内七種競技で、5725点(ドイツ室内混成)、5831点(アジア室内選手権)と、2大会連続で自身の持つ室内日本記録を更新するなど好調な仕上がりを見せていましたが、「そのあと調子が全然上がらず」、かなり不安な状態でこの試合を迎えていたことを明かしました。初日を終えて、「その割には出だしの100m(10秒75)から自分でうまく波をつくれて、そこに乗っていけた(走幅跳7m47、砲丸投11m98)と思うが、室内でも安定しなかったハイジャンプが今回も安定せず、高さを上げる(記録は1m99)までに本数を重ねてしまった」と振り返り、「うまくいかなかった部分もあるが、仕上がりきっていないなかである程度のところは出せている。それらを日本選手権へのいい材料としながら、課題をしっかり見つけていきたい。とにかくこの試合と日本選手権で8100点を突破しないとどうしようもないので、一度頭の中を整理してから、明日、(第1種目の)ハードルに臨みたい」と、2日目を見据えました。  砲丸投では15m13の投てきを見せ、4種目めの走高跳が終わった段階で1日目を得意とする中村選手を抑えて首位に立つ場面も見せた右代選手は、昨シーズンを振り返って「1年を通して課題が多い年だった」と言い、冬場はそれを克服するために、海外でトレーニングを積んだほか、食事を変えて身体を絞り、ピーク時には100kgあった体重を7~8kg落としてこの大会に臨んだことを明かしました。 「自己ベスト更新にはならなかったけれど、9割5分くらいで(前半の)全部の種目を終えることができたので、まずはホッとしている。1日目で4000点を超えることが、まず自己記録更新のカギとなるので、4066点(という記録は)明日につながるいい結果だったと思う。後半は得意な種目や自信のある種目がたくさんある。日本記録更新、そしてオリンピックの標準をまだ切っていないので、このチャンスにしっかりつかめるように記録を狙っていきたい」と力強く言い切りました。

■ヘンプヒル選手、2年連続日本学生新記録なるか

100mH、走高跳、砲丸投、200mの前半4種目が行われた女子七種競技は、昨年のこの大会で、ルーキーながら5678点の日本学生記録を樹立したヘンプヒル恵選手(中央大学)が3307点をマーク、2位の桐山智衣選手(モンテローザ)に102点の差をつけ、首位に立ちました。 1日目を終えた段階で、昨年の新記録樹立時よりプラス11点。後半3種目の結果によっては、自身の持つ日本学生記録の更新だけでなく、5700点台突入、さらには2001年以降更新されていない日本歴代2位の記録(5713点、佐藤さよ子=日立土浦)に届く可能性も見えてきましたが、初日を終えての感想を求めると、意外にも「全体的に力でやっている。ガチガチな感じがする」という言葉が返ってきました。「特にハードルはタイムがそこそこよかった(13秒57)割には、全然走れていないというかキレがないというか。タイムと身体の状態がマッチしていないので、素直に“いい感じだな”と思えなくて…」と、しっくり来ていない様子。 しかし、2日目に向けては、「走幅跳も比較的調子がいいので、ここで(単独種目の)日本選手権の標準記録(6m05)を切って出ることを視野に入れている。また、やり投も今年50m(台)を投げたいので、とりあえずここでは45m以上投げるというイメージでいる」と話し、「最後(の800m)はもう…頑張ります」と笑顔を見せました。

■ジュニア男女5000mは、高校生の遠藤選手と加世田選手がV

ジュニア男子5000mは、昨年男子3000mで8分01秒95の日本高校記録をマークした遠藤日向選手(学法石川高校・福島)が、ラスト勝負を制して14分06秒71で優勝しました。レース後、「5月7日に延岡(宮崎)で行われるゴールデンゲームズで5000mの高校記録更新(13分39秒87、佐藤秀和、2004年)を狙う予定なので、この大会はできるだけ疲労を残さないで走ろうと思っていた。現段階の体調は70%くらい。残り1週間で少しでも上げられるようにしっかり調整していきたい」とコメントした遠藤選手。ターゲットとしている記録については、「39秒とか38秒とかではなく、13分30秒を狙っていきたい」と頼もしい言葉を聞かせてくれました。 ジュニア女子5000mは、「序盤は5~6番あたりで様子を見て、ラスト3周から徐々に上げていくレースをしようと考えていた。最後の1周になるところでも楽で、ラストも気持ちに余裕があった」と振り返った加世田梨花選手(成田高校・千葉)が、イメージ通りに順位を上げていくレースを展開し、残り150mで先頭の矢田みくに選手(ルーテル学院高校・熊本)を捕らえると、15分44秒58でそのままフィニッシュラインに飛び込みました。「練習でもラストスパート練習は男子としてきたので、けっこう自信があった。ラストも一杯一杯というのではなく、気持ちよく上げることができた」と話し、満足のいくレースができた様子を窺わせました。 このほか、男女混成競技以外で実施されたグランプリ種目では、男子ハンマー投は5回目に68m36をマークした保坂雄志郎選手(群馬綜合ガードシステム)が、女子走幅跳は2回目に6m16(-0.5)を跳んだ平加有梨奈選手(神奈川陸協)がそ、それぞれ優勝を果たしています。

文/児玉育美(JAAFメディアチーム)